• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F01N
審判 全部申し立て 2項進歩性  F01N
管理番号 1094611
異議申立番号 異議2003-71486  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-02-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-06-06 
確定日 2004-01-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3355943号「排ガス浄化方法及び排ガスフィルタ並びにこれを用いた排ガスフィルタ浄化装置」の請求項1ないし請求項4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3355943号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
(1)本件特許第3355943号の請求項1ないし請求項4に係る発明についての出願は、平成8年7月18日に特許出願され、平成14年10月4日にその発明について特許権の設定登録がなされた(公報発行日:平成14年12月9日)。
(2)その後、その特許について、平成15年6月6日に、大峽公子より特許異議の申立てがなされ、平成15年8月18日付けで取消理由通知がなされ(発送日:平成15年8月29日)、その指定期間内である平成15年10月28日に訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の記載について、「前記排ガスフィルタの前記外周壁に隣接する前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させる」とあるのを、「前記排ガスフィルタがその排ガス流入側の端面のみに前記外周壁及び前記目封じ部に隣接する前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の前記外周壁に隣接する前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行うこととしている」と訂正する。
イ.訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2の記載について、「前記排ガスフィルタのいずれか一方の端面に前記外周壁及び前記目封じ部に隣接する前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えている」とあるのを、「前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面のみに前記外周壁及び前記目封じ部に隣接する前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の前記外周壁に隣接する前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行うこととしている」と訂正する。
ウ.訂正事項c
特許請求の範囲の請求項3の記載について、「前記排ガスフィルタを加熱する加熱手段」とあるのを、「前記排ガスフィルタの排ガス流出側に配設されたこれを加熱する加熱手段」と訂正する。
エ.訂正事項d
発明の詳細な説明の段落【0024】の記載について、「排ガスフィルタの外周壁に隣接する貫通孔及び貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させる」とあるのを、「排ガスフィルタがその排ガス流入側の端面のみに外周壁及び目封じ部に隣接する貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の外周壁に隣接する貫通孔及び貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行う」と訂正する。
オ.訂正事項e
発明の詳細な説明の段落【0026】の記載について、「排ガスフィルタのいずれか一方の端面に外周壁及び目封じ部に隣接する貫通孔に形成された第2目封じ部を備えている」とあるのを、「排ガスフィルタの排ガス流入側の端面のみに外周壁及び目封じ部に隣接する貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の外周壁に隣接する貫通孔及び貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行うこととしている」と訂正する。
カ.訂正事項f
発明の詳細な説明の段落【0028】の記載について、「排ガスフィルタのいずれか一方の端面に外周壁及び目封じ部に隣接する貫通孔に形成された第2目封じ部を備えている」とあるのを、「排ガスフィルタの排ガス流入側の端面のみに外周壁及び目封じ部に隣接する貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の外周壁に隣接する貫通孔及び貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行うこととしている」と訂正する。
キ.訂正事項g
発明の詳細な説明の段落【0028】の記載について、「排ガスフィルタを加熱する加熱手段と」とあるのを、「排ガスフィルタの排ガス流出側に配設されたこれを加熱する加熱手段と」と訂正する。
ク.訂正事項h
発明の詳細な説明の段落【0030】の記載について、「排ガスフィルタの外周壁に隣接する貫通孔及び貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させる」とあるのを、「排ガスフィルタがその排ガス流入側の端面のみに外周壁及び目封じ部に隣接する貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の外周壁に隣接する貫通孔及び貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行う」と訂正する。
ケ.訂正事項i
発明の詳細な説明の段落【0031】の記載について、「排ガスフィルタのいずれか一方の端面に外周壁及び目封じ部に隣接する貫通孔に形成された第2目封じ部を備えている」とあるのを、「排ガスフィルタの排ガス流入側の端面のみに外周壁及び目封じ部に隣接する貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の外周壁に隣接する貫通孔及び貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行う」と訂正する。
コ.訂正事項j
発明の詳細な説明の段落【0033】の記載について、「排ガスフィルタを加熱する加熱手段と」とあるのを、「排ガスフィルタの排ガス流出側に配設されたこれを加熱する加熱手段と」と訂正する。
サ.訂正事項k
発明の詳細な説明の段落【0042】の記載について、「いずれか一方の端面」とあるのを、「排ガス流入側の端面のみ」と訂正する。
シ.訂正事項l
発明の詳細な説明の段落【0044】の記載について、「いずれか一方の端面」とあるのを、「排ガス流入側の端面のみ」と訂正する。
ス.訂正事項m
発明の詳細な説明の段落【0045】の記載について、「いずれか一方の端面」とあるのを、「排ガス流入側の端面のみ」と訂正する。
セ.訂正事項n
発明の詳細な説明の段落【0050】の記載について、「いずれか一方の端面」とあるのを、「排ガス流入側の端面のみ」と訂正する。
ソ.訂正事項o
発明の詳細な説明の段落【0059】の記載について、「いずれか一方の端面」とあるのを、「排ガス流入側の端面のみ」と訂正する。
タ.訂正事項p
発明の詳細な説明の段落【0062】の記載について、「実施の形態3」とあるのを、「参考形態」と訂正する。
チ.訂正事項q
発明の詳細な説明の段落【0062】の記載について、「本発明の一実施の形態」とあるのを、「参考形態」と訂正する。
ツ.訂正事項r
発明の詳細な説明の段落【0067】の記載について、「本実施の形態」とあるのを、「参考形態」と訂正する。
テ.訂正事項s
発明の詳細な説明の段落【0068】の記載について、「本実施の形態」とあるのを、「参考形態」と訂正する。
ト.訂正事項t
発明の詳細な説明の段落【0069】の記載について、「本実施の形態」とあるのを、「参考形態」と訂正する。
ナ.訂正事項u
発明の詳細な説明の段落【0079】の記載について、「本実施の形態」とあるのを、「参考形態」と訂正する。
ニ.訂正事項v
発明の詳細な説明の段落【0079】の記載について、「いずれか一方の端面」とあるのを、「排ガス流入側の端面のみ」と訂正する。
ヌ.訂正事項w
発明の詳細な説明の段落【0080】の記載について、「本実施の形態」とあるのを、「参考形態」と訂正する。
ネ.訂正事項x
発明の詳細な説明の段落【0094】の記載について、「実施例2」とあるのを、「参考例」と訂正する(2箇所)。
ノ.訂正事項y
発明の詳細な説明の段落【0095】の記載について、「第3実施の形態」とあるのを、「参考形態」と訂正する。
ハ.訂正事項z
発明の詳細な説明の段落【0096】の記載について、「第2実施例」とあるのを、「参考例」と訂正する。
ヒ.訂正事項α
発明の詳細な説明の段落【0096】の記載について、「第3実施の形態」とあるのを、「参考形態」と訂正する(2箇所)。
フ.訂正事項β
発明の詳細な説明の段落【0097】の記載について、「第2実施例」とあるのを、「参考例」と訂正する。
ヘ.訂正事項γ
発明の詳細な説明の段落【0099】の記載について、「第2実施例」とあるのを、「参考例」と訂正する。
ホ.訂正事項δ
発明の詳細な説明の段落【0100】の記載について、表2中に「第2実施例」とあるのを、「参考例」と訂正する。
マ.訂正事項ε
発明の詳細な説明の段落【0101】の記載について、「第2実施例」とあるのを、「参考例」と訂正する(2箇所)。
ミ.訂正事項ζ
発明の詳細な説明の段落【0102】の記載について、「第2実施例」とあるのを、「参考例」と訂正する(2箇所)。
ム.訂正事項η
図面の簡単な説明の記載について、図4の説明中に「本発明の一実施の形態」とあるのを、「参考形態」と訂正する。
メ.訂正事項θ
図6の記載について、「実施例2」とあるのを、「参考例」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、発明を特定する事項である「前記排ガスフィルタの前記外周壁に隣接する前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させる」をこれに含まれる事項である「前記排ガスフィルタがその排ガス流入側の端面のみに前記外周壁及び前記目封じ部に隣接する前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の前記外周壁に隣接する前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行うこととしている」に変更し、しかも、「前記排ガスフィルタがその排ガス流入側の端面のみに前記外周壁及び前記目封じ部に隣接する前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の前記外周壁に隣接する前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行うこととしている」については、願書に添付された明細書の段落【0040】ないし【0045】、【0048】ないし【0049】、及び図1ないし図3に記載されているから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、また、上記訂正事項d、上記訂正事項h、上記訂正事項k、上記訂正事項l、上記訂正事項m、上記訂正事項n、上記訂正事項o、上記訂正事項p、上記訂正事項q、上記訂正事項r、上記訂正事項s、上記訂正事項t、上記訂正事項u、上記訂正事項v、上記訂正事項w、上記訂正事項x、上記訂正事項y、上記訂正事項z、上記訂正事項α、上記訂正事項β、上記訂正事項γ、上記訂正事項δ、上記訂正事項ε、上記訂正事項ζ、上記訂正事項η、及び上記訂正事項θは、上記訂正事項aと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
