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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09J
管理番号 1091556
異議申立番号 異議2003-71573  
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-08-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-06-16 
確定日 2004-01-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第3356987号「接着剤ペースト組成物及びこれを用いた半導体装置」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3356987号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯

本件特許第3356987号の請求項1ないし6に係る発明は、平成10年2月12日に出願され、平成14年10月4日にその特許権の設定登録がなされ、その後、石原庸男により特許異議の申立てがなされたものである。

2.本件発明

本件請求項1ないし6に係る発明は、明細書の特許請求の範囲に記載された下記のとおりのものである。

「【請求項1】(A)無水マレイン酸を付加させたポリブタジエンと分子内に水酸基を有するアクリル酸エステル化合物又はメタクリル酸エステル化合物を反応させて得られる反応生成物、(B)反応性希釈剤、(C)ラジカル開始剤及び(D)充填材を含有し、光増感剤を含まず、半導体素子と支持部材との接着に用いるための接着剤ペースト組成物。
【請求項2】(A)成分の無水マレイン酸を付加させたポリブタジエンの数平均分子量が200〜10000で、ポリブタジエンに対する無水マレイン酸の付加比が0.1〜10(モル/モル)である請求項1記載の接着剤ペースト組成物。
【請求項3】(A)成分中の分子内に水酸基を有するアクリル酸エステル化合物又はメタクリル酸エステル化合物が一般式(I)【化1】(略)〔式中、R1は水素又はメチル基を表し、R2は炭素数1〜100の2価の脂肪族又は環状構造を持つ脂肪族炭化水素基を表す〕で示される化合物及び一般式(II)【化2】(略)〔式中、R1は前記のものを表し、R3は水素、メチル基又はフェノキシメチル基を表し、yは1〜50の整数を表す〕で示される化合物の中から選択された少なくとも1種である請求項1記載の接着剤ペースト組成物。
【請求項4】(A)成分の反応生成物がポリブタジエン中の無水マレイン酸に由来する基1モルに対して水酸基を有するアクリル酸エステル化合物又は水酸基を有するメタクリル酸エステル化合物0.1〜1.2モルの範囲で反応させることにより得られたものである請求項1記載の接着剤ペースト組成物。
【請求項5】(B)成分の反応性希釈剤がモノ-若しくはジ-アクリル酸エステル化合物又はモノ-若しくはジ-メタクリル酸エステル化合物、スチレン又はアルキルスチレン化合物及びモノ-又はジ-ビニルエーテル化合物の中から選択された少なくとも1種である請求項1記載の接着剤ペースト組成物。
【請求項6】請求項1〜5のいずれか1項に記載の接着剤ペースト組成物を用いて半導体素子を支持部材に接着した後、封止してなる半導体装置。」

3.特許異議の申立ての理由の概要

異議申立人 石原庸男は、証拠として、甲第1号証(特開平9-244242号公報)、甲第2号証(特開平2-235917号公報)および甲第3号証(特開平8-157566号公報)を提示し、本件請求項1ないし6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるか、あるいは、甲第2,3号証を参照すれば甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができるものであるから、該特許は、特許法第29条第1項あるいは同条第2項の規定に違反してなされたものであり取り消されるべきものであると主張している。

