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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B63H
管理番号 1092266
審判番号 不服2001-13510  
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-02-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-08-02 
確定日 2004-02-12 
事件の表示 平成11年特許願第224668号「小型船」拒絶査定に対する審判事件[平成12年 2月15日出願公開、特開2000- 43792]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 本願発明
本願は、平成1年12月28日に出願した特願平1-342277号の一部を平成11年8月6日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1及び2に係る発明は、平成13年8月24日付け手続き補正書により補正された明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものである。
「【請求項1】 船底1aの横断面が略V形の船体1の上面をデッキ10で覆ってエンジンルーム12を設け、該エンジンルーム12内で、船体の横断面が略V形の船底1a上に4サイクルエンジン2を収納、設置し、該4サイクルエンジン2の動力を、船体の長手方向に配置した推進軸5の後端部に配置したウオータジェット推進装置に伝達し、水を後方に噴射させて推進する小型船において、前記横断面が略V形の船底1a上に設置した4サイクルエンジン2は、船底1a上に配置したクランクケース2j、該クランクケース2j上のシリンダブロック2d、該シリンダブロック2d上の動弁機構を備えるシリンダヘッド2cからなり、前記4サイクルエンジン2は、前記シリンダヘッド2cが船体の一方の舷側に向けて上方に位置するように配置し、前記クランクケース2jを船底1a上の略中央に配置し、該4サイクルエンジン2のシリンダ軸線2eを横断面が略V形の船底1aから船体1の一方の舷側L方向に傾斜させて配置した、ことを特徴とする小型船。」

2.刊行物記載の発明
これに対し、原査定の拒絶の理由で引用した特開昭62-125987号公報(以下、刊行物1という)には、「小型ジェット推進艇」について次の事項が記載されている。
1-ア、「船底板20と上部デッキ21とに囲まれる部分に実質上密閉されたエンジンルーム29が形成されている。」(2頁左上欄16行〜18行)
1-イ、「上記エンジンルーム29中には艇体の長さ方向及び幅方向のほぼ中央部にエンジン40が配置され、このエンジン40によって図示しないプロペラが回転して船底の水吸引口32から水を吸引し、座席50の下側に形成された流路33を通して、船尾の水平方向に揺動するノズル34から水を後方に噴射させることにより、旋回力および推進力を生じさせるようにしている。」(2頁右上欄15行〜同頁左下欄2行)
1-ウ、「キール22は、艇体の長さ方向中央部より前側では序序に幅が狭くなるようにし形成され、またその両側はその傾斜角が除に大きく成るように設定されて全体的にV形に近い形状となっている。また、中央部より後側では、キール22の幅が広くかつその両側の傾斜面の傾斜角が小さく設定され」(2頁右下欄2行〜7行)
1-エ、第1図、第3図及び上記1-イの記載から、エンジンから後方に延びる推進軸を有するものと認められる。
上記1-アないし1-エから刊行物1には「船底の横断面が略V形の船体の上面をデッキで覆ってエンジンルームを設け、該エンジンルーム内で、船体の横断面が略V形の船底上にエンジンを収納、設置し、該エンジンの動力を、船体の長手方向に配置した推進軸の後端部に配置したプロペラに伝達し、水を後方に噴射させて推進する小型ジェット推進艇」が記載されているものと認める。
また、前記原査定の拒絶の理由において同時に引用した実願昭62-192192号(実開平1-95499号公報)のマイクロフイルム(以下、刊行物2という)には、「推進機付サーフボード」について、次の事項が記載されている。
2-ア、「上記エンジン3は第3図のように、上記クランク軸3aがサーフボードのほぼ前後方向Aに設定され、一方、ピストン(図示せず)の摺動方向が左右方向Sに設定されて、その高さを低くしている。」(5頁3行〜6行)

3.請求項1に係る発明についての対比判断
本願の請求項1に係る発明と刊行物1記載の発明を対比すると、刊行物1記載の発明は、水を後方に噴射させて推進するジェット推進艇であることから、ウオータジェット推進装置を備えており、両発明は「船底の横断面が略V形の船体の上面をデッキで覆ってエンジンルームを設け、該エンジンルーム内で、船体の横断面が略V形の船底上にエンジンを収納、設置し、該エンジンの動力を、船体の長手方向に配置した推進軸の後端部に配置したウオータジェット推進装置に伝達し、水を後方に噴射させて推進する小型船」で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)本願の請求項1に係る発明では、エンジンが4サイクルエンジンであって、前記4サイクルエンジンは、船底上に配置したクランクケース、該クランクケース上のシリンダブロック、該シリンダブロック上の動弁機構を備えるシリンダヘッドからなるのに対し、上記刊行物1には、その点に関する記載がない点。
(相違点2)本願の請求項1に係る発明では、エンジンは、シリンダヘッドが船体の一方の舷側に向けて上方に位置するように配置し、クランクケースを船底上の略中央に配置し、該エンジンのシリンダ軸線を横断面が略V形の船底から船体の一方の舷側L方向に傾斜させて配置しているのに対し、上記刊行物1には、そのような点が開示されていない点で相違する。
(相違点1について)
しかしながら、クランクケース、該クランクケース上のシリンダブロック、及び該シリンダブロック上の動弁機構を備えるシリンダヘッドからなる4サイクルエンジンは周知であり、また、船底上にクランクケースを配置することは小型船において周知である(例えば特開昭63-212199号公報など)から、刊行物1記載の発明に、前記周知のエンジンを、船底上にクランクケースを配置して、設置することは当業者が容易になしえることである。
(相違点2について)
上記2.2-アで引用したように、刊行物2には、推進装置付き小型水上乗り物において、エンジンの高さを低くするためにピストン軸線を水平にすることが記載されている。そして、エンジン付きの乗り物等において、エンジンの重心の位置、設置スペース等の観点から、シリンダ軸線が傾斜するようにエンジンを配置し、エンジン高さを低くすることは周知であり(例えば、特開平1-147123号公報、実願昭62-66912号(実開昭63-173830号公報)のマイクロフイルム、実願昭59-132907号(実開昭61-46232号公報)のマイクロフイルムなど)、前記「(相違点1について)」に示した周知の4サイクルエンジンを刊行物1記載の発明に適用する際に、刊行物2記載の発明および前記周知技術に基づき、4サイクルエンジンを、シリンダヘッドが船体の一方の舷側に向けて上方に位置するように配置し、クランクケースを船底上の略中央に配置し、該エンジンのシリンダ軸線を横断面が略V形の船底から船体の一方の舷側L方向に傾斜させて配置することは当業者にとって困難性があるとはいえない。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、上記刊行物1、2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2に係る発明について詳細に検討するまでもなく本件出願は拒絶されるものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-02-19 
結審通知日 2002-02-20 
審決日 2002-03-06 
出願番号 特願平11-224668
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B63H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川本 真裕大山 健  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 大熊 雄治
溝渕 良一
発明の名称 小型船  
代理人 下田 容一郎  

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