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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D |
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管理番号 | 1092238 |
審判番号 | 不服2001-8158 |
総通号数 | 52 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-07-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-05-17 |
確定日 | 2004-02-12 |
事件の表示 | 平成11年特許願第 8486号「合成樹脂シート製容器」拒絶査定に対する審判事件[平成12年 7月25日出願公開、特開2000-203677]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成11年1月14日の出願であって、その請求項1乃至4に係る発明は、平成11年11月22日及び平成13年6月18日提出の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項2には以下のとおり記載されている。 「一半部に容器本体(1)が、他半部に該容器本体(1)を覆う蓋体(2)が、両体を繋ぐ折曲部(3)を介してPET(ポリエチレンテレフタレート)製合成樹脂シート素材で一体的に形成されている容器であって、該折曲部(3)に折曲部(3)の長手方向に沿った複数の略長方形状の長穴からなる曲げ強度調整穴(4)が、折曲部(3)の長さの約60%を占める割合で形成されている合成樹脂シート製容器。」(以下、これにより特定される発明を「本願発明」という。) 2.引用文献 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平9-40052号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。 a. 「開閉自在な身部分と蓋部分とを折り曲げ可能な連結部分で連結し、閉じた状態において、卵保持用空間を形成するように隔壁によって仕切られた複数の凹部を成型した合成樹脂シートの卵包装容器において、上記連結部分に該連結部分の弾力を緩和する断続する切れ目を設けたことを特徴とする卵包装容器。」(【請求項1】) b. 「この発明は、薄肉合成樹脂シートを真空成型またはブロー成型して製作され、卵を入れる身部分と蓋部分とを屈曲自在な連結部分を介して一体に連結した卵包装容器に関する。」(段落【0001】【発明の属する技術分野】) c. 「このような卵包装容器には、塩化ビニール、ポリスチレン、ポリエチレン・テレフタレート(PET)などの合成樹脂シートが使用されている。塩化ビニールは焼却したときに有毒ガスを発生するので、PETのシートが多用されている。同じ厚みの他のシートに比べて、PETは丈夫であるから、フランジ部5において曲げ難く、また、曲げても強い開く方向の弾力が作用して、封止の仕方によっては、例えば、粘着性テープで封止した場合には不用意に開くことがあった。」(段落【0004】【発明が解決しようとする課題】) d. 「そこで、この発明は、このような強い開く方向の弾力を緩和させた卵包装容器を得るために考えられたものである。」(段落【0005】) e. 「図1に示すように、薄肉合成樹脂シートを真空成型またはブロー成型して、複数個の卵を互いに離間させた状態で保持するように、折り曲げ可能な連結部分3を介して一体に成型された身部分1および蓋部分2からなり、閉じた状態で卵保持用空間を形成するように、身部分1および蓋部分2には、隔壁によって仕切られた凹部11、21が設けられている。」(段落【0007】【発明の実施の形態】、図1参照) f. 「この発明の卵包装容器においては、図2に拡大して示すように、折り曲げ可能な連結部分3に、その長手方向に断続する切れ目4を形成する。この断続する切れ目4は、長さaなる切断部41と長さbなる非切断部42とにより構成されており、非切断部42の占める割合R(=b/a+b)は、所望の弾力が得られるように定めればよいのである。」(段落【0009】、図2参照) g. 「この連結部分3に形成する切れ目4としては、図2に示す切れ目に限ることなく、図3のA〜Cに示す断続する切れ目や図3のDに示す千鳥状の切れ目などの各種の形状の切れ目でも、同様の作用効果を奏することができる。」(段落【0011】、図3参照) h. 