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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正しない A01D
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない A01D
管理番号 1092258
審判番号 訂正2002-39094  
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-09-10 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2002-04-15 
確定日 2004-02-18 
事件の表示 特許第2796956号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.請求の要旨
本件審判請求の要旨は、特許第2796956号の明細書を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、具体的な訂正の内容は次のとおりである(訂正箇所はアンダーラインで示した。)。
(a)平成12年10月10日付け訂正請求書に添付した全文明細書(以下、「特許明細書」という)の特許請求の範囲の請求項1に記載された「車体側に設けてあり、水平方向に回転する駆動プーリと、
昇降する刈取部側に設けてあり、水平方向に回転する従動プーリと、
上記駆動プーリと従動プーリの間に回し掛けられているベルトと、
上記従動プーリによって駆動されて回転するカッターを有し、上記車体下方に昇降手段を介して垂直方向に昇降可能に設けてある刈取部と、
該刈取部を昇降させる昇降操作手段と、
上記ベルトに作用し上記カッターへの駆動力を断続するクラッチ機構と、
ブレーキシューで従動プーリ周面を押圧して上記カッターの回転を止める制動手段と、
を有し、刈取作業時には上記刈取部を下降させて作業を行う乗用型草刈機の上記カッターの制動方法であって、
上記昇降操作手段を操作することにより、上記刈取部を垂直方向に上昇させて上記従動プーリを刈取作業時とは異なる平面に移動させた後に、上記クラッチ機構により上記ベルトの緊張力を緩和して上記カッターへの駆動力を「断」する作動が行われ、かつ上記ブレーキシューが動くことにより従動プーリ周面を押圧して該カッターの回転制動作動も行われるようにしたことを特徴とする、
乗用型草刈機のカッターの制動方法。」を、特許請求の範囲の滅縮を目的として、
「車体側に設けてあり、水平方向に回転する駆動プーリと、
昇降する刈取部側に設けてあり、水平方向に回転する従動プーリと、
上記駆動プーリと従動プーリの間に回し掛けられているベルトと、
前輪と後輪との間に位置し、カバー、制動手段および上記従動プーリによって駆動されて回転するカッターを有し、上記車体下方に昇降手段を介して垂直方向に昇降可能に設けてある刈取部と、
該刈取部を昇降させる昇降操作手段を構成する昇降ハンドルと、
クラッチレバーの回動によって上記ベルトに作用し上記カッターへの駆動力を断続するクラッチ機構と、
上記クラッチレバーの上方への回動による上記クラッチ機構の断方向の作動によってブレーキシューで従動プーリ周面を押圧して上記カッターの回転を止める上記制動手段と、
を有し、
刈取作業時には上記刈取部を下降させて作業を行う乗用型草刈機の上記カッターの制動方法であって、
上記昇降操作手段を構成する昇降ハンドルを引き上げ操作することにより、上記刈取部を垂直方向に上昇させて上記従動プーリを刈取作業時とは異なる平面に移動させた後に、上記昇降ハンドルの引き上げに伴う上記クラッチレバーの上方への回動による上記クラッチ機構の断方向の作動により上記ベルトの緊張力を緩和して上記カッターへの駆動力を「断」する作動が行われ、かつ上記ブレーキシューが動くことにより従動プーリ周面を押圧して該カッターの回転制動作動も行われるようにしたことを特徴とする、
乗用型草刈機のカッターの制動方法。」
と訂正する。
(b)特許明細書第3ページ第7行から23行(段落【0007】)に記載された「車体側に設けてあり、水平方向に回転する駆動プーリと、
昇降する刈取部側に設けてあり、水平方向に回転する従動プーリと、
上記駆動プーリと従動プーリの間に回し掛けられているベルトと、
上記従動プーリによって駆動されて回転するカッターを有し、上記車体下方に昇降手段を介して垂直方向に昇降可能に設けてある刈取部と、