上記訂正事項bは、発明を特定する事項である「前記排ガスフィルタのいずれか一方の端面に前記外周壁及び前記目封じ部に隣接する前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えている」をこれに含まれる事項である「前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面のみに前記外周壁及び前記目封じ部に隣接する前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の前記外周壁に隣接する前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行うこととしている」に変更し、しかも、「前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面のみに前記外周壁及び前記目封じ部に隣接する前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の前記外周壁に隣接する前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行うこととしている」については、願書に添付された明細書の段落【0040】ないし【0045】、【0048】ないし【0049】、及び図1ないし図3に記載されているから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、また、上記訂正事項e、上記訂正事項f、上記訂正事項g、上記訂正事項i、上記訂正事項k、上記訂正事項l、上記訂正事項m、上記訂正事項n、上記訂正事項o、上記訂正事項p、上記訂正事項q、上記訂正事項r、上記訂正事項s、上記訂正事項t、上記訂正事項u、上記訂正事項v、上記訂正事項w、上記訂正事項x、上記訂正事項y、上記訂正事項z、上記訂正事項α、上記訂正事項β、上記訂正事項γ、上記訂正事項δ、上記訂正事項ε、上記訂正事項ζ、上記訂正事項η、及び上記訂正事項θは、上記訂正事項bと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
上記訂正事項cは、発明を特定する事項である「前記排ガスフィルタを加熱する加熱手段」をこれに含まれる事項である「前記排ガスフィルタの排ガス流出側に配設されたこれを加熱する加熱手段」に変更し、しかも、「前記排ガスフィルタの排ガス流出側に配設されたこれを加熱する加熱手段」については、願書に添付された明細書の段落【0048】ないし【0049】、及び図3に記載されているから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、また、上記訂正事項h、上記訂正事項j、上記訂正事項p、上記訂正事項q、上記訂正事項r、上記訂正事項s、上記訂正事項t、上記訂正事項u、上記訂正事項w、上記訂正事項x、上記訂正事項y、上記訂正事項z、上記訂正事項α、上記訂正事項β、上記訂正事項γ、上記訂正事項δ、上記訂正事項ε、上記訂正事項ζ、上記訂正事項η、及び上記訂正事項θは、上記訂正事項cと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議の申立についての判断
(1)申立の理由の概要及び証拠
異議申立人大峽公子は、
本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に各々記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項3及び請求項4に係る発明は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、上記請求項1ないし請求項4に係る発明についての特許はいずれも同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである、
旨主張している。
〈証拠〉
甲第1号証:特開平5-118211号公報
甲第2号証:実願昭59-46720号(実開昭60-159813号)のマイクロフィルム
甲第3号証:実願昭60-197351号(実開昭62-105320号)のマイクロフィルム
甲第4号証:特開平8-170522号公報
甲第5号証:特開平8-109819号公報
(2)訂正明細書の請求項1ないし請求項4に係る発明
上記「II.訂正の適否についての判断」で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1ないし請求項4に係る発明は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載されたとおりのものである(II.訂正の適否についての判断(1)訂正の内容、ア.訂正事項aないしウ.訂正事項c参照。)。
【請求項1】 外周壁と、前記外周壁と一体にかつ前記外周壁内にハニカム状に形成された貫通孔隔壁と、前記貫通孔隔壁により仕切られた複数の貫通孔と、前記貫通孔の一端部のみに形成された目封じ部と、を備え、前記目封じ部は前記目封じ部が形成された端面において市松模様状に形成されている排ガスフィルタを用いて排ガスを浄化する排ガス浄化方法であって、前記排ガスフィルタがその排ガス流入側の端面のみに前記外周壁及び前記目封じ部に隣接する前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の前記外周壁に隣接する前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行うこととしていることを特徴とする排ガス浄化方法。
【請求項2】 外周壁と、前記外周壁と一体にかつ前記外周壁内にハニカム状に形成された貫通孔隔壁と、前記貫通孔隔壁により仕切られた複数の貫通孔と、前記貫通孔の一端部のみに形成された目封じ部と、を備えた排ガスフィルタであって、前記目封じ部は前記排ガスフィルタの両端面において市松模様状に形成されているとともに、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面のみに前記外周壁及び前記目封じ部に隣接する前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の前記外周壁に隣接する前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行うこととしていることを特徴とする排ガスフィルタ。
【請求項3】 請求項2に記載の排ガスフィルタと、前記排ガスフィルタを収納する容器と、前記容器の一側部に形成された排ガス流入管と、前記容器の他側部に形成された排ガス流出管と、前記排ガスフィルタの温度を検知する温度検知手段と、前記排ガスフィルタの排ガス流出側に配設されたこれを加熱する加熱手段と、前記温度検知手段で検知された前記排ガスフィルタの温度に応じて前記加熱手段を制御する装置制御部と、を備えた排ガスフィルタ浄化装置。
【請求項4】 送風手段を有することを特徴とする請求項3に記載の排ガスフィルタ浄化装置。
(3)甲号証記載の発明
甲第1号証(特開平5-118211号公報)には、
・「【0002】【従来技術】デイーゼルエンジンの排気ガス中には排気黒煙の原因として知られるパティキュレートが含まれている。そこで,このようなパティキュレートが直接大気中に排出されないようにするために,図6に示すごとく,ディーゼルエンジン3の排気通路49には,排気浄化装置9が設けられている。また,排気通路49の途中には,排気浄化装置9を迂回してディーゼルエンジン3とマフラー5を接続するバイパス45が配管されている。尚,排気通路49とバイパス45の接続部には,排気切換弁41が設けられている。【0003】該排気浄化装置9は,ディーゼルエンジン3の排気ガス7中のパティキュレートを捕集するためのハニカム型のフィルター8と,該フィルター8を装着するトラップ容器91とを有する。また,フィルター8の上流側81には電気ヒータ85を配設している。そして,該フィルター8の内部は,図7,8に示すごとく,セラミック等で作製された多孔質の隔壁19で区切られており,ハニカム状の細長いセル6を形成している。該セル6の両端である上流側81と下流側89は,互い違いに,市松模様状に,セラミック等で作製した閉塞栓1により閉塞されている。」(2頁1欄18〜39行)
・「【0013】【作用及び効果】本発明の排気浄化装置においては,フィルターの周辺部に両端を閉塞した周辺セル断熱部を設けている。そのため,従来のごとく,フィルターの外周部からトラップ容器への熱放散を防止することができる。また,上記栓詰率を10〜20%としている。そのため,フィルター周辺部からの放熱が殆どなく,捕集されたパティキュレートを効率よく燃焼除去でき,フィルター再生率に優れている。更に,エンジン排圧の圧損を最小限に抑えることができ,エンジン性能の低下を招くこともない。上記のごとく,本発明によれば,フィルター再生率に優れ,かつエンジン排圧の圧損を最小限に抑えることができるディーゼルエンジンの排気浄化装置を提供することができる。【0014】【実施例】実施例1本発明の実施例にかかるディーゼルエンジンの排気浄化装置につき,図1ないし図4を用いて説明する。本例の排気浄化装置9に用いるフィルター8は,図1,図2に示すごとく,ほぼ平行に設けた複数の細長いセル6を有する。該セル6の両端である上流側81及び下流側89は,閉塞栓1により互い違いに市松模様状に栓詰めされている(図1,2左下り斜線部分)。また,フィルター8の周辺部には,上記セルの上流側81及び下流側89を共に閉塞栓1により栓詰めして閉塞した,周辺セル断熱部61を有する(図1,2網目状部分)。そして,フィルターの直径方向の全断面積に対する周辺セル断熱部の断面積の割合を示す栓詰率は,10〜20%である。その他は,前記従来例と同様である。【0015】次に,上記栓詰率に対して,フィルターにパティキュレートを捕集した後,パティキュレートを燃焼除去した際の重量再生率と栓詰率との関係,及びエンジン排圧の変化と栓詰率との関係につき,実験を行った。図3は,上記周辺セル断熱部61の栓詰率に対するフィルターの重量再生率を示す線図である。該重量再生率とは,(捕集量-再生後燃え残り量)×100/捕集量(%)のことである。この図より,周辺セル断熱部の栓詰め率が10%末満のときは,重量再生率は80%未満である。そして,栓詰率が20%以上になると重量再生率は85%程度で,ほぼ飽和状態に達する。」(3頁3欄35行〜同頁4欄25行)
と記載されている。
上記各記載、及び図1ないし図8の記載からみて、甲第1号証には、
「(トラップ容器91でもある)外周壁と、前記(トラップ容器91でもある)外周壁と一体にかつ前記(トラップ容器91でもある)外周壁内にハニカム状に形成された隔壁19と、前記隔壁19により仕切られた複数の貫通孔と、前記貫通孔の一端部のみに形成された(市松模様状に栓詰めされる)閉塞栓1と、を備え、前記(市松模様状に栓詰めされる)閉塞栓1は前記(市松模様状に栓詰めされる)閉塞栓1が形成された端面において市松模様状に形成されているフィルタ8を用いて排ガスを浄化する排ガス浄化方法であって、前記フィルタ8がその排ガス流入側及び流出側の端面に周辺部の前記貫通孔に形成された閉塞栓1を備えていることで、前記フィルタ8の排ガス流入側及び流出側の端面の前記周辺部の前記貫通孔及び前記隔壁19におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流入側に配設された電気ヒータ85を用いて、フィルタ8再生を行うこととしている排ガス浄化方法。」との発明
「(トラップ容器91でもある)外周壁と、前記(トラップ容器91でもある)外周壁と一体にかつ前記(トラップ容器91でもある)外周壁内にハニカム状に形成された隔壁19と、前記隔壁19により仕切られた複数の貫通孔と、前記貫通孔の一端部のみに形成された(市松模様状に栓詰めされる)閉塞栓1と、を備えたフィルタ8であって、前記(市松模様状に栓詰めされる)閉塞栓1は前記フィルタ8の両端面において市松模様状に形成されているとともに、前記フィルタ8の排ガス流入側及び流出側の端面に周辺部の前記貫通孔に形成された閉塞栓1を備えていることで、前記フィルタ8の排ガス流入側及び流出側の端面の前記周辺部の前記貫通孔及び前記隔壁19におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流入側に配設された電気ヒータ85を用いて、フィルタ8再生を行うこととしているフィルタ8。」との発明(以下、「甲第1号証発明2」という。)
及び
「前記甲第1号証発明2のフィルタ8と、前記フィルタ8を形成するトラップ容器91と、前記トラップ容器91の一側部に形成された排ガス流入管と、前記トラップ容器91の他側部に形成された排ガス流出管と、前記フィルタ8の排ガス流入側に配設されたこれを加熱する電気ヒータ85と、を備えたフィルタ8浄化装置」との発明
が記載されていると認められる。
甲第2号証(実願昭59-46720号(実開昭60-159813号)のマイクロフィルム)には、
・「図において、機関の排気通路に介装される排気微粒子捕集フイルタ11は多孔性物質からなるハニカム状の隔壁12により形成され、これら隔壁12により排気の流通方向と略平行に多数のセル13が形成されている。排気微粒子捕集フイルタ11の外周部のセル13の両端開口は封鎖材14によりそれぞれ目封じされており、これらセル13によりこれより中央部を保温する保温空間Aが形成されている。また、フイルタ11の中央部においてはセル13の開口部と隣接するセル13の開口部とが交互に排気導入側と排気導出側とで封鎖材14により目封じされている。」(4頁17行〜5頁8行)
