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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 G03G |
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管理番号 | 1094721 |
異議申立番号 | 異議2002-72889 |
総通号数 | 53 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-08-17 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-12-02 |
確定日 | 2004-03-17 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3287400号「負帯電性現像剤組成物の製造方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3287400号の請求項1に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3287400号の請求項1に係る発明は、昭和60年9月17日に出願した特願昭60-203507号出願の一部を新たな特許出願として出願(特願平10-335921号)されたものであって、平成14年3月15日に設定の登録がなされ、杉村由子より特許異議の申立がなされ、平成15年3月10日付けで取消理由通知がなされ、平成15年5月23日に特許異議意見書が提出されたものである。 2.本件特許発明 本件の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。 3.取消理由の概略 当審が通知した取消理由は、 「本件出願は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たしていない。 記 本件出願の明細書の記載は、刊行物1ないし6の記載(特許異議申立書第2頁下から8行〜第5頁第25行「a.甲第1号 証・・・測定帯電量に影響していること(44頁右欄19行〜45頁左欄第2行)を記載している。」参照)を参酌すると、特許異議申立書第5頁第27行〜第8頁第26行「本件特許発明の請求項1 は、・・・詳細な説明に記載された発明ではないことは明白である。」記載の理由により特許法第36条に規定する要件を満たしていない。 ・刊行物1:「最近の電子写真現像システムとトナー材料の開発・実用化」、日本科学情報株式会社、昭和60年9月30日発行、第301〜302頁(特許異議申立人の提出した甲第1号証) ・刊行物2:「”Japan Hardcopy'90”論文 集」、二成分系トナーの粒径と帯電特性、電子写真学会、1990年6月20日発行、第109〜112頁(同甲第2号証) ・ 刊行物3:「電子写真学会年次大会(通算76回)”Japan Hardcopy'96”論文集」、ブローオフ測定時の吹き付けガスによるトナー帯電量変化、電子写真学会、1996年7月10日発行、第101〜104頁(同甲第3号証) ・刊行物4:「電子写真学会年次大会(通算79回)”Japan Hardcopy'97”論文集」、ブローオフ帯電量測定装置、電子写真学会、1997年7月9日発行、第93〜96頁(同甲第4号証) ・刊行物5:「日本画像学会誌、第37巻学会創立40周年記念増刊号(通巻125号)」、日本画像学会標準トナー帯電量測定法(ブローオフ法)、日本画像学会、1998年、第101〜109頁(同甲第5号証) ・刊行物6:「日本画像学会年次大会(通算87回)”Japan Hardcopy2001”論文集」、トナー帯電量測定用標準現像剤、日本画像学会、2001年6月11日発行、第43〜46頁)(同甲第6号証)」というものである。 その理由の概要は次のとおりである。 (i)本件明細書には、ブローオフトライボ法による平均帯電量が-12μc/g以上という請求項1の構成要件を当業者が容易に実施できるように記載されておらず、また請求項1の技術的範囲を定めることを不可能にしている。 (ii)トナーの帯電量は、各種の測定条件、測定器等を規定することにより、初めて異なる測定者が測定したときに、ほぼ同一の結果が得られるものである(刊行物1〜6参照)。しかし、本件明細書には、請求項1の構成要件である平均帯電量について、単にブローオフトライボ法によること、トナーの平均粒径、キャリアの種類、キャリアの平均粒径、トナー濃度を開示しているに過ぎず、他の測定条件、測定器等についての開示が全くない。してみると、本件特許発明は、当業者が容易に実施できるように記載されていないこと、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載された発明でないことは明白である。 4.当審の判断 (1)本件発明は、「ブローオフトライボ法による平均帯電量が-12μc/g以上」を主要な構成要件とするものであり、本件明細書には、ブローオフトライボ法による平均帯電量に関して「・・・ブローオフトライボ法による平均帯電量が-12μc/g以上となるように電荷交換制御剤を含有させ」(【0007】)、「・・・トナーのブローオフトライボ法による平均帯電量が-12μc/g以上となるように帯電させて現像剤組成物とする。」(【0016】)、「比較例1 ・・・平均粒径d50=12μmのトナーを得た。このトナーを平均粒径約100μmの鉄粉キャリア(キャリア/トナー重量比=100/3)で混合し、ブローオフトライボ法による平均帯電量、・・・等の帯電性の測定を、常温常湿、高温高湿、低温低湿のそれぞれの環境で行った。」(【0031】)、「実施例1 ・・・比較例1と・・・同様の方法で、帯電特性を評価した。」(【0034】)という記載がある。そして、帯電特性の評価として、比較例1、実施例1、実施例2に以下のように記載されている。 