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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C08J |
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管理番号 | 1093035 |
異議申立番号 | 異議2002-73088 |
総通号数 | 52 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-07-19 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-12-20 |
確定日 | 2003-12-22 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3296049号「液晶ポリエステル樹脂組成物の成形品の表面処理方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3296049号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 |
理由 |
[1]手続きの経緯 本件特許第3296049号は、平成5年10月5日(優先権主張、平成4年10月7日、日本)に出願された特願平5-249487号の出願に係り、平成14年4月12日にその設定登録がなされた後、岩田直子から特許異議の申立てがあり、それに基づく特許取消の理由通知に対し、平成15年6月26日付けで訂正請求がなされたものである。 [2]本件訂正前の特許に対する特許異議申立人の主張の概要 訂正前の本件特許に対し、特許異議申立人岩田直子は、下記甲第1号証〜甲第4号証を提示し、本件請求項1〜3に係る発明は、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきである旨、主張している。 記 甲第1号証:特開昭64-61087号公報 甲第2号証:特開平1-98637号公報 甲第3号証:特開昭62-54073号公報 甲第4号証:日本接着学会誌、26巻2号(1990)71〜80頁 [3]本件訂正請求 (1)訂正事項 本件訂正請求は、本件明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その訂正事項は以下のとおりである。 (1-1)訂正事項a 請求項1における「(1)アルカリ金属の水酸化物を主成分とする水溶液にて処理し、(2)1種または2種以上の鉱酸を主成分とする水溶液で処理し、(3)アルカリ金属の水酸化物を主成分とする水溶液にて処理する」を「(1)アルカリ金属の水酸化物の濃度が10〜30重量%である水溶液にて処理し、(2)1種または2種以上の鉱酸の濃度が5〜30重量%である水溶液で処理し、(3)アルカリ金属の水酸化物の濃度が1〜10重量%である水溶液にて処理する」に訂正する。 (1-2)訂正事項b 明細書の段落【0012】における「(1)アルカリ金属の水酸化物を主成分とする水溶液にて処理し、(2)1種または2種以上の鉱酸を主成分とする水溶液で処理し、(3)アルカリ金属の水酸化物を主成分とする水溶液にて処理する」を「(1)アルカリ金属の水酸化物の濃度が10〜30重量%である水溶液にて処理し、(2)1種または2種以上の鉱酸の濃度が5〜30重量%である水溶液で処理し、(3)アルカリ金属の水酸化物の濃度が1〜10重量%である水溶液にて処理する」に訂正する。 (1-3)訂正事項c 明細書の段落【0012】における「請求項1記載の」(2個所)を「(1)記載の」に訂正する。 (1-4)訂正事項d 明細書の段落【0013】における「以下、(1)アルカリ金属の水酸化物を主成分とする水溶液にて処理することをプリエッチング処理するといい、(2)1種または2種以上の鉱酸を主成分とする水溶液で処理することをエッチング処理するといい、(3)アルカリ金属の水酸化物を主成分とする水溶液にて処理することをリンス処理するということがある。」を「以下、(1)アルカリ金属の水酸化物の濃度が10〜30重量%である水溶液にて処理することをプリエッチング処理するといい、(2)1種または2種以上の鉱酸の濃度が5〜30重量%である水溶液で処理することをエッチング処理するといい、(3)アルカリ金属の水酸化物の濃度が1〜10重量%である水溶液にて処理することをリンス処理するということがある。」に訂正する。 (1-5)訂正事項e 明細書の段落【0030】における「本発明で用いられるアルカリ金属の水酸化物を主成分とする水溶液」を「本発明で用いられるアルカリ金属の水酸化物の水溶液」に訂正する。 (1-6)訂正事項f 明細書の段落【0031】における「これらアルカリ金属の水酸化物を主成分とする水溶液」を「これらアルカリ金属の水酸化物の水溶液」に訂正する。 (1-7)訂正事項g 明細書の段落【0032】における「本発明で用いられる1種または2種以上の鉱酸を主成分とする水溶液は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸またはそれらの混酸等の水溶液である。これら鉱酸を主成分とする水溶液での処理条件は」を「本発明で用いられる1種または2種以上の鉱酸の水溶液は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸またはそれらの混酸等の水溶液である。これら鉱酸の水溶液での処理条件は」に訂正する。 (1-8)訂正事項h 明細書の段落【0033】における「本発明で用いられるアルカリ金属の水酸化物を主成分とする水溶液および1種または2種以上の鉱酸を主成分とする水溶液には」を「本発明で用いられるアルカリ金属の水酸化物の水溶液および1種または2種以上の鉱酸の水溶液には」に訂正する。 (2)訂正可否の検討 訂正事項aは、請求項1における表面処理の方法について「(1)アルカリ金属の水酸化物を主成分とする水溶液にて処理し、(2)1種または2種以上の鉱酸を主成分とする水溶液で処理し、(3)アルカリ金属の水酸化物を主成分とする水溶液にて処理する」としていたものを「(1)アルカリ金属の水酸化物の濃度が10〜30重量%である水溶液にて処理し、(2)1種または2種以上の鉱酸の濃度が5〜30重量%である水溶液で処理し、(3)アルカリ金属の水酸化物の濃度が1〜10重量%である水溶液にて処理する」に訂正するものであるが、訂正前の明細書には、「これらアルカリ金属の水酸化物を主成分とする水溶液での処理条件は、プリエッチング処理に用いられる場合は、濃度10〜30重量%、温度50〜80℃において、成形品を浸漬することが好ましく、リンス処理に用いられる場合は、濃度1〜10重量%、温度20〜50℃において成形品を浸漬することが好ましい。」(段落【0031】)及び「本発明で用いられる1種または2種以上の鉱酸を主成分とする水溶液は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸またはそれらの混酸等の水溶液である。これら鉱酸を主成分とする水溶液での処理条件は、濃度5〜30重量%、温度10〜70℃において、成形品を浸漬することが好ましい。」(段落【0032】)と記載されていたことから、訂正前の明細書に記載した事項の範囲内で特許請求の範囲の減縮をするものである。 訂正事項cは、発明の詳細な説明において、明白な誤記の訂正をするものであるから、訂正前の明細書に記載した事項の範囲内で誤記の訂正をするものである。 訂正事項b,d〜hは、上記特許請求の範囲の訂正に対応させて発明の詳細な説明の記載をこれに整合させるものであるから、訂正前の明細書に記載した事項の範囲内で明りょうでない記載の釈明をするものである。 そして、これら訂正により実質上特許請求の範囲が拡張若しくは変更されるものでもない。 したがって、本件訂正請求は、所定の規定に適合するものとして認めることができる。 [4]本件発明 本件発明は、訂正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される以下のとおりのもの(以下、順次「本件第1発明」、「本件第2発明」及び「本件第3発明」という。)と認める。 「【請求項1】液晶ポリエステル100重量部に対し、周期律表1A族、2A族元素の1種または2種以上を含むケイ酸塩10〜150重量部、数平均繊維径が15μm以下で数平均繊維長が200μm以下である無機質の繊維状物0〜60重量部、およびアルカリ土類金属炭酸塩0〜50重量部を配合してなり、かつケイ酸塩と無機質の繊維状物とアルカリ土類金属炭酸塩の合計量が10〜200重量部である液晶ポリエステル樹脂組成物の成形品を、(1)アルカリ金属の水酸化物の濃度が10〜30重量%である水溶液にて処理し、(2)1種または2種以上の鉱酸の濃度が5〜30重量%である水溶液で処理し、(3)アルカリ金属の水酸化物の濃度が1〜10重量%である水溶液にて処理することを含む液晶ポリエステル樹脂組成物の成形品の表面処理方法。 【請求項2】液晶ポリエステルが下式(A1 )で表される繰り返し構造単位を少なくとも30モル%含むものである請求項1記載の表面処理方法。 【化1】 【請求項3】周期律表1A族、2A族元素の1種又は2種以上を含むケイ酸塩が、少なくともその90重量%以上が300メッシュ以下の大きさを有するものである請求項1記載の表面処理方法。」 [5]特許異議申立てについて [5-1]甲号証各刊行物の記載事項 甲第1号証には、「(A)液晶ポリエステル30〜90重量%と、(B)平均径が15μm以下で平均長が200μm以下である無機質の繊維状物または針状物3〜50重量%と、(C)アルカリ土類金属炭酸塩3〜30重量%とからなるプリント配線板用樹脂組成物。」(特許請求の範囲)の発明が記載され、無電解メッキの操作手順として 「1 基材の調整 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 プリエッチング 5規定程度の水酸化ナトリウム水溶液に60〜80℃で15〜30分間浸漬し、成形品のスキン層を選択的に溶解させ、無機質の繊維状物または針状物およびアルカリ土類金属炭酸塩を表面に露出させる。 5 エッチング 無水クロム酸400g/lと濃硫酸200ml/lとの混合液に40〜80℃で5〜30分間浸漬し、表面に露出したアルカリ土類金属炭酸塩を溶解させ表面に凹凸を形成させる。 6 水洗 7 中和 キャタリストの付着を向上させ無電解メッキの析出をスムーズにするため、アルカリ残余物を塩酸で処理する。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(5頁下段、但し各項目筆頭の数字は、Oの中に表記されている。)が記載されている。 甲第2号証には、「異方性溶融相を形成しうる溶融加工性ポリエステルに、周期律表II族元素及びその酸化物、硫酸塩、リン酸塩、珪酸塩、炭酸塩、又はアルミニウム・・・の元素及び酸化物からなる群より選ばれた1種又は2種以上の無機充填材を、成形品組成物全量に対して5〜80重量%含有せしめてなる液晶性ポリエステル樹脂組成物からなる成形品を、80重量%以上の硫酸を含む酸性溶液に接触処理せしめることを特徴とする液晶性ポリエステル樹脂成形品の表面処理法。」