該刈取部を昇降させる昇降操作手段と、
上記ベルトに作用し上記カッターへの駆動力を断続するクラッチ機構と、
ブレーキシューで従動プーリ周面を押圧して上記カッターの回転を止める制動手段と、
を有し、刈取作業時には上記刈取部を下降させて作業を行う乗用型草刈機の上記カッターの制動方法であって、
上記昇降操作手段を操作することにより、上記刈取部を垂直方向に上昇させて上記従動プーリを刈取作業時とは異なる平面に移動させた後に、上記クラッチ機構により上記ベルトの緊張力を緩和して上記カッターへの駆動力を「断」する作動が行われ、かつ上記ブレーキシューが動くことにより従動プーリ周面を押圧して該カッターの回転制動作動も行われるようにしたことを特徴とする、
乗用型草刈機のカッターの制動方法である。」を、明りようでない記載の釈明を目的として、
「車体側に設けてあり、水平方向に回転する駆動プーリと、
昇降する刈取部側に設けてあり、水平方向に回転する従動プーリと、
上記駆動プーリと従動プーリの間に回し掛けられているベルトと、
前輪と後輪との間に位置し、カバー、制動手段および上記従動プーリによって駆動されて回転するカッターを有し、上記車体下方に昇降手段を介して垂直方向に昇降可能に設けてある刈取部と、
該刈取部を昇降させる昇降操作手段を構成する昇降ハンドルと、
クラッチレバーの回動によって上記ベルトに作用し上記カッターへの駆動
力を断続するクラッチ機構と、
上記クラッチレバーの上方への回動による上記クラッチ機構の断方向の作動によってブレーキシューで従動プーリ周面を押圧して上記カッターの回転を止める上記制動手段と、
を有し、
刈取作業時には上記刈取部を下降させて作業を行う乗用型草刈機の上記カッターの制動方法であって、
上記昇降操作手段を構成する昇降ハンドルを引き上げ操作することにより、上記刈取部を垂直方向に上昇させて上記従動プーリを刈取作業時とは異なる平面に移動させた後に、上記昇降ハンドルの引き上げに伴う上記クラッチレバーの上方への回動による上記クラッチ機構の断方向の作動により上記ベルトの緊張力を緩和して上記カッターへの駆動力を「断」する作動が行われ、かつ上記ブレーキシューが動くことにより従動プーリ周面を押圧して該カッターの回転制動作動も行われるようにしたことを特徴とする、
乗用型草刈機のカッターの制動方法である。」
と訂正する。

2.当審の判断
2-1.訂正明細書の発明
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「訂正明細書の発明」という)は、訂正明細書の記載からみてその特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、
「車体側に設けてあり、水平方向に回転する駆動プーリと、
昇降する刈取部側に設けてあり、水平方向に回転する従動プーリと、
上記駆動プーリと従動プーリの間に回し掛けられているベルトと、
前輪と後輪との間に位置し、カバー、制動手段および上記従動プーリによって駆動されて回転するカッターを有し、上記車体下方に昇降手段を介して垂直方向に昇降可能に設けてある刈取部と、
該刈取部を昇降させる昇降操作手段を構成する昇降ハンドルと、
クラッチレバーの回動によって上記ベルトに作用し上記カッターへの駆動力を断続するクラッチ機構と、
上記クラッチレバーの上方への回動による上記クラッチ機構の断方向の作動によってブレーキシューで従動プーリ周面を押圧して上記カッターの回転を止める上記制動手段と、
を有し、
刈取作業時には上記刈取部を下降させて作業を行う乗用型草刈機の上記カッターの制動方法であって、
上記昇降操作手段を構成する昇降ハンドルを引き上げ操作することにより、上記刈取部を垂直方向に上昇させて上記従動プーリを刈取作業時とは異なる平面に移動させた後に、上記昇降ハンドルの引き上げに伴う上記クラッチレバーの上方への回動による上記クラッチ機構の断方向の作動により上記ベルトの緊張力を緩和して上記カッターへの駆動力を「断」する作動が行われ、かつ上記ブレーキシューが動くことにより従動プーリ周面を押圧して該カッターの回転制動作動も行われるようにしたことを特徴とする、
乗用型草刈機のカッターの制動方法。」により特定されるものである。

2-2.引用例記載の発明
訂正拒絶理由で引用され本件出願日(遡及出願日 平成4年12月29日)前に頒布された、
実願昭61-162134号(実開昭63-66428号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という)、
