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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E02B
審判 全部申し立て 発明同一  E02B
審判 全部申し立て 2項進歩性  E02B
管理番号 1094770
異議申立番号 異議2003-71986  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-10-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-08-04 
確定日 2004-04-19 
異議申立件数
事件の表示 特許第3373448号「自然石連結構造物」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3373448号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 一 手続の経緯
本件特許第3373448号の請求項1及び2に係る発明についての出願は、平成11年4月19日に特許出願され、平成14年11月22日にその特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、特許異議申立人只野裕子より特許異議の申立てがなされたものである。

二 特許異議の申立ての理由の概要
特許異議申立人只野裕子は、
特許第3373448号の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項2に係る発明は、甲第2号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。また、特許第3373448号の請求項2に係る発明は、甲第5号証に係る発明と実質的に同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。さらに、特許第3373448号の請求項1の記載の発明は、明確でないから、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものであり、請求項2の記載の発明は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、また、明確でないから、特許法第36条第6項第1号及び同条同項第2号の規定により特許を受けることができないものであるとして、請求項1及び2に係る発明は取り消されるべきものであると主張している。

甲第1号証:特開平8-333736号公報
甲第2号証:特開平5-118038号公報
甲第3号証:特開平6-49823号公報
甲第4号証:特開平7-11659号公報
甲第5号証:特願平10-247257号(特開平11-310913号公報)

三 特許法第29条第2項違反について
3-1.本件発明
本件特許第3373448号の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1及び2」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】所定長さに形成され、対角線状に配置され、かつ交点部が連結された2本の連結部材と当該連結部材の各両端部にそれぞれ連結された複数の自然石とからなる自然石連結ブロックを複数積み上げ、中詰材を充填して構築されてなることを特徴とする自然石連結構造物。
【請求項2】所定長さに形成された3本の連結部材と当該連結部材の一端に連結された一個の極大な自然石と前記連結部材の他端側の各端部にそれぞれ連結された、前記極大な自然石より小さい3個の自然石とからなる自然石連結ブロックを複数積み上げ、中詰材を充填して構築されてなることを特徴とする自然石連結構造物。」
なお、請求項2の「多端側」は、「他端側」の明らかな誤記として上記のように認定した。

3-2.甲第1号証に記載の発明
(1)これに対して、特許異議申立人の提出した甲第1号証には、「玉石ユニット」に関して、次の記載がある。

(ア)「【0002】
【従来の技術】コンクリート製玉石ブロックあるいは天然石、砕石等・・・を用いて堰堤、護岸等を築造することが一般に行われている。これらの構造体は、・・・隙間を持たせてブロックや天然石を空積みし、透水性を付与して・・・
【0003】また、・・・天然石を空積みした構造の場合は各々の石の表面、すなわち堰堤内部にまで生物膜が形成されるので、・・・強い浄化力を有する。
【0004】さらにこのような天然石を空積みした構造の場合は、堰堤内部にランダムな大きさの空間が形成されるから、魚類等の水中生物が棲息し、生物環境にとっても好ましいものとなる。しかし、天然石を一個ずつ空積みすることについては、つぎのような問題点がある。・・・
2)崩れやすい。このため、安息角以下のなだらかな斜面に積むことを余儀なくされ、工事面積が大きくなる。
【0005】これらの問題点を解消するため、天然石に孔をあけ、鉄筋や樹脂ロープ等をとおして数珠状に連結した線状の玉石ユニットを使用することが提案されている。・・・玉石として天然石を使用する場合はドリル、ウオータージェット等により孔あけする。
【0006】図13は複数個の玉石1を鉄筋、鋼線、樹脂繊維ロープ等の締結材2に直列に挿通し、両端をナット21等の締結手段で固定した線状の玉石ユニットである。
図14は、2個の玉石1を間隔を設けて締結材2の両端に挿通したものを2組、中間で締結材2を交差させて配置したユニットで、これらを所要数法面に敷き並べ、締結材2端部の連結金具22により相互に連結して面状とし、隙間には必要に応じて間詰め土を充填して法面を完成させるのである。
【0007】このような連結された玉石ユニットは、対象となる堰堤の表面を線状、あるいは面状に覆うことが目的であり、崩壊しやすいので立体構造として積み上げることはできない。・・・」
また、図13(a)には、所定長さに形成された1本の締結材2の両端部にそれぞれ一個の同じ大きさの玉石1が連結された玉石ユニットが記載されている。
さらに、図14には、所定長さに形成され、対角線状に配置され、かつ交差された2本の締結材2の各両端部にそれぞれ玉石1が連結された玉石ユニットが記載されている。
上記(ア)の記載および図13、図14からみて、甲第1号証には、従来の技術として次の各発明が記載されているものと認められる。

