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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない B65G
審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 無効としない B65G
審判 全部無効 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 無効としない B65G
管理番号 1094372
審判番号 無効2003-35163  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1986-09-19 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-04-22 
確定日 2004-03-29 
事件の表示 上記当事者間の特許第1856791号発明「小物物品検査装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
1.本件特許第1856791号の特許請求の範囲第1項に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)についての出願は、昭和60年3月14日を出願日とするものであって、平成6年7月7日にその発明について特許権の設定登録がなされた。
2.これに対し、平成15年4月22日に、池上通信機株式会社(以下、「請求人」という。)により、本件特許発明を無効にすることについて審判請求がなされた。
3.その後、審判請求書の副本が特許権者であるカネボウ株式会社(以下、「被請求人」という。)に送達され、被請求人は、平成15年7月22日に答弁書を提出した。
4.請求人は、平成15年10月7日に口頭審理陳述要領書及び証拠提出書を、平成15年10月28日に弁駁書及び証拠提出書を提出した。
5.被請求人は、平成15年11月18日に答弁書(2回目)を提出した。
6.請求人は、平成15年12月4日に上申書を提出した。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件特許発明に係る特許を無効にする。審判費用は被請求人の負担にする。」との審決を求め、その無効とする理由(以下、「無効理由」という。)として、概略次のように主張している。

1.無効理由1(記載不備)について
本件明細書の記載が、下記のとおり特許法第36条第4項、第5項に規定する要件を満たしていないので、本件特許は同法第123条第1項3号に該当し、無効とされるべきである。
(1)「スリットと搬送用索条との間に空隙を有しない」構成について
特許請求の範囲第1項には、小物物品を効率よく吸引でき、搬送用索条に保持するために欠くことができない事項である「スリットと搬送用索条との間に空隙を有しない」点が記載されていない。しかも、本件出願後に被請求人によりなされた実用新案登録出願に係る甲第1号証(実公平7-38247号公報)の「搬送用ベルト6、7は単にガイドレール4、5に嵌入しているだけであり、しかもガイドレール4、5と搬送用ベルトには多少の隙間があるため」との記載によれば、本件特許発明においても、ガイドレールと搬送用索条との間に隙間があると解すべきであり、特許法第36条第5項に規定する要件に適合していないので、本件特許は同法第123条第1項3号に該当し、無効とされるべきである。(平成15年4月22日付けの審判請求書)

(2)「センタリング」について
本件明細書に記載された「センタリング」という作用がどのように奏されるのか、発明の詳細な説明の欄に当業者が容易に実施し得る程度に記載されていない。
本件明細書の記載、甲第8号証(平成15年10月28日付けの証拠提出書に添付された特開平7-19822号公報)、本件特許発明に係る願書に最初に添付した明細書の内容を公開する甲第9号証(同特開昭61-211209号公報)の記載、及び小物物品はスリットに近い部分が吸引されて一方の搬送用索条に先に接触するという前提によれば、「センタリング」は、小物物品と搬送用索条とが接触した後、搬送用索条において生じると解すべきであり、材質に応じて表面摩擦係数の異なる小物物品に対して、このようなセンタリングが達成されるための搬送用索条の材質、断面形状が特許請求の範囲第1項にも何ら記載されておらず、本件明細書の記載が特許法第36条第4項、第5項に規定する要件を満たしていないので、本件特許は同法第123条第1項3号に該当し、無効とされるべきである。(平成15年4月22日付けの審判請求書、平成15年10月28日付けの弁駁書及び証拠提出書、平成15年12月4日付けの上申書)

(3)「直交配列」について
本件明細書によれば、「第1の搬送装置」と「第2の搬送装置」とを直交する状態に配列したものも含むが、直交したものであれば、小物物品に含まれる「円筒状」のものについては、搬送用索条間に入り込む凸面はなく、センタリングすることが不可能である。
したがって、特許請求の範囲に記載された構成と明細書に記載された作用効果が対応せず、本件明細書の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないので、本件特許は同法第123条第1項3号に該当し、無効とされるべきである。(平成15年4月22日付けの審判請求書)

2.無効理由2(進歩性の欠如)について
本件特許発明は、下記のとおり、証拠として提出する甲第2号証(特開昭55-22370号公報)及び甲第3号証の1(米国特許第3,197,201号明細書)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであって、本件特許発明は、特許法第123条第1項第1号に該当し無効とされるべきものである。
(1)甲第2号証に記載された発明
甲第2号証の記載事項と図面の記載を総合すると、甲第2号証には次のような発明が記載されている。
「上下面が夫々凸面をなす錠剤を検査する装置であって、
第1のドラム状搬送部3の吸着搬送経路終端と第2のドラム状搬送部4の吸着搬送経路始端とを対向させて転送位置Pとし、前記錠剤が第1のドラム状搬送部3から第2のドラム状搬送部4に受け渡されるとき、錠剤の吸着されていた凸面と反対の面が新たに吸着保持され、
前記第1,第2のドラム状搬送部3,4は、搬送域範囲に区画してドラム内方に固定仕切壁18によって真空室19が形成され、
前記第1および第2のドラム状搬送部の吸着搬送経路のそれぞれを前記錠剤の観測装置であるテレビカメラ5,6に臨ませた錠剤検査装置。」

(2)甲第3号証の1に記載された発明
甲第3号証の1の記載事項と図面の記載を総合すると、甲第3号証の1には次のような発明が記載されている。
「吸気口となる空間38とこの空間38の両側にそれぞれ設けたベルト軌道48と穿孔33を介して前記空間38に連通する真空マニホールドと、
前記ベルト軌道48に個別に案内されて走行する2本のエンドレスベルト21,21と、
この2本のエンドレスベルト21,21により前記空間38の縁部に形成した吸着搬送経路とからなる
ベルト上にカードを吸着して搬送するカード搬送システム。」

(3)対比・検討
[対比]
本件特許発明と、甲第2号証記載の発明とを対比すると、後者の「錠剤」、「真空室」、「ドラム状搬送部3,4」及び「錠剤の観測装置であるテレビカメラ5,6」は、前者の「小物物品」、「負圧室」、「第1,第2の搬送装置」及び「小物物品の外観又は欠陥の検査部」にそれぞれ相当するので、両者は、次の一致点及び相違点を有する。

(一致点)
「上下面がそれぞれ凸面をなす小物物品を検査する装置であって、
第1の搬送装置の吸着搬送経路下流端と第2の搬送装置の吸着搬送経路上流端とを対向させて、前記小物物品が第1の搬送装置から第2の搬送装置に受け渡されるとき、吸着保持される前記小物物品の一側面と反対の面が新たに吸着保持されるとともに、
前記第1及び第2の搬送装置の吸着搬送経路のそれぞれを前記小物物品の外観または欠陥の検査部に臨ませた小物物品検査装置。」