米国特許第4934130号明細書(以下、「引用例2」という)、
実公昭55-35940号公報(以下、「引用例3」という)、
実公昭49-27067号公報(以下、「引用例4」という)及び
実公昭48-16835号公報(以下、「引用例5」という)
には、それぞれ次の事項が記載されている。
(a)引用例1(実願昭61-162134号(実開昭63-66428号)のマイクロフィルム)には、
(a-1)「刈刃ハウジング(2)は、前輪(9)と後輪(10)との間で、しかも、車台(3)の下方に、バーナイフ状の複数の刈刃(14)・・・(実施例では、左右2枚の刈刃)を垂直入力軸(15)、垂直被駆動軸(16)・・・を介して軸支内装した下方開口の楕円形箱形状のもので、上下回動調整可能なリフトレバー(17)に連動された適宜支持装置(18)によって車台(3)下部に支持され、このリフトレバー(17)操作によって上下位置調整可能に構成されている。」(5頁5〜13行)、
(a-2)「ミッションケース(6)の垂直出力軸(13)上の出力プーリー(19)と刈刃ハウジング(2)内の複数の刈刃(14)・・・との間には、この出力プーリー(19)の回転動力を刈刃(14)・・・まで伝達する伝動装置(A)が装着される。
伝動装置(A)は、機体(1)側の前記出力プーリー(19)と、刈刃ハウジング(2)側の垂直入力軸(15)上端部に取付けた入力プーリー(20)との間に、刈刃ハウジング(2)側適所に縦軸(21)で軸支された中間プーリー(22)を介して入力ベルト(23)が巻回され、この中間プーリー(22)と入力プーリー(20)との間の入力ベルト(23)を水平面で緊張および弛緩させ動力接断するための刈取テンションクラッチ体(24)が入力プーリー(20)近傍の刈刃ハウジング(2)上面側に枢支ピン(25)着されるとともに・・・、このテンションクラッチ体(24)と一体的に枢支ピン(25)回りに回動可能にブレーキ部材(26)が形成され、刈取テンションクラッチ体(24)がシート(8)近傍配備のクラッチレバー(27)にワイヤー(28)を介して連動連結されている。そして、このクラッチレバー(27)のクラッチ入切操作によって刈取テンションクラッチ体(24)は枢支ピン(25)回りに正逆回転して入力ベルト(23)を緊緩させ、これにより、動力接断がなされ、これと同時に、ブレーキ部材(26)も刈取テンションクラッチ体(24)と逆に枢支ピン(25)回りに回転し、動力接続時には入力ベルト(23)から離間され、動力切断時には入力ベルト(23)の外面側に沿って面圧接され、この入力ベルト(23)が入力プーリー(20)のV溝に圧接されて入力プーリー(20)、後述の分配ベルト等を介して全刈刃(14)・・・が制動されるように構成されている。」(5頁14行〜7頁9行)、
(a-3)「以上によると、クラッチレバー(27)がクラッチ入側に切替操作されると、刈取テンションクラッチ体(24)が入力ベルト(23)に圧接され、これが緊張されることになり、エンジン(5)の動力は、出力プーリー(19)から入力ベルト(23)を介して入力プーリー(20)に伝達され、さらに、この入力プーリー(20)と一体回転する分配プーリー(29)から、分配ベルト(31)を介して従動プーリー(30)に伝達され、垂直入力軸(15)、垂直被駆動軸(16)・・・を介して刈刃(14)・・・が回転駆動され、・・・逆に、クラッチレバー(27)がクラッチ切側に切替操作されると、刈取テンションクラッチ体(24)が入力ベルト(23)から離間方向に回動されると同時に、ブレーキ部材(26)が入力プーリー(20)位置の入力ベルト(23)に圧接されることになり、エンジン(5)の動力は、入力プーリー(20)に伝達されなくなると同時に、入力プーリー(20)が制動され、刈刃(14)・・・の惰性回転も停止されることになる。」(8頁6行〜9頁6行)、
と記載されている。
上記記載及び図面の記載によると、引用例1には、
