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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) A01K
管理番号 1094398
審判番号 無効2003-35272  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-06-20 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-07-03 
確定日 2004-03-29 
事件の表示 上記当事者間の特許第3261587号発明「ルアー用のはりす装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3261587号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3261587号発明は、平成5年12月2日に出願されたものであり、平成13年12月21日に設定登録がなされ、その後、株式会社カツイチより特許無効審判の請求がなされ、答弁書が提出されたものである。
2.無効理由の概要
無効理由
本件請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項または第2項の規定に違反して特許されたものであるとして、請求人は下記の甲第1〜11号証を提出している。
甲第1号証…釣り東北11.12月号NO.53、有限会社釣り東北社、平成5年11月10日発行、第6〜8頁
甲第2号証…釣り東北11.12月号NO.53、有限会社釣り東北社、平成5年11月10日発行、第195頁
甲第3号証…釣り東北1.2月号NO.54、有限会社釣り東北社、平成6年1月10日発行、第133〜137頁
甲第4号証…釣り東北3月号NO.63、有限会社釣り東北社、平成7年2月25日発行、第36〜37頁
甲第5号証…Angling、1989年3月号、1989年3月1日発行、第14頁
甲第6号証…北海道の湖と渓流、鍛冶英介著、株式会社つり人社、昭和54年度版、第82頁
甲第7号証…釣り東北9.10月号NO.34、有限会社釣り東北社、平成2年9月20日発行、第116,117頁
甲第8号証…釣り東北3.4月号NO.37、有限会社釣り東北社、平成3年3月10日発行、第93〜94頁
甲第9号証…コイの釣り方、小西茂木著、株式会社西東社、昭和56年4月20日発行、第50〜53頁
甲第10号証…海釣り入門、大木浩著、株式会社日本文芸社、平成3年1月20日発行、第64,65頁
甲第11号証…奥丹後海区の漁具集、京都府中郡峰山町奥丹後地方事務所水産課、昭和29年1月発行、第55〜58頁
なお、平成16年1月16日付の上申書により、甲第6〜10号証についての公知日の確認を行った。
3.本件発明
本件請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲に記載された下記のとおりのものと認められる。
「水中での動きを小魚の動きに似せたルアーに、金属製よりなる接続用の輪を介して釣針を取付けるルアー用のはりす装置において、前記はりす装置は、第1の針と第2の針とからなり、これらの針を近接配置すると共に、前記ルアーからの位置を互いに異ならせて配設した一対の釣針と、この一対の釣針を結ぶ1本の糸状物と、この糸状物を折曲して2条とし、この折曲した2条の糸状物の頂点を結束して形成した輪形と、この輪形を前記ルアーに取付けることで、前記一対の釣針は、どちらか一方の針がフックした場合に、残る他方の針が更にフックできるように、これらの釣針を前記ルアーに近接させて配置するようにしたことを特徴とするルアーのはりす装置。」(以下、「本件発明」という。)
4.無効理由について
(1)各甲号証について(無効理由の判断に採用した証拠)
・甲第7号証(釣り東北9.10月号NO.34、有限会社釣り東北社、平成2年9月20日発行、第116,117頁)には、
「そこで考えたのがシングルフックを2本付けること(図2)。長さの違う2本のシングルフックを付けると1本の時よりフッキング率も高くなり、魚が暴れた時にもう1本がどこかに掛かってくれるのでバラシも少ない。シングルフックが2本掛かってもトリプルフックのように魚の口を傷めることが少ないので、リリース時も魚にダメージを与えない。30Lbのバッキングラインで輪を作り、そこで長短をつける。バッキングラインと丸セイゴ16号を糸で止めるが、赤や黄の糸でウェットフライのボディをイメージし巻く。」(第117頁上段第2〜16行)、
図2(アキフィッシングオリジナルルアー)には、
「ルアー:バイトマスター 5〜8gゴールドの表だけにオリジナルカラーを施す
フック:丸セイゴ16号 シングルフックを2本付ける時は長短2種を使う
30Lbのバッキングライン 赤や黄の糸 若干長さが違う」と記載されるともに、ルアーにシングルフックを2本付け、その長さが違っていることが図示されている。
また、図2には、シングルフックをルアーに取り付ける接続用の輪が図示されている。
以上の記載によれば、甲第7号証には、
「ルアーに長さの違う2本のシングルフックを接続用の輪を介して取り付け、魚が暴れた時にもう1本がどこかに掛かるようにしたルアー用フック」が記載されている。(以下、「甲第7号証記載の発明」という。)
・甲第9号証(コイの釣り方、小西茂木著、株式会社西東社、昭和56年4月20日発行、第50〜53頁)には、
「Y宇型ハリスのつくり方」と題した図には、Y字型ハリスが記載されている。
また、その説明として、
「やわらかくて、しなやかな材質のイトを使って、Y字型ハリスと呼ばれる特別な形に仕上げ、上部のチチワをスナップにからみつけます。」(第52頁第2〜4行)、