(相違点)
(ア)第1及び第2の搬送装置が、本件特許発明では吸気口となるスリットとこのスリットの両側の各縁部にそれぞれ設けられたガイドレールと排気口とを有する負圧室と、前記各ガイドレールに個別に案内されて走行する2本の搬送用索条と、この2本の搬送用索条により前記スリットの前記縁部に形成した吸着搬送経路を備えているのに対し、甲第2号証記載の発明ではドラム状搬送部であって、そのような構成を備えていない点。
(イ)本件特許発明では第1及び第2の搬送装置が排気口に接続され、負圧室から空気を排出する吸引手段を備えているのに対し、甲第2号証記載の発明ではそのような構成を備えているかいないか明確ではない点。
[検討]
上記相違点につき検討する。
(ア)について
本件明細書において第3の従来例としている甲第6号証によれば、「収容穴14の底面中央に開口する真空吸引孔を周方向に沿った長溝19に形成しておくことにより、錠剤11に働く真空吸着力は搬送方向に沿って線状に均一に作用することになるため、前記転送過程における姿勢制御が安定して行われ易い。」と記載されている(第6欄第38〜43行)ように、安定した姿勢制御の下で転送姿勢が正しく保持されながら錠剤は搬送されるのである。更に、互いに平行な関係にある隙間上に錠剤を載置すると安定した保持が可能であることを教示しており、本件特許発明のように2本の搬送用索条を用いた搬送手段を示唆するものである。
そして、甲第3号証の1には前記のとおり
「吸気口となる空間38とこの空間38の両側にそれぞれ設けたベルト軌道48と穿孔33を介して前記空間38に連通する真空マニホールドと、
前記ベルト軌道48に個別に案内されて走行する2本のエンドレスベルト21,21と、
この2本のエンドレスベルト21,21により前記空間38の縁部に形成した吸着搬送経路とからなる
ベルト上にカードを吸着して搬送するカード搬送システム。」
の発明が記載されており、この発明における「空間38」、「ベルト軌道48」、「真空マニホールド」、「エンドレスベルト」は、特許請求の範囲第1項に係る本件特許発明における「スリット」、「ガイドレール」、「負圧室」、「搬送用索条」に相当するので、上記相違点に係る本件特許発明の構成を採用することは、当業者が甲第3号証の1に記載された発明に基づいて容易になし得ることである。
なお、甲第3号証の1に記載された発明におけるカード搬送システムにおいて、所謂「吸引搬送手段」と、カードガイド34及びローラ列41とは一体不可分の関係にはなく、これらを除外して「吸引搬送手段」自体を一つの発明として当業者は認識できる。
このことは、当業者が技術常識等に照らして、先行文献に記載されている事項の中からある部分を抽出することが可能であるならば、その特定の部分をもって先行技術として認定することは当然に許されることであるとの甲第10号証の判示からも明らかである。
さらに、甲第3号証の1に記載された発明の権利者と同一の会社によって取得されている特許の一つに、米国特許第3,137,496号(甲第7号証)があるが、甲第7号証にカードガイドや保持ローラーが記載されていないこと、さらには本件明細書において引用されている第1の従来例(米国特許第3,433,375号明細書)でも、カードガイドや保持ローラを用いていないことからも、これらが一体不可分のものでないことが明らかである。
また、甲第3号証の1の「軌道48上の溝の位置、空間38を設けた軌道の横間隔、及び加えられた真空は、カードをベルト上にしっかりと保持しつつも、カードに傷を付けたりあるいはその他の損傷を与え得る、カードの中央に向かうどの面にも、カードが接触するのを防止する。」(甲第3号証の2:訳文3頁9〜13行)との記載からすれば、カードガイドとカードとの間には必要なゆとりがあって、両者が接触することを前提としていないのは明らかであることからも、カードガイドは、小物物品の搬送という目的を達成する手段としては不要である。

(イ)について
負圧室に排気口を設け、排気口に接続され、負圧室から空気を排気する吸引手段については、甲第2号証にも、甲第3号証の1にも明記はされていないが、「真空室」や「真空マニホールド」が用いられている以上、技術常識からみて当然採用されているものと解すべきものである。

以上のとおりであるから、本件特許発明は、甲第2号証及び甲第3号証の1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであって、本件特許は、同法第123条第1項第1号に該当し無効とされるべきものである。
(平成15年4月22日付けの審判請求書、平成15年10月7日付けの口頭審理陳述要領書、平成15年10月28日付けの弁駁書及び証拠提出書、平成15年12月4日付けの上申書)
3.証拠方法
甲第1号証 :実公平7-38247号公報
甲第2号証 :特開昭55-22370号公報
甲第3号証の1:米国特許第3,197,201号明細書
甲第3号証の2:甲第3号証の1の訳文
甲第4号証の1:米国特許第3,722,665号明細書
甲第4号証の2:甲第4号証の抄訳
甲第5号証 :「本件審判事件の口頭審理について」
(当審の審判長が平成15年9月16日付けで送付したFax送信文)
甲第6号証 :特公昭58-32125号公報
甲第7号証 :米国特許第3,137,496号明細書
甲第8号証 :特開平7-19822号公報
甲第9号証 :特開昭61-211209号公報
甲第10号証 :東京高裁平成10年9月2日判決(平成9年(行ヶ)
第217号)

第3 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、請求人が主張する無効理由に対して、概略、次のように反論している。

1.無効理由(記載不備)に対して
(1)「スリットと搬送用索条との間に空隙を有しない」構成について
本件特許発明は、
「(ロ)吸気口となるスリットとこのスリットの両側の各縁部にそれぞれ設けたガイドレールと排気口とを有する負圧室と、
(ハ)前記各ガイドレールに個別に案内されて走行する2本の搬送用索条と、
(ニ)この2本の搬送用索条により前記スリットの前記縁部に形成した吸着搬送経路と」を有し、この(ロ),(ハ)及び(ニ)に係る構成は、発明の技術思想として、「スリットと搬送用索条との間に空隙を有しない」構成を意味するものであり、請求人の主張は失当である。
また、本件特許出願と甲第1号証の出願とは何ら法律的な関係がなく、甲第1号証の記載内容を基に本件特許発明を解釈することは許されないというべきである。この点においても、請求人の主張は失当である。

(2)「センタリング」について
本件特許発明における「センタリング」は、負圧の吸引吸着作用によって、小物物品の中心が2本の搬送用索条間の中心位置に近づく作用を意味するものであり、かかる「センタリング作用」は、搬送用索条の材質や断面形状に拘わりなく発現され、小物物品が上下面凸面をなしたものである場合には、これが顕著に現れる。
したがって、本件明細書の記載は特許法第36条第4項、第5項の規定に何ら違反していない。

(3)「直交配列」について
「第1の搬送装置X1と第2の搬送装置X2とを直交する状態に配列した」態様は、実施例の変形例について記載したにすぎないものである。実施例の装置では、円筒状の小物物品であっても、第1の搬送装置X1から第2の搬送装置X2にセンタリングした状態で受け渡しすることができるのであるから、何ら特許法第36条第4項の規定に違反するものではない。
因みに、小物物品が上下凸面の円形錠等であれば、第1の搬送装置X1と第2の搬送装置X2とが直交状態に配列されていても、当該小物物品をセンタリングした状態で第2の搬送装置X2に受け渡し可能である。

2.無効理由2(進歩性の欠如)に対して
(1)甲第2号証に記載された発明について
甲第2号証には、本件特許発明の特徴的構成たる、
i)吸気口となるスリットとこのスリットの両側の各縁部にそれぞれ設けたガイドレールと排気口とを有する負圧室を備える点(構成B)、
ii)各ガイドレールに個別に案内されて走行する2本の搬送用索条を備える点(構成C)、
iii)2本の搬送用索条によりスリットの縁部に吸着搬送経路を形成した点(構成D)、
iv)小物物品が第1の搬送装置から第2の搬送装置に受け渡されるとき、2本の搬送用索条にまたがり、かつ、凸面の一部が2本の搬送用索条の間に入り込んだ状態で吸着保持される小物物品の前記凸面と反対の面が新たに吸着保持されるように設けられる点(構成H)
については何らの記載もなく、本件特許発明と甲第2号証に記載の発明とはかかる点において明らかに相違している。
これに対し、本件特許発明では、上記構成(構成B,C,D及びH)を採用し、2本の搬送用索条に小物物品を吸着,保持して搬送するようにしたので、搬送対象の小物物品が左右に揺動したり、脱落したり、或いは破損するといったことがなく、小物物品の大きさによらず、これを安定して搬送することができるといった優れた顕著な効果を奏する。したがって、各小物物品の向きや姿勢等が受け渡し過程で大きく変化することなく一定し、確実かつ正確な検査が可能である。また、小物物品の搬送ピッチを全く制御する必要がないという利点もある。

