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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02G |
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管理番号 | 1095485 |
審判番号 | 不服2001-15183 |
総通号数 | 54 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-07-06 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-08-29 |
確定日 | 2004-04-08 |
事件の表示 | 平成11年特許願第365248号「天井入隅部用配線ボックス」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月 6日出願公開、特開2001-186625〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本願発明 本願は、平成11年12月22日の出願であって、その請求項1ないし2に係る発明は、平成16年1月13日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1は次のとおりである。(以下、「本願発明」という。) 「【請求項1】天井面と壁面とで形成する天井入隅部の壁面に添設されるベースと、該ベースの上端から天井面に沿い逆L形に張り出されたケーブル導入板とを備え、該ベースとケーブル導入板とは金属板から打ち抜き曲げ加工して一体に形成され、他方該ベース及びケーブル導入板を覆う金属板から打ち抜き曲げ加工して一体に形成されたカバーを備え、ケーブル導入板のケーブル導入穴を通し上記ベースとケーブル導入板とカバーとによって画成された空間内へ上記天井面から導出されたケーブルを導入し、他方上記壁面に配線ダクトを添設し、該配線ダクト上端の開口を上記カバーの下端開口と対向せしめ、該両開口を通じて上記空間内から上記配線ダクト内へ上記ケーブルを導入するようにした天井入隅部用配線ボックスにおいて、上記ケーブル導入板を上記ベースの上端縁から上記逆L形に曲げられ天井面に沿い対向して延出された一対のケーブル包囲片にて形成し、該一対のケーブル包囲片にて上記ケーブル導入穴を画成すると共に、該一対のケーブル包囲片の端部を上記ケーブル導入板の前端縁中央部から一側方へ片寄った位置において対向させ、該一対のケーブル包囲片の端部間にケーブル導入用の切欠溝を形成し、上記天井面から導出して垂下されたケーブルを延在長の途中で上記一対のケーブル包囲片を弾性的に拡開しつつ上記切欠溝内に押し込み上記ケーブル導入穴内に割り込ませる構成とし、上記カバーの上端開口部の内周面を上記一対のケーブル包囲片の外周面に外嵌めする構成としたことを特徴とする天井入隅部用配線ボックス。」 2.当審の拒絶理由 一方、当審において平成15年11月12日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願の請求項1ないし2に係る発明は、その出願前に頒布された実願平4-34761号(実開平5-91117号)のCD-ROM(以下、「刊行物1」という。)に記載された発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3.刊行物1の記載事項 刊行物1には、壁面と天井面の交わる隅部に、配線を壁面からと天井裏に通す箇所で、配線を露出させずに体裁良く収容保護しておける通常の直線状の配線モールの端部に連結される隅部用ボックス(段落【0001】〜【0002】)において、「隅部用ボックスの基本的な構造は、前記した従来技術の場合と同様でよい。」