「一本のハリに掛かったコイが逃げようとして暴れて頭を振れば、ほとんど100パーセントに近い確率でもう一本のハリが口の周辺に掛かって、二本の短いハリスがY字型に広がったまま引かれることになります。こうなれば、たとえハリの刺さり方が浅くても、はずれません。」(第52頁第12〜15行)と記載されている。
・甲第10号証(海釣り入門、大木浩著、株式会社日本文芸社、平成3年1月20日発行、第64、65頁)の、
3アナゴ(マアナゴ)釣りの項には、
投げ釣り仕掛けの図に一本のハリスでつくった「2本バリ」の図がある。
(2)対比・判断
本件発明と甲第7号証記載の発明を対比する。
甲第7号証記載の発明は、2本の釣針をルアーに近接させて配置していることも認められる。また、釣針をルアーに取り付ける接続用の輪は通常金属製であると認められる。
そうすると、本件発明と甲第7号証記載の発明とは、
「水中での動きを小魚の動きに似せたルアーに、金属製よりなる接続用の輪を介して釣針を取付けるルアー用のはりす装置において、前記はりす装置は、第1の針と第2の針とからなり、これらの針を近接配置すると共に、前記ルアーからの位置を互いに異ならせて配置した一対の釣針を前記ルアーに取付けることで、前記一対の釣針は、どちらか一方の針がフックした場合に、残る他方の針が更にフックできるように、これらの釣針を前記ルアーに近接させて配置するようにしたことを特徴とするルアーのはりす装置。」
である点で一致し、次の点で相違している。
本件発明が、一対の釣針を結ぶ1本の糸状物と、この糸状物を折曲して2条とし、この折曲した2条の糸状物の頂点を結束して形成した輪形をルアーに取り付けるようにしているのに対し、甲第7号証に記載の発明は、釣り針を2本のシングルフックの各々にバッキングラインで輪を作りルアーに取り付けるようにしている点。
上記相違点について検討する。
上記相違は、2本の釣り針を1本の糸状物で結び取り付けるか、それぞれ取り付けるかの違いであるところ、甲第9、10号証に、2本の釣り針を1本の糸状物で結び取り付け、この糸状物を折曲して2条とし、この折曲した2条の糸状物の頂点を結束して形成した輪形により、釣りの仕掛けとして取り付ける点が記載されており、本件発明は、この点を甲第7号証に記載の発明の、釣り針を2本のシングルフックの各々にバッキングラインで輪を作りルアーに取り付ける点に代えて、上記相違点に係る本件発明のような構成としただけのことで、当業者に格別な創意工夫があるものとはいえない。
また、本件発明のように構成したことにより奏する効果も、上記各甲号証記載の発明から当業者が予測し得る程度のことであり格別のものとはいえない。
更に、被請求人は、答弁書において、
a.甲第7号証に示すものは、ルアーに長さの違うシングルフックを2本取付けたものであり、シングルフック2本という表現でも判明するように、1本の針は2本の糸で接続されており、本件出願のルアー装置とは全く異なる。(第11頁第2〜4行)
b.甲第9号証および以下に述べる甲第10号証で示すハリスの長い針は、餌をつけて針を隠した状態で用いることによって、ミチイトとの絡みを防止するものであり、餌釣にしか使用できないという必須用件の付く甲号証である。したがって、餌を使わないルアー釣にこのY字型ハリスを用いることは全く不可能であり、同じ釣とはいえども、道具や釣の技術が全く異なるカテゴリーの資料で、容易に考えられるとするには無理がある。(第10頁第6〜11行)
と主張するので検討する。
被請求人の主張a.については、既に上記のとおり本件発明と甲第7号証記載の発明との相違点としてあげている。
被請求人の主張b.については、確かに甲第9号証はウキ釣に用いる野ゴイ標準仕掛け、甲第10号証はアナゴ釣りの投げ釣り用仕掛けであり、ルアー仕掛けのものではない。しかし、これら甲第9、10号証には2本針の仕掛けとして1本の糸状物を用い、この糸状物を折曲して2条とし、この折曲した2条の糸状物の頂点を結束して輪形を設け仕掛けとして取り付ける点が記載されており、2本針の仕掛けとしてこのようなものが既に公知である以上、このような技術的な思想(考え方(甲9,10号証に記載される仕掛けそのものではない))を甲第7号証に記載の発明のような2本針のルアーに適用すれば、上記相違点に係る本件発明の構成を得ることは、当業者にとって格別困難なことということはできない。また、甲第9、10号証に示される上記技術的な思想を甲第7号証記載の発明に適用するにあたって格別な阻害要件も見あたらない。
したがって、本件発明は、甲第7、9、及び10号証に記載の発明により当業者が容易に発明することができたものというべきである。
5.むすび
以上のとおりであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当する。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-01-27 
結審通知日 2004-01-30 
審決日 2004-02-16 
出願番号 特願平5-338769
審決分類 P 1 112・ 121- Z (A01K)
最終処分 成立  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 渡戸 正義
渡部 葉子
登録日 2001-12-21 
登録番号 特許第3261587号(P3261587)
発明の名称 ルアー用のはりす装置  
代理人 田中 秀佳  
代理人 江原 省吾  
代理人 白石 吉之  
代理人 城村 邦彦  

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