(2)甲第3号証の1に記載された発明について
本件特許発明では、実施例にも記載されるように、2つの搬送装置を上下に並設することができ、上側の搬送装置については、ガイドレールに案内される搬送用索条の下面に、落下することなく、即ち、搬送用索条から離脱することなく被搬送物を吸着せしめてこれを搬送することができるようになっている。即ち、本件特許発明における吸着搬送経路(構成D)は、小物物品を搬送用索条に吸着して搬送する経路のことをいうのであって、吊下げ状に搬送用索条の下面に小物物品を吸着させても、これが搬送用索条から離脱して落下することの無い吸着力を有するものをいう。
これに対し、甲第3号証の1に記載のカード搬送システムは、カードの上方向の移動や横方向の移動が生じるのを前提とし、これを制動すべくカード・ガイドや保持ローラを必須の構成として備えており、カード・ガイドにより制御されてはじめて横方向へのぶれを生じることなく搬送方向を定めることができ、また、保持ローラにより制御されてはじめて上方向へのぶれを生じることなく搬送方向を定めることができる。
即ち、甲第3号証の1に記載のカード搬送システムにおいては、吸引力によりカードがベルト上に維持されているものの、カード・ガイドや保持ローラによる制御がない限り、横方向や上方向へのぶれを生じて、搬送方向を定めることができず、カード・ガイドや保持ローラを備えない構成では、システムを上下反転させた場合、被搬送物がベルト上に吸着されず、落下する可能性が極めて高い。
また、本件特許発明では、上述の図4及び図5で例示したように、小物物品の中心位置が2本の搬送用索条間の中心位置Lから所定距離だけオフセットした位置にある場合、小物物品がスリット部に作用している負圧によって吸引され、2本の搬送用索条間の中心位置Lに近づく、即ち、センタリングされるという効果が奏されるが、甲第3号証の1には、当該カード搬送システムにおいてセンタリング効果が奏される旨の記載は一切なく、その示唆もない。
このように、甲第3号証の1に記載のカード搬送システムは、本件特許発明における吸着搬送経路(構成D)を有していない。

(3)本件特許発明の容易想到性について
回転ドラムの回転運動によって錠剤を搬送する甲第2号証に記載の固形製剤外観検査装置と、水平且つ直線方向にカードを搬送する甲第3号証の1に記載のカード搬送システムとは、その搬送形態が大きく異なるが故に、そもそも両装置を組み合わせることに困難性が認められるのみならず、仮に、何らかの創作力を働かせた結果、両者の構成を組み合わせることができたとしても、それは、甲第2号証に記載の「第1のドラム状搬送部」及び「第2のドラム状搬送部」に代えて、甲第3号証の1に記載のカード搬送システムのカード・ガイドや保持ローラを含む全体構成を適用した固形製剤外観検査装置ということになる。
しかしながら、甲第3号証の1に記載のカード搬送システムは、保持ローラ若しくはカード・ガイドを必須の構成として備えているため、例え2つの搬送システムを並設し、一方の搬送下流端と他方の搬送上流端とを対向させた構成としても、保持ローラやカード・ガイドが邪魔になって、一方の搬送システムから他方の搬送システムに被搬送物品を受け渡すことができないという致命的な欠陥を有するものとなる。また、保持ローラを有するカード搬送システムでは、これが障害となって、粒状の錠剤などを搬送することがそもそもできない。
このように、甲第2号証に記載の「第1のドラム状搬送部」及び「第2のドラム状搬送部」に代えて、甲第3号証の1に記載のカード搬送システムを適用したとしても、本件特許発明に係る小物物品検査装置とすることはできない。
また、甲第3号証の1には、上下面が凸面をなした座りの悪い小物物品を搬送し得るといった記載も一切ない。更に、本件特許発明が奏するセンタリング効果についての記載も何ら見当たらない。また、カード・ガイドや保持ローラの補助無しには被搬送物を安定して搬送し得ないことが明示されている。
してみると、一方の搬送装置から他方の搬送装置に被搬送物を受け渡す際に、両者の動作を極めて高精度に同期させなければならないという明確な課題を有する甲第2号証に記載の固形製剤外観検査装置と、吸引力が弱く、カード・ガイドや保持ローラの補助無しには被搬送物を安定した状態で搬送することができないという欠点を有する甲第3号証の1に記載のカード搬送システムとを結びつける動機付がそもそも存在していないと言わなければならない。
このように、甲第2号証と甲第3号証の1とを結びつける動機付がそもそも存在しないが、仮に、そうでないとしても、甲第2号証及び甲第3号証の1には、本件特許発明の構成D及びHが開示されておらず、甲第2号証及び甲第3号証の1から本件特許発明を容易には想到することができない。
本件特許発明では、2本の搬送用索条によってスリットの縁部に吸着搬送経路を形成することで(構成D)、上述したセンタリング効果が奏され、かかるセンタリング効果が得られることによって、第1の搬送装置の吸着搬送経路下流端から、対向する第2の搬送装置の吸着搬送経路上流端へと、小物物品を安定した状態で受け渡すことが可能となったのである。また、上下面が凸面をなした小物物品であっても、これが2本の搬送用索条にまたがりかつ、凸面の一部が2本の搬送用索条の間に入り込んだ状態で吸着保持されるので、この意味においても小物物品を安定して搬送することができる。
このように、本件特許発明によれば、甲第2号証及び甲第3号証の1に記載の各発明では奏し得ない顕著な効果が奏される。