・「したがって、フイルタ11の中央部が高温に維持されかつその温度分布が略均一化されるので、フイルタ11の中央部に熱歪が発生することがなくクラック等の発生を防止できると共にフイルタ11再生時にはバーナー等にて排気微粒子を全域に亘つて加熱燃焼させることができる。」(5頁18行〜6頁3行)
と記載されている。
上記各記載、及び第1図ないし第4図の記載からみて、甲第2号証には、
「外周壁と、前記外周壁と一体にかつ前記外周壁内にハニカム状に形成された隔壁12と、前記隔壁12により仕切られた複数の貫通孔と、前記貫通孔の一端部のみに形成された(交互に排気導入側と排気導出側とで目封じされる)閉鎖材14と、を備え、前記(交互に排気導入側と排気導出側とで目封じされる)閉鎖材14は前記(交互に排気導入側と排気導出側とで目封じされる)閉鎖材14が形成された端面において市松模様状に形成されているフィルタ11を用いて排ガスを浄化する排ガス浄化方法であって、前記フィルタ11がその排ガス流入側及び流出側の端面に外周部の前記貫通孔に形成された封鎖材14を備えていることで、前記フィルタ11の排ガス流入側及び流出側の端面の前記外周部の前記貫通孔及び前記隔壁12におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、配設されたバーナー等を用いて、フィルタ11再生を行うこととしている排ガス浄化方法。」との発明
「外周壁と、前記外周壁と一体にかつ前記外周壁内にハニカム状に形成された隔壁12と、前記隔壁12により仕切られた複数の貫通孔と、前記貫通孔の一端部のみに形成された(交互に排気導入側と排気導出側とで目封じされる)封鎖材14と、を備えたフィルタ11であって、前記(交互に排気導入側と排気導出側とで目封じされる)封鎖材14は前記フィルタ11の両端面において市松模様状に形成されているとともに、前記フィルタ11の排ガス流入側及び流出側の端面に外周部の前記貫通孔に形成された封鎖材14を備えていることで、前記排ガスフィルタの排ガス流入側及び流出側の端面の前記外周部の前記貫通孔及び前記隔壁12におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、配設されたバーナー等を用いて、フィルタ11再生を行うこととしているフィルタ11。」との発明(以下、「甲第2号証発明2」という。)
及び
「前記甲第2号証発明2のフィルタ11と、前記フィルタ11を収納するケース8と、前記ケース8の一側部に形成された排ガス流入管と、前記ケース8の他側部に形成された排ガス流出管と、配設されたバーナー等と、を備えたフィルタ11浄化装置。」との発明
が記載されていると認められる。
甲第3号証(実願昭60-197351号(実開昭62-105320号)のマイクロフィルム)には、
・「特開昭59-190418号公報や実開昭59-165516号公報には、フィルタの上流に電気ヒータを設けて、再生時に電気ヒータに通電し、よって堆積したパティキュレートを燃焼させることが記載されている。」(2頁8〜12行)
・「ディーゼルエンジンの排気浄化装置として使用されるハニカム型のフィルタ12は一般にほぼ平行に延びるセル40を有し、隣り合ったセル40が交互に上流端又は下流端で栓詰めされる。第1図においては、42が上流端の栓を示し、このように上流端が栓詰めされたセル40の下流端は開放される。そして、上流端が栓詰めされたセル40の隣のセル40の上流端は開放され、逆にそのようなセル40の下流端が栓44によって栓詰めされる。従って、排気ガスは上流端が開放されたセル40に流入し、その下流端に向かうが、その下流端が栓詰め44されているので下流端を抜けることができず、微孔組織をもつ隔壁を通って隣りのセル40に抜けることになる。この隣りのセル40の下流端は開放されているので排気ガスはそこから下流に流れる。排気ガスが微孔組織をもつ隔壁を通るときに、排気ガスに含まれるパティキュレートが上流開放端のセル40の内壁面に付着する。第1図及び第2図ではセル40の構造を簡略化して示してあるが実際にはもっと多くのセル40があり、そのようなセル40は例えば平方インチ当り250個設けられる。そのような数多くのセル40のうち、周辺部のセル40は栓46によって上流端及び下流端がともに栓詰めされている。従って、これらのセル40内には密封空間48が形成されることになり、この密封空間に形成された空気層が断熱層を形成し、フィルタ12内の熱が外部へ逃げるのを防止している。上下流端ともに栓詰めされるセル40は、最外周から少くとも2列目までを含むように選定され、それによって、フィルタ12の外周のトラップ容器14に直接に触れない断熱層が形成される。従って、トラップ容器14からの放熱が小さくなり、フィルタ再生時にフィルタ12の上流端側でパティキュレートが着火すると、燃焼熱が失われることなく下流側へ伝えられ、細長く延びるセル40内で全領域にわたってパティキュレートの燃焼を行わせることができる。」(8頁1行〜9頁19行)
・「この実施例においては、上下流端ともに栓詰めされたセル40はフィルタ12の全長に沿って配置されたものではない。第4図及び第5図に示されるように、これらの図で上の方にあるセル40は本来の組織に従って上流端又は下流端のみ栓詰めされたものである。」(10頁18行〜11頁4行)と記載されている。
上記各記載、及び第1図ないし第6図の記載からみて、甲第3号証には、
「外周壁と、前記外周壁と一体にかつ前記外周壁内にハニカム状に形成された隔壁と、前記隔壁により仕切られた複数の貫通孔と、前記貫通孔の一端部のみに形成された栓42、44と、を備え、前記栓42、44は前記栓42、44が形成された端面において市松模様状に形成されているフィルタ12を用いて排ガスを浄化する排ガス浄化方法であって、前記フィルタ12がその排ガス流入側及び流出側の端面に周辺部の前記貫通孔に形成された栓46を備えていることで、前記排ガスフィルタの排ガス流入側及び流出側の端面の前記周辺部の前記貫通孔及び前記隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、フィルタ12再生を行うこととしている排ガス浄化方法」との発明
「外周壁と、前記外周壁と一体にかつ前記外周壁内にハニカム状に形成された隔壁と、前記隔壁により仕切られた複数の貫通孔と、前記貫通孔の一端部のみに形成された栓42、44と、を備えたフィルタ12であって、前記栓42、44は前記フィルタ12の両端面において市松模様状に形成されているとともに、前記フィルタ12の排ガス流入側及び流出側の端面に周辺部の前記貫通孔に形成された栓46を備えていることで、前記フィルタ12の排ガス流入側及び流出側の端面の前記周辺部の前記貫通孔及び前記隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、フィルタ12再生を行うこととしているフィルタ12。」との発明(以下、「甲第3号証発明2」という。)
「従来例では、排出ガス流入側に配設された電気ヒータを用いること」
及び
「甲第3号証発明2のフィルタ12と、前記フィルタ12を収容するトラップ容器14と、前記トラップ容器14の一側部に形成された排ガス流入管と、前記容器の他側部に形成された排ガス流出管と、排気温度センサ34と、を備えたフィルタ12浄化装置。」との発明
が記載されていると認められる。
甲第4号証(特開平8-170522号公報)には、
・「【0015】(実施例1)図1は本発明の第1実施例におけるディーゼル機関排ガス浄化装置の断面模式図である。図1において、2はセラミックハニカムフィルタ(以下フィルタと称す)、4は容器、5aはエンジン排ガス流入配管、5bはエンジン排ガス流出配管、6は二次空気導入配管、7は二次空気開閉弁、22は電気ヒーターである。これらは従来例と同様のものであり、同一の符号を付して説明を省略する。従来例の構成と異なるのは、8の二次空気供給装置で、二次空気量調節部(図示せず)を有する。また、3は加熱装置であり、フィルタ2内に電気ヒーター22を備え、外部に熱量調整部を備えている。9は差圧計、10は設置されたパテイキュレート捕集量検出装置であり、捕集量をあらかじめ差圧計9によりフィルタ前後の差圧と捕集量の関係を求めておき、運転中のエンジン回転数と排ガス温度によって、パティキュレート捕集量検出装置10で差圧を補正することにより捕集量を算出する。11はバイパス、12aは第1排ガス導入開閉弁、12bは第2排ガス導入開閉弁、13aは第1排ガス導出開閉弁、13bは第2排ガス導出開閉弁、14は燃焼ガス排出配管であり、燃焼再生中には第1排ガス導入開閉弁12aを開じ、第2排ガス導入開閉弁12bを開き、エンジン排ガス流入配管5aとエンジン排ガス流出配管5bを直結し、フィルタ2への排ガスの導入を遮断し、バイパス11を通して外部に排出する。また、この時第1排ガス導出開閉弁13aを開じ、第2排ガス導出開閉弁13bを開き、燃焼ガス排出配管14を通して燃焼再生中の燃焼ガスを排出する。」(4頁5欄30〜同頁6欄7行)
・「【0017】ここで、上述における燃焼再生の開始直後、すなわち、パティキュレートへの着火後、パティキュレートの自己発熱によりフィルタ2内の温度が上昇するため、電気ヒーター22へ供給する熱量を加熱装置3で適切に下げることにより、燃焼再生の効率化及び省電力化を図ることが可能である。」(4頁6欄40〜45行)
・「【0018】以上のように構成された本発明の第1実施例におけるディーゼル機関排ガス浄化装置と、従来のディーゼル機関排ガス浄化装置について、温度変化比較試験を行った。以下その測定方法、結果について説明する。【0019】(実験例1)本発明の第1実施例におけるディーセル機関排ガス浄化装置のフィルタ2のセル内にK熱電対を挿入し、フィルタ2内の温度変化を測定した。その結果を図2(a)の本発明の第1実施例におけるディーゼル機関排ガス浄化装置の燃焼再生におけるフィルタ内の温度変化を示す温度特性曲線図に示す。」(4頁6欄46行〜5頁7欄6行)
・「また、平均流速Vの大きさに応じてフィルタ2内の温度が変化するため、パテキュレートの空気伝播による燃焼再生を実現できるように電気ヒーター3に供給する熱量の大きさを調整または適切な一定値にする必要がある。ここで、容器4内のフィルタ2付近に温度測定装置を用いることにより、より正確な温度制御を実現でき、効率の極めて高い燃焼再生と省電力を実現できる。」(6頁9欄42〜48行)
と記載されている。
上記各記載、及び図1ないし図4の記載からみて、甲第4号証には、
「排ガス流入側に配設された電気ヒーター22を用いて、排ガス流入側からの送風によってセラミックハニカムフィルタ2再生を行うこととしている排ガス浄化方法。」との発明
「排ガス流入側に配設された電気ヒーター22を用いて、排ガス流入側からの送風によってセラミックハニカムフィルタ2再生を行うこととしているセラミックハニカムフィルタ2。」との発明
「セラミックハニカムフィルタ2と、前記セラミックハニカムフィルタ2を収納する容器4と、前記容器4の一側部に形成された排ガス流入管と、前記容器4の他側部に形成された排ガス流出管と、前記セラミックハニカムフィルタ2の排ガス流入側に配設されたこれを加熱する電気ヒーター22及び熱量調整部とを備えた加熱装置3と、を備えたセラミックハニカムフィルタ2浄化装置。」との発明
「容器4内のフィルタ2付近に温度測定装置を用いることにより、より正確な温度制御を実現でき、効率の極めて高い燃焼再生と省電力を実現できること」
「二次空気供給装置8を有するセラミックハニカムフィルタ2浄化装置。」との発明
及び
「温度変化比較試験において、フイルタ2内の温度変化を測定したこと」
が記載されていると認められる。
甲第5号証(特開平8-109819号公報)には、
・「【0016】図1は本発明の一実施例における排気ガス浄化装置の要部断面図である。図1において、la,lbはセル、2はセル壁、3はプラグ、4はセラミックフィルター、5はディーゼル構関、6は排気管、7は容器、8は電気ヒータ、10はヒートシール層、11は排気ガスバイパス管、12は排気マフラー、13,14はシャッターバルブ、15は排気ガス導入管、16は流入口、17は流出口、18はマフラー接続管である。これらは従来例と同様のものであり、同一の符号を付けて説明を省略する。【0017】19は流入口16と流出口17を連通している熱風サイクル管、20は熱風サイクル管19に装設されている耐熱ファン、21は熱風サイクル管19を開閉するシャッターバルブ、22は流入口16に配設された熱電対、23は熱電対22の信号を入力とし流量制御バルブ及びダンパーの開閉制御信号を出力とする制御部、24は熱風サイクル管19を開閉するダンパー、25は熱風サイクル管l9を通風する熱風の流量を調整する流量制御バルブである。」(3頁3欄40行〜同頁4欄8行)
・「また制御部23の信号により熱電対22の温度が500〜600℃になるように流量制御バルブ25を調整する(S4)。」(3頁4欄25〜27行)
と記載されている。
上記各記載、及び図1ないし図3の記載からみて、甲第5号証には、
「排ガス流入側に配設された電気ヒータ8を用いて、排ガス流入側からの送風によってセラミックフィルター4再生を行うこととしている排ガス浄化方法。」との発明
「排ガス流入側に配設された電気ヒータ8を用いて、排ガス流入側からの送風によってセラミックフィルター4再生を行うこととしているセラミックフィルター4。」との発明