機体(1)側に設けてあり、水平方向に回転する出力プーリー(19)と、昇降する刈取部側に設けてあり、水平方向に回転する入力プーリー(20)と、上記出力プーリー(19)と入力プーリー(20)の間に回し掛けられている入力ベルト(23)と、前輪(9)と後輪(10)との間に位置し、刈刃ハウジング(2)、制動手段及び上記入力プーリー(20)によって駆動されて回転する刈刃(14)を有し、上記機体(1)下方に適宜支持装置(18)を介して垂直方向に昇降可能に設けてある刈取部と、該刈取部を昇降させるリフトレバー(17)と、クラッチレバー(27)の回動によって上記入力ベルト(23)に作用し上記刈刃(14)への駆動力を断続する刈取テンションクラッチ体(24)と、上記クラッチレバー(27)の切側への回動による上記刈取テンションクラッチ体(24)の断方向の作動によってブレーキ部材(26)で入力プーリー(20)位置の入力ベルト(23)を押圧して入力プーリー(20)を制動して上記刈刃(14)の回転を止める上記制動手段と、を有し、刈取作業時には上記刈取部を下降させて作業を行い、上記リフトレバー(17)を操作することにより、上記刈取部を垂直方向に上昇させて上記従動プーリを刈取作業時とは異なる平面に移動させ、上記クラッチレバー(27)を切側へ操作することにより、上記刈取テンションクラッチ体(24)の断方向の作動により上記入力ベルト(23)の緊張力を緩和して上記刈刃(14)への駆動力を「断」する作動が行われ、かつ上記ブレーキ部材(26)が動くことにより入力プーリー(20)位置の入力ベルト(23)を押圧して入力プーリー(20)を制動して該刈刃(14)の回転制動作動も行われるようにした乗用型草刈機のカッターの制動方法(以下、「引用例1の発明」という)が、記載されていると認められる。
(b)引用例2(米国特許第4934130号明細書)には、
(b-1)「図2に示されているように、シャーシの一側方に配置されている前記バーは、ドロー・バー38により、シャーシに回動可能に固定された軸40に接続された三腕フオロア39に連結されている。シャーシの反対側に於いて、前記軸は、図面を参照して後述するタイプのリンク機構に作用するように構成された別のフオロア(図示せず)を支持している。
前記軸40は、更に、前記カッタ・アタッチメントのそれぞれの側方に配置された二つの平行なパイプ42を有する概してU字状のヨーク41も支持している。これらのパイプ42は、前記軸40に回動可能に固定されている。これらのパイプは、水平に延びる内側部と、上下方向に延びる外側部とを有し、パイプ43を介して互いに接続され、前記パイプ43は、刈取り作業中に地面上に載置されるように構成された複数のローラ44の為の支持体として作用する。
前記パイプ42は、それぞれ、アングル・リンクアーム46が回動可能に固定された耳部45を有する。前記リンクアーム46の一端部は、ドロー・バー47を支持し、その他端部は前記三腕フオロア39の第1アーム48に接続されている。前記リンクアーム46の他端部は、前記パイプ42の縦部分と前記フオロア39の第2アーム50との間に延出するレバー49に回動可能に固定されている。前記リンクアーム50の前記パイプ42と接触している端部は、フオーク51として形成され、前記パイプ上で揺動するように構成され、他方、その第2端部は、前記第2アーム50のピン53がその中で揺動するスロット52を有する。前記フオロアの第3アーム54は、前記駆動ユニットと前記カツタ・アタッチメン上との間で移動するベルト(詳細には図示せず)に作用するべく、ドローバー55を介してテンションローラ56(図1)に接続されている。」(第2欄23〜53行)、
(b-2)「前記カッタ・アタッチメントは、複数のプーリ66を有し、これらプーリは、それぞれ、カッタ・アタッチメントの一つのフレードを駆動し、前記シャーシは、対応の数の制動ラバー・ブロック67を有する。これらのブロックは、カッタ・アタッチメントが図2中に於いて破線で示された位置であるその非作動上方位置にまで回動された時に、前記プーリに係合するように配置されている。これらのブロックは、又、前記上方位置に於けるカッタ・アタッチメントのためのバネ支持体としても作用し、これによって、モアが駆動される時のがたつきと騒音とが回避される。」(第3欄5〜14行)、
(b-3)「同時に、前記ドローバー55に接続されたテンシヨンローラによってエンジンとカッタ・アタッチメントとの間の前記ベルトにテンシヨンが付与されていることにより,カッタ・アタッチメントのベルト駆動装置(図示せず)が係合される。」(第3欄44〜48行)と記載されている。
上記記載及び第1、2図の記載によると、引用例2には、バー19を上方に回動すると、ドロー・バー38を介して三腕フオロア39が軸40を中心に回動し、ドローバー55を作動してテンションローラ56によるカッタ・アタッチメントのベルト駆動装置を断とすると共に、カッタ・アタッチメントが図2中の破線で示された非作動上方位置では、プーリ66に制動ラバー・ブロック67を係合して、カッターの回転を止める発明、すなわち、一つの操作レバー(バー19)を引き上げ操作することにより、カッターを上昇し、カッターへの動力伝達を切断すると共にブレーキを作動させる技術思想が開示されているといえる。
