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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B07B
管理番号 1093170
異議申立番号 異議2002-72745  
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-11-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-11-15 
確定日 2004-02-12 
異議申立件数
事件の表示 特許第3291587号「電子写真用トナーの製造方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3291587号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3291587号の請求項1乃至4に係る発明についての出願は、平成4年4月16日に特許出願され、平成14年3月29日に特許権の設定登録がなされ、その後、請求項1乃至4に係る特許について異議申立人池田義夫及び異議申立人山田敬子より特許異議申立てがなされ、平成15年4月10日付けで取消理由が通知され、その指定期間である平成15年6月23日付けで特許異議意見書が提出されたが、平成15年9月5日付けで再度取消理由が通知され、その指定期間である平成15年11月18日付けで特許異議意見書が提出されたものである。

2.特許異議の申立ての概要
(1)異議申立人池田義夫は、下記の甲第1乃至4号証及び参考資料1を提出し、本件の請求項1乃至4に係る発明は甲第1乃至4号証に記載された発明に基き当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1乃至4に係る特許は特許法第29条第2項の規定により取り消すべきものである旨主張している。
甲第1号証:特開平3-131372号公報
甲第2号証:特開昭62-119550号公報
甲第3号証:特公平3-80075号公報
甲第4号証:特開昭58-219971号公報
参考資料1:「理化学辞典 第3版増補版」株式会社岩波書店、1981年10月20日第3版増補版第2刷発行、第944,945頁及び1284頁
(2)異議申立人山田敬子は、下記の甲第1乃至6号証を提出し、本件の請求項1乃至4に係る発明は甲第1乃至6号証に記載された発明に基き当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1乃至4に係る特許は特許法第29条第2項の規定により取り消すべきものである旨、並びに、本件は、明細書及び図面の記載が特許法第36条第4項又は第5項及び第6項に規定する要件を満たしていないから、本件の請求項1乃至4に係る特許は取り消すべきものである旨主張している。
甲第1号証:特開平3-131372号公報
甲第2号証:特開昭58-219971号公報
甲第3号証:特開平3-86284号公報
甲第4号証:特開平2-130559号公報
甲第5号証:特開平3-174164号公報
甲第6号証:特開平3-121462号公報

3.本件発明
本件特許第3291587号の請求項1乃至4に係る発明(以下、「本件発明1」乃至「本件発明4」という。)は、それぞれ、本件明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された下記のとおりのものである。
「【請求項1】 負荷電制御剤を含有するトナー中の粗粒分を除去する分級工程を含む電子写真用トナーの製造方法において、円筒形の固定したポリエステル樹脂で形成されているスクリーンと、該スクリーンの内側に設けられた該スクリーンの中軸を回転軸として回転する羽根と、該羽根の回転による遠心力によって該スクリーンに衝突し微振動を与える複数個のボールとを有する分級装置を該分級工程で使用することにより、トナー中の粗粒分を除去することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。
【請求項2】 該分級工程において、疎水性シリカが外添されているトナー中の粗粒分を除去することを特徴とする請求項1に記載の電子写真用トナーの製造方法。
【請求項3】 該トナーは、少なくとも不飽和ポリエステル樹脂或いはスチレン/n-ブチルアクリレート/ジビニルベンゼン共重合体を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真用トナーの製造方法。
【請求項4】 該スクリーンの目開きが50乃至70μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法。」

4.刊行物に記載された事項
(A)当審が平成15年9月5日付けで通知した取消理由に引用した、本件の出願前日本国内で頒布された刊行物である刊行物1(特開平3-131372号公報、異議申立人池田義夫及び異議申立人山田敬子の提出した甲第1号証)には、図面と共に下記の事項が記載されている。
