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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) B42D
管理番号 1094461
審判番号 無効2000-35339  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1987-02-09 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-06-26 
確定日 2004-04-19 
事件の表示 上記当事者間の特許第2129071号発明「ICカ-ド」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2129071号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 (1)手続の経緯
本件特許第2129071号発明は、昭和60年7月31日出願され、平成9年5月2日設定登録がなされ、その後、サンディスク株式会社より特許無効審判の申立てがなされ、答弁書の提出がなされ、口頭審理(平成13年2月6日)がなされ、被請求人より上申書、及び請求人より弁駁書が提出されたものである。
(2)請求人の主張
請求人は、
甲第1号証:特公平5-11040号公報(本件発明の特許公報)
甲第2号証:特開昭59-84393号公報
甲第3号証:実願昭57-148702号(実開昭58-170097号)のマイクロフィルム
甲第4号証:特開昭60-220583号公報
甲第5号証:実願昭57-85022号(実開昭58-187858号)のマイクロフィルム
甲第6号証:実願昭57-90002号(実開昭58-193398号)のマイクロフィルム
甲第7号証:本件特許発明の審査過程において被請求人が提出した平成5年12月27日付の物件提出書
甲第8号証:本件特許発明の拒絶査定不服審判事件における審決
を提出して、
無効理由1・・本件発明は、甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、更に、少なくとも甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
無効理由2・・本件発明は、甲第2〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
ので、本件特許は無効とされるべきものであると主張している。
(なお、平成13年2月6日付の口頭審理において、無効理由2における甲第4号証は特許法第29条第2項の容易の証拠ではなく出願時の一般的な技術水準を示すものである旨の陳述が請求人からなされた。)
(3)本件発明
本件発明の要旨は、その特許請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものと認められる。
「ICとこれに電気的に接続される導体パターンとを有するカード本体と、前記カード本体と別に構成される、読取装置側の電極端子を受け入れる受け入れ部を有し、該受け入れ部の内部に電極端子を有するコネクタと、前記コネクタの電極端子と前記カード本体の導体パターンとが電気的に接続されていることを特徴とするICカード。」(以下、「本件発明」という。)
(4)甲号証記載の発明
甲第5号証は、ICカードに関するものであり、
「近年ICメモリを内蔵する電子式情報カードが提案されており、メモリ容量が大きいことや機密性の点で磁気カードに比べ用途が広く、将来の実用化が期待されている。従来のICカードはPROM等のICメモリ、さらにはCPUをプラスチック等のカードに内蔵しており、そのコントロールのために必要なすべての入出力端子一式をカードの表側又は裏側だけに配置し、外部端末機との情報のやりとりを行うよう構成されている。しかしこの種の情報カードの寸法は小さく、薄型であるため、入出力端子を配するスペースも小さいので、特に端子数を増加させたい場合に端子配置スペースが不足しがちである。」(第2頁5〜17行)、
「第2図は本考案の一実施例の平面図、第3図はその断面図である。1bはカード本体、2bはカード本体1bの表側入出力端子部、2cは裏側入出力端子部、3はカードに内蔵されたICメモリ、4はICメモリ3と入出力端子部2b並びに2cを接続する導体である。ICメモリ3の内容は、外部端末機と表側入出力端子部2b又は裏側入出力端子部2cのうち少なくともいずれか一方と接続することにより導体4を介してコントロールできる。」(第3頁17行〜第4頁7行)、
の記載があり、以上の記載及び第2、3図の記載によれば、甲第5号証には、
「ICメモリ3とこれに接続される導体4とを有するカード本体1bと、該カード本体1bの導体4と入出力端子部2b、2cとが接続されているICカード」が記載されているものと認められる。(以下、「甲第5号証記載の発明」という。)
甲第3号証は、シーケンス制御装置のメモリユニットに関するものであり、
