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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G |
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管理番号 | 1095404 |
審判番号 | 不服2003-11717 |
総通号数 | 54 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-07-14 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-06-25 |
確定日 | 2004-04-07 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第342019号「画像形成装置」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 7月14日出願公開、特開平10-186962]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成8年12月20日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明は、平成13年1月18日付け、平成15年4月24日付け及び平成15年7月22日付手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであり、特に請求項1に係る発明は次のとおりのものである。以下、「本願発明1」という。 「【請求項1】 複数枚からなる原稿群の画像データに基づいて第1設定部数の画像形成動作を行なう画像形成装置において、 前記第1設定部数のうち所望の第2設定部数を入力する入力手段と、 前記入力手段により入力された第2設定部数に対する画像形成動作が完了する時間を演算する演算手段と、 前記演算手段により演算された前記第2設定部数に対する画像形成動作が完了する時間に関する情報を表示する表示部とを有することを特徴とする画像形成装置。」 2.引用文献記載の発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平3-274068号公報)、引用文献2(特開平5-341612号公報)及び周知例として引用された周知例1(特開平7-175371号公報)には次のような技術事項が、図面とともに記載されている。 [引用文献1(特開平3-274068号公報)] ア)読み取り位置に配置された原稿から画像情報を読み取り、その読み取りに連動して用紙に画像処理を施す画像形成手段と、複数枚の原稿をストック位置から読み取り位置へ搬送し、読み取り完了後の原稿を再びストック位置へ戻す循環式原稿搬送手段と、原稿1枚についての画像形成枚数を設定するための枚数設定手段と、早期に必要な全原稿についての画像形成部数を設定するための早期部数設定手段と、前記画像形成部数につき画像形成を行い、次に前記設定枚数のうち残りの枚数につき画像形成を行うよう、前記画像形成手段及び原稿搬送手段を制御する制御手段と、を備えた原稿循環式画像形成装置。(第1頁 特許請求の範囲の項参照) イ)さらに、複写処理部1のケース4の上面には、第2図に示すような操作パネル60が配置されている。操作パネル60は、指令を入力するためのキーボード61と、複写枚数等の表示を行うためのLCD62とから構成されている。(第3頁右下欄第16行〜同欄第20行参照) ウ)プログラムがスタートすると、ステップS1において、複写枚数Nを1に設定し、早期部数Mを0に設定し、原稿枚数Lを0に設定し、・・・初期設定がなされる。・・・ここで、設定枚数を変更するために、テンキー66が押されれば、・・・テンキー66からの入力データに基づいて、複写枚数Nを記憶する。・・・ステップS11では、早期に或る部数が必要となる緊急状態であるか否かを判断する。・・・一方、「0」以外のテンキー66が押された場合は、・・・入力キーに基づいて早期部数Mが記憶される。(第4頁右上欄第4行〜左下欄第19行参照) エ)この段階で、全ての複写動作を待つことなく、早期部数Mに対応する部数のコピーが全原稿に関して得られたことになる。したがって、早期に必要な部数のコピーをソーター3から抜き出すことにより、緊急な用途に利用することができる。(第6頁左下欄第11行〜同欄第15行参照) オ)なお、本発明を、いわゆるデジタルコピーに採用してもよい。(第7頁右下欄第19行〜同欄第20行参照) 以上の記載を対比のためにまとめると、次のような発明が図面とともに記載されている。 