A-ア.「両端が夫々取付金具の円筒部の外面に接着されていて、中心線の方向に緊張して取り付けられた合成繊維織網製の円筒スクリーンと、この中心線上で高速回転する回転軸に放射状で且つ中心線に対し僅かの挨れ角で取り付けられ、その外縁りと円筒スクリーンの内面との間に小さな間隙があるようにした数枚の回転翼とを有し、円筒スクリーンの一端より内部に供給された粉末原料を篩い分けながら円筒スクリーンの網目より大きな粗粒を他端より排出するようにした円筒スクリーン分級機に於いて、円筒スクリーンの内部空間に装入された直径数ミリの合成樹脂、ゴム等で作られた数個乃至数十個の弾性ボールと、回転軸に直角に取り付けられていて、粗粒排出部の円筒スクリーン取付金具の円筒部の内径との間に前記弾性ボールの直径より小さな間隙が出来るような直径の遮断円板とを具備することを特徴とする円筒スクリーン分級機。」(特許請求の範囲)
A-イ.「本発明は、中心線の方向に緊張して取り付けられた合成樹脂繊維製の円筒スクリーンとこの中心線上で高速回転する回転軸に放射状で且つ中心線に対し僅かの挨れ角で取り付けられた数枚の囲転翼により円筒スクリーンの一端より内部に供給される粉状原料を篩い分けるようにした円筒スクリーン分級機に関するものである。」(第1頁右下欄第5〜11行)
A-ウ.「この種の円筒スクリーン分級機は、前記の高速回転する回転翼によって円筒スクリーン内面の粉状原料を攪拌しつつ円筒スクリーン内面に沿って旋回させ、粉状原料に重力の数十倍の大きさの遠心力を作用させ、これによって円筒スクリーンの網目より細かなものは速やかにこの目を通過させて網下産物とし、網目より粗いものは円筒スクリーンの他端より排出して網上産物とするものである。」(第1頁右下欄第13行〜第2頁左上欄第1行)
A-エ.「円筒スクリーン分級機に150ミクロン、75ミクロン、或は50ミクロン等の細かな網目の円筒スクリーンを装着して非常に帯電し易い性質の合成樹脂粉末、粉体塗料、トナー等を篩い分けようとすると、これらの原料は回転翼によって攪拌されると非常に大きな静電気を帯び、炭素を入れて誘電性を持たせた合成樹脂繊維で織られた帯電防止織網を用いても、帯電した原料粒子の結合したものが円筒スクリーン内面と回転翼の外縁りとの間の空間に発生し、著しく篩い分け作業を妨げたり或は不可能にする。本発明は、このような現象の発生を防止して、帯電し易い粉末原料でも篩い分け出来る円筒スクリーン分級機を提供しようとするものである。」(第2頁左上欄第3〜17行)
A-オ.「この発明は以上のように構成したので、円筒スクリーンの内部空間内の弾性ボールは、回転翼によって打撃されて円筒スクリーンに衝突して円筒スクリーンの各部に劇しい振動を発生させる。そのため、高い電圧を帯びて付着、凝集し易くなっている粉末塗料、トナーでも、この振動により該スクリーン内面に付着したり、互いに凝集することがないので、篩い分け作業を効率的に行うことができるとともに小さな網目でも篩い分けることができる。
例えば、円筒スクリーンは直径250ミリ、有効長さ200ミリ、炭素入りナイロン繊維織網、目開き75ミクロン、回転翼は4枚、回転速度500rpm、弾性ボールはポリエチレン製直径約4ミリ80個を用い、平均粒形10ミクロンのトナー毎時200kgを篩い分けてその中に粗粒、異物を除去することが可能となった。」(第3頁右上欄第4行〜同頁左下欄第1行)
(B)当審が平成15年9月5日付けで通知した取消理由に引用した、本件の出願前日本国内で頒布された刊行物である刊行物2(特開昭58-219971号公報、異議申立人池田義夫の提出した甲第4号証、異議申立人山田敬子の提出した甲第2号証)には、図面と共に下記の事項が記載されている。
B-ア.「水平に支持された円筒スクリーン(16)とその中心線上で回転する回転軸(26)の一端に取り付けられたスクリュー(27)と回転軸(26)の中央部に取り付けられ前記円筒スクリーン(16)の内部で旋回する数枚の攪拌羽根(28a)、(28b)、(28c)、(28d)とを有する攪拌式円筒スクリーン分級機に於て・・・攪拌式円筒スクリーン分級機。」(特許請求の範囲)
B-イ.「本発明の目的は例えば粉末塗料等を非常に小さな網目のスクリーンで大量に分級することが可能で、円筒スクリーンの交換と回転軸にスクリューと攪拌羽根を取り付けた回転部の取り付け取り外しの容易な篩い分け効果の良好な大型のものを提供しようとするものである。粉末塗料はエポキシ或はアクリル等の合成樹脂に顔料、硬化剤、安定剤等を加えて混合し、押出機で溶融混練し、冷却後微粉砕機で粉砕し、使用目的によって80乃至50ミクロンの網目の篩い網を付けた分級機で篩って、粗粒を取り除くように製造される。」(第2頁左上欄第5〜16行)
B-ウ.「上記のような非常に小さな網目のスクリーンは40〜50ミクロンの非常に細いテトロン或はナイロン製の縦糸と横糸で構成され硬い金属等で引掻けば破れ易いものである。」(第2頁右上欄第1〜4行)