「所定長さに形成され、対角線状に配置され、かつ交差された2本の締結材2と当該締結材2の各両端部にそれぞれ連結された複数の天然石を用いた玉石1とからなる天然石を用いた玉石ユニットを複数敷き並べ、隙間には間詰め土を充填してなる天然石を用いた玉石連結構造物。」(甲第1号証に記載の発明1)

「所定長さに形成された1本の締結材2と当該締結材2の一端に連結された一個の天然石を用いた玉石1と前記締結材2の他端側の端部に連結された1個の天然石を用いた玉石1とからなる天然石を用いた玉石ユニットを複数敷き並べ、隙間には間詰め土を充填してなる天然石を用いた玉石連結構造物。」(甲第1号証に記載の発明2)

3-3.対比・判断

(1)本件発明1について
本件発明1と甲第1号証に記載の発明1とを対比すると、甲第1号証に記載の発明1の「締結材2」、「天然石を用いた玉石1」、「天然石を用いた玉石ユニット」、「天然石を用いた玉石連結構造物」は本件発明1の「連結部材」、「自然石」、「自然石連結ブロック」、「自然石連結構造物」に相当する。また、甲第1号証に記載の発明1の「交差された」と本件発明1の「交点部が連結された」とは共に、「交わった」で共通し、甲第1号証に記載の発明1の「敷き並べる」と本件発明1の「積み上げる」とは共に、「並べる」で共通し、さらに、甲第1号証に記載の発明1の「間詰め土」は「中詰め材」といえる。
したがって、両者は、
「所定長さに形成され、対角線状に配置され、かつ交わった2本の連結部材と当該連結部材の各両端部にそれぞれ連結された複数の自然石とからなる自然石連結ブロックを複数並べ、中詰材を充填して構築されてなる自然石連結構造物。」で一致し、次の点で相違している。

相違点1:本件発明1では、2本の連結部材が交点部で連結されることで、交わっているのに対して、甲第1号証に記載の発明1では、2本の連結部材が交差することで、交わっている点。

相違点2:本件発明1では、自然石連結ブロックを積み上げることで、該ブロックを並べているのに対して、甲第1号証に記載の発明1では、自然石連結ブロックを敷き並べることで、該ブロックを並べている点。

そこで、まず、相違点2について検討すると、甲第2号証には、補強土構造物において、コンクリートパネル1を上下に隣接して積み上げる点、甲第3号証には、護岸、消波等のために構築される堤体32において、該堤体32を構成しているコンクリートの上面32aに天然石により石材31が石積み(単層)施工される点、甲第4号証には、擁壁のアンカー工法において、擁壁ブロック1aの上に更に擁壁ブロック1bを積み上げる点がそれぞれ記載されているにすぎず、甲第2号証〜甲第4号証のいずれにも、本件発明1の「自然石連結ブロックを複数積み上げる」という構成事項は記載されておらず、また、示唆もされていない。
そして、本件発明1の上記相違点2に係る構成と他の構成とが相俟って、明細書記載の作用効果を奏するものである。
したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、上記甲第1号証〜甲第4号証に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2について
本件発明2と甲第1号証に記載の発明2とを対比すると、甲第1号証に記載の発明2の「締結材2」、「天然石を用いた玉石1」、「天然石を用いた玉石ユニット」、「天然石を用いた玉石連結構造物」は本件発明2の「連結部材」、「自然石」、「自然石連結ブロック」、「自然石連結構造物」に相当する。また、甲第1号証に記載の発明2の「敷き並べる」と本件発明2の「積み上げる」とは共に、「並べる」で共通し、さらに、甲第1号証に記載の発明2の「間詰め土」は「中詰め材」といえる。
したがって、両者は、
「所定長さに形成された連結部材と当該連結部材の一端に連結された一個の自然石と前記連結部材の他端側の端部に連結された自然石とからなる自然石連結ブロックを複数並べ、中詰材を充填して構築されてなる自然石連結構造物。」という点で一致し、次の点で相違している。