(4)むすび
以上のように、如何に当業者と云えども甲第2号証及び甲第3号証の1に記載された発明から本件特許発明を容易に想到することはできない。

第4 当審の判断
1.無効理由1(記載不備)について
(1)「スリットと搬送用索条との間に空隙を有しない」構成について
本件明細書の発明の詳細な説明には、「空隙」について次のように記載されている。(下線は、当審で付加)
(a)「第1の従来例(米国特許第3,433,375号)は、吸気用の開口と、この開口の近傍に設けられ、アイドルローラに支持されるコンベアベルトとを備え、コンベアベルト上の食パンなどの物体を開口の吸引力によりコンベアベルト上に保持する搬送装置を開示している。」(本件公告公報である特公平5-65405号公報(以下、「本件公告公報」という。)第2頁第3欄7〜12行)
(b)「第1の従来例は、吸気用の開口と、アイドルローラに支持されたコンベアベルトが別々に設けられているため、開口とコンベアベルトとの間に空隙を有し、この空隙を通して開口内に吸引される空気流を生じ、即ち、物体の前後、左右(全周)からの空気流を生じ、物体の下方に生じる空気流の速度差は僅かなものとなる。その結果、物体の下方における圧力は大気圧とさほどの圧力差を生じないこととなって、物体をコンベアベルトに吸着させるのが困難となるので、開口によって物体を吸引する吸引効率が低くなり、物体をコンベアベルト上に保持する保持力が小さくなって安定な搬送が困難になる。
そのため、物体と開口の間隙を極めて僅かに調整する必要があり、また必要以上に間隙を狭くすると物体と開口が接触して物体を搬送できないという不都合を生じ、また吸引手段の能力を過大なものとしてしなければならないという欠点がある。さらに所定間隔を隔てて並設される複数のアイドルローラによりコンベアベルトを支持していることから、隣接するアイドルローラ間ではコンベアベルトが支持されず、開口とコンベアベルトの間隔が一定しないため、物体と開口が接触し易い構造なり、搬送の障害となる。特に上下面が凸面をなす物品を搬送する場合には上記障害が顕著に現れる。」(本件公告公報第2頁第3欄35行〜第4欄16行)
(c)「本件特許発明によれば、つぎの効果がある。すなわち、
(1)吸引口となるスリットの両側の各縁部にそれぞれガイドレールを設け、ガイドレールに搬送用索条を案内して吸着搬送経路を形成したため、スリットと搬送用索条との間に空隙を有しないので、小物物品と搬送用索条とが接触している部分における小物物品の左右からの空気流は生じず、前後方向からの空気流のみである。その結果、小物物品の下方の空気流の速度差は第1の従来例と比較して大きなものとなり、相応の大きな吸引力を得ることができ、そのため小物物品を効率よく吸引でき搬送用索条に保持することができる。」(本件公告公報第7頁第13欄29〜43行)
これらの記載事項(a)〜(c)によると、「空隙」の技術的意義は、米国特許第3,433,375号にみられるような、吸気用の開口とアイドルローラに支持されたコンベアベルトとの間にあるような空隙であって、その空隙によって物体の前後、左右(全周)からの空気流を生じ、物体の下方に生じる空気流の速度差を僅かなものにするような空隙(以下、「従来技術のような空隙」という。)と解することができる。
そうすると、本件明細書に記載された「スリットと搬送用索条との間に空隙を有しない」の技術的意義は、「スリットと搬送用索条との間に従来技術のような空隙を有しない」と解するのが相当である。
そして、上記記載事項(c)によると、「スリットと搬送用索条との間に空隙を有しない」のは、「吸引口となるスリットの両側の各縁部にそれぞれガイドレールを設け、ガイドレールに搬送用索条を案内して吸着搬送経路を形成」するとの特定の構成によるものであることは明らかである。
加えて、このような特定の構成は、本件明細書の特許請求の範囲に「(ロ)吸気口となるスリットとこのスリットの両側の各縁部にそれぞれ設けたガイドレールと排気口とを有する負圧室と、(ハ)前記各ガイドレールに個別に案内されて走行する2本の搬送用索条と、(ニ)この2本の搬送用索条により前記スリットの前記縁部に形成した吸着搬送経路」と具体的に記載されている。
してみると、本件明細書の特許請求の範囲には「スリットと搬送用索条との間に空隙を有しない」ようにするために欠くことができない事項が記載されていないということはできない。
なお、請求人は、本件特許発明に係る出願後に被請求人がした実用新案登録出願の明細書(甲第1号証)中に「搬送用ベルト6、7は単にガイドレール4、5に嵌入しているだけであり、しかもガイドレール4、5と搬送用ベルトには多少の隙間がある」と記載されているのを挙げて、本件特許発明が「スリットと搬送用索条との間に空隙を有しない」というものではないと主張している。
しかしながら、上記甲第1号証の明細書は、本件特許発明に係る出願とは別のものであって、しかもそれより後の出願に係るものであること、及び上記甲第1号証の明細書に記載された「空隙」は、「スリットと搬送用索条との間の空隙」とは別の「ガイドレールと搬送用索条との間の空隙」であって、ガイドレールに沿って走行する搬送用索条との間に不可避的に生じるものと解される多少の隙間であって、上記「ガイドレールと搬送用索条との間の空隙」とその技術的意義を異にするものであると解されること、を併せて考慮すると、上記主張は本件明細書の特許請求の範囲には「スリットと搬送用索条との間に空隙を有しない」ようにするための欠くことができない構成が記載されていない、との根拠として採用することはできないものである。
以上のとおり、請求人の主張する「スリットと搬送用索条との間に空隙を有しない」構成に係る理由によっては、本件明細書の記載は、特許法第36条第5項を満たしていないとすることはできない。

(2)センタリングについて
本件明細書には、「センタリング」について、次のように記載されている。(下線は、当審で付加)
(a)「(iii)搬送用索条6、7を構成するエンドレスベルトが丸ベルトであるため、小物物品mの側部から底部にかけて相当広い範囲にわたって吸着面から浮き上がった状態で吸着保持することができる。
一方、小物物品mの上下面が凸面であるため、2本の搬送用索条6、7にまたがりかつ、凸面の一部が2本の搬送用索条6、7の間に入り込んだ状態で吸着保持され、小物物品mの重心が搬送用索条6、7の中央位置にセンタリングしすい。 また、各スリット板1、2の内面が外広がりのテーパ面1a、2aに形成されているため、スリット3におけるエア抵抗が少ない。したがって、吸引力が強く、小物物品mをスリット3において、自動的にセンタリングすることができる。」(本件公告公報第4頁第7欄31行〜同第8欄3行)
(b)「(2)上下面がそれぞれ凸面をなした座りの悪い小物物品であるが、小物物品が2本の搬送用索条にまたがりかつ、その凸面の一部が2本の搬送用索条の間に入り込んだ状態で保持されているため、小物物品の重心が2本の搬送用索条に近づくので小物物品が左右に揺動したり脱落したりすることもなく搬送用索条に安定して保持される。しかも吸引作用により小物物品が搬送用索条に吸着されるため、小物物品を2本の搬送用索条上にセンタリングして保持することができる。
(3)第1の搬送装置の吸着搬送経路下流端と第2の搬送装置の吸着経路上流端を対向させたため、第1の搬送装置から第2の搬送装置に小物物品を受け渡すに際し、小物物品が搬送用索条間でセンタリングされていることもあって、第1の搬送装置から第2の搬送装置へ円滑に移行することができ、小物物品の破損もない。これにより、第1の搬送装置の2本の搬送用索条上にセンタリングされた小物物品を受け渡し後も第2の搬送装置の2本の搬送用索条上にセンタリングして保持することができる。したがって、各小物物品の向き、姿勢等が受渡し過程で大きく変化することもなく一定し、確実かつ正確な検査が可能となる。また搬送装置の検査部において、寸法検査等における誤計測が防止され、安定した検査が可能となる。」(本件公告公報第7頁第14欄6〜32行)
上記各記載によれば、本件特許発明の搬送装置においては、上下面がそれぞれ凸面をなす小物物品が、スリット両側の各縁部に設けられたガイドレールに案内される2本の搬送用索条間に吸着される際に、「センタリング」が生じることは、当業者であれば容易に理解されるところ、本件特許請求の範囲には、本件特許発明の搬送装置が、「上下面がそれぞれ凸面をなす小物物品」を搬送の対象とすること、及び2本の搬送用索条間に吸着保持されて搬送されることが明記されているから、本件明細書には、この点に関し、なんらの記載の不備はない。
なお、請求人は、本件特許発明に係る出願後に被請求人がした特許出願の明細書(甲第8号証:特開平7-19822号公報)の記載「【0022】而して、かかる吸着時には検査対象物(1)がエンドレス丸ベルト(53a)(53b)に沿って移動し、自然とセンタリングがなされ、この作用はカプセルや錠剤等の被吸着面が曲面の場合特に顕著である。よって、検査対象物(1)検査ラインの所定の位置に常に吸着されて移送される。」を挙げて、本件特許発明においても、小物物品と搬送用索条とが接触した後センタリングが生じると主張している。
しかしながら、上記甲第8号証の明細書は、本件特許発明に係る出願とは別のものであって、しかもそれより後の出願に係るものであること、及び上記甲第8号証の記載を、「検査対象物(1)がエンドレス丸ベルト(53a)(53b)に沿って移動」することと「自然とセンタリングがなされ」ることとが、「吸着時」に並列的になされることを記載したものとも解されること、を併せて考慮すると、上記主張は、本件明細書の特許請求の範囲には「センタリング」を達成するための欠くことができない構成が記載されていない、との根拠として採用することはできないものである。
してみると、請求人が請求書及び弁駁書などにおいて主張している「センタリング」に関する記載不備に係る理由によっては、本件明細書の特許請求の範囲には、発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項が記載されていない、とすることはできない。

(3)直交配列について
本件特許発明において、上下面がそれぞれ凸面をなす小物物品が、スリット両側の各縁部に設けられたガイドレールに案内される2本の搬送用索条間に吸着される際に、センタリングが生じることは、上述のとおりである。
請求人は、第1の搬送装置と第2の搬送装置が直交する場合において、円筒状の小物物品はセンタリングが不可能であるから、この場合を明示的に排除していない本件明細書に36条の記載不備がある旨主張する。
たしかに、第1及び第2の搬送装置の搬送用索条が平行に配置されるか、角度をもって配置されるかによって、センタリングに差が生じ得ることはあり得るが、「上下面がそれぞれ凸面をなす小物物品」が、例えば医薬カプセルのような円筒状のものであったとしても、その形状や寸法、二つの搬送用索条がなす角度によっては、センタリングが全く不可能となるものではないことは、当業者に自明であり、加えて、所望のセンタリングが可能となるよう、小物物品の形状や寸法と第1及び第2の搬送装置の配列の組み合わせを選択して、本件特許発明を実施することは、当業者が本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて、格別の困難を伴うことなく想到することが可能であるというべきである。
したがって、請求人が請求書及び弁駁書において主張している「直交配列」に係る記載不備の主張は、採用できない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、請求人が無効理由1(記載不備)で主張するいずれの理由によっても、本件明細書の記載が、特許法第36条第4項、第5項に規定する要件を満たしていないとすることはできない。