(C)当審が平成15年9月5日付けで通知した取消理由に引用した、本件の出願前日本国内で頒布された刊行物である刊行物3(特開平3-86284号公報、異議申立人山田敬子の提出した甲第3号証)には、図面と共に下記の事項が記載されている。
C-ア.「少なくとも網の素線表面が、被篩分粉体と同一物質又は帯電特性の略等しい物質から成ることを特徴とする粉体の篩分装置。」(特許請求の範囲)
C-イ.「従来より、篩の目詰りを解消するために様々な方法が試みられている。」(第1頁左下欄13,14行)
C-ウ.「従来のタッピングボールやブラシによる機械的方法ではある程度の効果はあるが、特に粒径の極めて小さい樹脂粉体のように静電気による付着力が大きい場合には、目詰りの解消は十分ではない。かかるタッピングボ-ルを用いる場合は、ボールが網と衝突することにより粉体が凝集、融着し、粗大な粒子を発生する場合もある。一方、ブラシを用いる場合は、ブラシの毛が抜けて製品に混入することが危倶される。また、タッピングボール、ブラシいずれを用いても網の寿命は短くなる。すなわち、タッピングボールは網の目開きの狂いを生じさせ、ブラシは網の摩擦を引き起こすことによる。」(第1頁右下欄第3〜15行)
C-エ.「ここで、静電気に起因する付着目詰りの発生し易い粉体を挙げると、電子写真現像剤、樹脂粉、ガラス微粒子、木粉等があり、粒径が細かいほど付着目詰りを起こし易く、特に、体積平均粒径が20μm以下になると著しい。」(第2頁左上欄第3〜7行)
C-オ.「篩分装置における付着目詰りは、振動する篩網と粉体が接触を繰り返して粉体が帯電し、静電気力で網の素線に付着し、次第に成長してついには網目を塞いでしまうことにより起こっている。よって、網の素線表面を被篩分粉体と同じ物質又は略等しい帯電特性を持つ物質で構成することにより、被篩分粉体が網と接触しても帯電しにくくなり、網への付着目詰りが発生しにくくなる。」(第2頁右上欄第7〜15行)
C-カ.「実施例1
被篩分材料として、電子写真用の2成分非磁性トナーを用いた。体積平均粒径は8μmであり、篩網は目開き200メッシュ(76μm)のステレス製平織網を用いた。この場合、原料に含まれる極微量の粗大粒子を除去するのが目的であり、99%以上が篩下となる。
かかるトナーを・・・に溶かして、濃度0.5%wtの溶液とし、これを第1図に示すように、網に塗布し乾燥させた。篩分機としては・・・を用いた。この装置は面内振動篩である。・・・。
一方、比較例として未処理の網を用い同1条件でテストを行った。
その結果、・・・、30分後には完全に目詰まりを起こし、運転を中止せざるを得なかった。
しかしながら、本発明の実施例では、・・・、篩下の収率低下は認められず、常に99%以上を維持した。」(第2頁右上欄18行〜同頁右下欄3行)
C-キ.「実施例3
ポリエステル製の篩網(目開き150μm)を円形振動篩・・・に取り付け、体積平均粒径40μmのポリエステル粉末を80kg/hで供給して極微量の粗分の除去を行った。その結果、4時間連続運転を行っても目詰りは発生せず、安定した篩下収率で推移した。」(第8頁右下欄20行〜第9頁左上欄6行)
(D)当審が平成15年9月5日付けで通知した取消理由に引用した、本件の出願前日本国内で頒布された刊行物である刊行物4(特開平2-130559号公報、異議申立人山田敬子の提出した甲第4号証)には、下記の事項が記載されている。
D-ア.「・・・着色剤含有ポリエステル系樹脂粒子と流動向上剤を含有するポリエステル系カラートナーを、最大周速20〜80m/secとなるように高速回転羽根を設定した混合機を用いて均一に混合せしめた後、混合後に存在する粗粒を100〜150メッシュのふるいを通した後200〜400メッシュのふるいで1回以上ふるって除去する工程を有する多色電子写真用トナーの製造方法によって得られるポリエステルカラートナーにおいて、前記着色剤含有ポリエステル系樹脂粒子が体積平均粒径3〜10μmであり、前記流動向上剤が少なくとも鉄粉との摩擦帯電量が-30μc/g以下である金属酸化物を含有することを特徴とする多色電子写真用トナー。」(特許請求の範囲)
D-イ.「このような流動向上剤としては、具体的には例えば・・・微粉末シリカ、すなわち湿式製法シリカ、乾式シリカ、それらシリカにシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイルなどにより表面処理を施した処理シリカ等が挙げられる。」(第6頁右上欄第6〜16行)」
D-ウ.「本発明に係るトナーには、負荷電特性を安定化するために、荷電制御剤を配合することも好ましい。・・・。負荷電制御剤としては、例えばアルキル置換サリチル酸の金属錯体(例えば、ジ-ターシャリーブチルサリチル酸のクロム錯体または亜鉛錯体)の如き有機金属錯体が挙げられる。」(第7頁左下欄第9〜16行)
D-エ.「実施例1