という記載(段落【0009】5行目)とともに、 (a)隅部用ボックス50が、壁面片62と天井片64がL字形を構成するベース部材60と、このベース部材60の前面を覆って嵌合取付されるカバー部材70で構成されており(段落【0014】)、 (b)該ベース部材の上端から天井面に沿い逆L形に張り出された天井片64は、概略長方形状で先端が丸くなっていて、天井片64の先端側には配線挿通孔65が形成されていること(段落【0016】)、 (c)隅部用ボックスは、合成樹脂あるいは金属などの通常の配線資材用材料からなるベース部材およびカバー部材からなること(段落【0009】)、 (d)配線20は、直線状の配線モール10から、上記ベース部材60と天井片64とカバー部材70とによって画成された空間内を通り、天井片64の配線挿通孔65および天井面40の貫通孔42を通じて天井裏へと引き込まれており(段落【0019】、【図1】)、 (e)他方壁面30には直線状の配線モール10が添設され、該配線モール上端の開口を上記カバー部材の下端開口と対向せしめ、該両開口を通じて上記空間内と上記配線モール内に上記配線が収納されるように構成されており(段落【0011】、【図1】)、 (f)カバー部材70の上端開口部の内周面が、配線を包囲する天井片64の外周面に嵌合片67と嵌合孔77とによって外嵌めされていること(段落【0004】、【図4】)が記載されている。 4.対比・検討 4-1.対比 刊行物1記載の発明における「隅部用ボックス」は、本願発明の「天井入隅部用配線ボックス」に相当し、前者の「配線モール」は後者の「配線ダクト」に相当する。また、「配線」の代表的なものが「ケーブル」であって、前者のベース部材の「壁面片」と「天井片」は、後者の「ベース」と「ケーブル導入板」にそれぞれ相当する。 そこで、本願発明と刊行物1に記載された発明を対比すると、両者は、 (一致点) 「天井面と壁面とで形成する天井入隅部の壁面に添設されるベースと、該ベースの上端から天井面に沿い逆L形に張り出されたケーブル導入板とを備え、該ベース及びケーブル導入板を覆うカバーを備え、ベースと、ケーブル導入板、およびカバーは金属から形成されたものであり、ケーブル導入板のケーブル導入穴を通し上記ベースとケーブル導入板とカバーとによって画成された空間内へ上記天井面に延在するケーブルが存在するようにされ、他方上記壁面に配線ダクトを添設し、該配線ダクト上端の開口を上記カバーの下端開口と対向せしめ、該両開口を通じて上記空間内から上記配線ダクト内へ上記ケーブルが存在するようにした天井入隅部用配線ボックスにおいて、上記カバーの上端開口部の内周面を上記ケーブル導入板の外周面に外嵌めする構成とした天井入隅部用配線ボックス。」 である点で一致するものの、次の点で相違する。 (相違点1) ベースとケーブル導入板、およびカバーの形成方法について、本願発明では、ベースとケーブル導入板とは金属板から打ち抜き曲げ加工して一体に形成され、カバーも金属板から打ち抜き曲げ加工して一体に形成されたものであるのに対し、刊行物1記載の発明では、それらが金属で形成されることまでしか記載されていない点。 (相違点2) 天井入隅部用配線ボックスにおけるケーブルの配線が、本願発明では、ケーブル導入板のケーブル導入穴を通しベースとケーブル導入板とカバーとによって画成された空間内へ天井面から導出されたケーブルを導入し、配線ダクト上端の開口とカバーの下端開口との両開口を通じて上記空間内から配線ダクト内へ上記ケーブルを導入するものであるのに対し、刊行物1には、配線ダクト上端の開口とカバーの下端開口との両開口を通じて配線ダクト内からベースとケーブル導入板とカバーとによって画成された空間内へケーブルを導入し、ケーブル導入板のケーブル導入穴を通し天井裏へ引き込むことは記載されているが、天井面から導出、垂下されたケーブルをケーブル導入板のケーブル導入穴を通しベースとケーブル導入板とカバーとによって画成された空間内へ導入し、配線ダクト上端の開口とカバーの下端開口との両開口を通じて上記空間内から配線ダクト内へ上記ケーブルを導入することは記載されていない点。 (相違点3) ケーブル導入板について、本願発明では、ケーブル導入板をベースの上端縁から逆L形に曲げられた天井面に沿い対向して延出された一対のケーブル包囲片にて形成し、該一対のケーブル包囲片にてケーブル導入穴を画成すると共に、該一対のケーブル包囲片の端部を上記ケーブル導入板の前端縁中央部から一側方へ片寄った位置において対向させ、該一対のケーブル包囲片の端部間にケーブル導入用の切欠溝を形成し、上記天井面から導出し上記天井面から導出して垂下されたケーブルを延在長の途中で上記一対のケーブル包囲片を弾性的に拡開しつつ上記切欠溝内に押し込み上記ケーブル導入穴内に割り込ませる構成とし、その結果、カバーの上端開口部の内周面が外嵌めするものが上記一対のケーブル包囲片の外周面になるものであるのに対し、刊行物1記載の発明では、ケーブル導入板はベースの上端縁から逆L形に曲げられた天井面に沿い対向して延出されたものであるが、ケーブル導入用の切欠溝のないケーブル導入穴を形成したものであって、ケーブルを該ケーブル導入穴に導入するにはケーブルの端末をケーブル導入穴内へ導入しなければならず、天井面から導出して垂下されたケーブルを延在長の途中で上記一対のケーブル包囲片を弾性的に拡開しつつ上記切欠溝内に押し込みケーブル導入穴内に割り込ませる構成とすることは記載されていない点。 