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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D |
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管理番号 | 1092615 |
審判番号 | 不服2001-14051 |
総通号数 | 52 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-02-20 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-08-09 |
確定日 | 2004-02-27 |
事件の表示 | 平成11年特許願第217748号「シート成形包装容器」拒絶査定に対する審判事件[平成13年 2月20日出願公開、特開2001- 48156]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成11年7月30日の出願であって、その請求項1乃至3に係る発明は、平成12年6月26日提出の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1には以下のとおり記載されている。 「合成樹脂製のシート素材を膨出成形させてなる包装用の容器であって、商品表示用のラベル(3) を貼着するラベル貼着面(22),(24)が、実効貼着面積を減少させて貼着力を弱くする微小凹凸部(26)と、該微小凹凸部(26)の凸部先端面と略同高さに突出させてある貼着力を通常状態に保持する小面積の平面部(27)とが併存する形態で形成されているシート成形包装容器。」(以下、これにより特定される発明を「本願発明」という。) 2.引用文献 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平10-278984号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。 a. 「裏面に粘着剤を塗布したラベルを卵容器の平坦面24、25に貼り付けると、ラベルを剥がし難くなり、合成樹脂製の卵容器をリサイクルする際に、ラベルが混入すると異物になって良質な再生合成樹脂を得ることができない。 そこで、この発明は、卵容器からラベルを剥がし易くして、リサイクルしてもラベルの混入のない良質な再生合成樹脂を得るために考えられたものである。」(段落【0004】・【0005】) b. 「(第1の実施の形態)図1の開いた状態の斜視図および図2の平面図に示すように、この発明の第1の実施形態の卵容器は、薄肉合成樹脂シートを真空成型またはブロー成型して、・・・一体に形成された身部分1および蓋部分2からなり、・・・蓋部分2には、身部分1の隔壁11の交叉部と対向する位置に突出する突出部21、22が形成され、・・・各突出部21、22の根元の周囲には平坦面24を形成し、この平坦面24をラベルを貼り付ける面としている。 また、蓋部分2の頂部の平坦面24に続く側壁にも平坦面25を形成し、両平坦面24、25に跨がってラベルを貼り付けて、側面からもラベルを見得るように構成されている。」(段落【0009】・【0010】、図1・2参照) c. 「ラベルを貼り付ける各平坦面24、25には、図3の断面図に示すように、凹凸が形成されている。蓋部分2の頂部の平坦面24においては、ラベルに貼り付く凸部の面積が、ラベルに貼り付かない凹部の面積よりも少なく設定され、側壁の平坦面25においては、ラベルに貼り付く凸部の面積が、ラベルに貼り付かない凹部の面積よりも多く設定され、側壁の凹凸を形成した平坦面25のうち、貼り付けるラベルの縁部に当たるフランジ部分5に近接した部分および両端部には凹凸を有しない平坦面26、27が形成されている。 このラベルに貼り付く凸部の面積とラベルに貼り付かない凹部の面積との比率は、厳密さを要求されないが、1対1程度であればよく、面積の比率が同じでも単一の凸部の面積が小さいほど剥がし易い。」(段落【0011】・【0012】、図3参照) d. 「頂部の平坦面24および側壁の平坦面25に跨がって、ラベルを折り曲げて貼り付けると、側壁の平坦面25は幅が狭いので、折り曲げて貼られたラベルの復原力によって、ラベルが自然に剥がれるおそれがあるので、側壁のフランジ部分5に近接した部分および両端部に凹凸を有しない細長い平坦面26、27を設け、この平坦面26、27にラベルの縁部を貼り付けておくことにより、復原力に基づく剥離を防ぐことができる。」(段落【0014】) e. 「(第2の実施の形態)この発明の第2の実施形態の卵容器は、蓋部分2の頂部の平坦面24のみにラベルを貼り付けた場合でも、ラベルの自然な剥離を防止する構成されている。 図4の開いた状態の斜視図および図5の平面図に示すように、蓋部分2の突出部21、22の根元の周囲に形成されたラベルを貼り付ける平坦面24には、ラベルの剥離を容易ならしめる凹凸が形成されている。 