プロポキシ化ビスフェノールとフマル酸とを縮合して得られたポリエステル樹脂100部に対し、下記第1表の処方量の着色剤及び荷電制御剤をそれぞれ用いて4色の着色剤含有樹脂粒子を得た。・・・。更に上記で得られた微粉砕物を分級して、それぞれ体積平均粒径7.9μ、8.3μ、8.0μ、9.4μの分級物(4種類)を得た。この分級品各100部に、流動向上剤として、BET比表面積105m2/gのAl2O30.3部および重量比で15%のへキサメチルジシラザンで処理したBET比表面積230m2/gのシリカ微粉末それぞれ0.5部を、ヘンシェルミキサーを使用して40m/secの周速で外添した。その後、ダルトン振動ぶるいのタッピングボールを除去して100メッシュふるいおよび200メッシュふるいを通して、イエロー、マゼンタ、シアンおよびクロのカラートナー4種類を得た。」(第10頁左下欄16行〜第11頁左上欄18行)また、第10頁右下欄の第1表には、4種類のトナーの夫々には荷電制御剤としてジ-ターシャリーブチルサリチル酸のクロム錯体が含まれていることが記載されている。
(E)当審が平成15年9月5日付けで通知した取消理由に引用した、本件の出願前日本国内で頒布された刊行物である刊行物5(特開平3-174164号公報、異議申立人山田敬子の提出した甲第5号証)には、下記の事項が記載されている。
E-ア.「実施例1
第1図に示すフローに従って下記の如くトナーを調製した。
・ジ-tert-ブチルサリチル酸のCr錯体 4重量部
(負荷電性制御剤)
・スチレン-2-エチルヘキシルアクリレート- 90重量部
ジビニルベンゼン共重合体
(共重合重合比80:20:1)(結着樹脂)(重量平均分子量約30万)
・ポリエチレンワックス 4重量部
(ハイワックス200p,三井石油化学製)
・磁性体(比表面積8m2/g)(着色剤) 60重量部
上記材料をロールミル(150℃)で約30分間熱混練し、得られた混練物を冷却した後、粗粉砕し、次いで微粉砕機で、体積平均粒径約10μmまで粉砕して粉砕物を調製した。調製した粉砕物を、アルピネ社製ジグザグ分級機で、粒径5μ以下の粒子が減少する分級点に設定し、分級粉の体積平均粒径が約10.8μmになるように微粉を除去した。この時に除去された微粉の量は18重量%であった。分級粉は、負帯電性を有していた。
第1の分級後の分級粉(トナー粒子)100重量部に、負帯電性疎水性コロイダルシリカ微粉体(日本アエロジル社製R972)0.5重量部を添加し、第4図の混合装置(容量75lのへンシェルミキサー)を用いて攪拌翼の先端周速40m/秒で、5分間分級粉と該シリカ微粉体との混合及び分散を行った。
負帯電性疎水性シリカ微粉体と混合された分級粉を、粒径3μ以下の粒子が減少するように分級点を設定したエルボジェット分級機(日鉄鉱業社製)〔・・・〕で微粉を2重量%除去し、体積平均粒径11.4μの第2の分級粉を得、第2の分級粉を100meshの篩を通し、100meshの篩を通過した粉体を静電荷像現像用の負帯電性磁性トナーとした。
100meshの篩上には、約0.1wt%の粗粒が残留していた。」(第9頁右上欄第1行〜同頁左下欄第17行)
(F)当審が平成15年9月5日付けで通知した取消理由に引用した、本件の出願前日本国内で頒布された刊行物である刊行物6(特開平3-121462号公報、異議申立人山田敬子の提出した甲第6号証)には、下記の事項が記載されている。
F-ア.「本発明のトナーには必要に応じて荷電制御剤を含有しても良く、モノアゾ染料の金属錯体;サリチル酸、アルキルサリチル酸、シアルキルサリチル酸またはナフトエ酸の金属錯塩の如き負荷電制御剤が用いられる。」(第12頁右上欄17行〜同頁左下欄1行)
F-イ.「実施例1
スチレン/アクリル酸ブチル/ジビニルベンゼン共重合体 100重量部
(共重合重量比84/15.5/0.5,重量平均分子量25万)
マグネタイト(平均粒度0.2μm) 100重量部
低分子量エチレン-プロピレン共重合体 3重量部
モノアゾ染料のクロム錯体 1重量部
上記材料をブレンダーでよく混合した後、130℃に設定した2軸混練押出機にて混練した。この際、設定温度が高すぎるとカブリを生じやすい磁性トナーとなる。得られた混練物を冷却し、カッターミルにて粗粉砕した後、ジェット気流を用いた微粉砕機を用いて微粉砕し、得られた微粉砕粉を固定壁型風力分級機で分級して分級粉を生成した。さらに、得られた分級粉をコアンダ効果を利用した多分割分級装置(日鉄鉱業社製エルボジェット分級機)で超微粉及び粗粉を同時に厳密に分級除去して体積平均粒径6.5μmの絶縁性磁性トナー(A)を得た。得られた磁性トナー(A)は鉄粉キャリアに対し負に摩擦帯電し、前述のコールターカウンタ-TAII型にて測定した粒度を表1に示す。
該負帯電性絶縁性磁性トナー100部に対し、ヘキサメチルジシラザン約20重量% 及びジメチルシリコーンオイル約10%で処理した疎水性乾式シリカ微粉体1.3部・・・を加えてヘンシェルミキサーで混合し、一成分系負帯電性磁性現像剤を得た。」(第14頁右上欄第1行〜同頁左下欄8行)