「その目的とするところは、静電気によるメモリの破壊を防止するとともに、ユニットの状態でメモリのプログラムの書き込み、消去、再書き込みが容易に行なえ、しかも装置本体に対する挿脱が容易なメモリユニットを提供することにある。従来におけるシーケンス制御装置のメモリユニットは、予めプログラムしたROMを差し換えることにより別のプログラムのシーケンス動作をさせるようにしてあり、ROMの端子は変形しやすいので取扱いが面倒でしかもその端子は露出しているので静電破壊されやすいものであった。」(第1頁13行〜第2頁5行)、
「シーケンス制御装置は、第4図に示すように、装置本体Aにコントロールユニットとして、・・・雄側のコネクタ(3)で構成したものであり、コネクタ(3)は入、出力回路(2)、(4)に接続してあり、このコネクタ(3)は装置本体Aと一体の囲壁中に収納されており、その接続ピンは突設されているが囲壁により保護され変形しない。(10)はメモリユニットで,ROMの一種であるE・P-ROM(11)・・・コネクタ(3)は雌側なので装置本体Aの接続ピンを受ける刃受ばねが絶縁器体中に収納され外部から接触されないようになされ静電破壊から保護されている。そしてE・P-ROM(11)とコネクタ(3)とは第3図に示すように、アドレス入力側(12)とデータ出力側(13)とが短絡線(14)で接続して自己保持回路を形成してより複雑な論理演算を行なわせるもので、従来のCPU搭載のシーケンサとは、タイマ機能、カウント機能を除けば同等のシーケンス動作が可能になされている。そしてこれから接続はプリント板Pにおいてなされている。このプリント板Pは、分割されたケース(15)、(20)に収納されるもので、両ケース(15)、(20)は係合孔(18)、係合突起(21)により係止される。ケース(15)には開口部(17)、(16)とを設けており、一方の開口部(17)は消去部(11a)に、他方の開口部(16)はコネクタ(3)に対応してある。・・・コネクタ(3)は開口部(16)から突出してもしなくてもよく、接続ピンが接続できればよい。ケース(20)は、コネクタ(3)の挿脱時に扱いやすいようつまみ用のつば(22)が設けてあり、またコネクタへの差込方向決めの面とり(23)が両ケース(15)、(20)に設けてある。そしてメモリユニット(10)は囲壁にガイドされて接続ピンを変形させることなくコネクトできる。」(第2頁16行〜第4頁16行)、
の記載があり、以上の記載及び第1〜4図の記載によれば、甲第3号証には、
「E・P-ROM(11)と接続される、装置本体Aの接続ピンを受ける刃受けばねが絶縁器体中に収納され外部から接触されないようになされ静電破壊から保護されているコネクタ(3)を有するシーケンス制御装置のメモリユニット(10)」が記載されているものと認められる。(以下、「甲第3号証記載の発明」という。)
甲第2号証及び甲第6号証には、携帯性、作業性に有利なカセット形磁気バブルメモリ装置において、コネクタを採用する点が記載されている。
(5)対比・判断
本件発明と上記甲第5号証記載の発明とを対比すると、
本件発明の「コネクタ」も甲第5号証記載の発明の「入出力端子部2b、2c」も読取側と接続するための「接続部」であるので、
両者は、
「ICとこれに電気的に接続される導体パターンとを有するカード本体と、読取装置側と接続する接続部を有し、前記接続部と前記カード本体の導体パターンとが電気的に接続されていることを特徴とするICカード。」
である点で一致し、
上記読取装置側と接続する接続部に関し、本件発明が、前記カード本体と別に構成される、読取装置側の電極端子を受け入れる受け入れ部を有し、該受け入れ部の内部に電極端子を有するコネクタと、前記コネクタの電極端子と前記カード本体の導体パターンとが電気的に接続されているのに対し、甲第5号証記載の発明の接続部は、このような構成を備えていない点、
で相違しているものと認められる。
上記相違点について、
甲第3号証記載の発明の、静電破壊からの保護のため装置本体Aの接続ピンを受ける刃受けばねが絶縁器体中に収納され外部から接触されないようになされているコネクタ(3)は、本件発明の、読取り装置側の電極端子を受け入れる受け入れ部を有し、該受け入れ部の内部に電極端子を有する、コネクタに相当し、甲第3号証記載の発明のコネクタ(3)も第1、2図を参照すれば、カード本体と別に設けられているといえるので、甲第3号証記載の発明は本件発明の上記相違点に係る構成を備えているということができる。ただ、甲第3号証記載の発明はシーケンス制御装置のメモリユニットに関するものであるのに対し、本件発明はICカードに関するものと異なっているが、両者は、本体側の読取装置と接続されてICカードや、メモリユニットの情報の処理を行う情報処理用の外付け機器である点で共通するとともに、その解決すべき課題も共通している。また、上記甲第3号証記載の発明を甲第5号証記載の発明に適用できないという特段の事情も見いだすことができない。そうすると、本件発明は上記甲第5、3号証記載の発明から当業者が容易に発明することができたものというべきである。
(被請求人の主張)
