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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1094100
審判番号 不服2001-5646  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-07-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-04-12 
確定日 2004-03-18 
事件の表示 平成 9年特許願第367345号「光記録ディスク用シートおよび光記録ディスク」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 7月13日出願公開、特開平11-189286]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成9年12月25日の出願であって、平成13年3月6日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月11日に手続補正がなされたものである。

2.平成13年5月11日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成13年5月11日の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「光記録ディスクと、この光記録ディスクとを収納し、少なくとも前面が透明なケースと、前記ケースの前面と前記光ディスクとの間に着脱自在に挿入される矩形の光ディスク用シートとを有する光記録ディスクであって、前記シートは矩形形状であり、穴または切り欠きを、前記光ディスクが収納される位置に相当する部分の一部に、上下左右いずれかの辺の中央部またはその近傍に有するか、使用者が穴または切り欠きを形成することができるよう前記光ディスクが収納される位置に相当する部分の一部に、上下左右いずれかの辺の中央部またはその近傍に脆弱部としてミシン目が形成されており、前記穴または切り欠きは20〜60mm2の大きさで上下左右のいずれかの辺から10〜15mmに設けられており、使用者が書き込めるインデックスまたはフロントカバーである光記録ディスク。」
と補正された。

上記補正は、本件補正前、すなわち平成11年10月29日に補正された明細書の特許請求の範囲の請求項(以下、単に「補正前の請求項」という。)8に記載した発明を特定するために必要な事項である「光記録ディスク用シート」について限定を付加するものであるが、この請求項8は、「光記録ディスク用シート」の構成に関し、請求項1〜7のいずれかを引用するものである。

この補正前の請求項8において、請求項1を引用した場合、請求項8に記載された発明は、「光記録ディスクを収納し、少なくとも前面が透明なケースの前記前面と前記光ディスクとの間に挿入される矩形の光ディスク用シートであって、前記光ディスクが収納される位置に相当する部分の一部に、切り欠きまたは穴を有するインデックスまたはフロントカバー用の光記録ディスク用シートと、ケースとを有する光記録ディスク」であり、上記補正は、この請求項1を引用した場合の請求項8に記載した発明を特定するために必要な事項である「光記録ディスク用シート」について、「穴または切り欠きを、上下左右いずれかの辺の中央部またはその近傍に有するか、使用者が切り欠きまたは穴を形成できるよう矩形形状のシートの上下左右いずれかの辺の中央部またはその近傍に脆弱部としてミシン目が形成されている」、「穴または切り欠きは20〜60mm2の大きさで上下左右のいずれかの辺から10〜15mmに設けられる」および「使用者が書き込めるインデックスまたはフロントカバーである」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前である平成7年7月28日に頒布された特開平7-191610号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。

1) 「・・・本発明は、・・・コンパクトディスクの・・・ケースに関する。」(段落【0001】)
2) 「・・・ケースが空でなくて所望の記録媒体が収納されていることを間違いなく識別できる。・・・」(段落【0005】)
3) 「図3に示すようなコンパクトディスク用のハードケースが40が用いられる。このハードケース40は透明なプラスチック成形品でできており、コンパクトディスク50を出し入れできるように前面41が開閉可能に構成されている。・・・ハードケース40の前面41内側にはコンパクトディスク50の内容を表現したカバーシート60が貼付されている。このカバーシート60の下部には窓60aが形成されている。・・・」(段落【0010】)
4) 「上述した実施例においてはカバーシート30,60に予め窓31a,32a,60aを形成したが、図4に示すようにカバーシート70にミシン目71a,72aを付けておき・・・窓が必要なときだけこのミシン目71a,72aで区画された小片71,72を破り取って窓を形成できるように構成すれば、・・・一般家庭を対象として販売する場合にも違和感が生じない。」(段落【0012】)

5)図3には、矩形形状のカバーシート60が示されている。

これらの記載事項によると、引用刊行物には、「コンパクトディスクと、このコンパクトディスクとを収納し、少なくとも前面が透明なケースと、前記ケースの前面と前記コンパクトディスクとの間に着脱自在に挿入される矩形のカバーシートとを有するコンパクトディスク包装体であって、前記シートは矩形形状であり、窓を、前記コンパクトディスクが収納される位置に相当する部分の一部に、上下左右いずれかの辺の中央部の近傍に有するか、使用者が窓を形成することができるよう前記コンパクトディスクが収納される位置に相当する部分の一部に、上下左右いずれかの辺の中央部の近傍に脆弱部としてミシン目が形成されているコンパクトディスクの内容を表現したインデックスまたはフロントカバーであるコンパクトディスク包装体。」が記載されていると認められる。

なお、平成15年10月20日付け審尋に対する、同年11月28日の回答書において、補正後の請求項1の第1行目に記載の「光記録ディスク」は記録媒体としての光ディスクそのものを意味し、第3及び12行目に記載の「光記録ディスク」は光ディスク包装体を意味するものであるとの回答を得ており、また、同請求項1の第2,5、及び7行目に記載の「光ディスク」は、第1行目に記載の「光記録ディスク」と同じものを指し、更に、同請求項1の第3行目の「光ディスク用シート」は「光記録ディスク用シート」と同じものを指すとの回答を得ている。

