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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1094410
審判番号 不服2000-12379  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-12-03 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-08-08 
確定日 2004-03-31 
事件の表示 平成 4年特許願第129192号「電動式遊戯機用打球発射装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年12月 3日出願公開、特開平 5-317492]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続きの経緯、本願発明
本願は、平成4年5月22日の出願であって、その請求項1及び請求項2に係る発明は、平成12年8月8日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願第1発明」、「本願第2発明」という。)

【請求項1】
中空ボビンと、このボビン上に設けられたコイルと、ボビンの中空に移動可能に挿通された磁性移動子と、一端がボビンの外方に突出されると共に他端が移動子に固定された打球のための心棒と、ボビンの中空内周に取付けられ、移動子の移動を案内するための環状の案内部材とを備える打球発射装置であって、前記案内部材は、移動子に対向する内側が非磁性材からなり、中空ボビンに対向する外側が磁性材からなる2層構造であることを特徴とする電動式遊戯機用打球発射装置。(本願第1発明)
【請求項2】
前記移動子が後退して心棒が打球動作開始位置まで戻った時に移動子の後退を止めるためのストッパと、中空ボビンの外側に配置された外枠とを備え、前記ストッパは、移動子の移動方向に位置決め自在に外枠に取付けられ、このストッパと移動子との双方の当接部分の少なくとも一方に緩衝部材を設けたことを特徴とする請求項1記載の電動式遊戯機用打球発射装置。(本願第2発明)

2.引用例に記載された発明
これに対して、当審において平成15年10月10日付けで通知した拒絶の理由に引用した刊行物である特開昭56-8081号公報(以下、「第1引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「発射レールの延長方向に沿って突出移動できる可動ロッドと、この可動ロッドの突出移動方向に移動磁界を形成する磁気回路と、この磁気回路の上記移動磁界の発生を断続させると共に当該移動磁界の強さを飛距離調整ダイヤルによって調整できる制御回路とを備えたことを特徴とする遊技球発射装置」(第1頁特許請求の範囲第1項)
「この折曲げ板部11Aの根元部には透孔11Bが設けられ、この透孔11Bを通じて後方から発射装置本体14の杵先15が突出することにより、根元部に受けた遊技球を弾発する。発射装置本体14は先端に杵先15にばね16を具えた磁気性材料でなる可動ロッド17を有し、この可動ロッド17が発射レール11の後方延長線上における前後位置に設けられたガイド18A及び18Bによって前後に移動自在に支持されている。
可動ロッド17の後方には突当板19が設けられ、可動ロッド17の後端に固定されたストッパ20と後方ガイド18Bとの間に介挿された復帰用スプリング21によって可動ロッド17はストッパ20を突当板19に当接した待機位置に戻るようになされている。なお、22は当接板19に接着した消音ゴムである。
ガイド18A及び18B間位置にはロッド17に対する磁気回路を構成する一対の駆動ソレノイド31A及び31Bが磁性材料でなる仕切り板32を挟んでロッド17の延長方向に順次配列されている。これら一対のソレノイド31A及び31Bは、ロッド17に接触しないように内部に挿通延長させた非磁性材料でなるスリーブ(図示せず)上に巻装されている。」(第2頁右上欄第18行-第2頁右下欄1行)
以上の記載によれば、第1引用例には、
「ソレノイドと、ソレノイドに移動可能に挿通された可動ロッドと、一端がソレノイドの外方に突出されると共に他端が可動ロッドに固定された打球のための杵先を備える遊技球発射装置。」(以下「引用発明」という。)
との発明が開示されていると認めることができる。