4.甲号各証に記載の事項

甲第1号証(特開平9-244242号公報)には、フォトソルダーレジストや多層回路基板のビルトアップ用絶縁膜等に用いられる「ラジカル重合性不飽和結合とカルボキシル基を有してなるブタジエン化合物と、エポキシ化合物と、アルカリ可溶性エポキシ硬化剤と、ラジカル重合性不飽和結合を有する化合物と、光重合開始剤とを主成分とする感光性樹脂組成物(第2実施形態)」(11欄1〜6行)が記載され、「ブタジエン化合物としては液体ポリブタジエンをマレイン化した後、ヒドロキシエチルメタクリレートを反応させることによって得ることができる。例えば、日本石油化学社製の日石ポリブタジエンMM-1000-80(商品名)を用いることができる。」[0042]と、また、「ラジカル重合性不飽和結合を有する化合物、光重合開始剤、及びその他の添加剤としては第1実施形態による感光性樹脂組成物に用いるものと同様な材料を適用することができる。」[0046]とあり、第1実施形態を説明している段落[0030]〜[0032]には、「ラジカル重合性不飽和結合を有する化合物としては、ビニル基、アクリル基、メタクリル基を有する化合物を適用することができる。例えば、スチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、・・・・・・などを単独、或いは混合して用いることができる。また、上記の光重合開始剤としては、・・・・・。具体的には、・・・等の有機過酸化物に、・・・・・・等の増感剤を添加したものや、・・・を用いることができる。」と記載されて、第2実施形態に関連する実施例である実施例4(表3)には、体質顔料として炭酸カルシウムが添加された例が示されている。さらに、「次に、本実施形態による感光性樹脂組成物の使用方法について説明する。まず、上記の感光性樹脂組成物を、電子回路基板上に・・・などの方法により塗布し、・・・・被膜を乾燥させる。続いて、ソルダーレジストを形成する場合には、電子回路のはんだ付けをすべき箇所を除いた部分が透明なマスクを、多層回路基板のビルトアップ用絶縁膜を形成する場合には、上層の電子回路との接続すべき箇所を除いた部分が透明なマスクを用い、紫外線を適当な露光量で照射する、これにより、ラジカル重合性不飽和結合を有する化合物が光重合し、被膜の露光領域の感光性樹脂組成物はアルカリ水溶液に対して不溶となる。この後、非露光領域を希薄アルカリ水溶液で溶出除去することにより、皮膜が所望のパターンに現像される。・・・・・次いで、被膜の耐熱性向上を主な目的として、被膜を適当な温度、例えば100〜200℃の温度で加熱する。これにより、エポキシ化合物とアルカリ可溶性エポキシ硬化剤が反応し、最終的なソルダーレジスト被膜、又は絶縁膜が形成される。このようにして、感光性樹脂組成物よりなる被膜を形成することにより、被膜中にブタジエン化合物が混合・分散されるため、耐熱性を犠牲にすることなく低い弾性率を実現することができる。」(段落[0047]〜[0050])と説明されている。
甲第2号証(特開平2-235917号公報)および甲第3号証(特開平8-157566号公報)には、光熱硬化併用型樹脂組成物が示されている。

5.対比・判断

(1)特許法第29条第1項違反について

本件請求項1に係る発明と、甲第1号証に記載された発明を比較すると、両者とも本件請求項1に係る発明の(A)、(B)、(C)及び(D)の各成分を含有する組成物である点では一致するが、本件請求項1に係る発明は、光増感剤を含んでいない点、および「半導体素子と支持部材との接着」という特定の用途に用いる接着剤である点で、光増感剤を含み、かつ、フォトソルダーレジストや多層回路基板のビルトアップ用絶縁膜等に用いられる甲第1号証記載の発明とは相違している。さらに、甲第1号証に記載された発明は、エポキシ化合物とアルカリ可溶性エポキシ硬化剤が反応し、最終的な被膜が形成され、その被膜中にブタジエン化合物が混合・分散するものであって、(A)、(B)、(C)及び(D)の各成分以外に、エポキシ化合物と、アルカリ可溶性エポキシ硬化剤とを必須成分として含むもので、組成物自体においても本件請求項1に係る発明とは相違している。
したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一の発明とはいえず、また、請求項2ないし5に係る発明は、請求項1に係る発明をさらに特定したものであり、請求項6に係る発明は、請求項1に係る発明を使用して造られたものの発明であるから、同様な理由により甲第1号証に記載された発明と同一の発明ではない。

(2)特許法第29条第2項違反について

光増感剤の有無に拘わらず、上記のように、用途、組成において本件請求項1に係る発明は甲第1号証に記載された発明とは相違しているので、甲第2号証および甲第3号証により甲第1号証の組成物が熱硬化するものであるといえても、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができるものとはいえない。
異議申立人は、甲第1号証の発明は、半導体装置の多層基板のビルトアップ用絶縁膜に用いられるものであり、この絶縁膜は、多層回路基板を接着する接着剤であり、本件請求項1に係る発明の用途と同じであると主張する。しかし、甲第1号証の組成物が接着剤の一種であるということはできても、「半導体素子と支持部材との接着」という特定の用途に使用することまでをも示唆しているものではない。本件明細書の「発明が解決しようとする課題」には、「銅リードフレームにおいてもリフロークラックのない接着剤ペースト組成物及びこれを用いた半導体装置を提供するものである。」とあり、実施例では半田リフローを行い、耐リフロー試験がなされているところからみて、「半導体素子と支持部材との接着」とは、接着後、封止しパッケージとし、リフローを行う場合の半導体素子と支持部材との接着を意味しているものと解され、用途が同じであるという異議申立人の主張は認めることができない。

6.むすび

以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由および証拠をもっては、本件請求項1ないし6に係る発明の特許を、取り消すことはできない。
また、他に該発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-12-25 
出願番号 特願平10-29371
審決分類 P 1 651・ 113- Y (C09J)
P 1 651・ 121- Y (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山田 泰之  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 加藤 浩
後藤 圭次
登録日 2002-10-04 
登録番号 特許第3356987号(P3356987)
権利者 日立化成工業株式会社
発明の名称 接着剤ペースト組成物及びこれを用いた半導体装置  
代理人 束田 幸四郎  
代理人 津国 肇  
代理人 若林 邦彦  
代理人 篠田 文雄  

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