「セラミックフィルター4と、前記セラミックフィルター4を収納する容器7と、前記容器7の一側部に形成された排ガス流入管と、前記容器7の他側部に形成された排ガス流出管と、流入口16に配設された熱電対22と、前記セラミックフィルター4の排ガス流入側に配設されたこれを加熱する電気ヒータ8と、前記熱電対22で検知された温度に応じて流量制御バルブ25及びダンパー24を制御する制御部23と、を備えたセラミックフィルター4浄化装置。」との発明
及び
「耐熱ファン20を有するセラミックフィルター4浄化装置。」との発明
が記載されていると認められる。
(4)請求項1ないし請求項4に係る発明と甲号証記載の発明との対比・判断
〈請求項1に係る発明について〉
請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証に記載された発明の「(トラップ容器91でもある)外周壁」、「隔壁19」、「(市松模様状に栓詰めされる)閉塞栓1」、「フィルタ8」、「閉塞栓1」、「電気ヒータ85」は、それぞれ、請求項1に係る発明の「外周壁」、「貫通孔隔壁」、「目封じ部」、「排ガスフィルタ」、「第2目封じ部」、「加熱手段」に相当し、甲第1号証に記載された発明の「周辺部の」と請求項1に係る発明の「外周壁及び目封じ部に隣接する」及び「外周壁に隣接する」とは「周辺部の」である点で一致するので、甲第1号証には、
外周壁と、前記外周壁と一体にかつ前記外周壁内にハニカム状に形成された貫通孔隔壁と、前記貫通孔隔壁により仕切られた複数の貫通孔と、前記貫通孔の一端部のみに形成された目封じ部と、を備え、前記目封じ部は前記目封じ部が形成された端面において市松模様状に形成されている排ガスフィルタを用いて排ガスを浄化する排ガス浄化方法であって、前記排ガスフィルタがその排ガス流入側の端面に周辺部の前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の前記周辺部の前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、配設された加熱手段を用いて、フィルタ再生を行うこととしている排ガス浄化方法。
が記載されていると認められる。
請求項1に係る発明と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、甲第2号証に記載された発明の「隔壁12」、「(交互に排気導入側と排気導出側とで目封じされる)閉鎖材14」、「フィルタ11」、「閉鎖材14」、「バーナー等」は、それぞれ、請求項1に係る発明の「貫通孔隔壁」、「目封じ部」、「排ガスフィルタ」、「第2目封じ部」、「加熱手段」に相当し、甲第2号証に記載された発明の「外周部の」と請求項1に係る発明の「外周壁及び目封じ部に隣接する」及び「外周壁に隣接する」とは「外周部の」である点で一致するので、甲第2号証には、
外周壁と、前記外周壁と一体にかつ前記外周壁内にハニカム状に形成された貫通孔隔壁と、前記貫通孔隔壁により仕切られた複数の貫通孔と、前記貫通孔の一端部のみに形成された目封じ部と、を備え、前記目封じ部は前記目封じ部が形成された端面において市松模様状に形成されている排ガスフィルタを用いて排ガスを浄化する排ガス浄化方法であって、前記排ガスフィルタがその排ガス流入側の端面に外周部の前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の前記外周部の前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、配設された加熱手段を用いて、フィルタ再生を行うこととしている排ガス浄化方法。
が記載されていると認められる。
請求項1に係る発明と甲第3号証に記載された発明とを対比すると、甲第3号証に記載された発明の「隔壁」、「栓42、44」、「フィルタ12」、「栓46」は、それぞれ、請求項1に係る発明の「貫通孔隔壁」、「目封じ部」、「排ガスフィルタ」、「第2目封じ部」に相当し、甲第3号証に記載された発明の「周辺部の」と請求項1に係る発明の「外周壁及び目封じ部に隣接する」及び「外周壁に隣接する」とは「周辺部の」である点で一致するので、甲第3号証には、
外周壁と、前記外周壁と一体にかつ前記外周壁内にハニカム状に形成された貫通孔隔壁と、前記貫通孔隔壁により仕切られた複数の貫通孔と、前記貫通孔の一端部のみに形成された目封じ部と、を備え、前記目封じ部は前記目封じ部が形成された端面において市松模様状に形成されている排ガスフィルタを用いて排ガスを浄化する排ガス浄化方法であって、前記排ガスフィルタがその排ガス流入側の端面に周辺部の前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の前記周辺部の前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、フィルタ再生を行うこととしている排ガス浄化方法。
が記載されていると認められる。
したがって、請求項1に係る発明と甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明とを対比すると、当該甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明のいずれも「排ガス流入側の端面のみに前記外周壁及び前記目封じ部に隣接する前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の前記外周壁に隣接する前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行うこととしている」ことを備えていない。
したがって、請求項1に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明ではない。
〈請求項2に係る発明について〉
請求項2に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証に記載された発明の「(トラップ容器91でもある)外周壁」、「隔壁19」、「(市松模様状に栓詰めされる)閉塞栓1」、「フィルタ8」、「閉塞栓1」、「電気ヒータ85」は、それぞれ、請求項2に係る発明の「外周壁」、「貫通孔隔壁」、「目封じ部」、「排ガスフィルタ」、「第2目封じ部」、「加熱手段」に相当し、甲第1号証に記載された発明の「周辺部の」と請求項2に係る発明の「外周壁及び目封じ部に隣接する」及び「外周壁に隣接する」とは「周辺部の」である点で一致するので、甲第1号証には、
外周壁と、前記外周壁と一体にかつ前記外周壁内にハニカム状に形成された貫通孔隔壁と、前記貫通孔隔壁により仕切られた複数の貫通孔と、前記貫通孔の一端部のみに形成された目封じ部と、を備えた排ガスフィルタであって、前記目封じ部は前記排ガスフィルタの両端面において市松模様状に形成されているとともに、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面に周辺部の前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の前記周辺部の前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、配設された加熱手段を用いて、フィルタ再生を行うこととしている排ガスフィルタ。
が記載されていると認められる。
請求項2に係る発明と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、甲第2号証に記載された発明の「隔壁12」、「(交互に排気導入側と排気導出側とで目封じされる)閉鎖材14」、「フィルタ11」、「閉鎖材14」、「バーナー等」は、それぞれ、請求項2に係る発明の「貫通孔隔壁」、「目封じ部」、「排ガスフィルタ」、「第2目封じ部」、「加熱手段」に相当し、甲第2号証に記載された発明の「外周部の」と請求項2に係る発明の「外周壁及び目封じ部に隣接する」及び「外周壁に隣接する」とは「外周部の」である点で一致するので、甲第2号証には、
外周壁と、前記外周壁と一体にかつ前記外周壁内にハニカム状に形成された貫通孔隔壁と、前記貫通孔隔壁により仕切られた複数の貫通孔と、前記貫通孔の一端部のみに形成された目封じ部と、を備えた排ガスフィルタであって、前記目封じ部は前記排ガスフィルタの両端面において市松模様状に形成されているとともに、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面に外周部の前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の前記外周部の前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、配設された加熱手段を用いて、フィルタ再生を行うこととしている排ガスフィルタ。
が記載されていると認められる。
請求項2に係る発明と甲第3号証に記載された発明とを対比すると、甲第3号証に記載された発明の「隔壁」、「栓42、44」、「フィルタ12」、「栓46」は、それぞれ、請求項2に係る発明の「貫通孔隔壁」、「目封じ部」、「排ガスフィルタ」、「第2目封じ部」に相当し、甲第3号証に記載された発明の「周辺部の」と請求項2に係る発明の「外周壁及び目封じ部に隣接する」及び「外周壁に隣接する」とは「周辺部の」である点で一致するので、甲第3号証には、
外周壁と、前記外周壁と一体にかつ前記外周壁内にハニカム状に形成された貫通孔隔壁と、前記貫通孔隔壁により仕切られた複数の貫通孔と、前記貫通孔の一端部のみに形成された目封じ部と、を備えた排ガスフィルタであって、前記目封じ部は前記排ガスフィルタの両端面において市松模様状に形成されているとともに、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面に周辺部の前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の前記周辺部の前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、フィルタ再生を行うこととしている排ガスフィルタ。
が記載されていると認められる。
したがって、請求項2に係る発明と甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明とを対比すると、当該甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明のいずれも「排ガス流入側の端面のみに前記外周壁及び前記目封じ部に隣接する前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の前記外周壁に隣接する前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行うこととしている」ことを備えていない。
したがって、請求項2に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明ではない。
〈請求項3に係る発明について〉
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する。請求項2に係る発明を特定する事項である「排ガス流入側の端面のみに前記外周壁及び前記目封じ部に隣接する前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の前記外周壁に隣接する前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行うこととしている」点について、甲第1号証ないし甲第5号証に記載も示唆もされていない。
しかも、請求項3に係る発明は、「排ガス流入側の端面のみに前記外周壁及び前記目封じ部に隣接する前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の前記外周壁に隣接する前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行うこととしている」ことにより、明細書の段落【0043】記載の効果「排ガスフィルタの外周壁1の近傍における貫通孔隔壁2で捕集されたパティキュレートの堆積量を、他の部分の貫通孔隔壁2に比べて少なくすることができるため、再生時において燃焼温度が低い外周壁1の近傍におけるパティキュレートの燃え残りを防止することができる。したがって、パティキュレートの燃え残りによる貫通孔隔壁2に形成されている空孔(図示せず)や貫通孔3の目詰まりを防止できるとともに、排ガスフィルタの再生燃焼率を向上させることができる。」、同段落【0103】記載の効果「排ガスフィルタの耐久性及び信頼性を向上させることができるとともに、排ガスフィルタ内の目詰まりによるディーゼルエンジンの燃費の悪化やエンジン効率の低下を防止することができるという優れた効果が得られる。」、及び同段落【0104】記載の効果「排ガスフィルタの再生燃焼率が高く、かつ排ガスフィルタ内における異常燃焼を防止し、排ガスフィルタのクラックの発生や溶損を防止することが可能になることから、排ガスフィルタ浄化装置の耐久性及び信頼性を向上させることができるという優れた効果が得られる。また、排ガスフィルタを全体的に加熱できることによって、排ガスフィルタ内の温度勾配によるクラックの発生を防止することができることから、温度勾配による排ガスフィルタの損壊を防止して排ガスフィルタの耐久性を高めることができるという優れた効果が得られる。」という効果を奏するものである。