相違点3:本件発明2では、連結部材が3本であり、それらの一端に極大な自然石、他端側の各端部にそれぞれ前記極大な自然石より小さい3個の自然石が連結された自然石連結ブロックを積み上げているのに対して、甲第1号証に記載の発明2では、連結部材が1本であり、その両端には同じ大きさの自然石が連結された自然石連結ブロックを敷き並べている点。

そこで、相違点3について検討すると、甲第2号証には、補強土構造物において、コンクリートパネル1を上下に隣接して積み上げる点に加えて、コンクリートパネル1とそれより小さな支圧プレート6とが複数本の棒状引張材5によって連結されている点、甲第3号証には、護岸、消波等のために構築される堤体32において、該堤体32を構成しているコンクリートの上面32aに天然石により石材31が石積み(単層)施工される点、甲第4号証には、擁壁のアンカー工法において、擁壁ブロック1aの上に更に擁壁ブロック1bを積み上げる点がそれぞれ記載されているにすぎず、甲第2号証〜甲第4号証のいずれにも、本件発明2の「連結部材の一端に連結された一個の極大な自然石と他端側の各端部にそれぞれ連結された極大な自然石より小さい3個の自然石とからなる自然石連結ブロックを複数積み上げる」という構成事項は記載されておらず、また、示唆もされていない。
そして、本件発明2の上記相違点3に係る構成と他の構成とが相俟って、明細書記載の作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明2は、上記甲第1号証〜甲第4号証に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

四 特許法第29条の2違反について
4-1.本件発明
本件特許第3373448号の本件発明2は、上記3-1.に記載された事項により特定されるとおりのものである。

4-2.甲第5号証に係る発明
甲第5号証に係る、本件の出願前に出願され、本件の出願後に出願公開された特願平10-247257号出願の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、次の記載がある。

(イ)「【特許請求の範囲】
【請求項1】石に延び部材が該石から延びるように一体化され、該延び部材の先端部に、摩擦力を増大させる摩擦力増大手段が設けられている、ことを特徴とする土木構築物用施工石。
【請求項2】請求項1において、前記摩擦力増大手段が板状部材とされ、前記板状部材は、該板状部材の板面が前記延び部材の延び方向に向けるようにして配置されている、ことを特徴とする土木構築物用施工石。
・・・
【請求項6】請求項1において、前記摩擦力増大手段が、前記延び部材の先端部に設けられる石である、ことを特徴とする土木構築物用施工石。
・・・
【請求項17】石に孔を形成し、次に、前記孔に接着剤を注入し、次に、前記孔に、摩擦力増大手段が設けられる棒状部材の一端部を挿入する、ことを特徴とする土木構築物用施工石の製造方法。
【請求項18】石に延び部材が該石から延びるように一体化され該延び部材の先端部に摩擦力を増大させる摩擦力増大手段が設けられている土木構築物用施工石を複数用いて、該各石を積み重ねると共に該各延び部材を略平行に配置し、前記各土木構築物用施工石の配設毎に際して、該各土木構築物用施工石における延び部材及び摩擦力増大手段を裏込材料をもって埋設する、ことを特徴とする土木構築物用施工石の使用方法。・・・
【請求項27】請求項1〜26のいずれかにおいて、前記石が複数備えられているもの。
【請求項28】請求項1〜27のいずれかにおいて、前記石に対して前記延び部材が複数設けられていると共に該各延び部材に前記摩擦力増大手段がそれぞれ設けられているもの。・・・」、