また、同じく当審において平成15年10月10日付けで通知した拒絶の理由に引用した刊行物である特開昭52-23656号公報(以下、「第2引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「可動子案内用の非磁性ガイドチューブ上にコイルを内蔵するコイルボビンを載置したソレノイドにおいて、前記ガイドチューブの磁束通過部の外周面に複数枚の薄肉の磁性体を巻回したことを特徴とするソレノイド。」(第1頁特許請求の範囲)
「第1図、第2図において、(1)は本体、(2)はコイル(3)を内蔵するプラスチックコイルボビンであり、可動子(4)の案内用非磁性ガイドチューブ(5)上に載置してある。可動子(4)の小径部(6)は固定子(7)に設けられた貫通孔(8)に往復可能に挿入されている。」(第1頁左欄14-18行)
「本発明の実施例を第3図について説明すると、可動子案内用非磁性ガイドチューブ(5)の磁路を構成する部分、即ち磁束通過部(A)(B)の外周面を広い範囲にわたって覆うように薄い方向性硅素鋼帯などの磁気特性の良い磁性体(9)を2〜3枚程度かさねて挿入して巻き付け、ガイドチューブ(5)とコイルボビン(2)および本体(1)との間に介在させてある。」(第1頁右欄12-18行)
以上の記載によれば、「コイルボビンと、このコイルボビン上に設けられたコイルと、コイルボビンに移動可能に挿通された可動子と、一端がコイルボビンの外方に突出されると共に他端が可動子に固定された小径部と、コイルボビンの内周に位置し可動子の移動を案内するための非磁性ガイドチューブとを備えるソレノイドにおいて、非磁性ガイドチューブのコイルボビンに対向する外側に磁性体を巻き付けていること」、
及び、「コイルボビンの外側に本体を備えていること」が開示されていると認めることができる。
また、同じく当審において平成15年10月10日付けで通知した拒絶の理由に引用した刊行物である実願昭56-004227号(実開昭57-119507号)のマイクロフィルム(以下、「第3引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「コアチューブ内にプランジャを移動可能に挿入し、該コアチューブの一端にストッパを固定し、他端に耐圧チューブを介して固定鉄心を嵌合固定してなるソレノイドにおいて、該コアチューブの内面を一部削除し、該削除部分に該プランジャの外径よりわずかに大きい内径を有する非磁性材料から成るガイドを挿入した後該ガイドよりわずかに大きい内径を有する磁性材料から成るガイド押えを嵌合したことを特徴とするソレノイド。」(第1頁実用新案登録請求の範囲)
「第2図に示されるようにコアチューブ3とプランジャ2との間に非磁性材料から成るチューブ状のガイド4を挿入したり、…」(第2頁第6-9行)
「本考案を図面に基づいて説明すると、第5図において、本考案によるソレノイドの一実施例の全体が1で示されている。プランジャ2は、コアチューブ3及び耐圧チューブ10を介してコアチューブ3と固定されている固定鉄心7内に摺動可能に挿入されている。コアチューブ3の他端にはストッパ11が嵌合固定されている。コア8,9はコアチューブ3と固定鉄心7の外側に前後に離れて配設され、コアチューブ3等と共に磁場の強化に寄与している。プッシュロッド12は固定鉄心7の軸方向孔内に挿入されていてプランジャの動作を伝達し、一端をプランジャと係合し、他端は軸受6で支持されている。13はコイル、14はリード線である。」(第4頁第28行-第5頁第11行)
「プランジャ2とガイド押え16とのすきまGは、ガイド15の内径との関連において極めて小さくすることが可能であり、プランジャ2、ガイド押え16、コアチューブ3,コア8と進む磁束の流れが円滑でプランジャと固定鉄心間の吸引力の減少を防止できる。また、ガイド15の厚さはコアチューブ3との関係で厚く取ることができる。」(第6頁第2-8行)
以上の記載によれば、「プランジャに対向する側に非磁性材料からなるガイドを備えた磁性材からなるコアチューブを備えたソレノイド。」が開示されていると認めることができる。

3.本願第1発明と引用発明との対比
本願第1発明と、引用発明とを比較すると、
引用発明の「可動ロッド」「杵先」及び「遊技球発射装置」は、本願第1発明の「磁性移動子」「心棒」及び「電動式遊戯機用打球発射装置」にそれぞれ相当するものと認められる。
また、管状に電線を巻き付けた管状コイルが「ソレノイド」を意味することからみれば、本願第1発明の「ボビン上に設けられたコイル」が、ソレノイドであることは明らかである。