(G)当審が平成15年9月5日付けで通知した取消理由に引用した、本件の出願前日本国内で頒布された刊行物である刊行物7(特開昭62-119550号公報、異議申立人池田義夫の提出した甲第2号証)には、下記の事項が記載されている。
G-ア.「少なくとも粘着樹脂、磁性体およびクロム有機錯体化合物を含有する負荷電性絶縁性磁性トナー粒子と、・・・、負荷電性の疎水化処理酸化ケイ素微粒子とを有することを特徴とする絶縁性磁性乾式現像剤。」(特許請求の範囲第1項)
G-イ.「本発明において使用されるクロム有機錯体化合物は、負荷電性制御性を有し、例えばクロム錯塩型モノアゾ染料やサリチル酸またはアルキルサリチル酸のクロム錯体等があり、これらは単独で使用されるかあるいは2種以上を混合して使用される。」(第3頁右上欄第10〜16行)
G-ウ.「クロム有機錯体化合物が添加されている負荷電性の絶縁性トナーは摺擦によるトリポ帯電特性が向上する反面、凝集性が発現して流動性が低下する傾向を示すので本発明では流動化剤として疎水化処理酸化ケイ素微粒子が現像剤に添加される。」(第3頁左下欄第10〜15行)
G-エ.「表面疎水化処理するために用いられる疎水化処理剤(有機ケイ素化合物)の例としては、ヘキサメチルジシラザン・・・等がある。」(第4頁左上欄5行〜同頁右上欄6行)

5.対比、判断
(1)本件発明1について
上記4.で摘記した刊行物1の記載事項A-オからみて、刊行物1には、記載事項A-アに記載された分級機を用いてトナー中の粗粒を除去する方法が記載されていると云え、この方法は、トナーの製造という観点からみると、記載事項A-アに記載された分級機を用いてトナー中の粗粒分を除去する分級工程を含むトナーの製造方法であると云え、また、記載事項A-オからみて、記載事項A-アに記載された分級機における弾性ボールは、回転翼によって打撃されて円筒スクリーンに衝突して円筒スクリーンに劇しい振動を発生させるものであるから、記載事項A-ア〜オからみて、刊行物1には下記の発明が記載されていると云える。
「トナー中の粗粒分を除去する分級工程を含むトナーの製造方法において、両端が夫々取付金具の円筒部の外面に接着されていて、中心線の方向に緊張して取り付けられた合成繊維織網製の円筒スクリーンと、この中心線上で高速回転する回転軸に放射状で且つ中心線に対し僅かの挨れ角で取り付けられ、その外縁りと円筒スクリーンの内面との間に小さな間隙があるようにした数枚の回転翼と、円筒スクリーンの内部空間に装入され、回転翼によって打撃されて円筒スクリーンに衝突して円筒スクリーンに劇しい振動を発生させる、直径数ミリの合成樹脂、ゴム等で作られた数個乃至数十個の弾性ボールとを具備する円筒スクリーン分級機を該分級工程で使用することにより、トナー中の粗粒分を除去するトナーの製造方法。」
本件発明1(前者)と、刊行物1に記載された発明(後者)とを対比すると、後者における「円筒スクリーン」は、円筒形で固定されていることは明らかであり、後者における「スクリーン」に相当し、後者における「中心線」は、円筒スクリーンの中心線でもあるから、前者における「スクリーンの中軸」に相当するものである。また、後者における「回転翼」は、その外縁りと円筒スクリーンとの間に小さな間隙があるように取り付けられ、中心線上で回転する回転軸に取り付けられたものであるから、前者においてスクリーンの内部に設けられスクリーンの中軸を回転軸として回転する「羽根」に相当し、後者における「弾性ボール」は、その機能からみて、前者における「ボール」に相当する。ここで、後者において弾性ボールは回転翼によって打撃されて円筒スクリーンに衝突して円筒スクリーンに劇しい振動を発生させるものであり、前者においてボールは羽根の回転による遠心力によってスクリーンに衝突し微振動を与えるものである。しかし、後者においても、弾性ボールは回転翼の回転による遠心力によって円筒スクリーンに衝突すると解され、また、スクリーンの振動がどの程度なら劇しい振動でありどの程度なら微振動であるか特に基準がなく、また、後者における弾性ボールの材質、大きさ、数、及び回転翼の回転数と前者におけるボールの材質、大きさ、数、及び羽根の回転数に格別の違いがないことからみて、前者における円筒スクリーンの振動は後者におけるスクリーンの振動と同程度のものと解される。そして、後者における「円筒スクリーン分級機」は前者における「分級装置」に相当するものであり、また、トナーが電子写真用に用いられるものであることは明らかであるから、両者は、
「トナー中の粗粒分を除去する分級工程を含む電子写真用トナーの製造方法において、円筒形の固定したスクリーンと、該スクリーンの内側に設けられた該スクリーンの中軸を回転軸として回転する羽根と、該羽根の回転による遠心力によって該スクリーンに衝突し微振動を与える複数個のボールとを有する分級装置を該分級工程で使用することにより、トナー中の粗粒分を除去することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。」