(ウ)「【0057】・・・各土木構築物用施工石1は、・・・その主体をなすべく、石として単一の自然石2を備えている。この自然石2としては、・・・その大きさは、・・・好ましくは、直径が100〜500mm程度のものが用いられることになっている。・・・
【0058】このような自然石2には、本実施形態においては、一つの取付け穴3(図4参照)が形成されている。取付け穴3は、自然石2のうちの裏面側とするべき個所において、ドリル等の加工具を用いて形成され、その取付け穴3は、自然石2の表面側にまで貫通しないことになっている。
【0059】前記自然石2には、本実施形態においては、・・・アンカー(延び部材)として、直線状の棒状部材4が一体化されている。この棒状部材4としては、比較的長尺なもの(例えば0.5〜1.5m程度のもの)が用いられ、その材質としては、・・・鉄製、ステンレス製、・・・のものが適宜選択されることになっており、具体的には、・・・鉄筋、鉄棒、鉄線、ステンレスパイプ(棒)が用いられることになっている。この棒状部材4の基端部(図3中、左端部)4aは、前記自然石2の取付け穴3に挿入されて、接着剤5(図5参照)を介して自然石2に接着されており、・・・
【0060】前記棒状部材4には、・・・摩擦力増大手段として、座金7(板状部材)が設けられている。・・・」、

(エ)「【0077】図10に示す第4実施形態においては、鉄線、ワイヤ等の線材21の一端部21aに自然石2が一体化されているだけでなく、その線材21の他端部21bにも、摩擦力増大手段としての自然石22が接着剤等の連結手段を介して一体化されている。・・・」、

(オ)「【0080】図12に示す第6実施形態においては、一列に並んだ複数(図12においては3個)の自然石2を鉄板、鉄筋等のプレート部材24により一体化し、そのプレート部材24に棒状部材4の基端部4aが連結されている。・・・」、

(カ)「【0085】図16に示す第10実施形態においては、大きめの自然石2(例えば最大径が700mm〜1000mm)に対して複数の棒状部材4の基端部4aが前述の第1実施形態と同様の方法等により固定され、その各棒状部材の先端部4bには、・・・摩擦力増大手段として座金7がそれぞれ設けられている。これにより・・・施工途中においても、自然石2の積み上げ安定性を確保できることになる(施工性向上)。」

上記(イ)〜(カ)の記載を含む先願明細書等の記載からみて、先願明細書等には、次の発明が記載されているものと認める。

「所定長さに形成された3本の棒状部材4と当該棒状部材4の基端部4aに連結された一個の大きめの自然石2と前記棒状部材4の先端部側の各端部にそれぞれ連結された、前記大きめの自然石2より小さい3個の座金7とからなる土木構築物用施工石を複数積み上げ、裏込材料を充填して構築されてなる土木構築物。」(以下、「先願発明」という。)

4-3.対比・判断
本件発明2と先願発明とを対比すると、先願発明の「棒状部材4」、「基端部4a」、「大きめの自然石2」、「先端部側」は、それぞれ、本件発明2の「連結部材」、「一端」、「極大な自然石」、「他端側」に相当する。また、先願発明の「座金7」と本件発明2の「自然石」とは共に、「部材」で共通し、さらに、先願発明の「土木構築物用施工石」、「裏込材料」並びに「土木構築物」と、本件発明2の「自然石連結ブロック」、「中詰材」並びに「自然石連結構造物」とは、それぞれ「連結ブロック」、「充填材」並びに「連結構造物」で共通している。
したがって、両者は、
「所定長さに形成された3本の連結部材と当該連結部材の一端に連結された一個の極大な自然石と前記連結部材の他端側の各端部にそれぞれ連結された、前記極大な自然石より小さな3個の部材とからなる連結ブロックを複数積み上げ、充填材を充填して構築されてなる連結構造物。」という点で一致し、次の点で相違している。

相違点1:本件発明2では連結ブロックを構成する連結部材の他端側の端部に連結される部材が自然石であるのに対して、先願発明ではそれが座金7である点。

相違点2:本件発明2では連結構造物が、充填材として、中詰材が充填され構築されているものであるのに対して、先願発明では連結構造物が、充填材として、裏込材料が充填され構築されたものである点。