なお、請求人は、引用例2には「これらのブロックは、又、前記上方位置に於けるカッタ・アタッチメントのためのバネ支持体としても作用し、これによって、モアが駆動される時のがたつきと騒音とが回避される。」(上記(b-2)参照)と記載されており、引用例2記載のモアの場合は、制動ラバーブロック67の機能は、本質的にはモアが駆動される時のがたつきと騒音を回避するためのものである旨主張するが、上記記載は、カッタ・アタッチメント(もちろん駆動されていない)を上方に位置させた状態でモアを駆動走行させる時には、制動ラバーブロック67がカッタ・アタッチメントを弾性的に支持するバネ支持体として作用するから、カッタ・アタッチメントのがたついきと騒音とが回避されるとの意味であるから、請求人の主張は採用できない。
(c)引用例3(実公昭55-35940号公報)には、「機体が枕地側にいたり回行する際には、操作レバー3は操作しないでクラッチレバー4のみを第6図に示すように矢印イ方向に操作すると、拘束体Bにおける板体16,16′が屈折部19,19′の接合により折れない状態で板体16′が操作レバー3の背面にあたり、そのまま板体16′で操作レバー3を後押ししながら従動させ、」(2頁左欄26〜32行)と記載されている。
(d)引用例4(実公昭49-27067号公報)には、「本考案のコンバインにおける刈取部駆動停止装置は、主変速レバー8の作業速度側イ位置と走行速度側および後進側ロ位置とをそれぞれ中立位置に対して相対向する位置に在らしめ、該主変速レバー8の側方には刈取クラッチレバー10を設けるとともに主変速レバー8には刈取クラッチレバー10に係接し得る制御杆11を一体的に付設して主変速レバー8を走行速度側および後進側ロ位置に操作したとき同時に刈取クラッチレバー10が切れるよう構成したものであるから、機体を路上走行させる場合、あるいは後進させる場合に操縦者は主変速レバー8を操作するだけで刈取装置4および搬送装置5を自動的に停止させることができて刈取、搬送部の動力を切忘れたりすることはなく」(2頁左欄18行〜同頁右欄7行)と記載されている。
(e)引用例5(実公昭48-16835号公報)には、「本考案に於けるコンバインのクラッチは、脱穀装置作動用クラッチ操作具28と刈取装置作動用クラッチ操作具16とを有するコンバイン30のクラッチに於いて、前記刈取装置作動用クラッチ操作具16をして該刈取装置作動用クラッチ17を入れた時、前記脱穀装置作動用クラッチ26をも入れるべく両クラッチ操作具16,28を連動連結させると共に、前記刈取装置作動用クラッチ操作具16をして該刈取装置作動用クラッチ17を切った時には前記脱穀装置作動用クラッチ26を切り得ない様両クラッチ操作具16,28を連動させるべく両クラッチ操作具16,18間に片側連動機構31を設けたものである」(2頁右欄16〜28行)と記載されている。

2-3.対比・判断
訂正明細書の発明と上記引用例1の発明とを対比すると、引用例1の発明の「機体(1)」が訂正明細書の発明の「車体」に対応し、同様に、「出力プーリー(19)」が「駆動プーリ」に、「入力プーリー(20)」が「従動プーリ」に、「入力ベルト(23)」が「ベルト」に、「刈刃ハウジング(2)」が「カバー」に、「刈刃(14)」が「カッター」に、「適宜支持装置(18)」が「昇降手段」に、「リフトレバー(17)」が「昇降操作手段を構成する昇降ハンドル」に、「刈取テンションクラッチ体(24)」が「クラッチ機構」に、「ブレーキ部材(26)」が「ブレーキシュー」に、それぞれ対応しているから、両者は、
車体側に設けてあり、水平方向に回転する駆動プーリと、昇降する刈取部側に設けてあり、水平方向に回転する従動プーリと、上記駆動プーリと従動プーリの間に回し掛けられているベルトと、前輪と後輪との間に位置し、カバー、制動手段及び上記従動プーリによって駆動されて回転するカッターを有し、上記車体下方に昇降手段を介して垂直方向に昇降可能に設けてある刈取部と、該刈取部を昇降させる昇降操作手段を構成する昇降ハンドルと、クラッチレバーの回動によって上記ベルトに作用し上記カッターへの駆動力を断続するクラッチ機構と、上記クラッチレバーの切側への回動による上記クラッチ機構の断方向の作動によってブレーキシューで従動プーリを制動して上記カッターの回転を止める上記制動手段と、を有し、刈取作業時には上記刈取部を下降させて作業を行う乗用型草刈機の上記カッターの制動方法であって、上記昇降操作手段を構成する昇降ハンドルを操作することにより、上記刈取部を垂直方向に上昇させて上記従動プーリを刈取作業時とは異なる平面に移動させ、上記クラッチレバーの切側への回動による上記クラッチ機構の断方向の作動により上記ベルトの緊張力を緩和して上記カッターへの駆動力を「断」する作動が行われ、かつ上記ブレーキシューが動くことにより従動プーリを制動して該カッターの回転制動作動も行われるようにした乗用型草刈機のカッターの制動方法で一致し、