(3)対比
本願補正発明と引用刊行物記載の発明とを対比すると、両者共、ディスクを収納するケースの透明な前面と、ディスクとの間に着脱自在に挿入される矩形のシートに、ディスクの存否を確認できるようにするための穴が設けられたディスク包装体、又は、そのような穴を形成できるようにしたミシン目による脆弱部が設けられたディスク包装体である点で共通しており、引用刊行物記載の発明における「コンパクトディスク」、「カバーシート」、および「窓」は、それぞれ、本願補正発明の「光ディスク」、「シート」、および「穴」に相当するから、両者は、「光ディスクと、この光ディスクとを収納し、少なくとも前面が透明なケースと、前記ケースの前面と前記光ディスクとの間に着脱自在に挿入される矩形のシートとを有する光ディスク包装体であって、前記シートは矩形形状であり、穴を、前記光ディスクが収納される位置に相当する部分の一部に、上下左右いずれかの辺の中央部の近傍に有するか、使用者が穴を形成することができるよう前記光ディスクが収納される位置に相当する部分の一部に、上下左右いずれかの辺の中央部の近傍に脆弱部としてミシン目が形成されているインデックスまたはフロントカバーである光ディスク包装体。」である点で一致し、次のとおりの二点で相違する。

相違点1:本願補正発明の「穴」が、20〜60mm2の大きさでシートの上下左右のいずれかの辺から10〜15mmに設けられているのに対し、引用刊行物記載の発明では、図3において、カバーシートの下部の中央部の近傍に窓60aとして示される以外は、その大きさや位置について言及されていない点
相違点2:本願補正発明では、ディスクが「光記録ディスク」であって、シートが「光記録ディスク用シート」で使用者が書き込めるものであるのに対し、引用刊行物記載の発明では、ディスクが「光ディスク」であって、シートについては、コンパクトディスクの内容を表現したとあるのみで、使用者がシートに書き込めるものであることについては言及されていない点

(4)相違点の判断
上記相違点1について検討すると、引用刊行物記載の発明におけるシートについても、収納されるコンパクトディスクの内容を表現するためのスペースが必要であることは言うまでもなく、そのようなシートに穴を形成する際、その大きさや位置は、シート本来の用途を損なうことのないように、当業者が必要に応じて選択し得る設計的事項であり、本願補正発明のように特定することに格別の困難性があるとは認められない。

次に、上記相違点2について検討すると、一般に、光ディスクを収容したケースのカバーシートには、光ディスクに記録された情報の内容を表示できるようになっているが、例えば音楽CDのように、予め情報が記録され、ディスクの内容がカバーシートに印刷されて販売されるものも、CD-Rのように、購入後情報を記録し、購入者がディスクの内容をカバーシートに書き込めるようになっているものも、ディスクのサイズが同じで、そのディスク、ケース及びカバーシートからなる包装体が特に区別して取り扱われず、基本的な形式が同じであることは周知の事項である(必要であるならば、拒絶査定において示された文献を参照されたい。)
従って、いずれの場合も、ケース内の光ディスクの有無は、カバーシートの穴を介して確認することができるものであるから、特に光ディスクを「光記録ディスク」に限定した点に格別の発明があるとは認められず、引用刊行物記載の発明を、使用者が書き込めるタイプのカバーシートを持った光記録ディスク包装体に適用し、本願補正発明の構成のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
なお、引用刊行物に記載の発明そのものにおいても、コンパクトディスクの内容を表現してあるシートに、使用者が必要に応じて書き込みを行うことができることは明かである。

してみれば、本願補正発明は、引用刊行物に記載の発明および周知の事項から、当業者であれば、容易に想到し得たものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成13年5月11日提出の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項8に係る発明は、補正前の請求項8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「請求項1〜7いずれかの光記録ディスク用シートと、ケースとを有する光記録ディスク。」

この請求項8は、光記録ディスク用シートに関し、請求項1〜7のいずれの構成を引用するものであるので、請求項1を引用した場合について検討する。
この請求項8において、請求項1を引用した場合、本願の請求項8に係る発明(以下、請求項1を引用した場合の、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「光記録ディスクを収納し、少なくとも前面が透明なケースの前記前面と前記光ディスクとの間に挿入される矩形の光ディスク用シートであって、前記光ディスクが収納される位置に相当する部分の一部に、切り欠きまたは穴を有するインデックスまたはフロントカバー用の光記録ディスク用シートと、ケースとを有する光記録ディスク」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、およびその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「光記録ディスク用シート」の限定事項である「穴または切り欠きを、上下左右いずれかの辺の中央部またはその近傍に有するか、使用者が切り欠きまたは穴を形成できるよう矩形形状のシートの上下左右いずれかの辺の中央部またはその近傍に脆弱部としてミシン目が形成されている」、「穴または切り欠きは20〜60mm2の大きさで上下左右のいずれかの辺から10〜15mmに設けられる」「使用者が書き込めるインデックスまたはフロントカバーである」との構成を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用刊行物記載の発明および周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用刊行物記載の発明および周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載の発明および周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-01-15 
結審通知日 2004-01-20 
審決日 2004-02-03 
出願番号 特願平9-367345
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐野 遵小菅 一弘  
特許庁審判長 鈴木 公子
特許庁審判官 奥 直也
山崎 豊
発明の名称 光記録ディスク用シートおよび光記録ディスク  
代理人 石井 陽一  

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