2.無効理由2(進歩性の欠如)について
(1)本件特許発明
本件特許発明の要旨は、特許権の設定登録時の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものである。
「(イ)上下面がそれぞれ凸面をなす小物物品を検査する装置であつて、
(ロ)吸気口となるスリットとこのスリットの両側の各縁部にそれぞれ設けたガイドレールと排気口とを有する負圧室と、
(ハ)前記各ガイドレールに個別に案内されて走行する2本の搬送用索条と、
(ニ)この2本の搬送用索条により前記スリットの前記縁部に形成した吸着搬送経路と、
(ホ)前記排気口に接続され、前記負圧室から空気を排気する吸引手段とを有する第1および第2の2つの搬送装置を備え、
(ヘ)前記第1の搬送装置の吸着搬送経路下流端と前記第2の搬送装置の吸着搬送経路上流端とを対向させて、前記小物物品が第1の搬送装置から第2の搬送装置に受け渡されるとき、前記2本の搬送用索条にまたがりかつ、前記凸面の一部が前記2本の搬送用索条の間に入り込んだ状態で吸着保持される前記小物物品の前記凸面と反対の面が新たに吸着保持されるように配設するとともに、
(ト)前記第1および第2の搬送装置の吸着搬送経路のそれぞれを前記小物物品の外観または欠陥の検査部に臨ませた小物物品検査装置。」

(2)甲第2号証に記載された発明
請求人が提出した甲第2号証である特開昭55-22370号公報(以下、「甲第2号証」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(2-1)「図において1は固形製剤(以下「錠剤」を例にして述べる)の供給ホッパ、2は供給ドラム、3は第1のドラム状搬送部(以下「第1ドラム」と称する)、4は第2のドラム状搬送部(以下「第2ドラム」と称する)、5,6は第1および第2ドラム3,4の外周に近接配置された例えば工業用テレビカメラを用いた観測装置、7は前記両観測結果を基にして製剤の良否を総合的に判別する回路からなる判定装置、8は第2ドラム4における搬送行程の終端位置に良品移送管9を介して連通された良品回収タンク、10は終端より手前位置に不良品移送管11を介して接続された不良品回収タンク、12は錠剤、13はホッパ1と供給ドラム2の内方空間とを結ぶシュートである。」(第1頁右下欄15行〜第2頁左上欄8行)

(2-2)「更に第2図に示すごとく、供給ドラム2は内方空間14を錠剤貯蔵室とし、かつ外周には定所間隔に配列された貫通孔としてなる錠剤収容孔15が設けられ、しかもドラムの下部外周域には収容孔15からの錠剤の脱落を防ぐ外側ガイド16が配置されている。一方、第1および第2ドラム3,4の外周には前記の収容孔15と等ピッチの所定間隔で、外周にポケット状としてなる収容穴17が設けられている。またドラム3,4における錠剤搬送域範囲に区画してドラム内方には固定仕切壁18によって真空室19が設けられ、周方向のスリット状真空吸引溝20を介して前記の収容穴17と連通し、収容穴17に負圧が作用するよう構成されている。・・・。上記の各ドラム2,3,4は図示のごとく外周面が相接対向するよう左右に並べて配置されており、それぞれが駆動モータにベルトを介して連動連結されて相互に位相を合わせて矢印方向に同期回転駆動される。」(第2頁左上欄8行〜同頁右上欄10行)

(2-3)「この構成により、各ドラムの回転に伴ってホッパ1より供給ドラム2内へ導入貯蔵された錠剤12は1個づつ収容孔15内へ落ち込み、ガイド16にガイドされながら右上方へ移送される。錠剤12がドラム2とドラム3と相接する転送位置Pまで移送されると、ドラム3側の負圧作用を受けて錠剤12はドラム2の収容孔15からドラム3の収容穴17へ吸着転送される。その後、錠剤はドラム3の上面域を搬送され、更にドラム3とドラム4との間の転送箇所Pを経てドラム4の下面域を吸着搬送される。この搬送行程の途中でテレビカメラ5,6により錠剤12は片側半分づつの表面が観測される。判別結果により不良品と判定された錠剤は、ノズル22の作用で不良品回収タンク11へ選別排出され、残りの良品は全てノズル21の作動で良品回収タンク8へ搬出回収される。」(第2頁右上欄11行〜同頁左下欄6行)

これらの記載によれば、甲第2号証には、次のとおりの発明が記載されているものと認められる。
「錠剤の外観を検査する装置であって、
スリット状真空吸引溝20を有し内部に固定仕切壁18によって仕切られた真空室19と、
この真空室19に前記スリット状真空吸引溝20を介して連通する収容穴17をそれぞれ有し、錠剤をこの収容穴17で吸着搬送する第1のドラム3と第2のドラム4を備え、
前記第1のドラム3の吸着搬送経路と第2のドラム4の吸着搬経路とを対向させて、前記錠剤が第1のドラム3の収容穴17から第2のドラム4の収容穴17に受け渡されるとき、第1のドラム3と第2のドラム4とが相接する転送位置Pで、錠剤の吸着されていた片側とは反対の片側が新たに吸着保持されるように配設するとともに、
前記第1,第2のドラム3,4の吸着搬送経路のそれぞれにテレビカメラ5,6を臨ませた、錠剤の表面検査装置。」
(以下、「甲第2号証発明」という。)

(3)甲第3号証の1に記載された発明
請求人が提出した甲第3号証の1である米国特許第3,197,201号明細書(以下、「甲第3号証の1」という。)には、その訳文である甲第3号証の2をも参酌すれば、図面とともに次の事項が記載されている。
(3-1)「直立部材12に固定されている基盤部32は、基盤部上を通過するベルト周辺の領域と、その下面に固定されている真空マニホールドとを連通する、穿孔列若しくは孔列33を有する。1対のカード・ガイド34は、ネジ手段36により基盤部に固定されている。カード・ガイドと基盤部との間には、図4においてより明確に示されているように、ベルト軌道48がある。軌道48は、基盤部下方にある真空をベルト周辺の領域に連絡させる空間38をその間に有する。参照番号39にて指示されている、カード・ガイド34および軌道48の一部分が省略されている部分は、穿孔33の位置での基盤部の構造を図示している。ベルト21の上方には、ローラー列41が設けられている。ローラーは、ローラーの各端部がスペーサー43によって離れた状態で、カードガイド34上に支持されている軸42上に載置される。
図2は、正面図を示し、直立部12が順に支持する軸46上に固定された一連の補助遊動ローラー44を図示している。真空マニホールド30は、基盤部32に固定されている。点線で囲まれた部分は、本発明の一部ではないものの本発明に関連して使用することができる、カード供給部、カード読取部、カード取出部等の装置を示す。」(甲第3号証の2:第2頁16〜31行)

(3-2)「図4は、図1の直線4-4に沿った切断面の拡大図であり、ベルト軌道48の構造と、ベルト21が溝49の概ね半分覆われるとともにカード51を支持するために半分露出するようにベルト21を支持している半円溝49の構造を、より明確に示している。カード・ガイド34は、直線54にて面取り端部53と交差する垂直側面52を有する。
好適な構造は、カード51の端部の上に少しかぶさるような距離で互いに離れた垂直壁52を有しており、カード・ガイドの面取り縁部は、カードの通過に必要な空間を設けるとともに、ベルト21によってカードが移送される際のカードの経路を定める横方向の限界を設けている。ローラー41は、カード51をベルト21に対してしっかりと保持するために孔手段33によって供給される真空を補助するため、通常はベルト21の上方にあってそこに非常に近接した場所に配置される。」(甲第3号証の2:第2頁35行〜第3頁6行)