「複数枚からなる原稿群の画像情報に基づいて原稿1枚について画像形成枚数を設定して画像形成動作を行なう画像形成装置において、早期に必要な全原稿についての画像形成部数を入力する早期部数設定手段と、複写枚数等を表示するLCDとを有する画像形成装置。」 [引用文献2(特開平5-341612号公報)] カ)【従来の技術】 一般に、複写機のコピー作業では、数枚程度のコピーであればユーザが複写機の近傍でコピー終了を待っていても問題はないが、大量のコピーを行う場合には待ち時間が長いので、複写機の近傍でコピー終了を待っていると作業効率が悪化する。また、この大量のコピー中に次のユーザがコピーを行う場合にも、同様に待つか、一旦複写機から離れて終了時を見計らって再度複写機の場所に戻るという作業効率の悪さがある。 従来、この種の複写機では、例えば特開昭60-165665号公報や、特開昭60-29761号公報や特開昭64-61766号公報に示すように、原稿の枚数やコピー枚数に応じたコピー終了時刻やコピー所要時間を表示するように構成されている。 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、上記従来の複写機では、複数の原稿をそれぞれ大量にコピーする場合には、ユーザが予め原稿の枚数をセットしなければコピー終了時刻やコピー所要時間を表示することができず、したがって、操作が面倒であるという問題点がある。(段落【0002】〜【0004】参照) キ)演算部207はデータメモリ205から読み出された時間データに基づいてコピー完了時間やコピー完了時刻を演算し、表示部208に表示する。なお、表示部208は例えば図3に示すようなガイダンス表示エリア100で構成される。(段落【0017】参照) ク)つぎに、図8を参照して上記実施例の動作を説明する。ステップS1において変倍等のコピーモードが選択され、ステップS2において転写紙サイズが選択され、ステップS3においてコピー部数Nが設定され、ステップS4において原稿枚数nが設定された後、ステップS5においてスタートキー36がオンになると、ステップS6,S7においてそれぞれ、コピー部数Nと原稿枚数nの入力を確認する。・・・他方、コピー部数Nと原稿枚数nの入力があった場合には、ステップS8において上式(1)に基づいてコピー完了時間Tを演算し、ステップS9において演算が完了すると、ステップS10においてこのコピー完了時間Tを表示する。 ここで、この例ではスタートキー36がオンになると、複写シーケンスが開始されてコピーが行われるとともにコピー完了時間Tが表示されるが、ユーザがコピー開始前にコピー完了時間Tを知りたい場合もある。この場合にはスタートキー36の代わりに、コピー完了表示キー51のオンによりコピー完了時間Tの演算を開始してスタートキー36のオンによる複写シーケンスを独立して行うように構成してもよい。(段落【0026】〜【0028】参照) 以上の記載を対比のためにまとめると、次のような発明が図面とともに記載されている。 「コピー部数Nと原稿枚数nの入力があった場合に、コピー部数Nに対するコピー完了時間やコピー完了時刻を演算する演算部207と、演算部207により演算されたコピー部数Nに対するコピー完了時間やコピー完了時刻を表示する表示部208とを有する画像形成装置。」 [周知例1(特開平7-175371号公報)] ケ)図2は複写機1の上面に配設されている操作パネル部20を示す模式的平面図であり、用紙サイズ選択ボタン21、複写倍率を選定する拡大ボタン22a , 縮小ボタン22b , 等倍ボタン22c 、テンキー23、原稿枚数設定ボタン24及び原稿1枚毎の複写枚数、原稿枚数、複写終了までの所要時間等を表示する表示部25、その他スタートボタン26等を備えている。 このような複写機1にあっては、使用者が、例えば複数枚の原稿を複数枚ずつ複写する場合には原稿枚数をチエックして原稿枚数設定ボタン24を押し、表示部25に表示される数値が原稿枚数となるように設定する。1枚の原稿を複写する枚数はテンキー23を押すことでセットする。更に用紙サイズ選択ボタン21、倍率を選定する拡大ボタン22a 、縮小ボタン22b 又は等倍ボタン22c のいずれか1つを押して複写条件を設定する。 これによって内蔵されているマイクロコンピュターは原稿枚数、原稿1枚毎の複写枚数を認識すると共に、使用用紙サイズ、倍率等に基づいて1回の複写に要する時間を求め、これらと他の待時間等と考慮した補正値等に基づいて複写終了までの所要時間を演算する。この状態でスタートボタン29を押せば、表示部25に、先ず複写終了までの所要時間が表示され、その後は残り複写回数が変わる都度それに合わせた所要時間が順次的に表示されることとなる。(段落【0008】〜【0009】参照) 3.