そこで、相違点1、2について検討すると、先願発明は、少なくとも、本件発明2の構成である「連結部材の他端側の各端部にそれぞれ連結された、・・・極大な自然石より小さい3個の自然石」という構成事項を有しておらず、該事項は単なる周知技術でも、自明な事項でもない。
したがって、本件発明2は、先願発明と同一であるとはいえない。

五 特許法第36条第6項第1号及び第2号違反について
(1) 特許異議申立人は、本件請求項1の記載不備として、
「本件請求項1において、2本の連結部材の配置に関し、「対角線状に配置され、」と特定されているが、本件請求項1においては、角度、さらには対角をイメージするものすらが構成要件として存在しておらず、このような表現をもってして2本の連結部材の配置を特定することはできないから、本件請求項1に係る発明は明確でない。」と主張している。
しかしながら、同請求項の「対角線状に配置され、」に続く、「かつ交点部が連結された」の記載を参酌すれば、2本の連結部材が対角線状に交点を有する形で配置されていることは明らかであるから、明確でないとの特許異議申立人の主張は採用できない。

(2)また、本件請求項2の記載不備として、
(i)「前記連結部材の多端側の各端部にそれぞれ連結された、・・・3個の自然石」と特定され、各端部に3個の自然石がそれぞれ連結される内容となっている。しかし、発明の詳細な説明における図4(a)には、連結部材の各端部には1個の自然石1Bがそれぞれ連結された内容となっており、各端部に3個の自然石がそれぞれ連結される内容とはなっていない。したがって、本件請求項2は、発明の詳細な説明の記載を超えた内容についての権利要求である。」と主張している。
しかしながら、前記記載中の「多端側」とあるのは「他端側」の誤記であることは、当審においてすでに認定したように明らかであるから、上記記載の内容が、発明の詳細な説明における図4(a)に記載の内容となっていることは明らかであり、特許異議申立人の主張は採用できない。
(ii)「所定長さに形成された3本の連結部材」と記載して連結部材の数を3本に特定しているにもかかわらず、「当該連結部材の一端に連結された一個の極大な自然石と」と特定し、一個の極大な自然石に連結される連結部材の数を不特定している。このため、3本の連結部材が、自然石に対する連結に関し、どのようになっているか不明確である」と主張している。
しかしながら、図4(a)等の記載の内容を参酌すれば、上記記載が「当該連結部材の各一端に共通に連結された一個の極大な自然石と」と理解することができるから、一個の極大な自然石に連結される連結部材の数を不特定にするものとはいえず、3本の連結部材が、自然石に対する連結に関し、どのようになっているか不明確であるとする、特許異議申立人の主張は採用できない。
(iii)「連結部材の一端が連結されるものが「極大な自然石」と特定されているが、このような特定では、自然石の大きさの外延を把握することができないから、本件請求項2に係る発明は明確でない。」と主張している。
しかしながら、「極大な」とは、その後に続く「小さい」に比し、相対的に大きいとの意味と解せられるから、特に自然石の大きさの外延を把握することができないものとはいえず、特許異議申立人の主張は採用できない。
(iv)「「前記連結部材の多端側」と特定されているが、この「前記連結部材の多端側」が、連結部材のどこ側を意味しているのか不明であるから、本件請求項2に係る発明は明確でない。」と主張している。
「多端側」が「他端側」の誤記であることは、上記(i)においても指摘したように明らかであり、そうなると、特許異議申立人の主張は採用できない。

六 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件発明1及び2についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-03-24 
出願番号 特願平11-111003
審決分類 P 1 651・ 537- Y (E02B)
P 1 651・ 121- Y (E02B)
P 1 651・ 161- Y (E02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 志摩 美裕貴河本 明彦  
特許庁審判長 鈴木 憲子
特許庁審判官 藤原 伸二
長島 和子
登録日 2002-11-22 
登録番号 特許第3373448号(P3373448)
権利者 行本 卓生
発明の名称 自然石連結構造物  
代理人 久門 知  
代理人 久門 享  

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