で一致し、下記の点で相違する。
(a)トナーが、前者は負荷電制御剤を含有するものであるのに対して、後者はかかる特定がない点。
(b)スクリーンが、前者はポリエステル樹脂で形成されているのに対し、後者は合成繊維織網製というだけでいかなる樹脂から形成されているか特定がない点。
そこでまず、相違点(a)について検討する。
まず、刊行物4の記載事項D-ア、ウ及びエからみて、刊行物4には負荷電制御剤を含有するトナー及び該トナーの製造において粗粒をふるいにより除去することが記載されていると云え、刊行物5の記載事項E-アからみて、刊行物5には負荷電制御剤を含有するトナー及び該トナーの製造において粗粒を篩により除去することが記載されていると云える。さらに、刊行物6の記載事項F-ア及びイからみて、刊行物6には負荷電制御剤を含有するトナーが記載されていると云え、刊行物7の記載事項G-ア及びイからみて、刊行物7には負荷電制御剤を含有するトナーが記載されていると云える。よって、刊行物4〜7の記載事項からみて、負荷電制御剤を含有するトナー自体は本件の出願前周知のものであったと云うことができ、さらに、刊行物4及び5の記載事項からみて、負荷電制御剤を含有するトナーの製造において粗粒を篩により除去することも本件の出願前周知の事項であったと云える。
してみると、負荷電制御剤を含有するトナーは広く一般に用いられているものであり、刊行物1に記載された発明において粗粒分を除去する分級工程に付するトナーとして負荷電抑制剤を含有するトナーを用いることは、当業者にとって通常行うことであったと云える。
次に、相違点(b)について検討する。
まず、刊行物2の記載事項B-ア〜ウからみて、刊行物2には、水平に支持された円筒スクリーンとその中心線上で回転する回転軸に取り付けられ前記円筒スクリーンの内部で旋回する数枚の攪拌羽根とを有する攪拌式円筒スクリーン分級機を用いて粉末塗料等を製造するに際し、テトロン或はナイロン製の縦糸と横糸で構成された80乃至50ミクロンの網目のスクリーンを付けた分級機で篩って、粗粒を取り除くことが記載されていると云える。即ち、刊行物2には、テトロン、即ちポリエステル樹脂で形成された80乃至50ミクロンの目開きの円筒スクリーンが記載されいると云える。また、刊行物3の記載事項C-キにも、ポリエステル製の篩網を用いることが記載されているところである。よって、ポリエステル樹脂で形成されたスクリーンは本件の出願前周知のものであり、さらに、刊行物2には、刊行物1に記載された円筒スクリーンと同程度の80乃至50ミクロンの目開きを有するポリエステル樹脂で形成された円筒スクリーンが記載されていると云える。
また、刊行物3には、「少なくとも網の素線表面が、被篩分粉体と同一物質又は帯電特性の略等しい物質から成ることを特徴とする粉体の篩分装置。」(記載事項C-ア)の発明について記載されており、記載事項C-オには「篩分装置における付着目詰りは、振動する篩網と粉体とが接触を繰り返して粉体が帯電し、静電気力で網の素線に付着し、次第に成長してついには網目を塞いでしまうことにより起こっている。よって、網の素線表面を被篩分粉体と同じ物質又は略等しい帯電特性を持つ物質で構成することにより、被篩分粉体が網と接触しても帯電しにくくなり、網への付着目詰りが発生しにくくなる。」ことが記載されている。そして、記載事項C-エには、静電気に起因する付着目詰まりの発生し易い粉体として電子写真現像剤が例示されているとともに、粒径が細かいほど付着目詰まりを起こし易いことが記載されている。また、記載事項C-カにも、被篩分材料が電子写真用のトナーである実施例1が記載されているところである。これらの記載事項からみて、刊行物3には、電子写真用トナーの如く静電気による目詰まりを起こしやすい粉体を篩分するに際し、網の素線の少なくとも表面と被篩分粉体の帯電特性をより近くすることにより、目詰まりが起こりにくくなることが示唆されていると云えるから、刊行物1に記載された発明において負荷電制御剤を含有するトナーを分級するに際し、スクリーンの材質として、静電気によるスクリーンの目詰まりを防止するために、被篩分粉体である負荷電制御剤を含有するトナーと帯電特性が略等しいとまではいかなくとも帯電特性の近いものを選択することは、刊行物3に記載された事項に基づき当業者が考慮することであると云える。
そして、例えば刊行物4の記載事項D-ウにも記載されているとおり、被篩分粉体である負荷電制御剤を含有するトナーが負荷電特性を有することは本件の出願前周知の事項であり、また、ポリエステル樹脂が負に帯電しやすい合成樹脂であることは本件の出願前周知の事項である(必要であれば、特開平3-156480号公報第3頁右上欄第8〜10行、特開昭64-74566号公報第4頁左下欄第18〜20行を参照されたい)。
してみると、刊行物1に記載された発明において、被篩分粉体である負荷電制御剤を含有するトナーの目詰まりを抑制するために、スクリーンを、負荷電制御剤を含有するトナーと同様、負に帯電し易い合成樹脂であるポリエステル樹脂で形成されたものとすることは、刊行物3に記載された事項からみて当業者が容易に想到し得たことであると云える。