(3-3)「代表的実施例における構造により、毎秒2500フィートも特別な速度とはならない程の超高速でカードを搬送することができる。軌道48上の溝の位置、空間38を設けた軌道の横間隔、及び加えられた真空は、カードをベルト上にしっかりと保持しつつも、カードに傷を付けたりあるいはその他の損傷を与え得る、カードの中央に向かうどの面にも、カードが接触するのを防止する。基盤プレート上の穿孔の数及び間隔は、搬送されるカードの性質によって変更できる。小型のローラーにより、ベルトの振動が抑制される。」(甲第3号証の2:3頁9〜15行)

これらの記載によれば、甲第3号証の1には、次のとおりの発明が記載されているものと認められる。
「小型フィルム片等のカード51を搬送する装置であって、
吸気口となる空間38と、この空間38の両側に位置してベルト軌道48にそれぞれ設けた溝49とを有し、孔列33を介して前記空間38に連通する真空マニホールドと、
前記ベルト軌道48の溝49に個別に案内されて走行する2本のベルト21,21と、
上記ベルト軌道48の上面両側に取り付けられたカードガイド34と、両カードガイド34間にあってベルト21の上方に設けられたローラ列41を有し、
上記2本のベルト21,21により前記空間38の縁部に形成され、上記カードガイド34により横方向の限界が定められた吸着搬送経路とからなる、
2本のベルト21,21上にカードを吸着搬送するカード搬送装置。」
(以下、「甲第3号証発明」という。)

(4)本件特許発明と甲第2号証発明との対比
本件特許発明と甲第2号証発明とを対比すると、甲第2号証発明の「錠剤」は、その技術的意義に照らして、本件特許発明の「上下面がそれぞれ凸面をなす小物物品」に相当し、以下同様に、「スリット状真空吸引溝20」は「吸気口となるスリット」に、「真空室19」は「負圧室」に、「テレビカメラ5,6」は「小物物品の外観または欠陥の検査部」にそれぞれ相当する。
また、甲第2号証発明における「第1のドラム3」と「第2のドラム4」とは、その機能からみて、本件特許発明における「第1の搬送装置」と「第2の搬送装置」のそれぞれに相当し、甲第2号証発明における「真空室19」も、排気口を有し、排気口になんらかの吸引手段が接続されているのは明らかであるから、両者は、
「上下面がそれぞれ凸面をなす小物物品を検査する装置であって、
吸気口となるスリットと排気口とを有する負圧室と、
前記排気口に接続され、前記負圧室から空気を排気する吸引手段とを有する第1および第2の2つの搬送装置を備え、
前記第1の搬送装置の吸着搬送経路と前記第2の搬送装置の吸着搬送経路とを対向させて、前記小物物品が第1の搬送装置から第2の搬送装置に受け渡されるとき、前記凸面が吸着保持される前記小物物品の前記凸面と反対の面が新たに吸着保持されるように配設するとともに、
前記第1および第2の搬送装置の吸着搬送経路のそれぞれを前記小物物品の外観または欠陥の検査部に臨ませた小物物品検査装置。」で一致し、次の点で相違する。
〈相違点1〉
第1の搬送装置、第2の搬送装置に関して、本件特許発明においては、「(ロ)吸気口となるスリットとこのスリットの両側の各縁部にそれぞれ設けたガイドレールと排気口とを有する負圧室と、(ハ)前記各ガイドレールに個別に案内されて走行する2本の搬送用索条と、(ニ)この2本の搬送用索条により前記スリットの前記縁部に形成した吸着搬送経路と」を有するのに対して、甲第2号証発明においては、「この真空室19に前記スリット状真空吸引溝20を介して連通する収容穴17をそれぞれ有し、錠剤をこの収容穴17で吸着搬送する第1のドラム3と第2のドラム4」である点。(以下、「甲第2号証発明との相違点1」という。)
〈相違点2〉
上記相違点1を前提にして、小物物品を第1の搬送装置から第2の搬送装置に受け渡すため、本件特許発明においては、「(へ)前記第1の搬送装置の吸着搬送経路下流端と前記第2の搬送装置の吸着搬送経路上流端とを対向させて、前記小物物品が第1の搬送装置から第2の搬送装置に受け渡されるとき、前記2本の搬送用索条にまたがりかつ、前記凸面の一部が前記2本の搬送用索条の間に入り込んだ状態で吸着保持される前記小物物品の前記凸面と反対の面が新たに吸着保持されるように配設する」のに対して、甲第2号証発明においては、「第1のドラム3と第2のドラム4とが相接する転送位置Pで、錠剤の吸着されていた片側とは反対の片側が新たに吸着保持されるように配設する」点。(以下、「甲第2号証発明との相違点2」という。)

(5)本件特許発明と甲第3号証発明との対比
本件特許発明と甲第3号証発明とを対比すると、甲第3号証発明における「カード51」は、本件特許発明の「小物物品」に相当し、以下同様に「空間38」は「スリット」に、「溝49」は「ガイドレール」に、「真空マニホールド」は「負圧室」に、「2本のベルト21,21」は、「2本の搬送用索条」に、それぞれ相当する。
そして、甲第3号証発明においても、「真空マニホールド」は、排気口を有し、排気口になんらかの空気の吸引手段が接続されているのは明らかであるから、両者は、
「小物物品を搬送する装置であって、
吸気口となるスリットとこのスリットの両側の各縁部にそれぞれ設けたガイドレールと排気口とを有する負圧室と、
前記各ガイドレールに個別に案内されて走行する2本の搬送用索条と、
この2本の搬送用索条により前記スリットの前記縁部に形成した吸着搬送経路と、
前記排気口に接続され、前記負圧室から空気を排気する吸引手段とを有する搬送装置を備えた小物物品搬送装置。」
で一致し、次の点で相違する。
〈相違点1〉
吸着搬送する小物物品が、本件特許発明においては、「上下面がそれぞれ凸面をなす小物物品」であるのに対して、甲第3号証発明においては、「小型フィルム片等のカード51」である点。(以下、「甲第3号証発明との相違点1」という。)
〈相違点2〉
吸着搬送経路が、本件特許発明においては、「(ニ)この2本の搬送用索条により前記スリットの前記縁部に形成した吸着搬送経路」であるのに対して、甲第3号証発明においては、「上記ベルト軌道48の上面両側に取り付けられたカードガイド34と、両カードガイド34間にあってベルト21の上方に設けられたローラ列41を有し、上記2本のベルト21,21により前記空間38の縁部に形成され、上記カードガイド34により横方向の限界が定められた吸着搬送経路」である点。
(以下、「甲第3号証発明との相違点2」という。)
〈相違点3〉
本件特許発明が「(ヘ)前記第1の搬送装置の吸着搬送経路下流端と前記第2の搬送装置の吸着搬送経路上流端とを対向させて、前記小物物品が第1の搬送装置から第2の搬送装置に受け渡されるとき、前記2本の搬送用索条にまたがりかつ、前記凸面の一部が前記2本の搬送用索条の間に入り込んだ状態で吸着保持される前記小物物品の前記凸面と反対の面が新たに吸着保持されるように配設」しているのに対して、甲第3号証発明は、カードの反対の面を新たに吸着保持すること自体行っていない点。
(以下、「甲第3号証発明との相違点3」という。)
〈相違点4〉
本件特許発明が、「(ト)前記第1および第2の搬送装置の吸着搬送経路のそれぞれを前記小物物品の外観または欠陥の検査部に臨ませ」ているのに対して、甲第3号証発明においては、カードの外観または欠陥の検査を行っていない点。