そうすると、両者は「ソレノイドに移動可能に挿通された磁性移動子と、一端がソレノイドの外方に突出されると共に他端が磁性移動子に固定された打球のための心棒を備える電動式遊戯機用打球発射装置。」である点で一致し、
以下の点で相違しているものと認められる。
本願第1発明が、ソレノイドに中空ボビンを備え、移動子に対向する内側が非磁性材からなり、中空ボビンに対向する外側が磁性材からなる2層構造である環状の案内部材を、ボビンの中空内周に取り付けているのに対し、引用発明は、中空ボビンを備えているか否かが明らかでなく、案内部材を有していない点、
で相違する。
そこで、上記相違点について検討する。
ソレノイドが、通常、中空形状のボビンを備えていることは、第2引用例あるいは第3引用例等に記載されているように周知であることを考慮すれば、引用発明におけるソレノイドが、中空ボビンを備えていることは、当業者にとって自明な事項である。
また、第2引用例における非磁性ガイドチューブ5は、可動子4を案内しているので、本願第1発明における「案内部材」に相当することは明らかであり、非磁性ガイドチューブ5のコイルボビンに対向する外側に薄肉の磁性体9を巻き付けているのであるから、非磁性ガイドチューブ5の移動子に対向する内側が非磁性材からなり、中空ボビンに対向する外側が磁性材である。そうすると、第2引用例における、磁性体9が巻き付けられている非磁性ガイドチューブ5は、出願人側が当審拒絶理由に対する意見書において主張するような一体型の2層構造ではなく、別部品を組み合わせた2重構造であるとも解される。
しかしながら、本願第1発明における「2層構造」は、その文言から解釈して、2つの部材が重なり合った構造を意味し、別部材を重ねて形成しているものであるか、一体成形により形成されているものであるかを問わないものと認められるから、第2引用例の磁性体9が巻き付けられている非磁性ガイドチューブ5も、移動子に対向する内側が非磁性材からなり、ボビンに対向する外側が磁性材からなっているので、非磁性体と磁性体の「2層構造」であると認められる。
なお、本願明細書の発明の詳細な説明には、案内部材が「一体型の2層構造」であることの具体的な記載がなく、2層構造が一体型なのか否か当業者が容易に実施できる程度に記載されていないが、仮に、本願第1発明の「2層構造」が、出願人側が当審拒絶理由に対する意見書において主張するような「一体型の2層構造」の意味であるとしても、別部材を重ね合わせる2重構造とするか、予め一体型の2層構造とするかは、部品点数、コストや寸法精度等の事情を考慮して当業者が適宜選択し得た程度の設計事項にすぎないことである。
また、第3引用例についても、磁性材からなるコアチューブは、プランジャに対向する側に非磁性材料からなるガイドを備えていることからみて、移動子に対向する内側が非磁性材からなり、中空ボビンに対向する外側が磁性材であるので、「2層構造」が記載されていると認められる。「一体型の2層構造」とする点についても、第2引用例について前述したとおり、当業者が適宜なし得た程度の設計事項にすぎないことである。
しかるに、これら第2引用例あるいは第3引用例に記載の構成を、引用発明のソレノイドに適用して、上記相違点に係る本願第1発明の構成とすることは、引用発明、第2引用例及び第3引用例がソレノイドに関する発明で共通である以上、当業者が容易に想到し得るものである。
そして、本願第1発明の奏する作用・効果も当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願第1発明は、引用発明、第2引用例又は第3引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願第1発明は、第1引用例、第2引用例又は第3引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以上のように、本願第1発明が特許を受けることができないものであるから、本願第2発明については検討するまでもないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-01-21 
結審通知日 2004-01-27 
審決日 2004-02-09 
出願番号 特願平4-129192
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 鉄 豊郎
白樫 泰子
発明の名称 電動式遊戯機用打球発射装置  
代理人 中村 茂信  

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