(特許請求の範囲第1項)の発明が記載され、実施例においては、エッチング処理の具体的方法として、「成形品をアルカリ脱脂液(・・・)中に60℃にて5分間浸漬し、十分脱脂した後水洗し、98重量%硫酸溶液中で60℃にて20分間エッチング処理した。エッチング処理した成形品は水洗後水酸化ナトリウムの5重量%溶液で室温にて3分間浸漬処理することにより、表面に付着した酸成分を中和し水洗した上、80℃で15分間熱風循環炉で乾燥した。」(6頁右下欄)との記載がなされている。 甲第3号証には、「1 異方性溶融相を形成する溶融加工可能なポリマー又はその組成物から成形した樹脂成形品に、スパッタリング、メッキ又は真空蒸着の何れかの方法により表面金属処理した樹脂成形品。 2 上記表面金属処理前の樹脂成形品が酸、アルコール、アルカリ、水から選ばれた一種又は二種以上の均一な混合溶液によるエッチング処理が施されているものである特許請求の範囲第1項記載の樹脂成形品。」(特許請求の範囲第1、2項)の発明が記載され、ニッケルメッキ処理をした実施例3では、該メッキ処理に先立ち「実施例1と同様の平板を脱脂した後、クロム酸混液(硫酸95+重クロム酸カリウム2+水3)(重量比)中に、温度60℃、30分間浸漬する。5%苛性ソーダ液で中和し、水洗した後、・・・」(10頁左下欄)とするエッチング処理を実施したことが記載されている。 甲第4号証には、「最近のプラスチック上めっきの前処理技術(II)」と題して、液晶ポリマーなどの高機能樹脂のめっき処理法について記載され、「5.1. 液晶ポリマー」の項では、「液晶ポリマーの成形品は,結晶性特有のスキン層とコア層が形成されている。高濃度のアルカリ溶液に浸漬すると,加水分解を受ける。先ずこのスキン層を溶解させ,続いて更にコア層を溶解させる。充填材が混在することによって,表面に適度な凹凸が形成され,メッキ層との密着性が生じる。」(71頁左欄)と記載され、更に「エコノールのめっき処理工程」として、[水酸化ナトリウム 200g/l、LCPプリエッチャント 200ml/l]の70℃、20分間によるプリエッチング、[濃硝酸 200ml/l、濃硫酸 200ml/l、LCPエッチャント 300g/l]によるエッチングの各工程が示されている(72頁右欄)。 [5-2]対比・検討 甲第1号証には、液晶ポリエステルに無電解メッキ処理を施し、プリント配線用の基板を得る発明が記載され、該メッキ処理に先立ち、5規定程度の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬処理するプリエッチングと無水クロム酸400g/lと濃硫酸200ml/lとの混合液に浸漬処理するエッチングを行うことが記載されているが、当該エッチング処理後の中和処理は、キャタリストの付着を向上させるためアルカリ残余物を塩酸により処理する、というもので、本件第1発明とは、エッチング処理後さらに塩酸により中和処理するという点で明らかに相違している。 甲第2号証には、ピロリン酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機充填材を含有した液晶ポリエステル樹脂成形品をメッキ処理するに、それに先立ちエッチング処理をすることが記載されているが、その手段は、80重量%以上の硫酸を含む酸性溶液によるもので、本件第1発明とは、アルカリ金属水酸化物水溶液によるプリエッチング工程を経ずに高濃度の硫酸溶液を使用する点で明らかに相違している。 甲第3号証には、液晶ポリエステルをメッキ処理するに、それに先立ちクロム酸混液(重量比で硫酸95+重クロム酸カリウム2+水3)に浸漬処理することが記載されているが、本件第1発明とは、アルカリ金属水酸化物水溶液によるプリエッチング工程を経ずに高濃度のクロム酸混液を使用する点でやはり相違している。 甲第4号証には、液晶ポリエステルをメッキ処理するにその前処理として、水酸化ナトリウム200g/lとLCPプリエッチャント200ml/lを用いたプリエッチング、水洗、温水洗浄、濃硝酸200ml/l、濃硫酸200ml/l、LCPエッチャント300g/lによるエッチング、水洗、の一連の工程からなるエッチング処理を行うことが具体的に記載されているが、当該エッチング処理後更にアルカリにより処理することは全く記載されていない。 ところで、甲第4号証には、本件第1発明と濃度において異ならない、水酸化ナトリウム溶液によるプリエッチング工程と、濃硝酸+濃硫酸の溶液によるエッチング工程が記載され、他方甲第2、3号証には、酸によるエッチング処理後アルカリ水溶液による中和処理を行うことが記載されてはいる。 しかしながら、甲第2、3号証で実施されているエッチング処理はアルカリによるプリエッチング処理を経ずに、高濃度の酸を用いるものであるから、甲第4号証に記載のエッチング処理とはその態様を異にするといわざるを得ず、したがって、甲第2、3号証に酸エッチング処理後、アルカリ中和処理を行うことが記載されているからといって、甲第4号証に記載されている酸エッチング処理の後、当該アルカリによる処理を採用することが当業者の容易に想到し得るとすることはできない。 なお、甲第1号証記載の発明は、酸によるエッチング処理の後、更に塩酸により中和処理するというもので、本件第1発明における(3)工程のアルカリ金属水酸化物水溶液による処理の採用を示唆するものではない。 