してみると、請求項3に係る発明は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとすることができない。
〈請求項4に係る発明について〉
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当するから、上記〈請求項3に係る発明について〉で説示したと同様の理由により、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとすることができない。

なお、当審において通知した取消の理由である請求項1及び請求項2に係る発明が甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることについては、請求項1及び請求項2に係る発明と甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明とを対比すると、当該甲第1号証ないし甲第5号証のいずれにも「排ガス流入側の端面のみに前記外周壁及び前記目封じ部に隣接する前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の前記外周壁に隣接する前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行うこととしている」ことが記載も示唆もされていない。
しかも、「排ガス流入側の端面のみに前記外周壁及び前記目封じ部に隣接する前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の前記外周壁に隣接する前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行うこととしている」ことにより、請求項1及び請求項2に係る発明は、明細書の段落【0043】記載の効果「排ガスフィルタの外周壁1の近傍における貫通孔隔壁2で捕集されたパティキュレートの堆積量を、他の部分の貫通孔隔壁2に比べて少なくすることができるため、再生時において燃焼温度が低い外周壁1の近傍におけるパティキュレートの燃え残りを防止することができる。したがって、パティキュレートの燃え残りによる貫通孔隔壁2に形成されている空孔(図示せず)や貫通孔3の目詰まりを防止できるとともに、排ガスフィルタの再生燃焼率を向上させることができる。」、同段落【0103】記載の効果「排ガスフィルタの耐久性及び信頼性を向上させることができるとともに、排ガスフィルタ内の目詰まりによるディーゼルエンジンの燃費の悪化やエンジン効率の低下を防止することができるという優れた効果が得られる。」、及び同段落【0104】記載の効果「排ガスフィルタの再生燃焼率が高く、かつ排ガスフィルタ内における異常燃焼を防止し、排ガスフィルタのクラックの発生や溶損を防止することが可能になることから、排ガスフィルタ浄化装置の耐久性及び信頼性を向上させることができるという優れた効果が得られる。また、排ガスフィルタを全体的に加熱できることによって、排ガスフィルタ内の温度勾配によるクラックの発生を防止することができることから、温度勾配による排ガスフィルタの損壊を防止して排ガスフィルタの耐久性を高めることができるという優れた効果が得られる。」という効果を奏するものである。
してみると、本件請求項1及び請求項2に係る発明は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

IV. むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件請求項1ないし請求項4に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし請求項4に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
排ガス浄化方法及び排ガスフィルタ並びにこれを用いた排ガスフィルタ浄化装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 外周壁と、前記外周壁と一体にかつ前記外周壁内にハニカム状に形成された貫通孔隔壁と、前記貫通孔隔壁により仕切られた複数の貫通孔と、前記貫通孔の一端部のみに形成された目封じ部と、を備え、前記目封じ部は前記目封じ部が形成された端面において市松模様状に形成されている排ガスフィルタを用いて排ガスを浄化する排ガス浄化方法であって、前記排ガスフィルタがその排ガス流入側の端面のみに前記外周壁及び前記目封じ部に隣接する前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の前記外周壁に隣接する前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行うこととしていることを特徴とする排ガス浄化方法。
【請求項2】 外周壁と、前記外周壁と一体にかつ前記外周壁内にハニカム状に形成された貫通孔隔壁と、前記貫通孔隔壁により仕切られた複数の貫通孔と、前記貫通孔の一端部のみに形成された目封じ部と、を備えた排ガスフィルタであって、前記目封じ部は前記排ガスフィルタの両端面において市松模様状に形成されているとともに、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面のみに前記外周壁及び前記目封じ部に隣接する前記貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、前記排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の前記外周壁に隣接する前記貫通孔及び前記貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行うこととしていることを特徴とする排ガスフィルタ。
【請求項3】 請求項2に記載の排ガスフィルタと、前記排ガスフィルタを収納する容器と、前記容器の一側部に形成された排ガス流入管と、前記容器の他側部に形成された排ガス流出管と、前記排ガスフィルタの温度を検知する温度検知手段と、前記排ガスフィルタの排ガス流出側に配設されたこれを加熱する加熱手段と、前記温度検知手段で検知された前記排ガスフィルタの温度に応じて前記加熱手段を制御する装置制御部と、を備えた排ガスフィルタ浄化装置。
【請求項4】 送風手段を有することを特徴とする請求項3に記載の排ガスフィルタ浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディーゼル機関等から排出される煤等の可燃性微粒子(以下、パティキュレートと略称する。)を捕集する排ガス浄化方法及び排ガスフィルタ並びに捕集されたパティキュレートを燃焼して排ガスフィルタから除去する排ガスフィルタ浄化装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ディーゼルエンジンが排出するパティキュレートが環境保護や人体への影響から規制され始めている。このようなパティキュレートを捕集して排ガスを浄化するフィルタとして、耐熱性のハニカム構造体からなる排ガスフィルタ及び排ガスフィルタを備えた排ガスフィルタ浄化装置が用いられている。
【0003】
以下に、従来の排ガス浄化方法及び排ガスフィルタ並びに排ガスフィルタ浄化装置について説明する。
【0004】
図7は従来の排ガスフィルタの断面図、図8は従来の排ガスフィルタの要部平面図である。
【0005】
図7及び図8において、1は外周壁、2は貫通孔隔壁、3は貫通孔、4は目封じ部である。
【0006】
図7に示したように、従来の排ガスフィルタは、外周壁1と、外周壁1と一体にかつ外周壁1内にハニカム状に形成された貫通孔隔壁2と、貫通孔隔壁2により仕切られた複数の貫通孔3と、貫通孔3の一端部のみに形成された目封じ部4と、を備えている。また、目封じ部4は図8に示したように、排ガスフィルタの両端面において市松模様状に形成されている。
【0007】
上記構成の排ガスフィルタにおいて、図7に矢印で示したように排ガスフィルタの一端面における開放された貫通孔3から流入した排ガスは、貫通孔隔壁2に形成された微小な空孔(図示せず)を介して他の貫通孔3との間で流入・流出する。この際、貫通孔隔壁2において排ガス中のパティキュレートが捕集された後、排ガスフィルタの他端面における開放された貫通孔3から浄化された排ガスが流出する。
【0008】
ディーゼルエンジン等から排出される排ガスは、パティキュレートが燃焼する際の着火温度より低いため、排ガスフィルタ内には捕集されたパティキュレートが徐々に堆積する。このように堆積したパティキュレートは排ガスフィルタ内を閉塞させ、排ガスフィルタに流入する排ガスの圧力を過度に上昇させて、ディーゼルエンジン等の機能を低下させることから、排ガスフィルタに所定量のパティキュレートが捕集されたところで、パティキュレートに強制的に着火して燃焼させ、炭酸ガスに変えて排ガスフィルタ内から放出する必要がある。このようなパティキュレートの燃焼・放出は、排ガスフィルタの再生と呼ばれ、排ガス温度を上げるか、又は排ガスフィルタの温度を上げることにより行うことができる。
【0009】
次に、このような排ガスフィルタの再生を行うための従来の排ガスフィルタ浄化装置について説明する。
【0010】
図9は従来の排ガスフィルタ浄化装置の要部模式図である。図9において、6はディーゼルエンジン、7はマニホールド、8は共通排気管、9は排ガス導入弁、10a、10bは第1分岐管、11a、11bは空気排出弁、12a、12bは空気排気管、13a、13bは排ガス流入管、14a、14bは容器、18a、18bは排ガス流出管、20a、20bは第2分岐管、21は空気切替弁、22は送風手段、23は送風手段接続管、29は装置制御部、30a、30bは排ガスフィルタ、31a、31bは加熱手段である。
【0011】
図9に示したように従来の排ガスフィルタ浄化装置では、デーゼルエンジン6内のマニホールド7に接続された共通排気管8に排ガス導入弁9を介して第1分岐管10a、10bが接続されている。第1分岐管10a、10bの各々は排ガス流入管13a、13bを介して容器14a、14bに接続され、容器14a、14bの各々の排ガス流入管13a、13bと反対側の側部には、排ガス流出管18a、18bが接続されている。排ガス流出管18a、18bは各々第2分岐管20a、20bに接続されており、第2分岐管20a、20bはその接続部に配設された空気切替弁21を介して送風手段接続管23と接続され、送風手段接続管23の他端にはエアブロア等の送風手段22が配設されている。また、第1分岐管10a、10bは排ガス導入弁9と排ガス流入管13a、13bとの間で分岐しており、空気排出弁11a、11bを介して各々が空気排気管12a、12bと接続されている。容器14a、14bの各々の内部には、排ガス流入管13a、13b側から順に排ガスフィルタ30a、30b、電気ヒータ等の加熱手段31a、31bがそれぞれ配設されている。さらに、排ガス導入弁9、空気切替弁21、空気排出弁11a、11bの各々の開閉と、加熱手段31a、31bと送風手段22の作動は、装置制御部29によって制御されている。
【0012】
ここで、共通排気管8、第1分岐管10a、10b、空気排気管12a、12b、排ガス流入管13a、13b、容器14a、14b、排ガス流出管18a、18b、第2分岐管20a、20b、送風手段接続管23は、各々耐食性のあるステンレス等で構成されており、排ガス導入弁9、空気排出弁11a、11b、空気切替弁21の各弁には、エア圧式、油圧式、電磁式等の開閉弁が用いられる。
【0013】
上記構成を有する従来の排ガスフィルタ浄化装置について、図9を用いて以下にその動作を説明する。
【0014】
排ガスフィルタ30aにおいてディーゼルエンジン6からの排ガスを浄化している際に、容器14a内に配設された差圧センサー(図示せず)等により、排ガスフィルタ30aの前後における排ガスの圧力差を検知し、この圧力差が所定の値以上になると、装置制御部29において所定量のパティキュレートが排ガスフィルタ30aに捕集されたと判断され、排ガスフィルタ30aの再生を開始する。
【0015】
まず、装置制御部29により、排ガス導入弁9を共通排気管8と第1分岐管10bが連通するように作動させるとともに、空気切替弁21を第2分岐管20aと送風手段接続管23が連通するように切り換える。以上の動作により、ディーゼルエンジン6から容器14aへの排ガスの流入が停止するとともに、容器14b内に配設された排ガスフィルタ14bにより、排ガス中のパティキュレートの捕集が開始される。