なお、刊行物3の記載事項C-ウには、従来のタッピングボールを用いる方法では、ボールが網と衝突することにより粉体が凝集、融着し、粗大な粒子を発生する場合があるから、粒径の極めて小さい樹脂粉体のように静電気による付着力が大きい場合には目詰りの解消は十分ではなく、また、網の目開きの狂いを生じさせるため網の寿命は短い旨記載されている。そして、刊行物3に記載された発明は、かかる従来技術を踏まえて、篩の目詰まりを解消する手段として、従来のタッピングボール等に代え少なくとも網の素線表面が被篩分粉体と同一物質又は帯電特性の略等しい物質から成ることという手段を採用したものであり、上記記載事項C-ウは、単に篩の目詰まりを解消するために従来より行われているタッピングボールを用いる方法の欠点を記載したものにすぎず、かかるタッピングボールを用いる方法と刊行物3に記載された篩の目詰まりを解消する新たな解決手段との併用により不都合が生じることを記載したものではない。よって、刊行物3の記載事項C-ウは、刊行物1に記載されたボールを用いる方法において、スクリーンの目詰まりをさらに少なくするために刊行物3の記載事項から示唆される手段を適用することを妨げるものであるとは云えない。
そして、本件明細書【0023】段落に記載され、同【0017】〜【0022】段落において比較例との比較のもとに実施例中に具体的に示された本件発明1の効果について検討すると、刊行物1の記載事項A-エ及びオに刊行物1に記載された装置を用いることにより帯電し易い粉末原料でも篩い分けすることができることが記載されていることからみて、刊行物1に記載された装置と同じ構造を有する本件発明1における分級装置を用いて電子写真用トナーを製造したことにより、本件明細書【0003】段落に記載されたジャイロシフター又は振動篩いを使用して電子写真用トナーを製造した従来例と比較して、処理量の増大による装置の小型化、スクリーンの高寿命化、ブラシの作用により目開きが広がることによる粗粒の飛び込み及びブラシ等の破片の混入の防止を達成することができ、より小さい目開きのスクリ-ンを用いてより小さな粒径のトナーに対応できることは当業者が予測し得た効果であると云える。
また、本件発明1において、トナーを負荷電制御剤を含有するものとし、スクリーンをポリエステル樹脂で形成されたものに限定したことによる、トナーとスクリーンとの帯電摩擦を抑制し、スクリーンの目詰まりを防止し、より小さい目開きのスクリーンを使用してより小粒径のトナーに対応できるようになるという権利者が主張する効果は、上述のとおり、刊行物3に、網の表面と被篩分粉体の帯電特性を近くすることにより、粒径の細かいものを篩う場合でも目詰まりを起こしにくくなることが示唆されていることからみて、スクリーンを負電荷抑制剤を含有するトナーと同じく負に帯電するポリエステル樹脂で形成されたものとしたことにより当業者が予測し得た効果であると云え、しかも、スクリーンをポリエステル樹脂で形成した実施例が負に帯電する特性を有する他の樹脂から形成されたスクリーンを用いた比較例との比較のものに示されていないため、格別な効果であるとは云えない。
さらに、本件発明1においてスクリーンをポリエステル樹脂で形成されたものに限定したことによる、ボールで振動を与えても目開きの変化が少ないという権利者が主張する効果については、ポリエステル樹脂にも種々の特性の物が存在すること、及び、スクリーンをポリエステル樹脂で形成した実施例がスクリーン材料として用いられる他の材料でスクリーンを形成した比較例との比較のものに示されていないためこの効果自体明確でないものの、この効果はスクリーンを形成するポリエステル樹脂そのものが有する強度、伸び等の性質に起因するものであると云えるから、ポリエステル樹脂自体の性質から当業者が予測し得た効果に過ぎないと云える。
してみると、本件発明1の効果は、当業者が予測し得ない格別顕著なものであると云うことはできない。
したがって、本件発明1は、刊行物1乃至7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると云える。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に「該分級工程において、疎水性シリカが外添されているトナー中の粗粒分を除去すること」なる構成を付加したものである。
しかし、刊行物4の記載事項D-ア〜エには、疎水性シリカと云えるヘキサメチルジシラザンで処理したシリカ微粉末を外添した負荷電制御剤を含有するトナーをふるいによる分級工程に付し、トナー中の粗粒を除去することすることが記載されており、刊行物5の記載事項E-アには、負帯電性疎水性コロイダルシリカ微粉体(日本アエロジル社製R972)を外添した負荷電制御剤を含有するトナーを、篩に通しトナー中の粗粒を除去することが記載されていることからみて、トナーの分級工程において、疎水性シリカが外添されているトナー中の粗粒分を除去することは本件の出願前周知の事項であると云えるから、本件発明1において、分級工程において、疎水性シリカが外添されているトナー中の粗粒分を除去することは当業者が容易に想到し得たことであると云える。