以上のとおり、甲第1号証〜甲第4号証には、本件第1発明で採用する上記した(1)〜(3)の各工程からなる液晶ポリエステル成形品の表面処理法を採用することは記載されておらず、また、その記載からこれが当業者の容易に想到し得るものとすることもできない。 他方本件第1発明は、本件明細書の記載に依れば、特定濃度の、アルカリ金属水酸化物水溶液処理、鉱酸水溶液処理、更にアルカリ金属水酸化物水溶液処理を結合することにより、液晶ポリエステルのメッキ処理成形品において、表面平滑性、ピーリング強度において優れた効果を奏し得たものと認められる。 したがって、本件第1発明が甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 本件第2発明は、本件第1発明において、液晶ポリエステルを限定し、本件第3発明は、本件第1発明において、珪酸塩の大きさを限定するものであるから、本件第1発明と同様、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 [6]むすび 以上の次第で、本件特許異議申立人の提示かる証拠によっては、訂正後の本件請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に訂正後の本件請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 液晶ポリエステル樹脂組成物の成形品の表面処理方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 液晶ポリエステル100重量部に対し、周期律表1A族、2A族元素の1種または2種以上を含むケイ酸塩10〜150重量部、数平均繊維径が15μm以下で数平均繊維長が200μm以下である無機質の繊維状物0〜60重量部、およびアルカリ土類金属炭酸塩0〜50重量部を配合してなり、かつケイ酸塩と無機質の繊維状物とアルカリ土類金属炭酸塩の合計量が10〜200重量部である液晶ポリエステル樹脂組成物の成形品を、(1)アルカリ金属の水酸化物の濃度が10〜30重量%である水溶液にて処理し、(2)1種または2種以上の鉱酸の濃度が5〜30重量%である水溶液で処理し、(3)アルカリ金属の水酸化物の濃度が1〜10重量%である水溶液にて処理することを含む液晶ポリエステル樹脂組成物の成形品の表面処理方法。 【請求項2】 液晶ポリエステルが下式(A1)で表される繰り返し構造単位を少なくとも30モル%含むものである請求項1記載の表面処理方法。 【化1】 【請求項3】 周期律表1A族、2A族元素の1種又は2種以上を含むケイ酸塩が、少なくともその90重量%以上が300メッシュ以下の大きさを有するものである請求項1記載の表面処理方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、液晶ポリエステル樹脂組成物の成形品の表面処理方法に関する。詳しくは表面平滑性に優れ、表面に金属メッキした場合、高い密着強度を有し、耐熱性、耐ハンダ性、成形加工性に優れた液晶ポリエステル樹脂組成物の成形品を効率よく得るための表面処理法に関する。 【0002】 【従来の技術】 現在使用されているプリント配線板は通常、紙基材フェノール樹脂積層板やガラス布基材エポキシ樹脂積層板などの絶縁基板に導電性材料として銅箔を接着させたいわゆる銅張積層板の上に、レジストパターン形成、エッチング処理、レジストパターン除去などの一連の処理を行なって所望の電気回路を形成させる方法によって製造されている。しかし、この従来法には、回路部品を取付けるための穴開け、面取り、打抜きまたは外形加工といった煩雑な機械的加工が必要である。 【0003】 一方、エレクトロニクス産業の発展に伴いプリント配線板の用途が全産業分野へ拡大されつつある昨今において、上述の煩雑な機械的加工を必要とする従来法に比べてより合理化された製造法の開発が望まれている。その一つとして、回路部品を取り付けるための穴等の所望の形状を予め有する絶縁基板を樹脂の射出成形法によって成形し、この絶縁基板に導電性材料として銅をメッキした後、この上にレジストパターン形成、エッチング処理、レジストパターン除去などの一連の処理を行って所望の電気回路を形成させる製造法の開発が挙げられる。 【0004】 射出成形法によって上述のような絶縁基板を得るための材料としては、耐熱性、特にハンダ工程における耐熱性(以下「ハンダ耐熱性」ということがある)と機械的物性とに優れ、かつ適切な成形条件下で薄肉成形品が得られる程度に良好な流動性を示す液晶ポリエステルが注目される。例えば、耐熱性ポリエステルの製造法に関する発明として特公昭47-47870号公報に開示されている、p-ヒドロキシ安息香酸のような芳香族ヒドロキシカルボン酸化合物と、テレフタル酸、イソフタル酸のような芳香族ジカルボキシ化合物と、4,4‘-ジヒドロキシジフェニルのような芳香族ジオキシ化合物とを重縮合して得られるポリエステルや、特公昭63-3888号公報に開示されている、p-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸とを重縮合して得られるポリエステルを挙げることができる。 【0005】 このような液晶ポリエステル成形品の表面に、金属メッキ等の2次加工を行うには、樹脂層と金属メッキ層の密着強度を向上させるために、表面粗面化処理を行うことが必要である。しかし、液晶ポリエステル成形品の表面は化学的に極めて安定なため、従来より一般の樹脂で行われているような、溶剤による処理では、充分に粗面化することができない。 