対比 本願発明1を引用文献1記載の発明と対比すると、 a)引用文献1記載の発明の「早期に必要な全原稿についての画像形成部数」、「早期部数設定手段」、「複写枚数等を表示するLCD」は、それぞれ本願発明1の「所望の第2設定部数」、「入力手段」、「表示部」に相当し、 b)引用文献1記載の発明の「複数枚からなる原稿群の画像情報に基づいて、原稿1枚について画像形成枚数を設定し画像形成動作を行なう」と本願発明1の「複数枚からなる原稿群の画像データに基づいて第1設定部数の画像形成動作を行なう」において、 b-1)本願発明1の「画像データ」は引用文献1記載の発明「画像情報」に含まれるものであり、 b-2)本願発明1は「第1設定部数の画像形成動作を行なう」とあるだけで、部数の設定方法について特に限定するものではなく、一方、引用文献1の発明の「原稿1枚に対する画像形成枚数を設定し全原稿についての画像形成動作を行なう」は、結果的に画像形成枚数に対応した部数の画像形成動作が行われることになるから「設定部数の画像形成動作を行なう」ものであり、この設定部数は早期部数に対して「第1設定部数」ということができ、 以上のことから、両者間には次のような一致点、相違点がある。 (一致点) 複数枚からなる原稿群の画像データに基づいて第1設定部数の画像形成動作を行なう画像形成装置において、 前記第1設定部数のうち所望の第2設定部数を入力する入力手段と、表示部とを有する画像形成装置。 (相違点) (1)本願発明1が原稿群の画像データに基づいて画像形成動作を行なうのに対して、引用文献1記載の発明は原稿群の画像情報に基づいて画像形成動作を行なう点 (2)本願発明1が、入力手段により入力された第2設定部数に対する画像形成動作が完了する時間を演算する演算手段と、演算手段により演算された第2設定部数に対する画像形成動作が完了する時間に関する情報を表示する表示部を有するのに対して、引用文献1記載の発明ではそのような演算手段を有していないし、表示部は画像形成動作が完了する時間に関する情報を表示しない点 4.当審の判断 相違点(1)について検討する。 引用文献1記載の発明が画像データに基づく画像形成動作、すなわちデジタル式画像形成動作をする画像形成装置を含むものとみることができなくもないが、アナログ式画像形成動作をする画像形成装置だとしても、引用文献1の上記摘記事項オ)にあるように、引用文献1記載の発明を画像データに基づく画像形成動作をする画像形成装置にも適用可能であることが示唆されているから、相違点(1)は当業者が容易に考えつくことができた構成の変更である。 相違点(2)について検討する。 引用文献2記載の発明の「コピー部数N」、「コピー完了時間やコピー完了時刻を演算する演算部207」、「演算部207により演算されたコピー部数Nに対するコピー完了時間やコピー完了時刻を表示する表示部」は、それぞれ本願発明1の「設定部数」、「画像形成動作が完了する時間を演算する演算手段」、「画像形成動作が完了する時間に関する情報を表示する表示部」に相当するから、引用文献2には「設定部数に対する画像形成動作が完了する時間を演算する演算手段と、演算手段により演算された設定部数に対する画像形成動作が完了する時間に関する情報を表示する表示部を有する画像形成装置」が記載されているし、同様の技術が周知例1にも記載されていて、この種の画像形成装置は周知である。 このように設定部数の画像形成動作の完了時間を予め表示させるという技術思想が周知であり、引用文献1記載の発明において第2設定部数は緊急に必要とする部数であるから、この部数のできあがりの時間を知りたいと考えることは容易であり、引用文献1記載の発明において第2設定部数に対する画像形成動作が完了する時間に関する情報を表示部に表示させようとすることは、当業者が容易に考えつくことができた構成の変更である。 5.むすび 以上のことから、本願発明1は引用文献1及び引用文献2記載の発明、さらには周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、請求項2に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-01-19 |
結審通知日 | 2004-01-27 |
審決日 | 2004-02-12 |
出願番号 | 特願平8-342019 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G03G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 泉 卓也、下村 輝秋 |
特許庁審判長 |
石川 昇治 |
特許庁審判官 |
六車 江一 梅岡 信幸 |
発明の名称 | 画像形成装置 |
代理人 | 貞重 和生 |
代理人 | 天野 正景 |