そして、本件明細書を検討しても、本件発明1に上記構成を付加したことにより、格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
よって、本件発明2は、刊行物1乃至7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると云える。
(3)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1又は2に「該トナーは、少なくとも不飽和ポリエステル樹脂或いはスチレン/n-ブチルアクリレート/ジビニルベンゼン共重合体を含有すること」なる構成を付加したものである。
しかし、刊行物6の記載事項F-イには、スチレン/アクリル酸ブチル/ジビニルベンゼン共重合体を含有するトナーが記載されている。このスチレン/アクリル酸ブチル/ジビニルベンゼン共重合体を構成するアクリル酸ブチルにおいてブチルはn型のものも包含するから、該共重合体はスチレン/n-ブチルアクリレート/ジビニルベンゼン共重合体を包含し、よって、刊行物6には、スチレン/n-ブチルアクリレート/ジビニルベンゼン共重合体を含有するトナーが記載されていると云える。
したがって、本件発明1又は2に付加された上記構成は刊行物6に記載された事項であると云える。
そして、本件明細書を検討しても、本件発明1又は2に上記構成を付加したことにより、格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
よって、本件発明3は、刊行物1乃至7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると云える。
(4)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1乃至3のいずれかに「該スクリーンの目開きが50乃至70μmであること」なる構成を付加したものである。
しかし、刊行物1の記載事項A-エには、記載事項A-イに記載された中心線の方向に緊張して取り付けられた合成繊維製の円筒スクリーンとこの中心線上で高速回転する回転軸に取り付けられた数枚の回転翼を具備し、弾性ボールを具備しない円筒スクリーン分級機を用いて、150ミクロン、75ミクロン、或は50ミクロン等の細かな網目の円筒スクリーンを装着してトナーを篩い分けしようとすると静電気により篩い分け作業がうまくいかないことが記載されており、記載事項A-オには、さらに弾性ボールを有する円筒スクリーン分級機を用いることにより円筒スクリーンとして目開き75ミクロンの炭素入りナイロン繊維織網を用いて10μmのトナーを篩い分けてその中の粗粒を除去することが可能となったことが記載されているところである。
本件発明1においては、粗粒分を除去する分級工程に付するトナーを負荷電制御剤を含有するものとし、円筒スクリーンの材質を負荷電制御剤を含有するトナーの帯電特性に似た帯電特性を有するポリエステルに限定したことにより、静電気に起因する目詰まりを防止し、さらに小さな目開きのスクリーンが使用できるようになることは、上記(1)で述べたとおり刊行物3の記載事項から当業者が予測し得たことであり、スクリーンの目開きの範囲を50乃至70μmと限定することは当業者が通常の創作力を発揮することにより容易に為し得たことであると云える。
よって、本件発明4は、刊行物1乃至7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると云える。

6.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1乃至4は、いずれも、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1乃至4についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-12-09 
出願番号 特願平4-121112
審決分類 P 1 651・ 121- Z (B07B)
最終処分 取消  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 岡田 和加子
金 公彦
登録日 2002-03-29 
登録番号 特許第3291587号(P3291587)
権利者 キヤノン株式会社
発明の名称 電子写真用トナーの製造方法  
代理人 豊田 善雄  
代理人 山口 芳広  
代理人 渡邉 敬介  

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