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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B25J
管理番号 1092409
審判番号 不服2003-4151  
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-05-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-03-14 
確定日 2004-02-20 
事件の表示 平成 5年特許願第279635号「吸着用パッドの回り止め並びに案内機構」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 5月23日出願公開、特開平 7-132479]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本件発明
本件出願は、平成5年11月9日に特許出願されたものであって、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、平成14年11月5日付手続補正書により補正がされた明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものであると認める。
「一端部に吸着用パッドを連結するとともに、他端部に真空吸引源に連通するチューブを連結し、前記吸着用パッドとチューブとを連通する貫通孔が画成される軸部材と、
前記軸部材の所定部位に外嵌され、該軸部材の軸線方向に沿って変位自在に設けられる筒状部材と、
前記筒状部材の内壁面に設けられ、所定角度離間して半径内方向に膨出するとともに軸線方向に沿って形成される凸部と、
前記吸着用パッドと筒状部材との間に介装される弾性部材と、
前記筒状部材と軸部材との間に設けられ、前記凸部によって周方向に対する回り止めをなすとともに、該筒状部材が変位する際に転動する転動部材と、
を備え、前記転動部材は複数個のボールからなり、前記ボールは、前記筒状部材の内壁面に形成された断面略半円状の一対の窪み部と前記軸部材に形成された湾曲する一対の凹部との間に保持されるとともに、前記凹部と窪み部とによって画成される間隙に連通し前記軸部材の内部に形成された長孔を介して転動して循環することを特徴とする吸着用パッドの回り止め並びに案内機構。」