【0006】 そこで、例えば特開昭62-54073号公報には、クロム酸混液などでエッチング処理し、カセイソーダ液で中和処理を行う方法が開示されている。ここでは樹脂成形品中に予め易エッチング性物質を混入しておくことも好ましく、易エッチング性物質として、ケイ酸カルシウム、ウォラストナイトなどが例示され、さらに強化無機物としてガラス繊維や炭素繊維などを添加できることが開示されている。 しかし、この方法では、液晶ポリエステルは耐酸性に優れるため、メッキ金属層の引きはがし強度(ピーリング強度)が不充分であるばかりか、廃液処理の点で環境汚染につながる恐れもあり、好ましくない。 【0007】 特開昭64-61087号公報には、(A)液晶ポリエステルと(B)平均径が15μm以下で平均長が200μm以下である無機質繊維状物と(C)アルカリ土類金属炭酸塩とからなる組成物の成形品の表面を、まず水酸化ナトリウム水溶液で処理し表面配向層を除去し、次いで無水クロム酸と濃硫酸の混酸により表面に露出したアルカリ土類金属炭酸塩を溶解して表面粗化を行う方法が記載されている。しかしながら、この方法を用いても、高いピーリング強度を示す場合があるものの、安定して得ることができない。 【0008】 特開平1-92241号公報には、液晶ポリエステルにケイ酸カルシウム、ウォラストナイトなどのケイ酸塩、リン酸塩等の無機充填剤を添加した組成物の成形品の表面をアルカリ水溶液でエッチングし、塩酸で中和する方法が記載されている。この方法では、かなり高いピーリング強度が得られるものの、表面の平滑性が悪いため、実用性の面で未だ不充分である。 【0009】 一方、液晶ポリエステルに周期律表1A族、2A族元素の1種または、2種以上を含むケイ酸塩を添加した組成物成形品を、例えば特開昭64-61087号公報記載の方法で同様に処理した場合、表面平滑性は優れるがピーリング強度は不充分であった。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、表面平滑性に優れ、表面に金属メッキした場合、高い密着強度を有し、耐熱性、耐ハンダ性、成形加工性に優れた液晶ポリエステル樹脂組成物の成形品を効率よく得るための表面処理法を提供することを目的とするものである。 【0011】 【課題を解決するための手段】 本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、液晶ポリエステルに特定のケイ酸塩を特定量配合してなる液晶ポリエステル樹脂組成物の成形品の表面処理方法において、特定の処理を組合わせることにより、上記目的が達成され、こうして処理された金属メッキ物は、表面導電層のピーリング強度に優れるのみならず、表面平滑性に優れるためファインパターン形成に有益であることを見出し、本発明に至った。 【0012】 【課題を解決するための手段】 すなわち、本発明は、次に記す発明からなる。 (1)液晶ポリエステル100重量部に対し、周期律表1A族、2A族元素の1種または2種以上を含むケイ酸塩10〜150重量部、数平均繊維径が15μm以下で数平均繊維長が200μm以下である無機質の繊維状物0〜60重量部、およびアルカリ土類金属炭酸塩0〜50重量部を配合してなり、かつケイ酸塩と無機質の繊維状物とアルカリ土類金属炭酸塩の合計量が10〜200重量部である液晶ポリエステル樹脂組成物の成形品を、(1)アルカリ金属の水酸化物の濃度が10〜30重量%である水溶液にて処理し、(2)1種または2種以上の鉱酸の濃度が5〜30重量%である水溶液で処理し、(3)アルカリ金属の水酸化物の濃度が1〜10重量%である水溶液にて処理することを含む液晶ポリエステル樹脂組成物の成形品の表面処理方法。 (2)液晶ポリエステルが下式(A1)で表される繰り返し構造単位を少なくとも30モル%含むものである(1)記載の表面処理方法。 【化2】 (3)周期律表1A族、2A族元素の1種又は2種以上を含むケイ酸塩が、少なくともその90重量%以上が300メッシュ以下の大きさを有するものである(1)記載の表面処理方法。 【0013】 以下、(1)アルカリ金属の水酸化物の濃度が10〜30重量%である水溶液にて処理することをプリエッチング処理するといい、(2)1種または2種以上の鉱酸の濃度が5〜30重量%である水溶液で処理することをエッチング処理するといい、(3)アルカリ金属の水酸化物の濃度が1〜10重量%である水溶液にて処理することをリンス処理するということがある。 【0014】 本発明で使用される液晶ポリエステルは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルであり、 (1)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールと芳香族ヒドロキシカルボン酸との組み合わせからなるもの、 (2)異種の芳香族ヒドロキシカルボン酸からなるもの、 (3)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせからなるもの、 (4)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させたものなどが挙げられ、400℃以下の温度で異方性溶融体を形成するものである。 【0015】 なお、これらの芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシカルボン酸の代わりに、それらのエステル形成性誘導体が使用されることもある。 