図3のA及びCには、切れ目の形状として、円形状の穴の態様が示されている。 3.対比・判断 本願発明と引用文献に記載された発明とを対比すると、引用文献には、「卵包装容器」を薄肉合成樹脂シートで、折り曲げ可能な「連結部分3」を介して「身部分1」及び「蓋部分2」を一体に成型することが記載されており(記載e)、引用文献に記載された「卵包装容器」、「連結部分3」、「身部分1」及び「蓋部分2」はそれぞれ、本願発明の「合成樹脂シート製容器」、「折曲部(3)」、「容器本体(1)」及び「蓋体(2)」に相当し、引用文献における「切れ目」は連結部分で折り曲げる時の弾力を緩和するために、連結部分3の長手方向に長さaなる切断部41と長さbなる非切断部42とにより構成されたものであり(記載a・f)、切れ目として円形状の穴の態様のものも含まれるので(記載h)、引用文献に記載された「切れ目」は、本願発明の「曲げ強度調整穴(4)」に相当する。また、引用文献には、「卵包装容器」をポリエチレン・テレフタレート(PET)などの合成樹脂シートで形成することが記載されている。 したがって、引用文献には、「一半部に容器本体が、他半部に該容器本体を覆う蓋体が、両体を繋ぐ折曲部を介してPET(ポリエチレンテレフタレート)製合成樹脂シート素材で一体的に形成されている容器であって、該折曲部に折曲部の長手方向に沿った複数の曲げ強度調整穴が形成されている合成樹脂シート製容器。」が記載されていることになり、この点で、本願発明と引用文献に記載された発明は一致しており、下記の点で一応の相違がある。 [相違点1] 「曲げ強度調整穴」が、本願発明では「略長方形状の長穴からなる」ものであるのに対し、引用文献に記載された発明では、線状や円形の穴がその態様として示されており、略長方形状の長穴であるとはされていない点。 [相違点2] 「曲げ強度調整穴」が、本願発明では「折曲部の長さの約60%を占める割合で」で形成されているのに対し、引用文献に記載された発明では、その形成割合が記載されていない点。 以下、相違点について検討する。 [相違点1]について 合成樹脂シート製容器の連結部分に形成する断続的な切れ目を「略長方形状の長穴」の形状とすることは、例えば、実願平4-80645号(実開平6-39747号)のCD-ROM(以下、「周知例1」という。)や実願昭57-124400号(実開昭59-28083号)のマイクロフィルムにも示されているように、食品包装容器の分野において周知・慣用の技術的事項であり、当該技術的事項を、引用文献に記載された卵容器の連結部分に適用することは当業者が容易になし得る事項である。そして、このような構成としたことによる効果も予測以上のものではない。 [相違点2]について 「曲げ強度調整穴」が折曲部の長さに占める割合をどの程度のものとするかは、引用文献の記載fにも示されているように、当業者が適宜決定する設計的事項である。また、周知例1にも、「スリット」(本願発明及び引用発明の「曲げ強度調整穴」に相当)の全体の長さは、通常、容器の幅の50〜75%程度であると記載されている(段落【0019】)ように、「折曲部の長さの約60%を占める割合」とすることが、格別の技術的意義を有するものともいえない。 したがって、引用文献に記載された卵容器の連結部分に形成された曲げ強度調整穴を、連結部分の長さの約60%を占める割合で形成することは、当該技術分野における技術常識に基づいて当業者が容易に想到することができた設計的事項に過ぎない。 請求人は、審判請求書において、本願発明は相違点1及び2を組み合わせたことにより格別の効果を奏する旨主張するが(審判請求書6頁)、引用文献に記載された発明に相違点1及び2に係る構成を適用して本願発明の構成を得ることが当業者にとって容易なことであることは前述のとおりであり、効果においても両者の総和以上のものを奏するとは認められないので、当該主張は採用できない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願請求項2に係る発明は、引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-10-21 |
結審通知日 | 2003-11-11 |
審決日 | 2003-11-26 |
出願番号 | 特願平11-8486 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐野 遵、小菅 一弘、生越 由美 |
特許庁審判長 |
鈴木 美知子 |
特許庁審判官 |
杉原 進 山崎 勝司 |
発明の名称 | 合成樹脂シート製容器 |
代理人 | 甲斐 寛人 |
代理人 | 佐當 彌太郎 |