第2 引用例記載事項
1 原査定における拒絶の理由に引用した本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である実願平2-104997号(実開平4-63384号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されていると認める。
(1) 明細書第2頁第9-11行
「[産業上の利用分野]
本考案は、ワークを吸着し、搬送するための吸着用パッドの回り止め機構に関する。」
(2) 明細書第5頁末行-第7頁第15行
「[実施例]
次に、本考案に係る吸着用パッドの回り止め機構について好適な実施例を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
第1図において、参照符号10は第1の実施例に係る吸着用パッドの回り止め機構を示す。
前記吸着用パッドの回り止め機構10は、管状体14、前記管状体14と一体的に形成されたフランジ16の上部より管状体14を巻回しているコイルスプリング18、および前記コイルスプリング18の上方に位置してこのコイルスプリング18の一端部が着座するリング状のボディ部20とから基本的に構成されている。管状体14の一端部には吸着用パッド12の根本部22が公知の手段によって装着される。
すなわち、軸線方向に延在する貫通孔14aを形成している管状体14は、その下端より若干上部にフランジ16を一体的に形成している。そして、第2図から諒解されるように、前記管状体14の断面は多角形、ここでは六角形状に形成されている。
ボディ部20は、内側壁面形状を前記管状体14の断面に対応する形状とし、プラスチックにより構成されている(第2図参照)。前記ボディ部20の外側壁面にはナット24が二個取り付けられ、前記ナット24がシリンダロッド27に装着された取付用プレート28を挟んで、吸着用パッドの回り止め機構10をシリンダ26から延在するシリンダロッド27に連結している。
また、前記管状体14の上部には、ボディ部20の抜け防止のために孔部15aを形成したカバ一部材15が装着され、前記カバー部材15の上部には、真空吸引源に連通しているチューブ32を接続するための管継手30が装着されている。」
(3) 明細書第9頁第7-11行
「それに対して、本考案では管状体14の断面とボディ部20の内側に形成された孔部を実質的に対応した互いに間隙の少ない形状としているため、該回転運動が阻止され、ワークの姿勢を変えることなく正確な位置に離脱できる。」
上記記載事項及び上記回り止め機構は回り止めとともに案内する機構であることが明らかであることより、引用例1には、次の「吸着用パッドの回り止め並びに案内機構」の発明(以下「引用例1に記載の発明」という。)が記載されていると認める。
一端部に吸着用パッド12を連結するとともに、他端部に真空吸引源に連通するチューブ32を連結し、前記吸着用パッド12とチューブ32とを連通する貫通孔14aが画成される管状体14と、
前記管状体14の所定部位に外嵌され、該管状体14の軸線方向に沿って変位自在に設けられるリング状のボディ部20と、
前記吸着用パッド12とリング状のボディ部20との間に介装されるコイルスプリング18と、
前記管状体14の断面を六角形とし、前記リング状のボディ部20の内側壁面形状を前記管状体14断面の六角形に対応する形状とする吸着用パッドの回り止め並びに案内機構。
2 同じく引用した本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である実願平3-95297号(実開平5-44487号)のCD-ROM(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されていると認める。
(1) 明細書第4頁第3-28行(段落【0001】-【0004】参照)
「【産業上の利用分野】
この考案はICを吸着して所望の位置に搬送するIC搬送装置に利用するIC吸着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
・・・
【0004】
吸着ヘッド3は図5に示すように下面の中央に凸面3Aが形成され、この凸面3Aの中心に孔3Bが形成され、この孔3Bにゴム等で作られた吸盤状の吸着パット4が装着される。吸着パット4は中心に孔4Aを有し、この孔4Aに吸着ヘッド3に形成した孔3Cを連通させ、この孔3Cにチューブ等を介して空気吸引装置(特に図示しない)に連結し、孔4Aから空気を吸引することにより面3AにICを吸着し、ICを保持する。」
(2) 明細書第6頁第24行-第7頁第17行(段落【0012】-【0014】参照)
「X-Y駆動ヘッド10の下面にこの考案によるIC吸着装置が支持される。この考案によるIC吸着装置はZ軸方向(上下方向)駆動装置を構成する直線駆動装置1と、この直線駆動装置1によって軸芯方向に推動され、軸芯を中心とする回転を廻り止めされたスプライン軸14と、このスプライン軸14の下端に取付けた緩衝装置5とによって構成される。
【0013】
緩衝装置5はスプライン軸14に推動自在に係合したボールスプライン15と、このボールスプライン15の外周に係合した筒状のヘッドホルダ16と、このヘッドホルダ16の下端に取付けられた吸着ヘッド3と、スプライン軸14の下端に取付けられ、ボールスプライン15を抜け止めするフランジ17と、このフランジ17と吸着ヘッド3との間に介挿され、フランジ17と吸着ヘッド3との間に反発力を与えるスプリング18とによって構成される。
【0014】
直線駆動装置1は例えばエアシリンダによって構成することができる。直線駆動装置1によってスプライン軸14が上下に移動される。スプライン軸14の廻り止めは直線駆動装置1の下端に取付けたボールスプライン13によって行われる。
つまり、スプライン軸14は例えば図3に示すように丸棒の周面に3本の凹溝14Aを有し、この凹溝14Aにボールスプライン13に保持された鋼球13Aが係合し、この鋼球13Aの係合によって廻り止めされ、ボールスプライン13とスプライン軸14とは軸芯方向に推動自在に係合する。従ってボールスプライン13を直線駆動装置1の下端に取付けることにより、スプライン軸14は廻り止めされて上下方向に移動できるように支持される。」
上記記載事項より、引用例2には、吸着パッド4の回り止め及び案内する機構としてボールスプラインを用いる技術事項が記載されていると認める。