【0016】 該液晶ポリエステルの繰り返し構造単位としては下記のものを例示することができるが、これらに限定されるものではない。 芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し構造単位: 【0017】 【化3】 芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し構造単位: 【0018】 【化4】 芳香族ジオールに由来する繰り返し構造単位: 【0019】 【化5】 【0020】 【化6】 【0021】 耐熱性、機械的特性、加工性のバランスから特に好ましい液晶ポリエステルは、下式(A1)で表される繰り返し構造単位を少なくとも30モル%含むものである。 【0022】 【化7】 【0023】 具体的には繰り返し構造単位の組み合わせが下式(a)-(f)のものが挙げられる。 【0024】 (a):(A1)、(B1)または(B1)と(B2)の混合物、(C1)。 (b):(A1)、(A2)。 (c):(a)の構造単位の組み合わせのものにおいて、A1の一部をA2で置きかえたもの。 (d):(a)の構造単位の組み合わせのものにおいて、B1の一部をB3で置きかえたもの。 (e):(a)の構造単位の組み合わせのものにおいて、C1の一部をC3で置きかえたもの。 (f):(b)の構造単位の組み合わせたものにB1とC2の構造単位を加えたもの。 基本的な構造となる(a)、(b)の液晶ポリエステルについては、それぞれ、例えば特公昭47-47870号公報、特公昭63-3888号公報などに記載されている。 【0025】 本発明で用いられる周期律表1A族、2A族元素の1種または2種以上を含むケイ酸塩としては、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ナトリウム、ウォラストナイト等の化合物が挙げられるが、これらの中ではウォラストナイトが好ましい。ウォラストナイトは主成分がCaSiO3で表される化学組成をもつ白色天然物でα型とβ型の結晶構造を有する。一般に、α型は塊状構造、β型は針状構造をもつとされているが、本発明で用いられるウォラストナイトは、そのどちらか一方、あるいは両者の混合物でもよい。ウォラストナイトの大きさは特に限定されないが、少なくとも全体の90重量%以上が300メッシュ以下の大きさであるものが好ましい。 【0026】 ウォラストナイトの市販品としては、商品名NYAD325、NYAD400、NYAD1250(米国、NYCO社製)、商品名Kemolit ASB-3、Kemolit ASB-4(インド、Wolkem社製)などが挙げられる。 【0027】 本発明で用いられる数平均繊維径が15μm以下で数平均繊維長が200μm以下である無機質の繊維状物としては、このような平均径と平均長とを有するガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、Al2O3とSiO2とを主成分とするセラミック繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、アルカリ金属・メタリン酸塩繊維、アスベスト繊維などを例示することができる。これらの中で特にガラス繊維が好ましい。ガラス繊維としては、商品名EFH75-01、EFDE90-01(セントラル硝子(株)製)、REV-8(日本硝子繊維(株)製)などがある。 本発明で用いられるアルカリ土類金属炭酸塩のアルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等を例示することができる。好ましいアルカリ土類金属炭酸塩は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、および炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムの共晶体(いわゆるドロマイト)である。これらは単独で、または2種以上を混合して用いられる。 【0028】 本発明において用いられる液晶ポリエステル樹脂組成物としては、液晶ポリエステル100重量部に対して、周期律表1A族、2A族元素の1種または2種以上を含むケイ酸塩10〜150重量部、および数平均繊維径が15μm以下で数平均繊維長が200μm以下である無機質の繊維状物0〜60重量部およびアルカリ土類金属炭酸塩0〜50重量部を配合してなり、かつ該ケイ酸塩と無機質の繊維状物の合計量が10〜200重量部である。 【0029】 該ケイ酸塩の配合割合が10重量部未満の場合は、成形品の異方性が著しく、金属メッキ後の密着強度も不充分である。一方、150重量部を越える場合は、成形品の表面平滑性が損なわれるだけでなく、金属メッキ後の密着強度も低下する。 該無機質の繊維状物を配合することにより、成形品の機械的強度は向上するが、60重量部を越えると表面平滑性が低下し、一方、60重量部以下であっても該ケイ酸塩との合計量が200重量部を越えると溶融流動性が著しく低下し、成形品の表面平滑性も著しく低下する。 該アルカリ土類金属炭酸塩の配合量が50重量部を越える場合は、成形時の熱安定性が低下し好ましくない。 さらに好ましい配合量は、液晶ポリエステル100重量部に対し、該ケイ酸塩40〜140重量部、および該無機質の繊維状物0〜40重量部、アルカリ土類金属0〜30重量部、かつ、該ケイ酸塩と無機質繊維状物とアルカリ土類金属との合計量が40〜160重量部である。 