「比較例1・・・【表1】 常温常湿 高温高湿 低温低湿 ブローオフ帯電量 -21μc/g -7μc/g -20μc/g 帯電の立上り状況 △ △ × 逆極性トナー量 ○ △ × 」 「実施例1・・・ 【表2】 常温常湿 高温高湿 低温低湿 ブローオフ電量 -16μc/g -12μc/g -15μc/g 帯電の立上り状況 ○ ○ ○ 逆極性トナー量 ○ ○ ○ 」 「実施例2・・・実施例1と同様の方法で帯電特性評価を行ったところ、シアンの場合には全環境で、-13μc/gから-17μc/g、イエローの場合には-12μc/gから-15μc/g、黒色の場合には-14μc/g〜-17μc/g」 しかし、ブローオフトライボ法による「平均帯電量」をどのような測定器で測定したのか記載されておらず、また、測定条件も、実施例でトナーの平均粒径、キャリアの種類と平均粒径、キャリア/トナー重量比を記載するだけであり(【0031】【0034】)、これら以外の測定条件については何も記載されていない。 (2)本件特許出願後に頒布された刊行物1ないし刊行物6をみると、いずれもブローオフ法によるトナーの帯電量の測定に関する刊行物であり、刊行物1には、ブローオフ法は、一定の径のノズルを用い、圧縮ガスの吹きつけ速度を一定にたもてば、かなり再現性が良い結果が得られるが、摩擦により新しく電荷が発生する可能性があるため、ブロー圧力はなるべく低く、ブロー時間も短くすることが望ましいことが記載されている。刊行物2には、トナーの粒径、振とう時間により摩擦帯電量が変化することが記載されている。刊行物3及び刊行物4には、測定帯電量は、ファラデーゲージの構造や圧縮ガスの吹き付け方によって大きく異なることが記載されている。刊行物5には、トナーの摩擦帯電量は、トナー、キャリアの表面組成や、混合器内で受ける摩擦の程度によって異なった値をしめすだけでなく、トナーとキャリアの表面が摩擦によって不可逆的に変化することによって、また、摩擦がどのような雰囲気下で行われたかによっても異なった値をしめすことが記載されている。刊行物6には、トナーの帯電量を異なる測定者が異なる装置で測定した場合でも、測定変動要因により測定量の差を極力抑えるために、測定に至るまでの摩擦履歴を同じにする、試料調整および測定雰囲気をそろえる、測定操作による摩擦帯電を極力抑えた分離効率の高いファラデーゲージを使用することなどを規定することが記載されている。刊行物1ないし刊行物6の記載から、本件特許出願後においてさえも、ブローオフ法によりトナーの帯電量の測定を再現性よく行うためには、ノズル径やガスの吹き付け速度等の種々の条件を一定のものとする必要があることが理解できるから、本件特許出願当時においても、同様であったといえる。 (3)本件特許権者は特許異議意見書において、本件特許発明の出願時(昭和60年9月17日)には、ブローオフ法による粉体の帯電量測定装置としては、東芝ケミカル株式会社製のTB-200のみが市販されていたこと、及び、特開昭57-97545号公報、特開昭60-258562号公報(昭和60年12月20日公開)、特開昭61-223850号公報、特開昭63-284562号公報において、上記TB-200を使用して帯電量を測定していることを根拠として、本件明細書に記載された「ブローオフトライボ法」がTB-200を用いて帯電量を測定したものであると主張している。しかしながら、上記「TB-200」が本件特許出願当時市販されていた唯一のものであるとする根拠は示されていない。また、本件特許明細書には「ブローオフトライボ法」と上記「TB-200」を用いた帯電量測定法とを結びつける記載は何もなく、特許権者が参考資料として提出した「ブローオフ粉体帯電量測定装置取扱説明書(MODEL TB-200)東芝ケミカル株式会社」(頒布日不明)及び上記本件特許出願前後に頒布された4つの公報にTB-200を使用して帯電量を測定した記載があることが、本件特許明細書に記載の「ブローオフトライボ法」と「TB-200」を用いた帯電量測定法とを直接結びつける根拠とはならない。したがって、本件明細書の「ブローオフトライボ法」という記載をもって、「TB-200」を用いて帯電量を測定することが記載されているに等しいということはできない。 (4)そうすると、ブローオフ法では、再現性のある測定値を得るためには各種の測定条件を一定とする必要があるにもかかわらず、本件特許明細書には測定条件が記載されていないから、本件の請求項1に記載される「平均帯電量が-12μc/g以上」というのはどのようにして測定された値であるか不明であり、本件発明は当業者が容易に実施できるように記載されているとはいえないので、本件特許明細書の発明の詳細な説明には当業者が容易にその実施をすることができる程度に本件発明の構成が記載されているとは認められない。また、測定条件が不明であるので、請求項1の「平均帯電量が-12μc/g以上」という記載はその範囲内に属するものが不明確な記載であり、本件特許明細書の特許請求の範囲は発明の詳細な説明の欄に記載した発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものとは認められない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本件出願は、特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たしていない。 したがって、本件発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2004-01-26 |
出願番号 | 特願平10-335921 |
審決分類 |
P
1
651・
531-
Z
(G03G)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 加藤 孔一、菅野 芳男 |
特許庁審判長 |
矢沢 清純 |
特許庁審判官 |
六車 江一 秋月 美紀子 |
登録日 | 2002-03-15 |
登録番号 | 特許第3287400号(P3287400) |
権利者 | 富士ゼロックス株式会社 |
発明の名称 | 負帯電性現像剤組成物の製造方法 |
代理人 | 加藤 和詳 |
代理人 | 中島 淳 |
代理人 | 西元 勝一 |
代理人 | 福田 浩志 |