【0016】
次に、装置制御部29は、加熱手段31aを作動させて排ガスフィルタ30aの加熱を始めるとともに、送風手段22を作動させて排ガス流出管18aから容器14a内に空気が供給される。所定時間が経過後、排ガスフィルタ30aの温度がパティキュレート着火温度に達すると、排ガスフィルタ30a内に捕集されたパティキュレートの燃焼が開始される。この時、パティキュレートの燃焼により発生する炭酸ガス等は、装置制御部29により開放された空気排出弁11aを通して空気排出管12aから排出される。
【0017】
パティキュレートの燃焼開始から所定時間が経過した後、装置制御部29により加熱手段31aの動作が停止され、排ガスフィルタ30aでは空気のみを供給することによりパティキュレートの燃焼が継続する。この燃焼は、パティキュレートの火炎伝搬によって実現される。
【0018】
さらに、所定時間経過してパティキュレートの燃焼が完了したと判断されると、送風手段22が停止して空気排出弁11aが閉じられ、排ガスフィルタ30aは浄化待機の状態になる。この後、容器14b内に配設された差圧センサー等により、装置制御部29が排ガスフィルタ30bの再生開始を判断すると、上記と同様な動作により排ガスフィルタ30bの再生が行われる。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の排ガス浄化方法及び排ガスフィルタ並びに排ガスフィルタ浄化装置では、以下のような問題点を有していた。
【0020】
1)排ガスフィルタ内のパティキュレートが燃焼する際に、排ガスフィルタの中心部に比べて外周部の温度が低いことから、外周部付近では再生時にパティキュレートが燃え残り、排ガスフィルタを完全に再生することができない。
【0021】
2)再生時にパティキュレートの燃え残りが生じると、その後のパティキュレートの捕集における捕集効率が低下するとともに、排ガスフィルタに目詰まりが生じて排ガスの通過が妨げられることから、ディーゼルエンジンの背圧の圧損が大きくなって、燃費の悪化やエンジン効率の低下を招く。
【0022】
3)パティキュレートの捕集と排ガスフィルタの再生を繰り返す間に生じたパティキュレートの燃え残りは、再生時に異常燃焼を発生させ、排ガスフィルタにクラックを生じたり、排ガスフィルタが溶損する原因となる。
【0023】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、排ガスフィルタの外周壁近傍におけるパティキュレートの堆積量を減少させ、再生時におけるパティキュレートの燃え残りを防止して、排ガスフィルタにおける目詰まりを防ぐことが可能な排ガス浄化方法の提供、排ガスフィルタの外周壁近傍におけるパティキュレートの堆積量を減少させ、再生時におけるパティキュレートの燃え残りを防止して、排ガスフィルタにおける目詰まりを防ぐとともに排ガスフィルタの再生燃焼率を向上させることが可能な排ガスフィルタの提供、並びに排ガスフィルタの再生燃焼率が高く、かつ排ガスフィルタ内における異常燃焼を防止し、排ガスフィルタのクラックの発生や溶損を防止することが可能な排ガスフィルタ浄化装置の提供を目的としている。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の排ガス浄化方法は、外周壁と、外周壁と一体にかつ外周壁内にハニカム状に形成された貫通孔隔壁と、貫通孔隔壁により仕切られた複数の貫通孔と、貫通孔の一端部のみに形成された目封じ部と、を備え、目封じ部は目封じ部が形成された端面において市松模様状に形成されている排ガスフィルタを用いて排ガスを浄化する排ガスの浄化方法であって、排ガスフィルタがその排ガス流入側の端面のみに外周壁及び目封じ部に隣接する貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の外周壁に隣接する貫通孔及び貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行う構成よりなる。
【0025】
この構成により、排ガスフィルタの外周壁近傍におけるパティキュレートの堆積量を減少させ、再生時におけるパティキュレートの燃え残りを防止して、排ガスフィルタにおける目詰まりを防ぐことが可能な排ガス浄化方法を提供することができる。
【0026】
また、本発明の排ガスフィルタは、外周壁と、外周壁と一体にかつ外周壁内にハニカム状に形成された貫通孔隔壁と、貫通孔隔壁により仕切られた複数の貫通孔と、貫通孔の一端部のみに形成された目封じ部と、を備えた排ガスフィルタであって、目封じ部は排ガスフィルタの両端面において市松模様状に形成されているとともに、排ガスフィルタの排ガス流入側の端面のみに外周壁及び目封じ部に隣接する貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の外周壁に隣接する貫通孔及び貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行うこととしている構成よりなる。
【0027】
この構成により、排ガスフィルタの外周壁近傍におけるパティキュレートの堆積量を減少させ、再生時におけるパティキュレートの燃え残りを防止して、排ガスフィルタにおける目詰まりを防ぐとともに排ガスフィルタの再生燃焼率を向上させることが可能な排ガスフィルタを提供することができる。
【0028】
また、本発明の排ガスフィルタ浄化装置は、(a)外周壁と、外周壁と一体にかつ外周壁内にハニカム状に形成された貫通孔隔壁と、貫通孔隔壁により仕切られた複数の貫通孔と、貫通孔の一端部のみに形成された目封じ部と、を備えた排ガスフィルタであって、目封じ部は排ガスフィルタの両端面において市松模様状に形成されているとともに、排ガスフィルタの排ガス流入側の端面のみに外周壁及び目封じ部に隣接する貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の外周壁に隣接する貫通孔及び貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行うこととしている排ガスフィルタと、(b)排ガスフィルタを収納する容器と、(c)容器の一側部に形成された排ガス流入管と、(d)容器の他側部に形成された排ガス流出管と、(e)排ガスフィルタの温度を検知する温度検知手段と、(f)排ガスフィルタの排ガス流出側に配設されたこれを加熱する加熱手段と、(g)温度検知手段で検知された排ガスフィルタの温度に応じて加熱手段を制御する装置制御部と、を備えた構成よりなる。
【0029】
この構成により、排ガスフィルタの再生燃焼率が高く、かつ排ガスフィルタ内における異常燃焼を防止し、排ガスフィルタのクラックの発生や溶損を防止することが可能な排ガスフィルタ浄化装置を提供することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、外周壁と、外周壁と一体にかつ外周壁内にハニカム状に形成された貫通孔隔壁と、貫通孔隔壁により仕切られた複数の貫通孔と、貫通孔の一端部のみに形成された目封じ部と、を備え、目封じ部は目封じ部が形成された端面において市松模様状に形成されている排ガスフィルタを用いて排ガスを浄化する排ガスの浄化方法であって、排ガスフィルタがその排ガス流入側の端面のみに外周壁及び目封じ部に隣接する貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の外周壁に隣接する貫通孔及び貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行うこととしたものであり、排ガスフィルタの外周壁近傍におけるパティキュレートの堆積量を減少させ、再生時におけるパティキュレートの燃え残りを防止して、排ガスフィルタにおける目詰まりを防ぐことが可能になるという作用を有する。
【0031】
本発明の請求項2に記載の発明は、外周壁と、外周壁と一体にかつ外周壁内にハニカム状に形成された貫通孔隔壁と、貫通孔隔壁により仕切られた複数の貫通孔と、貫通孔の一端部のみに形成された目封じ部と、を備えた排ガスフィルタであって、目封じ部は排ガスフィルタの両端面において市松模様状に形成されているとともに、排ガスフィルタの排ガス流入側の端面のみに外周壁及び目封じ部に隣接する貫通孔に形成された第2目封じ部を備えていることで、排ガス流入側の端面の排ガス流入面積を排ガス流出側の端面の排ガス流出面積よりも小さくし、排ガスフィルタの排ガス流入側の端面の外周壁に隣接する貫通孔及び貫通孔隔壁におけるパティキュレートの捕集量を他の部分よりも減少させ、排ガス流出側に配設された加熱手段を用いて、排ガス流出側からの送風によってフィルタ再生を行うこととしたものであり、排ガスフィルタの外周壁近傍におけるパティキュレートの堆積量を減少させ、再生時におけるパティキュレートの燃え残りを防止して、排ガスフィルタにおける目詰まりを防ぐとともに排ガスフィルタの再生燃焼率を向上させることが可能になるという作用を有する。
【0032】
排ガスフィルタの材料としては、コージェライト、ムライト、チタン酸アルミニウム等が用いられる。排ガスフィルタの形状は、円筒形、楕円筒形、方形等いずれの形状でもよい。また、排ガスフィルタの寸法は、一例として直径4〜13インチ、長さ5〜14インチで、1平方インチ当たり50〜400個のセルを有するものが用いられる。また、排ガスフィルタにおける単位体積当たりのパティキュレートの捕集量は、一例として1〜30g/リットル程度である。
【0033】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の排ガスフィルタと、排ガスフィルタを収納する容器と、容器の一側部に形成された排ガス流入管と、容器の他側部に形成された排ガス流出管と、排ガスフィルタの温度を検知する温度検知手段と、排ガスフィルタの排ガス流出側に配設されたこれを加熱する加熱手段と、温度検知手段で検知された排ガスフィルタの温度に応じて加熱手段を制御する装置制御部と、を備えたこととしたものであり、排ガスフィルタの再生燃焼率が高く、かつ排ガスフィルタ内における異常燃焼を防止し、排ガスフィルタのクラックの発生や溶損を防止することが可能になるという作用を有する。
【0034】
容器としてはステンレス等の耐熱性のある金属やセラミックス等が用いられる。また、容器の放熱により排ガスフィルタの内外周で温度差が生じるのを避けるために、容器外周にセラミックウール等の断熱材を巻くことが望ましい。
【0035】
温度検知手段としては、シースタイプや白金抵抗体等の熱電対と温度検出器を備えたものなどが用いられる。特に、熱電対としては700〜800℃程度の高温域までを検知可能で、さらにディーゼルエンジンからの排ガスに対して耐食性を有するものが用いられる。
【0036】
加熱手段としては、発熱体としてニクロム線やカンタル線をセラミック製の保護管内に収納した電気ヒータやセラミックヒータ等が用いられる。また、バーナー等のように燃料を燃焼する方式のものでもよい。
【0037】
尚、パティキュレートの成分には可溶性有機物(SOF)があり、排ガスフィルタに捕集されても、再生中に燃焼せずに蒸発して大気中に放出されるので、容器内の排ガスフィルタの前後いずれかにSOFを分解する貴金属等の触媒を担持した触媒フィルタを設けることが好ましい。
【0038】
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、送風手段を有することとしたものであり、排ガスフィルタを全体的に加熱できることによって、排ガスフィルタ内の温度勾配によるクラックの発生を防止することができるという作用を有する。
【0039】
送風手段としては、エアブロアやエアポンプやコンプレッサー等が用いられる。また、排ガスフィルタ内に供給する空気の流量としては、0.01〜2m3/分程度である。
【0040】
以下に、本発明の実施の形態の具体例を説明する。
(実施の形態1)図1は本発明の一実施の形態における排ガスフィルタの断面図であり、図2は本発明の一実施の形態における排ガスフィルタの要部平面図である。
【0041】
図1及び図2において、5は第2目封じ部であり、外周壁1、貫通孔隔壁2、貫通孔3、目封じ部4は従来例と同様のものであるので、同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
本実施の形態における排ガスフィルタが従来例と異なっているのは、図1及び図2に示したように、排ガスフィルタの排ガス流入側の端面のみに外周壁1及び目封じ部4に隣接する貫通孔3に形成された第2目封じ部5を備えていることである。
【0043】
上記構成を有する排ガスフィルタの第2目封じ部5が形成されている端面側から排ガスを流入させ、従来例と同様に排ガス中に含まれるパティキュレートを捕集すると、第2目封じ部5が形成されていることにより、排ガスフィルタの外周壁1の近傍における貫通孔隔壁2で捕集されたパティキュレートの堆積量を、他の部分の貫通孔隔壁2に比べて少なくすることができるため、再生時において燃焼温度が低い外周壁1の近傍におけるパティキュレートの燃え残りを防止することができる。したがって、パティキュレートの燃え残りによる貫通孔隔壁2に形成されている空孔(図示せず)や貫通孔3の目詰まりを防止できるとともに、排ガスフィルタの再生燃焼率を向上させることができる。