(A)カッターの回転を止めるのに、訂正明細書の発明では、ブレーキシューで従動プーリ周面を押圧しているのに対し、引用例1の発明では、ブレーキ部材(26)で入力プーリー(20)位置の入力ベルト(23)を押圧している点、
(B)訂正明細書の発明では、昇降ハンドルを引き上げ操作することにより、刈取部を垂直方向に上昇させて従動プーリを刈取作業時とは異なる平面に移動させた後に、昇降ハンドルの引き上げに伴うクラッチレバーの上方への回動によるクラッチ機構の断方向の作動によりカッターへの駆動力を「断」する作動が行われ、かつブレーキシューが動くことによりカッターの回転制動作動も行われるようにしているのに対し、引用例1の発明では、クラッチレバー(27)を切側へ操作することにより、刈取テンションクラッチ体(24)の断方向の作動により刈刃(14)への駆動力を「断」する作動が行われ、かつブレーキ部材(26)が動くことにより入力プーリー(20)位置の入力ベルト(23)を押圧して入力プーリー(20)を制動して該刈刃(14)の回転制動作動も行われるようにしているが、昇降ハンドル(リフトレバー(17))の引き上げに伴ってクラッチレバー(27)が上方へ回動するように構成されていない点、
で構成が相違する。
上記相違点について検討する。
(A)の相違点について
ブレーキシューで従動プーリ周面を押圧してカッターの回転を止めることは周知(例えば、実願昭54-117373号(実開昭56-35432号)のマイクロフイルム、実願昭61-202845号(実開昭63-104233号)のマイクロフイルム参照)であるから、引用例1の発明において、ブレーキ部材(26)で入力プーリー(20)の周面を押圧するよう構成することは当業者なら容易にできることである。
(B)の相違点について
引用例2には、1つの操作レバーを引き上げ操作することによって、カッタ・アタッチメントを上昇させ、カッターへの駆動力を切断すると共に、カッターの制動を行うようにする技術思想が開示されており、しかも、その作動が互いに関連する2つ作動部を操作する各レバーを併設し、1つのレバーを操作することにより他のレバーを連動して操作できるように構成することは慣用技術(例えば、上記引用例3ないし5参照)である。
そうすると、引用例1の発明において、1つの操作レバーの引き上げ操作によって、刈取部を上昇させ、刈取部への動力を切ると共に刈取部にブレーキを掛けるようにすること、すなわち、リフトレバー(17)の引き上げに連動してクラッチレバー(27)を上方へ回動するようにして訂正明細書の発明のように構成することは当業者が容易に想到できることである。
そして、訂正明細書の発明の奏する効果は、引用例1及び2に記載された発明および周知技術から予測できる程度のことであって格別顕著なものではない。
したがって、訂正明細書の発明は、引用例1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.むすび
以上のとおりであり、上記訂正は、特許法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-10-16 
結審通知日 2002-10-21 
審決日 2002-12-02 
出願番号 特願平7-350558
審決分類 P 1 41・ 856- Z (A01D)
P 1 41・ 121- Z (A01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小島 寛史関根 裕  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 二宮 千久
村山 隆
登録日 1998-07-03 
登録番号 特許第2796956号(P2796956)
発明の名称 乗用型草刈機のカッターの制動方法  
代理人 梶原 克彦  

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