1)本件発明と甲第3号証記載の発明との技術分野の違いについて
被請求人は、
1.使用される場所が工場のラインか、店舗や事務所または家庭等か、
2.使用する主体が工場の技術者か個人か、
3.挿抜を繰り返すかどうか、
4.異なる装置に使用されるか否か、
5.読取装置の構成、
の各点において全く異なるものであり、このような用途の相違から、メモリユニットとICカードとでは開発担当者、研究者も全く異なったものになるのであり、この点からも両者の技術分野は異なる、旨主張しているが、
上記1.2.の点については、確かに工場等の産業用であるか家庭等で使用する民生用であるかでその用途は異なっているものの、人が機器に挿脱するメモリである点でかわるところはなく、産業用の技術が民生用に、又、民生用の技術が産業用に用いられることはしばしば行われる周知のことであって、産業用か民生用かの区別も曖昧であり相互に適用できないとする事情も見いだせない点からみて、両者は相互に関連する技術分野であるというべきである。
3.4.5.の点については、甲第3号証記載の発明は多くの異なる装置に使用され挿抜を行うものではないが、機器に対して挿抜を行うものである点において本件発明と変わるところはなく、挿抜の頻度が異なるといえども程度の問題であって、しかも、本件発明は甲第3号証記載の発明と比較してその頻度に応じた特段の技術的工夫があるともいえない。
2)ICカードと静電破壊の防止について
被請求人は、少なくとも静電破壊の問題が意識されるようになってからコネクタが採用されるまでは、回り道を経て5年以上かかっており、このことは当業者にとって如何にコネクタをICカードに適用することが不自然であったかということを如実に示している、その理由として、コネクタが確固たる接続を維持するために使用されたものであって、挿抜の容易なコネクタが当業者に想到し難かったということが考えられる、旨主張している。
しかし、請求人が提出した甲第2、6号証には、携帯性、作業性に有利なカセット形磁気バブルメモリ装置において、ピンコンタクトタイプのコネクタを採用する点が記載されており、しかも、本件発明の出願以前からコネクタ自体は電気的接続における確実性のみならず、挿抜の容易性のために広く一般的に用いられてきたことが認められるので、これらの事実及び上記技術分野の関連性、及び、ICカードにコネクタを適用するにあたって格別の技術的工夫が認められない点を考慮すれば、甲第3号証記載の発明をICカードである甲第5号証記載の発明に適用することは当業者が容易に想到し得ることというべきである。
したがって、実際に静電破壊の問題が意識されるようになってからICカードにコネクタが採用されるまで5年以上かかったということを理由にして上記容易想到性を否定する被請求人の主張は採用できない。
3)本件発明の効果について
被請求人は、本件発明はICカードにおける静電破壊の問題と接触不良の問題を同時に解決したものであって、ICカードの信頼性を飛躍的に向上させたという効果があり、更に現在パソコン用の拡張機器としてICカードが広く普及しているが、ICカードの用途がこのような対象に広がったのは、本件発明によってカードの信頼性が向上したからである、旨主張しているが、上記のような静電破壊の問題と接触不良の問題は、甲第3号証記載の発明においても同じように解決されているものであり、しかも、ICカードの用途が広がったのは本件発明によるものであるというような商業的な成功については、技術的な意義以外の条件が関係することがあることは周知の事実であって、一概に技術的な意義があることと直接関係するということはできないから、このことをもって本件発明が格別顕著な効果を奏するものということはできない
したがって、本件発明は上記甲第5、3号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
(6)むすび
以上のとおりであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当する。審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-07-25 
結審通知日 2001-07-31 
審決日 2001-08-16 
出願番号 特願昭60-170145
審決分類 P 1 112・ 121- Z (B42D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 渡部 利行  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 佐藤 昭喜
鈴木 寛治
登録日 1997-05-02 
登録番号 特許第2129071号(P2129071)
発明の名称 ICカ-ド  
代理人 山本 光太郎  
代理人 近藤 恵嗣  
代理人 伊藤 高英  
代理人 永島 孝明  
代理人 井ノ口 壽  
代理人 吉田 聡  
代理人 窪田 英一郎  

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