(6)甲第2号証発明に甲第3号証発明を適用することについての検討
請求人は、「本件特許発明は、甲第2号証発明及び甲第3号証発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。」旨主張しているので、これについて検討する。
(6-1)本件特許発明と甲第2号証発明との対比における相違点1、相違点2の検討及び判断
甲第2号証との相違点1及び相違点2に係る本件特許発明の構成要件の技術的意義について検討する。
本件明細書には、「従来の技術」、「発明が解決しようとする問題点」として次のように記載されている。
(a)「第3の従来例(特開昭56-78732号公報、特公昭58-32125号公報)は、吸引式回転ドラムの外周面に錠剤を入れるためのポケットがドラム内部に連通する状態で形成されており、ドラムとともに回転しているポケット内の錠剤を検査するものである。」(本件特許公報第2頁第3欄18〜23行)
(b)「第3の従来例は、カプセル収容孔を大きくすればカプセルは収納し易いが、カプセル収容孔がドラムの円筒の周面上に形成されていることもあって、ドラムの回動やドラム間のカプセルの受け渡しに伴い、カプセルが振動や揺動をしやすくなるので、収容後にカプセルが安定した姿勢で吸着保持できない。一方、カプセル収容孔を小さくすれば、カプセルを安定して吸着保持できるが、カプセルの受渡しの際にカプセル収容孔にカプセルを収納するのが困難となり、カプセルの破損につながる。すなわち、錠剤がカプセル収容孔に入るときに、カプセル収容孔の端縁に錠剤が当たったり、底部に衝突したりして、錠剤が損傷や破壊を受ける場合があり、また、ジャミング(雑踏、混雑)のために詰まりが生じるおそれがある。さらにドラム間の受渡しを円滑にするため受渡しの際に両ドラムのタイミングをとる必要があり、また物品の大きさによりカプセル収容孔の大きさを変えなければならないという問題がある。さらに回転ドラム設置のために大きな床面積を必要とする。」(本件特許公報第2頁第4欄17〜41行)
また、本件特許発明の効果として、次のように記載されている。
(c)「(1)吸引口となるスリットの両側の各縁部にそれぞれガイドレールを設け、ガイドレールに搬送用索条を案内して吸着搬送経路を形成したため、スリットと搬送用索条との間に空隙を有しないので、小物物品と搬送用索条とが接触している部分における小物物品の左右からの空気流は生じず、前後方向からの空気流のみである。その結果、小物物品の下方の空気流の速度差は第1の従来例と比較して大きなものとなり、相応の大きな吸引力を得ることができ、そのため小物物品を効率よく吸引でき搬送用索条に保持することができる。また、スリットの縁部にガイドレールを設け、このガイドレールにより搬送用索条を案内する構成としたため上下面が凸面をなす小物物品であっても、第1の従来例のようにスリットを接触して小物物品を搬送できないという不都合がなく、吸引手段を過大にする必要もない。
(2)上下面がそれぞれ凸面をなした座りの悪い小物物品であるが、小物物品が2本の搬送用索条にまたがりかつ、その凸面の一部が2本の搬送用索条の間に入り込んだ状態で保持されているため、小物物品の重心が2本の搬送用索条に近づくので小物物品が左右に揺動したり脱落したりすることもなく搬送用索条に安定して保持される。しかも吸引作用により小物物品が搬送用索条に吸着されるため、小物物品を2本の搬送用索条上にセンタリングして保持することができる。
(3)第1の搬送装置の吸着搬送経路下流端と第2の搬送装置の吸着経路上流端を対向させたため、第1の搬送装置から第2の搬送装置に小物物品を受け渡すに際し、小物物品が搬送用索条間でセンタリングされていることもあって、第1の搬送装置から第2の搬送装置へ円滑に移行することができ、小物物品の破損もない。これにより、第1の搬送装置の2本の搬送用索条上にセンタリングされた小物物品を受け渡し後も第2の搬送装置の2本の搬送用索条上にセンタリングして保持することができる。したがって、各小物物品の向き、姿勢等が受渡し過程で大きく変化することもなく一定し、確実かつ正確な検査が可能となる。また搬送装置の検査部において、寸法検査等における誤計測が防止され、安定した検査が可能となる。
(4)そのほか、小物物品の保持が吸気に基づいた吸着保持であるため、小物物品の搬送ピッチは問題にならず、小物物品が磁性体に限定されず、また小物物品の凸面の形状が限定されることもなく、また表面に付着した塵埃を除去できる。また、物品の搬送形態を水平姿勢はもちろん、垂直および傾斜の姿勢や上下反転の姿勢などの各種形態とすることができる。
また搬送用索条により小物物品を搬送するため搬送経路長さを長くすることが容易に行えるとともに、長くしても回転テーブルの場合のように過大な床面積の増加を招かずにすみ、スペース面で有利に展開することができる。更に搬送用索条は、回転テーブルに比べて十分に軽量であることから、その駆動エネルギーが少なくてすみ、また、搬送用索条は、回転テーブルに比べて低コストであり、しかも搬送用索条に小物物品を載置するための加工を必要としないので製造容易であるから、全体として費用の削減化を図ることができる。」(本件公告公報第7頁第13欄32行〜第8頁第15欄8行)
これらの記載によれば、本件特許発明の甲第2号証との相違点1、相違点2に係る構成の技術的意義は、「上下面が凸面をなす小物物品をスリットにより吸引効率よく吸引して搬送に支障なく搬送用索条上に安定して保持できるとともに、二つの搬送装置間の小物物品の受渡しが小物物品の大小を問わずまた損傷することもなく円滑で安定かつ確実にでき、小物物品の検査が常に安定して正確にできる。」(以下、「本件特許発明の効果」という。)といったものと解することができる。
これに対して、甲第2号証との相違点1、相違点2に係る甲第2号証発明の構成要件についてみてみると、甲第2号証の
(d)「一方、第1および第2ドラム3,4の外周には前記の収容孔15と等ピッチの所定間隔で、外周にポケット状としてなる収容穴17が設けられている。またドラム3,4における錠剤搬送域範囲に区画してドラム内方には固定仕切壁18によって真空室19が設けられ、周方向のスリット状真空吸引溝20を介して前記の収容穴17と連通し、収容穴17に負圧が作用するよう構成されている。・・・。上記の各ドラム2,3,4は図示のごとく外周面が相接対向するよう左右に並べて配置されており、それぞれが駆動モータにベルトを介して連動連結されて相互に位相を合わせて矢印方向に同期回転駆動される。」(第2頁左上欄14行〜同頁右上欄10行)
(e)「錠剤12がドラム2とドラム3と相接する転送位置Pまで移送されると、ドラム3側の負圧作用を受けて錠剤12はドラム2の収容孔15からドラム3の収容穴17へ吸着転送される。その後、錠剤はドラム3の上面域を搬送され、更にドラム3とドラム4との間の転送箇所Pを経てドラム4の下面域を吸着搬送される。」(第2頁右上欄14〜18行)
との記載によれば、甲第2号証発明においては、第1および第2ドラム3,4の外周に、供給ドラム2の収容孔15と等ピッチの所定間隔でポケット状の収容穴17が設けられ、この収容穴17には、内部に固定仕切壁18によって仕切られた真空室19にスリット状真空吸引溝20を介して連通している。そして、錠剤は、供給ドラムである第1のドラム2の収容穴15から、第2のドラム3の収容穴17に、吸着転送され、第2のドラム3の収容穴17に吸着保持された後、第2のドラムにより回転搬送され、第3のドラム4との間の転送位置で、第3のドラム4の収容穴17に吸着転送され、第3のドラム4により回転搬送されるものと解することができる。
そして、第1ドラム3,第2のドラム4の収容穴17は、上記した錠剤の吸着転送、吸着搬送を行うため、スリット状真空吸引溝20を介した真空室19からの負圧の作用を集中させるための空間を限定するとともに、第1のドラム3から第2のドラム4への吸着転送の際、第1のドラム3の収容穴17が真空室19を通過する前後において、第2のドラム4の収容穴17と協同して錠剤を保持する作用を奏するものと解される。
仮に収容穴17を除外すると、小物物品の凸面は、円弧状をなすスリット状真空溝20に点接触に近い状態で吸着されることになり、上記した錠剤の吸着転送、吸着搬送の際に、錠剤は、不安定な挙動にならざるを得ず、錠剤の表面検査装置として機能を奏することが困難となると解されるから、甲第2号証の発明において、第1ドラム3,第2のドラム4の収容穴17は除外することのできない構成であって、これを除外して本願特許発明の甲第2号証との相違点1及び相違点2に係る構成とすることには、これを妨げる特段の事情があるというべきである。
そして、甲第2号証発明においては、錠剤の受け渡しが両ドラムの収容穴17間で行われる以上、本件明細書に記載された上記(b)の「発明が解決しようとしようとする問題点」と同様の問題点が存在することは、明らかである。
これに対して、本願特許発明は、甲第2号証との相違点1及び相違点2に係る構成により、上記した本件特許発明の効果が達成されるのであるから、本願特許発明の、甲第2号証との相違点1及び相違点2に係る構成は格別のものといわざるを得ない。