【0044】
以上のように本実施の形態によれば、排ガスフィルタの排ガス流入側の端面のみに外周壁及び目封じ部に隣接する貫通孔に形成された第2目封じ部を備えることによって、排ガスフィルタの外周壁近傍におけるパティキュレートの堆積量を減少させ、再生時におけるパティキュレートの燃え残りを防止して、排ガスフィルタにおける目詰まりを防ぐとともに排ガスフィルタの再生燃焼率を向上させることが可能となる。
【0045】
尚、本実施の形態における排ガスフィルタでは、第2目封じ部は排ガスフィルタの排ガス流入側の端面のみに外周壁及び目封じ部に隣接する全ての貫通孔に形成することが望ましいが、このような貫通孔の面積が極めて小さく第2目封じ部の形成が著しく困難な場合には、外周壁及び目封じ部に隣接する所定の部分に第2目封じ部を形成する構成でもよい。
【0046】
(実施の形態2)図3は本発明の一実施の形態における排ガスフィルタ浄化装置の要部断面図である。
【0047】
図3において、15a、15bは第1実施の形態における排ガスフィルタ(以下、排ガスフィルタと略称する。)、16a、16bは温度検知手段、17a、17bは加熱手段、19a、19bは差圧検出手段、24は装置制御部であり、ディーゼルエンジン6、マニホールド7、共通排気管8、排ガス導入弁9、第1分岐管10a、10b、空気排出弁11a、11b、空気排気管12a、12b、排ガス流入管13a、13b、容器14a、14b、排ガス流出管18a、18b、第2分岐管20a、20b、空気切替弁21、送風手段22、送風手段接続管23は従来例と同様のものであるので、同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
図3に示したように、容器14aには排ガスフィルタ15aと、温度検知手段16aと、加熱手段17aと、を備えており、排ガスフィルタ15aに対して加熱手段17aが排ガス流出管18a側に配設されている。また、温度検知手段16aと加熱手段17aは、差圧検出手段19aとともに装置制御部24に接続されている。
【0049】
同様に、容器14bには排ガスフィルタ15bと、温度検知手段16bと、加熱手段17bと、を備えており、排ガスフィルタ15bに対して加熱手段17bが排ガス流出管18b側に配設されている。また、温度検知手段16bと加熱手段17bは、差圧検出手段19bと同様に装置制御部24に接続されている。
【0050】
本実施の形態における排ガスフィルタ浄化装置が、従来例と異なっているのは、容器14a、14b内に、排ガスフィルタの排ガス流入側の端面のみに外周壁及び目封じ部に隣接する貫通孔に形成された第2目封じ部を有する排ガスフィルタ15a、15bと、排ガスフィルタ15a、15bの温度を検知して装置制御部23へ出力する温度検知手段16a、16bと、排ガスフィルタ15a、15bを加熱する加熱手段17a、17bと、温度検知手段16a、16bによって検知された排ガスフィルタ15a、15bの平均温度や温度上昇率に応じて、加熱手段17a、17bの動作を制御する装置制御部24を備えていることである。
【0051】
上記構成を有する本実施の形態における排ガスフィルタ浄化装置について、排ガスフィルタ15aを再生する場合を例に挙げて、再生時の動作方法を図3を用いて説明する。
【0052】
本実施の形態における排ガスフィルタ浄化装置では、圧力センサ等を用いた差圧検出手段19aにより、常に容器14aの排ガス流入管13aと排ガス流出管18aの各々部分における排ガスの圧力を検出して、これを装置制御部24に出力する。装置制御部24でこれらの圧力の差を算出し、この圧力差によってまず排ガスフィルタ15aの再生を開始するかどうかを判断する(ステップ1)。
【0053】
排ガスフィルタ15aにおけるパティキュレートの堆積量とともに、排ガス流入管13aと排ガス流出管18aでの排ガスの圧力差は大きくなることから、装置制御部24ではこの圧力差が所定の値以上になった場合に、排ガスフィルタ15aに目標捕集量のパティキュレートが捕集されたものと判断し、再生が開始される。
【0054】
次にステップ2として、装置制御部24は共通排気管8と第1分岐管10bが連通するように排ガス導入弁9を作動させ、マニホールド7からの排ガスが共通排気管8及び第1分岐管10bを通して排ガス流入管13b側へのみ流入するようにする。これとともに、装置制御部24は第2分岐管20aと送風手段接続管23が連通するように空気切替弁21を作動させる。以上の動作により、容器14aへの排ガスの流入が停止する。
【0055】
次にステップ3として、装置制御部24は電気ヒータ等からなる加熱手段17aを作動させる。これとともに、装置制御部24はエアブロア等からなる送風手段22を駆動させて空気の送風を開始するとともに、空気排出弁11aを開放して第1分岐管10aと空気排気管12aを連通させる。以上の動作により、第2分岐管20aから排ガス流出管18aを通して容器14aに流入した空気は加熱手段17aによって加熱されて高温の熱風となり、この熱風が排ガスフィルタ15aを加熱することで、排ガスフィルタ15aに捕集されたパティキュレートが燃焼する。また、排ガスフィルタ15aを流通した熱風及びパティキュレートの燃焼で生じた炭酸ガス等は、排ガス流入管13a、第1分岐管10a、空気排出弁11aを通して空気排気管12aから外部に放出される。
【0056】
次にステップ4として、装置制御部24において、温度検知手段16aから出力される排ガスフィルタ15a内の平均温度が目標温度に達しているかどうかを判断する。目標温度に達していない場合には、ステップ5として、装置制御部24は加熱手段17aをより高温となるように、また排ガスフィルタ15aが所定の温度上昇率で昇温されるように制御する。ここで、温度上昇率とは単位時間当たりの排ガスフィルタの平均温度の変化量である。
【0057】
ステップ4で目標温度に達している場合には、ステップ6として、装置制御部24は加熱手段17aによる加熱及び送風手段22による空気の供給を中止する。
【0058】
排ガスフィルタ15bについても、上記と同様な動作により再生することができる。
【0059】
以上のように本実施の形態によれば、排ガスフィルタの排ガス流入側の端面のみに外周壁及び目封じ部に隣接する貫通孔に形成された第2目封じ部を有する排ガスフィルタを用いることによって、排ガスフィルタの外周壁近傍におけるパティキュレートの堆積量を減少させ、再生時におけるパティキュレートの燃え残りを防止して、排ガスフィルタにおける目詰まりを防ぐとともに排ガスフィルタの再生率を向上させることが可能となる。また、排ガスフィルタの平均温度や温度上昇率を装置制御部で制御しながら、排ガスフィルタの再生を行うことによって、排ガスフィルタの異常燃焼を防止することが可能となる。
【0060】
尚、本実施の形態においては、排ガスフィルタの温度を加熱手段による加熱量を制御することにより調節したが、送風手段により排ガスフィルタに送られる風量を制御することによって調整しても良い。また、加熱手段及び送風手段の両方を制御することにより、排ガスフィルタの温度を調節してもよい。
【0061】
また、本実施の形態においては、2個の排ガスフィルタを備えた排ガスフィルタ浄化装置について説明したが、排ガスフィルタが1個、若しくは3個以上配設されているものでもよく、本実施の形態と同様に排ガスフィルタの再生を行うことができる。
【0062】
(参考形態)図4は参考形態における排ガスフィルタ浄化装置の要部断面図である。
【0063】
図4において、25a、25bは第1分岐管、26a、26bは排ガス導入弁、27a、27bは第2分岐管、28は装置制御部であり、ディーゼルエンジン6、マニホールド7、共通排気管8、排ガス導入弁9、排ガス流入管13a、13b、容器14a、14b、第1実施の形態における排ガスフィルタ(以下、排ガスフィルタと略称する。)15a、15b、温度検知手段16a、16b、加熱手段17a、17b、排ガス流出管18a、18b、送風手段22、送風手段接続管23は第2実施の形態と同様のものであるので、同一の符号を付して説明を省略する。
【0064】
図4に示したように、共通排気管8には排ガス導入弁9を介して、第1分岐管25a、25bが接続されている。第1分岐管25aは排ガス流入管13a及び第2分岐管27aに、また第1分岐管25bは排ガス流入管13b及び第2分岐管27bに、それぞれ分岐接続されるが、これら分岐点の手前に排ガス導入弁26a、27bが各々配設されている。また、第2分岐管27a、27bは空気切替弁21を介して送風手段接続管23に接続され、送風手段接続管23は送風手段22に接続されている。
【0065】
容器14a内には排ガス流入管13a側から、加熱手段17a、排ガスフィルタ15aが順に配設され、排ガスフィルタ15a内には熱電対等の温度検知手段16aが設けられている。同様に、容器14b内には排ガス流入管13b側から、加熱手段17b、排ガスフィルタ15bが順に配設され、排ガスフィルタ15b内には熱電対等の温度検知手段16bが設けられている。
【0066】
さらに、排ガス導入弁9、排ガス導入弁26a、26b、空気切替弁21、加熱手段17a、17b、温度検知手段16a、16bは装置制御部28に接続されて、各々の動作が制御されている。
【0067】
参考形態における排ガスフィルタ浄化装置が、第2実施の形態と異なっているのは、排ガス流入口13a、13b側から排ガスフィルタ15a、15bに空気が供給されるとともに、加熱手段17a、17bで加熱され、火炎伝播により排ガスフィルタ15a、15b中のパティキュレートが燃焼されることである。
【0068】
上記構成を有する参考形態における排ガスフィルタ浄化装置について、排ガスフィルタ15aを再生する場合を例に挙げて、再生時の動作方法を図4を用いて説明する。
【0069】
参考形態における排ガスフィルタ浄化装置では、圧力センサ等を用いた差圧検出手段(図示せず)により、常に容器14aの排ガス流入管13aと排ガス流出管18aの各々部分における排ガスの圧力を検出して、これを装置制御部28に出力する。装置制御部28でこれらの圧力の差を算出し、この圧力差によって排ガスフィルタ15aの再生を開始するかどうかを判断する(ステップ1)。
【0070】
排ガスフィルタ15aにおけるパティキュレートの堆積量とともに、排ガス流入管13aと排ガス流出管18aでの排ガスの圧力差は大きくなることから、装置制御部28ではこの圧力差が所定の値以上になった場合に、排ガスフィルタ15aに目標捕集量のパティキュレートが捕集されたものと判断し、再生が開始される。
【0071】
次にステップ2として、装置制御部28は共通排気管8と第1分岐管25bが連通するように排ガス導入弁9を作動させ、マニホールド7からの排ガスが共通排気管8及び第1分岐管25bを通して排ガス流入管13b側へのみ流入するようにする。また、排ガス導入弁26aを第2分岐管27aと排ガス流入管13aが連通するように、排ガス導入弁26bを第1分岐管25bと排ガス流入管13bが連通するように、装置制御部28によりそれぞれ切り替える。これとともに、装置制御部28は第2分岐管27aと送風手段接続管23が連通するように空気切替弁21を作動させる。以上の動作により、容器14aへの排ガスの流入が停止する。
【0072】
次にステップ3として、装置制御部28は電気ヒータ等からなる加熱手段17aの内排ガスフィルタ15aの外周部近傍に配設されたものを作動させる。これとともに、装置制御部28はエアブロア等からなる送風手段22を駆動させて空気の送風を開始する。以上の動作により、第2分岐管27aから排ガス流入管13aを通して容器14aに流入した空気は加熱手段17aによって加熱されて高温の熱風となり、この熱風が排ガスフィルタ15a内に流入して排ガスフィルタ15aを加熱することで、排ガスフィルタ15aに捕集されたパティキュレートが着火・燃焼する。また、排ガスフィルタ15aを流通した熱風及びパティキュレートの燃焼により生じる炭酸ガス等は、排ガス流出管18aを通して外部に放出される。
【0073】
次にステップ4として、装置制御部28において、温度検知手段16aにより排ガスフィルタ15aの排ガス流入口13a側の端面の外周部温度が所定温度(例えば、200℃)以上であるかどうかを判断する。ここで所定温度に満たない場合には、ステップ5として装置制御部28により排ガスフィルタ15aの外周部近傍に配設されている加熱手段17aにおける加熱量を増加させる。
【0074】
ステップ4で排ガス流入口13a側の端面の外周部温度が所定温度以上であれば、ステップ6として加熱手段17aの内、ステップ3で作動させなかった排ガスフィルタ15aの中心部近傍に配設された部分による加熱を開始する。
【0075】
次に、ステップ7として、温度検知手段により排ガスフィルタ15aの排ガス流入口13a側の端面における温度上昇率が所定の値(例えば、15℃/秒)以上であるかどうかを判断する。ここで、温度上昇率が所定の値に満たない場合には、ステップ8として、装置制御部28によりステップ6で作動させた加熱手段17aにおける排ガスフィルタ15aの中心部近傍に配設された部分の加熱量を増加させる。