第3 対比
本件発明と引用例1に記載の発明とを対比すると、引用例1に記載の発明の「管状体」は、本件発明の「軸部材」に相当しており、同様に、「リング状のボディ部」は「筒状部材」に、及び、「コイルスプリング」は「弾性部材」にそれぞれ相当していることが明らかである。
また、引用例1に記載の発明の「軸部材の断面を六角形とし、筒状部材の内壁面形状を前記軸部材断面の六角形に対応する形状とする」は、軸部材に対して筒状部材の軸方向の移動を案内するとともに周方向の回り止めをする手段であることに限り、本件発明の「筒状部材の内壁面に設けられ、所定角度離間して半径内方向に膨出するとともに軸線方向に沿って形成される凸部と、前記筒状部材と軸部材との間に設けられ、前記凸部によって周方向に対する回り止めをなすとともに、該筒状部材が変位する際に転動する転動部材と、を備え、前記転動部材は複数個のボールからなり、前記ボールは、前記筒状部材の内壁面に形成された断面略半円状の一対の窪み部と前記軸部材に形成された湾曲する一対の凹部との間に保持されるとともに、前記凹部と窪み部とによって画成される間隙に連通し前記軸部材の内部に形成された長孔を介して転動して循環する」と共通している。
以上のとおりであるので、本件発明と引用例1に記載の発明とは、次の一致点及び相違点を有している。
一致点
一端部に吸着用パッドを連結するとともに、他端部に真空吸引源に連通するチューブを連結し、前記吸着用パッドとチューブとを連通する貫通孔が画成される軸部材と、
前記軸部材の所定部位に外嵌され、該軸部材の軸線方向に沿って変位自在に設けられる筒状部材と、
前記吸着用パッドと筒状部材との間に介装される弾性部材と、
軸部材に対して筒状部材の軸方向の移動を案内するとともに周方向の回り止めをする手段を備えた吸着用パッドの回り止め並びに案内機構。
相違点
軸部材に対して筒状部材の軸方向の移動を案内するとともに周方向の回り止めをする手段が、本件発明では、筒状部材の内壁面に設けられ、所定角度離間して半径内方向に膨出するとともに軸線方向に沿って形成される凸部と、前記筒状部材と軸部材との間に設けられ、前記凸部によって周方向に対する回り止めをなすとともに、該筒状部材が変位する際に転動する転動部材と、を備え、前記転動部材は複数個のボールからなり、前記ボールは、前記筒状部材の内壁面に形成された断面略半円状の一対の窪み部と前記軸部材に形成された湾曲する一対の凹部との間に保持されるとともに、前記凹部と窪み部とによって画成される間隙に連通し前記軸部材の内部に形成された長孔を介して転動して循環するものであるのに対し、引用例1に記載の発明では、そのようなものではなく、軸部材の断面を六角形とし、筒状部材の内壁面形状を前記軸部材断面の六角形に対応する形状とするものである点。

第4 当審の判断
上記相違点について検討すると、上記第2の2のとおり引用例2には、吸着パッドの回り止め及び案内する機構としてボールスプラインを用いる技術事項が記載されており、また、ボールスプラインとして、筒状部材の内壁面に設けられ、所定角度離間して半径内方向に膨出するとともに軸線方向に沿って形成される凸部と、前記筒状部材と軸部材との間に設けられ、前記凸部によって周方向に対する回り止めをなすとともに、該筒状部材が変位する際に転動する転動部材と、を備え、前記転動部材は複数個のボールからなり、前記ボールは、前記筒状部材の内壁面に形成された断面略半円状の一対の窪み部と前記軸部材に形成された湾曲する一対の凹部との間に保持されるとともに、前記凹部と窪み部とによって画成される間隙に連通し前記筒状部材の内部に形成された長孔を介して転動して循環する機構は、例示するまでもなく周知である。
さらに、上記周知なボールスプラインは、ボールを循環させるための手段である長孔を筒状部材と軸部材との相対的位置関係において外側に位置する部材である筒状部材の内部に形成しているが、必ず外側に位置する部材に形成しなければならないというものではなく、ボールを循環させるための手段を内側に位置する部材に設けることは、例えば、ボールスプラインと同じく循環するボールを介して筒状部材と軸部材との軸方向の相対移動を案内するものである拒絶査定の備考欄に記載した実公昭54-31257号公報(第7図乃至第12図の第2の実施例参照。)及び実開平4-62415号公報等に記載の装置において行われているように、必要に応じて適宜なされる設計的事項である。
以上のとおりであるので、引用例1に記載の発明において、軸部材に対して筒状部材の軸方向の移動を案内するとともに周方向の回り止めをする手段として、引用例2に記載の技術事項を参酌して上記周知なボールスプラインを採用し、さらに、ボールを循環させるための手段である長孔を形成する部材として軸部材を選択し、上記相違点における本件発明のように構成することに格別の困難性は見当たらない。

第5 むすび
したがって、本件発明は、本件出願前に日本国内において頒布された引用例1に記載の発明、引用例2に記載の技術事項及び上記周知な事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-11-18 
結審通知日 2003-11-25 
審決日 2003-12-26 
出願番号 特願平5-279635
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B25J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高田 元樹  
特許庁審判長 宮崎 侑久
特許庁審判官 三原 彰英
平田 信勝
発明の名称 吸着用パッドの回り止め並びに案内機構  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 宮寺 利幸  

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