【0030】 本発明で用いられるアルカリ金属の水酸化物の水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水溶液が挙げられる。これらの中で水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。これらは単独で、または両者を混合して用いられる。 【0031】 これらアルカリ金属の水酸化物の水溶液での処理条件は、プリエッチング処理に用いられる場合は、濃度10〜30重量%、温度50〜80℃において、成形品を浸漬する。リンス処理に用いられる場合は、濃度1〜10重量%、温度20〜50℃において成形品を浸漬する。いずれの場合も、該濃度、温度範囲よりも低い場合、処理効果が極めて低い。また、該濃度、温度範囲よりも高い場合は、液晶ポリエステルの強度低下を招き、表面平滑性を損なう。 【0032】 本発明で用いられる1種または2種以上の鉱酸の水溶液は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸またはそれらの混酸等の水溶液である。 これら鉱酸の水溶液での処理条件は、濃度5〜30重量%、温度10〜70℃において、成形品を浸漬する。この濃度、温度範囲以外の処理条件を用いた場合、効果が極めて低いか、本発明の特性を損なうため好ましくない。 【0033】 本発明で用いられるアルカリ金属の水酸化物の水溶液および1種または2種以上の鉱酸の水溶液には、液晶ポリエステルの表面分解物を溶解し、表面洗浄性を向上するために、有機溶剤、界面活性剤、キレート剤の1種または2種以上を添加して用いることができる。 なお、プリエッチング処理、エッチング処理およびリンス処理のいずれにおいても、水溶液を攪拌していてもよい。 【0034】 なお、本発明で用いられる組成物に対して、本発明の目的を損なわない範囲で、タルク、マイカ、クレイ、ガラスビーズなどの無機充填材、フッ素樹脂などの離型改良剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、染料、顔料などの着色剤などの通常の添加剤の1種または2種以上を添加することができる。また、少量の熱可塑性樹脂、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテルおよびその変性物、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミドなどや少量の熱硬化性樹脂、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの1種、または2種以上を添加することもできる。 【0035】 本発明の樹脂組成物を得るための原料成分の配合手段は特に限定されず、各成分を各々別々に溶融混合機に供給するか、またはこれらの原料成分を乳鉢、ヘンシェルミキサー、ボールミル、リボンブレンダーなどを利用して予備混合してから溶融混合機に供給することもできる。 【0036】 【実施例】 以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の物性は次の方法で測定された。 流動温度:内径1mm、長さ10mmのノズルをもつ毛細管レオメーターを用い、100kg/cm2の荷重下において、4℃/分の昇温速度で加熱溶融体をノズルから押し出すときに、溶融粘度が48,000ポイズを示す温度。 表面粗さ(Ra):厚みが1.6mmのASTM1号ダンベル試験片を成形し、後述の工程に基づいて無電解メッキ処理した試験片表面の平均粗さRaを、触針式表面粗さ計(小坂研究所製サーフコーダSE-30D型)で測定した。 ピーリング強度:厚みが1.6mmのASTM1号ダンベル試験片を成形し、後述の工程に基づいて無電解メッキ処理した試験片を、硫酸銅220g/l溶液中、2A/dm2の電流密度で120分間通電し50μm厚のメッキ膜を形成した。その試験片をJIS C6481(90°剥離、剥離速度100mm/min)に準拠してピーリング強度を測定した。 【0037】 無電解メッキ処理:厚みが1.6mmのASTM1号ダンベル試験片を次に示す1.表面粗化工程に引き続き2.無電解メッキ工程により、メッキ処理した。 1.表面粗化工程 (1)脱脂工程 商品名エースクリーンA-220(奥野製薬工業(株)製)40g/l溶液に50℃で5分間浸漬する。 (2)水洗 (3)プリエッチング工程 水酸化ナトリウム20重量%溶液に70℃で30分間浸漬する。 (4)水洗 (5)エッチング工程 濃塩酸10重量%と商品名TNエッチャント(奥野製薬工業(株)製)200ml/lとの混合溶液に40℃で10分間浸漬する。 (6)水洗 (7)リンス工程 水酸化ナトリウム3重量%溶液に40℃で10分間浸漬する。 (8)水洗 【0038】 2.無電解メッキ工程 (9)コンディショニング工程 商品名コンディライザーSP(奥野製薬工業(株)製)150ml/l溶液に40℃で5分間浸漬する。 (10)水洗 (11)キャタライジング工程 商品名キャタリストC(奥野製薬工業(株)製)40ml/lと濃塩酸140ml/lとの混合溶液に28℃で3分間浸漬する。 (12)水洗 (13)アクセレーティング工程 濃硫酸100ml/l溶液に40℃で5分間浸漬する。 (14)水洗 (15)無電解メッキ工程 商品名OPCカッパーH-1(奥野製薬工業(株)製)60mlと商品名OPCカッパーH-2(奥野製薬工業(株)製)8ml/lと商品名OPCカッパーH-3(奥野製薬工業(株)製)250ml/lと37%ホルマリン溶液6ml/lとの混合溶液に55℃で15分間浸漬し2〜3μm厚の銅膜を形成する。 