【0076】
ステップ7で温度上昇率が所定の値以上であれば、ステップ9として加熱手段17aによる加熱をすべて中止する。
【0077】
次に、ステップ10として、排ガスフィルタ15a内の最高温度や温度勾配に応じて送風手段22における流量を装置制御部28で制御する。
【0078】
次に、ステップ11として、排ガスフィルタ15a内の排ガス流出口18a側の温度が所定温度(例えば、400℃)以下で、またこの部分での温度上昇率が負の値であれば、再生を終了する。それ以外の場合には、ステップ10に戻って空気流量を調整する。
【0079】
以上のように参考形態によれば、排ガスフィルタの排ガス流入側の端面のみに外周壁及び目封じ部に隣接する貫通孔に形成された第2目封じ部を有する排ガスフィルタを用いることによって、排ガスフィルタの外周壁近傍におけるパティキュレートの堆積量を減少させ、再生時におけるパティキュレートの燃え残りを防止して、排ガスフィルタにおける目詰まりを防ぐとともに排ガスフィルタの再生率を向上させることが可能となる。また、排ガスフィルタの平均温度や温度上昇率を装置制御部で制御しながら、排ガスフィルタの再生を行うことによって、排ガスフィルタの異常燃焼を防止することが可能となる。
【0080】
また、参考形態においては、2個の排ガスフィルタを備えた排ガスフィルタ浄化装置について説明したが、排ガスフィルタが1個、若しくは3個以上配設されているものでもよく、本実施の形態と同様に排ガスフィルタの再生を行うことができる。
【0081】
【実施例】
(実施例1、比較例1)公知の方法により、コージライトを用いて、直径5.66インチ、長さ6インチの円筒形で、1平方インチ当たりのセル数が100セルであり、本発明の第1実施の形態と同様に排ガスフィルタの両端面に市松模様状に形成された目封じ部と外周壁及び目封じ部に隣接する貫通孔に形成された第2目封じ部を備えた排ガスフィルタ(実施例1)と、従来例と同様に第2目封じ部が形成されていない排ガスフィルタ(比較例1)の2種類の排ガスフィルタを作製した。
【0082】
これらの排ガスフィルタを用いて、第2実施の形態と同様な排ガスフィルタ浄化装置を作製した。この排ガスフィルタ浄化装置では、加熱手段として発熱体にカンタル線を用いた電気ヒータを、送風手段としてエアブロアを使用した。
【0083】
第1実施例及び第1比較例における排ガスフィルタ浄化装置の再生燃焼率を比較するため、各排ガスフィルタ浄化装置の排ガスフィルタに、パティキュレートを排ガスフィルタ単位体積当たり10g/リットル、又は20g/リットル捕集させた後、第2実施の形態と同様な動作で排ガスフィルタの再生を行った。この時、再生時の排ガスフィルタ内における目標温度は700℃とし、エアブロアで排ガスフィルタに供給される空気の流量は500リットル/分とした。
【0084】
また、第1実施例の排ガスフィルタ浄化装置においては、目標温度までの温度上昇率と再生後の排ガスフィルタの汚染度の関係について検討するとともに、パティキュレートの捕集と再生を繰り返し行って各再生終了時における排ガスフィルタの汚染度についても測定した。
【0085】
ここで、温度上昇率とは5秒毎の排ガスフィルタの温度データから、1分間あたりの平均の温度上昇率に換算したものである。また、再生燃焼率(%)とは、100(再生前重量-再生後重量)/捕集量により求められる値であり、再生前重量とは再生開始前の排ガスフィルタの全重量、再生後重量とは再生終了後の排ガスフィルタの全重量、捕集量とはパティキュレートを捕集していない排ガスフィルタだけの重量と再生前重量との差である。
【0086】
また、汚染度とは再生終了後にJISD8004(自動車用ディーゼルエンジン排気煙濃度測定用反射式スモークメータ)に規定する反射式スモークメータを用いて測定した排ガスフィルタを通過した排ガス濃度である。
【0087】
(表1)に第1実施例及び第1比較例における排ガスフィルタ浄化装置での再生燃焼率を示した。
【0088】
【表1】

【0089】
(表1)に示したように、パティキュレートの捕集量が10g/リットルの場合、第1比較例の再生燃焼率が92%であったのに対して、第1実施例での再生燃焼率は100%であり、またパティキュレートの捕集量が20g/リットルの場合、第1比較例の再生燃焼率が83%であったのに対して、第1実施例での再生燃焼率は95%であり、いずれの捕集量においても第2目封じ部を有する第1実施例の排ガスフィルタを用いた排ガスフィルタ浄化装置の方が、再生燃焼率が高いことが明らかとなった。また、第1比較例の排ガスフィルタ浄化装置に用いた排ガスフィルタについては、分解して観察したところ、外周壁に隣接するセルにおいてパティキュレートの燃え残りが認められた。
【0090】
次に、再生時における排ガスフィルタの温度上昇率と再生後の排ガスフィルタの汚染度の関係について図5を用いて説明する。
【0091】
図5は、再生時における排ガスフィルタの温度上昇率と再生後の排ガスフィルタの汚染度との関係図である。この図から明らかなように、パティキュレートの捕集量が10g/リットルの場合、温度上昇率が100℃/分以下では汚染度は1%程度と極めて低いが、温度上昇率が100℃/分よりも大きくなると汚染度が急激に上昇した。また、パティキュレートの捕集量が20g/リットルの場合、温度上昇率が75℃/分以下では汚染度は1%程度と極めて低いが、温度上昇率が75℃/分よりも大きくなると汚染度が急激に上昇した。このような関係から、パティキュレートの捕集量が20g/リットル以下の場合には、排ガスフィルタにおける再生時の温度上昇率を75℃/分以下にすることが好ましいことが判明した。
【0092】
次に、再生回数と再生後の排ガスフィルタの汚染度の関係について図6を用いて説明する。
【0093】
図6は、排ガスフィルタ浄化装置における再生回数と再生後の排ガスフィルタの汚染度との関係図である。この図から明らかなように、第1実施例の排ガスフィルタ浄化装置では、パティキュレートの捕集量が10g/リットル、又は20g/リットルのいずれの場合も、1000回再生を繰り返しても再生後の排ガスフィルタの汚染度は1〜2%程度であり、再生を繰り返し行った場合にも排ガスフィルタ内での溶損や破損がなく、かつ高い排ガス浄化特性を有し、耐久性に優れることが明らかとなった。
【0094】
(参考例、比較例2)公知の方法により、コージライトを用いて、直径5.66インチ、長さ6インチの円筒形で、1平方インチ当たりのセル数が100セルであり、本発明の第1実施の形態と同様に排ガスフィルタの両端面に市松模様状に形成された目封じ部と外周壁及び目封じ部に隣接する貫通孔に形成された第2目封じ部を備えた排ガスフィルタ(参考例)と、従来例と同様に第2目封じ部が形成されていない排ガスフィルタ(比較例2)の2種類の排ガスフィルタを作製した。
【0095】
これらの排ガスフィルタを用いて、参考形態と同様な排ガスフィルタ浄化装置を作製した。この排ガスフィルタ浄化装置では、加熱手段として、発熱体にカンタル線を用いた電気ヒータを、送風手段としてエアブロアを使用した。
【0096】
参考例及び第2比較例における排ガスフィルタ浄化装置の再生燃焼率を比較するため、各排ガスフィルタ浄化装置の排ガスフィルタにパティキュレートを排ガスフィルタ単位体積当たり10g/リットル捕集させた後、参考形態と同様な動作で、排ガスフィルタの再生を行った。この時、参考形態で説明したステップ4における目標温度は200℃、ステップ7における温度上昇率は15℃/秒、ステップ11における目標温度は400℃とし、エアブロアにより排ガスフィルタに供給される空気の流量は、50リットル/分とした。
【0097】
また、参考例及び第2比較例のいずれも排ガスフィルタ浄化装置についても、パティキュレートの捕集と再生を繰り返し行って、各再生終了時における排ガスフィルタの汚染度を測定した。
【0098】
尚、温度上昇率、再生燃焼率(%)、汚染度は、第1実施例で説明したものと同様である。
【0099】
(表2)に参考例及び第2比較例における排ガスフィルタ浄化装置での再生燃焼率を示した。
【0100】
【表2】

【0101】
(表2)に示したように、第2比較例の再生燃焼率が75%であったのに対して、参考例での再生燃焼率は89%であり、第2目封じ部を有する参考例の排ガスフィルタを用いた排ガスフィルタ浄化装置の方が、再生燃焼率が高いことが明らかとなった。また、第2比較例の排ガスフィルタ浄化装置に用いた排ガスフィルタについては、分解して観察したところ、外周壁に隣接するセルにおいてパティキュレートの燃え残りが認められた。
【0102】
次に、再生回数と再生後の排ガスフィルタの汚染度の関係について図6を用いて説明する。この図から明らかなように、参考例の排ガスフィルタ浄化装置では1000回再生を繰り返しても再生後の排ガスフィルタの汚染度は1〜2%程度であったが、第2比較例の排ガスフィルタ浄化装置では500回再生を繰り返したところで、汚染度が急激に上昇した。すなわち、参考例の排ガスフィルタ浄化装置については、再生を繰り返し行った場合にも排ガスフィルタ内での溶損や破損がなく、かつ高い排ガス浄化特性を有し、耐久性に優れることが明らかとなった。
【0103】
【発明の効果】
以上のように本発明の排ガス浄化方法及び排ガスフィルタによれば、排ガスフィルタの外周壁近傍におけるパティキュレートの堆積量を減少させ、再生時におけるパティキュレートの燃え残りを防止して、排ガスフィルタにおける目詰まりを防ぐとともに排ガスフィルタの再生燃焼率を向上させることが可能になることから、排ガスフィルタの耐久性及び信頼性を向上させることができるとともに、排ガスフィルタ内の目詰まりによるディーゼルエンジンの燃費の悪化やエンジン効率の低下を防止することができるという優れた効果が得られる。
【0104】
また、本発明の排ガスフィルタ浄化装置によれば、排ガスフィルタの再生燃焼率が高く、かつ排ガスフィルタ内における異常燃焼を防止し、排ガスフィルタのクラックの発生や溶損を防止することが可能になることから、排ガスフィルタ浄化装置の耐久性及び信頼性を向上させることができるという優れた効果が得られる。また、排ガスフィルタを全体的に加熱できることによって、排ガスフィルタ内の温度勾配によるクラックの発生を防止することができることから、温度勾配による排ガスフィルタの損壊を防止して排ガスフィルタの耐久性を高めることができるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態における排ガスフィルタの断面図
【図2】本発明の一実施の形態における排ガスフィルタの要部平面図
【図3】本発明の一実施の形態における排ガスフィルタ浄化装置の要部断面図
【図4】参考形態における排ガスフィルタ浄化装置の要部断面図
【図5】再生時における排ガスフィルタの温度上昇率と再生後の排ガスフィルタの汚染度との関係図
【図6】排ガスフィルタ浄化装置における再生回数と再生後の排ガスフィルタの汚染度との関係図
【図7】従来の排ガスフィルタの断面図
【図8】従来の排ガスフィルタの要部平面図
【図9】従来の排ガスフィルタ浄化装置の要部断面図
【符号の説明】
1 外周壁
2 貫通孔隔壁
3 貫通孔
4 目封じ部
5 第2目封じ部
6 ディーゼルエンジン
7 マニホールド
8 共通排気管
9 排ガス導入弁
10a、10b、25a、25b 第1分岐管
11a、11b 空気排出弁
12a、12b 空気排気管
13a、13b 排ガス流入管
14a、14b 容器
15a、15b 第1実施の形態における排ガスフィルタ
16a、16b 温度検知手段
17a、17b、31a、31b 加熱手段
18a、18b 排ガス流出管
19a、19b 差圧検出手段
20a、20b、27a、27b 第2分岐管
21 空気切替弁
22 送風手段
23 送風手段接続管
24、28、29 装置制御部
26a、26b 排ガス導入弁
30a、30b 排ガスフィルタ
【図面】









 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-01-07 
出願番号 特願平8-189139
審決分類 P 1 651・ 113- YA (F01N)
P 1 651・ 121- YA (F01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 亀田 貴志  
特許庁審判長 西野 健二
特許庁審判官 亀井 孝志
鈴木 充
登録日 2002-10-04 
登録番号 特許第3355943号(P3355943)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 排ガス浄化方法及び排ガスフィルタ並びにこれを用いた排ガスフィルタ浄化装置  
代理人 辻田 幸史  
代理人 阿部 伸一  
代理人 阿部 伸一  
代理人 清水 善廣  
代理人 辻田 幸史  
代理人 清水 善廣  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