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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1092935 |
審判番号 | 不服2002-6669 |
総通号数 | 52 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-09-17 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-04-18 |
確定日 | 2004-03-11 |
事件の表示 | 平成10年特許願第51651号「電子部品およびその製造方法」拒絶査定に対する審判事件[平成11年9月17日出願公開、特開平11-251503]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成10年3月4日の出願であって、平成14年3月4日付けで平成14年1月28日付けの手続補正書が却下されるとともに、平成13年10月29日付け手続補正書によって補正された請求項1〜5に係る発明について、 (1)請求項1〜5に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (2)請求項1〜4に係る発明は、特許法第29の2の規定により特許を受けることができない。 (3)この出願は、特許法37条の要件を満たしていないから、特許を受けることができない。 という、平成13年11月21日付けの拒絶理由通知書に記載した拒絶理由で拒絶査定がなされ、平成14年4月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年5月15日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成14年5月15日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成14年5月15日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の発明 平成14年5月15日付けの手続補正により、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という)は、 「外部接続用電極リード線に、SnとBiとからなり、Biを4重量%未満含有してなる合金層を付着形成し、Biが4重量%以上含有する合金層は付着形成しないことを特徴とする電子部品。」と補正された。 上記補正は、 請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「外部接続用電極リード線に、SnとBiとからなる金属層を付着形成」する際、 (1-1)当該「金属層」を「合金層」とし、 (1-2)「Biが4重量%以上含有する合金層は付着形成しない」と補正したものである。 そして、上記補正の根拠として、 請求人は、出願当初の明細書には、 (a)第【0014】欄に、 「ここで、Biの含有量を4重量%未満としたのは、4重量%以上であると、曲げ加工時に電極リード線の素地が見えるめっきクラックが発生するためである(表1参照)。」と記載され、 (b)例えば、第【0027】欄に、実施例1として、 「銅材のリードフレーム上に半導体素子がダイボンドされ、外部電極との配線も施され、樹脂封止およびリード加工の終了した半導体装置の外部接続用電極リード線に、厚さ1〜3μmの下地Niめっき膜(下地金属層)を形成した後、さらにその下地金属層上にBiを2重量%含むSn-Bi合金膜(金属層)を電流密度1.0A/dm2で厚さ10μmに付着形成した。」と記載されている。 したがって、「2(1)(1-1)」及び「2(1)(1-2)」は、上記出願当初の明細書に基づいてなしたものである旨主張している。 (2)判断 そこで「2(1)(1-2)」について検討するに、 出願当初の明細書の記載をみると、請求人が、補正の根拠として指摘する「実施例1」には、 「下地Niめっき膜」および「Biを2重量%含むSn-Bi合金膜」を付着形成することの記載はあるが、「Biが4重量%以上含有する合金層は付着形成しない」との記載は見あたらない。 そして、上記明細書の他の記載又は図面をみても当該事項の記載はなく、また、出願当初の明細書又は図面の記載からみて、自明と言うこともできない。 してみれば、「2(1)(1-1)」について検討するまでもなく、本補正は、出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものではない。 (3)むすび 以上のとおり、本補正は、特許法17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.平成14年5月15日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成13年10月29日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜6のうち、その請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「外部接続用電極リード線に、SnとBiとからなり、Biを4重量%未満含有してなる金属層を付着形成したことを特徴とする電子部品。」 (1)原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項 平成13年11月21日付け拒絶理由に引用された特願平9-308775号(特開平10-229152号公報)の出願当初の明細書及び図面(以下、「引用例」という)には、 (a)【特許請求の範囲】に、 「【請求項1】導電性基体の表面に、第1めっき層と第2めっき層とがこの順序で積層されている電子部品用リード材であって、前記第2めっき層の溶融温度が前記第1めっき層の溶融温度よりも低いことを特徴とする電子部品用リード材。 【請求項2】前記第1めっき層がSn単体から成り、前記第2めっき層が、Ag、Bi、Cu、In、Znの群から選ばれる少なくとも1種を含有するSn合金から成る請求項1の電子部品用リード材。 【請求項3】前記第1めっき層が、Ag、Cu、Sb、Yの群から選ばれる少なくとも1種を含むSn合金から成り、前記第2めっき層がSn単体から成る請求項1の電子部品用リード材。 【請求項4】前記第1めっき層の厚みをt1、前記第2めっき層の厚みをt2としたとき、t1、t2は、1μm≦t1≦15μm、0.5μm≦t2≦5μmであり、かつt2/t1≦1.0の関係を満足する請求項2または3の電子部品用リード材。 【請求項5】5μm≦t1+t2≦15μmである請求項4の電子部品用リード材。 【請求項6】少なくとも前記第2めっき層がリフロー処理されている請求項1〜5の電子部品用リード材。 【請求項7】請求項1〜6の電子部品用リード材を用いたリード。 【請求項8】請求項7のリードを用いた半導体装置。」が記載され、 (b)第【0025】欄には、 「Sn合金(I)としてSn-Bi系合金を用いる場合には、半田付け後の接合部におけるBi含有量が20重量%よりも少なくなるような合金組織に調整することが好ましい。」と記載され、 (c)第【0034】欄には、【実施例】が、 「実施例1〜12、比較例1〜3 直径0.5mmの銅被服鋼線を、電解脱脂槽、酸洗槽、Snめっき槽、Sn合金めっき槽に順次走行せしめて表1で示した第1めっき層、第2めっき層を形成し、本発明の第1のリード材であるリード線を製造した。」と記載され、 (d)第【0038】欄には表1に、実施例11として、 「第1めっき層Sn、第2めっき層Sn-2%Bi」と記載され、 (e)第【0055】欄には、 「めっき層は、高融点の第1めっき層とそれよりも融点の低い第2めっき層との2層構造になっているので、半田付け時に第2めっき層が溶融しても、そのときの熱で基体から拡散してくるCuなどは第1めっき層でバリアされ、その結果、半田付け性は向上する。」と記載されている。 (2)対比・判断 前記「3(1)(a)〜(e)」を総合すれば、引用例には、 「導電性基体の表面に第1めっき層、及び当該第1めっき層よりも溶融温度が低く、Bi含有量が20重量%よりも少ないSn-Bi合金であって、Sn-2%Biを例とする第2層めっきが積層されている電子部品用リード。」(以下、「引用発明1」という)が開示されているといえる。 本願発明と、引用発明1とを対比すると、 引用発明1の、「リード」は、本願発明の「外部接続用電極リード線」に相当し、かつ、引用発明1の第2めっき層は、Sn-2%Biからなるものが例示されているから、両者に相違は認められない。 なお、引用発明1では、第2めっき層よりも高融点の第1めっき層を設けているが、本願明細書には、Snなどの多層構造の金属層としてもよいこと、及び、「CuもしくはNi等の下地金属層」を設けてもよいこと(以上、第【0019】欄)が記載されていることからすると、上記第1めっき層の点において、両者の発明に実質的な相違はない。 したがって、本願発明は、引用発明1と同一である。 (3)まとめ 上記のとおり、本願発明は、本出願の日前の出願であって当該特許出願後に特開平10-229152号公報として出願公開された特願平9-308775号の願書に最初に添付した明細書または図面に記載された発明と同一であり、しかも、上記本出願の日前の他の特許出願の発明者が、本出願の発明者と同一であるとも、本出願の出願時に本出願の出願人と他の特許出願の出願人とが同一であるとも認められないから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項2〜6に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-01-08 |
結審通知日 | 2004-01-13 |
審決日 | 2004-01-26 |
出願番号 | 特願平10-51651 |
審決分類 |
P
1
8・
56-
Z
(H01L)
P 1 8・ 161- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 坂本 薫昭 |
特許庁審判長 |
池田 正人 |
特許庁審判官 |
伊藤 明 中西 一友 |
発明の名称 | 電子部品 |
代理人 | 宮井 暎夫 |