【0039】 実施例1〜4 繰り返し構造単位のモル比が(A1):(B1):(B2):(C1)=60:15:5:20であり、流動温度が321℃である液晶ポリエステルAと、少なくとも全体の90重量%以上が300メッシュ以下の大きさを有するウォラストナイトNYAD400(NYCO社製)とを表1に示した組成でヘンシェルミキサーを用いて混合し、二軸押出機(池貝鉄工(株)製PCM-30型)を用いて、シリンダー温度340〜350℃で溶融混練した後、ストランドを水冷後切断してペレットを得た。 【0040】 得られたペレットを射出成形し(日精樹脂工業(株)製PS40E50ASE型、シリンダー温度350〜360℃、金型温度130℃)、厚み1.6mmのASTM1号ダンベル試験片を得た。この試験片を、前述の工程に基づいて無電解メッキ処理を行い、表面粗さRaを測定した。さらに、電解メッキ処理を行い、ピーリング強度を測定した。結果を表1に示す。 いずれの組成においても、本発明の表面処理を行うことにより、メッキ後の表面粗さRaは小さく表面平滑性に優れ、高いピーリング強度を示している。 【0041】 比較例1 実施例2の組成物成形品をメッキ処理する際、1.表面粗化工程中のリンス工程を行わなかったほかは、同じ方法で各項目を測定した。結果を表1に示す。リンス工程を行わないと、表面粗さRaは大きく表面平滑性が損なわれピーリング強度も極めて低く測定限界以下であった。 【0042】 実施例5〜9 実施例1〜4で用いたものと同じ液晶ポリエステルとウォラストナイトに、数平均繊維径6μm、数平均繊維長50μmのミルドガラス繊維を表1に示した組成で混合し、実施例1〜4と同じ方法で試験片を得、各項目の測定を行った。結果を表1に示す。ウォラストナイトに加え、ガラス繊維を混合した組成物の成形品であっても表面粗さRaは小さく表面平滑性に優れ、高いピーリング強度を示している。 【0043】 比較例2 実施例6の組成物成形品をメッキ処理する際、1.表面粗化工程中のリンス工程を行わなかったほかは、同じ方法で各項目を測定した。結果を表1に示す。リンス工程を行わないと、比較例1と同様に表面平滑性が損なわれ、ピーリング強度も極めて低かった。 【0044】 比較例3〜5 実施例1〜4で用いたものと同じ液晶ポリエステルとウォラストナイトに、実施例5〜7で用いたものと同じミルドガラス繊維を表1に示した組成で混合し、実施例1〜4に準じて試験片を得て各項目の測定を行った。結果を表1に示す。液晶ポリエステル100重量部に対し、ウォラストナイト10重量部より少ない組成のもの(比較例3)では、表面粗さは小さいものの、ピーリング強度は極めて小さかった。 【0045】 ガラス繊維が60重量部より多い組成のもの(比較例4)では、表面粗さは大きくなり、ピーリング強度も極めて小さかった。 また、ウォラストナイトが10〜150重量部、ガラス繊維が0〜60重量部の間にあっても、ウォラストナイトとガラス繊維の合計量が200重量部を越えるもの(比較例5)は、同様に表面粗さRaは大きく、ピーリング強度も低かった。 【0046】 実施例10 実施例5〜9で用いたものと同じ液晶ポリエステル、ウォラストナイト、およびミルドガラス繊維に、ドロマイト(商品名マイクロドール1、林化成(株)製)を表1に示した組成で混合し、実施例1〜4と同じ方法で試験片を得、各項目の測定を行った。結果を表1に示す。 本組成物は、表面粗さRaが小さく表面平滑性に優れ、高いピーリング強度を示していることがわかる。 比較例6 実施例10の組成物成形品をメッキ処理する際、1.表面粗化工程中のリンス工程を行わなかったほかは、同じ方法で各項目を測定した。結果を表1に示す。リンス工程を行わないと、表面平滑性が損なわれ、ピーリング強度も極めて低かった。 【0047】 【表1】 【0048】 【発明の効果】 本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物の成形品の表面処理方法によれば、表面平滑性に優れ、表面に金属メッキした場合、高い密着強度を有し、耐熱性、耐ハンダ性、成形加工性に優れた液晶ポリエステル樹脂組成物の成形品を効率よく得ることができる。特に、所望の形状を有するプリント配線基板を射出成形で容易に得ることができ、微細な線幅をもった回路を形成させることが可能となる。本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物の成形品の表面処理方法は、プリント配線以外のメッキすべき種々の用途にも使うことができる。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2003-12-03 |
出願番号 | 特願平5-249487 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(C08J)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | ▲吉▼澤 英一 |
特許庁審判長 |
柿 崎 良 男 |
特許庁審判官 |
石井 あき子 舩 岡 嘉 彦 |
登録日 | 2002-04-12 |
登録番号 | 特許第3296049号(P3296049) |
権利者 | 住友化学工業株式会社 |
発明の名称 | 液晶ポリエステル樹脂組成物の成形品の表面処理方法 |
代理人 | 久保山 隆 |
代理人 | 久保山 隆 |