(6-2)甲第3号証発明との相違点1〜4についての検討及び判断
甲第3号証発明との相違点1として挙げたとおり、甲第3号証発明においては、吸着搬送する小物物品が「小型フィルム片等のカード51」であり、吸着搬送するカード自体の特性、あるいはカード読み取り部での読み取り等に関連して、甲第3号証発明特有の課題があり、そのため、甲第3号証発明においては、甲第3号証発明との相違点2として挙げたとおり、カードガイド34により搬送経路の横方向の限界を定めたり、ローラ列41がカードの吸着を補助しているものと解される。
この観点でみてみると、甲第3号証発明においては、平面形状である小型フィルム片等のカード51が、ベルト軌道48の溝49に個別に案内されて走行する2本のベルト21,21上に吸着により接触し、カードの進行方向両側は、2本のベルト21,21により何ら拘束されていない状態で高速搬送されることになる。
そして、甲第3号証の1の「The location of the grooves in the tracks48,the lateral separation of the tracks providing the space 38,and the vacuum applied,while firmly retaining the cards on the belts does not permit the cards to contact any surface toward their center whereby they could become scratched or otherwise damaged.」(第2欄56〜61行)との記載については、甲第3号証発明において、小型フィルム等のカード搬送時、その表面が傷つかないようにすることが、搬送装置として求められる重要な課題であることを考慮すれば、カードの進行方向両側面とカードガイドとの接触を防止すると解釈するよりは、カードの表面と他の部材との接触を防止すると解するほうがより合理的である。したがって、甲第3号証の1の上記記載により、直ちにカードの進行方向両側がカードガイドと接触しないと解することはできない。
むしろ、甲第3号証発明においては、カードはその進行方向両側が2本のベルト21,21により何ら拘束されていない状態で高速搬送されるのであるから、カードの進行方向両側がどの程度接触するかどうかは別として、カードガイドについては、カードの進行方向両側をガイドするものとして、切り離すことができない構成というべきである。
また、甲第3号証の1のクレーム5、7にローラーのない構成が記載されており、また甲第3号証発明の出願時の技術水準を示す米国特許第3,137,496号明細書(請求人が提出した甲第7号証)に、ローラー列、カードガイドが図示されないカード搬送装置が示されているとしても、甲第3号証の1及び甲第7号証には、カードガイドが不要であるとも、前述した甲第3号証発明特有の課題を達成する他の手段があるとも具体的に記載されていないのであるから、ローラー列、カードガイドが図示されないカード搬送装置が示されていることのみをもって、カードガイドを切り離すことができる、との根拠とすることはできない。したがって、甲第3号証の発明において、少なくともカードガイドは切り離すことのできない構成であって、これを切り離して本願特許発明の甲第3号証との相違点2に係る構成とすることには、これを妨げる特段の事情があるというべきである。
さらに、甲第3号証発明には、甲第3号証発明との相違点3に係るカードの反対の面を新たに吸着すること、及び甲第3号証発明との相違点4に係るカードの外観または欠陥の検査を行うことに関して、なんら記載も示唆もされていない。
これに対して、本件特許発明によれば、甲第3号証発明との相違点1〜4に係る構成により、上記した本件特許発明の効果が達成されるのであるから、本件特許発明の甲第3号証発明との相違点1〜4に係る構成は、格別のものということができる。

(6-3)甲第2号証発明に甲第3号証発明を適用することについての検討及び判断
甲第2号証発明に甲第3号証発明を適用することについて検討する。
前述のように、甲第2号証発明において、収容穴を除外すること自体に阻害要因があるから、甲第2号証発明の「真空室19に前記スリット状真空吸引溝20を介して連通する収容孔15、収容穴17をそれぞれ有し、錠剤をこの収容孔15、収容穴17で吸着搬送する第1のドラム3と第2のドラム4」に替え、収容穴を有しない甲第3号証発明の吸着搬送経路を有する搬送装置を適用し、本件特許発明の甲第2号証発明との相違点1に係る構成とすることには、これを妨げる特段の事情があるというべきである。
さらに、甲第2号証発明、甲第3号証発明のいずれにも、本件特許発明の「上下面がそれぞれ凸面をなす小物物品」が「2本の搬送用索条にまたがりかつ、前記凸面の一部が前記2本の搬送用索条の間に入り込んだ状態で吸着保持される」ことに関して、何らの記載も示唆もなされておらず、本件特許発明は、この構成により上記した本件特許発明の効果が達成されるのである。
したがって、収容穴を除外すること自体に阻害要因がある甲第2号証発明と、吸着搬送する小物物品として、上下面がそれぞれ凸面をなす小物物品とすること、あるいはカードの反対の面を新たに吸着保持すること自体、何らの記載も示唆もなされていない甲第3号証発明とを結び付ける動機付けも、技術的関連性も見出せないから、本件特許発明の甲第2号証発明との相違点1、2に係る構成が、甲第2号証発明に甲第3号証発明を適用することにより、当業者が容易になし得るものということはできない。
さらに、前述したように甲第3号証発明においては、カードガイド34により搬送経路の横方向の限界を定めたり、ローラ列41により吸着搬送を補助しており、両者のうち少なくともカードガイド34については、切り離すこと自体に阻害要因があると解される。
してみれば、仮に甲第2号証の発明に甲第3号証発明を適用することを当業者が想到し得たとしても、甲第3号証発明におけるカードガイド34の存在が、二つの搬送装置を「前記2本の搬送用索条にまたがりかつ、前記凸面の一部が前記2本の搬送用索条の間に入り込んだ状態で吸着保持される前記小物物品の前記凸面と反対の面が新たに吸着保持されるように配設する」ことを不可能または困難にするものと解され、両者を組み合わせることは、これを妨げる特段の事情があるというべきであり、本件特許発明の甲第2号証発明との相違点1、2に係る構成を採用することには、格段の創作力を要するものというべきである。

(7)むすび
以上のとおりであるから、請求人が無効理由2(進歩性の欠如)で主張する理由によっては、本件特許発明が、甲第2号証発明及び甲第3号証発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないから、本件特許発明が特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるとすることはできない。

3.むすび
本件特許発明についての特許は、請求人が主張した無効理由及び証拠によっては無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-01-29 
結審通知日 2004-02-03 
審決日 2004-02-17 
出願番号 特願昭60-50970
審決分類 P 1 112・ 532- Y (B65G)
P 1 112・ 121- Y (B65G)
P 1 112・ 531- Y (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅野 あつ子  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 清田 栄章
鈴木 充
登録日 1994-07-07 
登録番号 特許第1856791号(P1856791)
発明の名称 小物物品検査装置  
代理人 矢倉 千榮  
代理人 平泉 真理  
代理人 三好 秀和  
代理人 松岡 伸晃  
代理人 村上 智司  
代理人 山口 孝司  
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