そして、頂部の平坦面24において、貼り付けられるラベルの両側縁に対応する部分に、凹凸を有しない細長い平坦面28が形成されている。 頂部の平坦面24のみにラベルを貼り付けても、凹凸を有しない細長い平坦面28が設けられているので、ラベルの自然な剥離を防止することができる。」(段落【0017】・【0018】・【0019】・【0020】、図4・5参照) f. 「この発明の卵容器によると、ラベルを貼り付ける平坦面に凹凸を形成しているので、使用済みの卵容器からラベルを剥がし易く、リサイクルしてもラベルの混入のない良質な再生合成樹脂を得ることができる。 しかも、ラベルを貼り付ける平坦面のうち、ラベルの側縁に対応する部分には凹凸を有しない平坦面が形成されているので、ラベルの自然な剥離を防止することができる。」(段落【0021】・【0022】) 3.対比・判断 引用文献には、「卵容器」を薄肉合成樹脂シートで、真空成型又はブロー成型すること(記載b)、蓋部分の頂部及び側壁にはラベルを貼り付ける平坦面が形成され(記載b)、平坦面には凹凸が形成されていること(記載c)、側壁の平坦面の縁部及び端部並びに頂部の平坦面の両側縁に対応する部分に凹凸を有しない平坦面を形成すること(記載b乃至e)、が記載されている。 そして、引用文献には、従来技術として、ラベルがバーコード、生産者、品質などを表示したものであることが記載されているので(引用文献・段落【0002】)、引用文献における「ラベル」も同等のものと解され、これは本願発明でいう「商品表示用の」ものといえ、引用文献における「平坦面(24)、(25)」に形成された「凹凸」はラベルを剥し易くするためのものであるので(記載c)、本願発明でいう「実効貼着面積を減少させて貼着力を弱くする」ためのものということができ、引用文献における「凹凸を有しない平坦面(26)、(27)、(28)」はラベルの復元力によって、ラベルが自然に剥がれるのを防ぐためのものであって(記載d)、「凹凸を形成した平坦面(24)、(25)」に比して設置面積が小さいものであることが図面に示唆されているので、本願発明でいう「貼着力を通常状態に保持する」ためのものであって、「小面積の」ものということができ、引用文献における「凹凸を形成した平坦面(24)、(25)」と「凹凸を有しない平坦面(26)、(27)、(28)」とは同一面内に存在するものであるので(記載c・d・e、図面参照)、本願発明でいう「併存する状態で形成されている」ものということができる。 したがって、本願発明と引用文献に記載された発明とを対比すると、引用文献に記載された「卵容器」、「ラベル」、「平坦面(24)、(25)」、「凹凸」及び「凹凸を有しない平坦面(26)、(27)、(28)」はそれぞれ、本願発明の「シート成形包装容器」、「商品表示用のラベル(3)」、「ラベル貼付面(22)、(24)」、「微小凹凸部(26)」及び「平面部(27)」に相当し、引用文献には「合成樹脂製のシート素材を膨出成形させてなる包装用の容器であって、商品表示用のラベルを貼着するラベル貼着面が、実効貼着面積を減少させて貼着力を弱くする微小凹凸部と、貼着力を通常状態に保持する小面積の平面部とが併存する形態で形成されているシート成形包装容器」が記載されていることになり、この点で、本願発明と引用文献に記載された発明は一致している。 そして、貼着力を通常状態に保持する小面積の「平面部」が、本願発明では「微小凹凸部の凸部先端面と略同高さに突出させてある」のに対し、引用文献に記載された発明ではその高さについての特定がない点で一応の相違がある。 相違点について検討すると、小面積の「平坦面」の高さは、種々考えられるが、ラベルを貼着した場合の浮きが最も少なく安定した状態で貼着状態が保たれるのが微小凹凸部の凸部先端面と略同高さにした場合であることは当業者が容易に想到しうる事項であり、このような突出高さを選択することに格別の創意を有するものとはいえない。また、引用文献の図3に示された平坦面の断面図を見ても、上記構成が示唆されているといえ、引用文献に記載された発明の「凹凸を有しない平坦面」を凹凸を有する「平坦面」と略同高さに突出させる構成とし、本願発明を得ることは当該技術分野における技術常識に基づいて当業者が容易になし得た事項である。そして、このような構成としたことによる効果も予測以上のものではない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、引用文献に記載された発明及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-11-11 |
結審通知日 | 2003-12-02 |
審決日 | 2003-12-15 |
出願番号 | 特願平11-217748 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 阿部 利英、一ノ瀬 覚、上尾 敬彦 |
特許庁審判長 |
鈴木 美知子 |
特許庁審判官 |
山崎 勝司 杉原 進 |
発明の名称 | シート成形包装容器 |
代理人 | 甲斐 寛人 |
代理人 | 佐當 彌太郎 |