4-2.相違点についての検討 (イ)L字状やU字状に湾曲したり、穴や溝状の切り欠かれた箇所のある刊行物1記載のベース部材やカバー部材のような形状の部材を金属で形成する際の手法として、金属板から打ち抜き曲げ加工して一体に形成することは、慣用の形成手段であって、ベースとケーブル導入板、およびカバーの形成方法についての相違点1に、格別の技術的工夫は認められない。 (ロ)天井裏から室内にわたるケーブル配線工事において、室内から天井裏へ引き込んで配線するか、天井裏から天井面を経て室内へ垂下、導出して配線するかは、配線箇所や工事手順等の状況に応じて適宜選択される設計的事項である。そして、天井面から室内へ導出されたケーブルであっても、壁面と天井面の交わる隅部でケーブルを露出させずに体裁良く収容保護する必要があることは、室内から天井面を経て天井裏へと引き込まれるケーブルと同様であるから、天井面から室内へ導出されたケーブルについて、刊行物1記載の基本構成を有する天井入隅部用配線ボックスを用いるようにし、天井入隅部用配線ボックスにおけるケーブルの配線を、相違点2のように、ケーブル導入板のケーブル導入穴を通しベースとケーブル導入板とカバーとによって画成された空間内へ天井面から導出されたケーブルを導入し、配線ダクト上端の開口とカバーの下端開口との両開口を通じて上記空間内から配線ダクト内へ上記ケーブルを導入するようなことは、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度の事項である。 (ハ)また、一般に糸や紐、ロープ、ケーブル状の長尺体を輪状に閉鎖された導入穴に通そうとすると、わざわざを長尺体の端末を捜して該端末を導入穴内へ導入しなければならず、そのような不便さを解消する手段として、導入穴を糸等を包囲する閉じた輪状ではなく、一部を切欠溝で開放された輪状のものとし、長尺体の端末ではなく長尺体の延在長の途中で上記切欠溝の両側一対の輪部分を弾性的に拡開するなどして上記切欠溝内に押し込み上記導入穴内に割り込ませ、長尺体を包囲する構成とすることは、糸通しを容易化工夫した針やゴム通し具などでも、本願出願前から普通に見られる一般的な長尺体の穴通しの工夫にすぎないところ、電線やケーブルなどについても、その導入用の切欠溝のないケーブル等を長手方向の部分的な箇所で包囲する閉じた導入空間にケーブル等を導入するにはわざわざをケーブル等の端末を捜してケーブル等の端末を該導入穴内へ導入しなければならないところ、対向して延出された一対のケーブル等の包囲片にて形成し、該一対の包囲片にて上記ケーブル等の導入穴を画成すると共に、該一対の包囲片の端部間にケーブル等の導入用の切欠溝を形成し、ケーブル等を延在長の途中で上記一対の包囲片を弾性的に拡開しつつ上記切欠溝に押し込み上記導入穴内に割り込ませる構成とすることは、ケーブル等の取扱い方として本願出願前周知の事項にすぎない(必要ならば、例えば、実願昭53-148128号(実開昭55-65785号)のマイクロフィルム(刊行物2)、特開平9-154214号公報(刊行物4)、特開平9-158380号公報、特に【0016】、【図7】のケーブル支持体(刊行物5)等参照。ちなみに、刊行物2には、コネクタ端末部における電線の集束案内装置Aの略L字状枠体lと略T字状枠体tの各横片2の尖端2aの間の電線3の径より小さい間隔Dを拡げて、電線を電線の延在長の途中で内腔8内に押し込むことが、また刊行物4には、導線またはケーブルを導線収容通路11の内部に天井部23を左右の天井部27と29に分割している長手方向分離部25を通して天井部27,29を弾性変形させてケーブル等の延在長の途中で圧入すること、およびケーブル等の収納内部空間に対して該長手方向分離部は中央位置にある必要がないこと(図4〜9)が、刊行物5の図7には、ケーブルQが支持体3の下端を延長して対向状態で形成された一対のフック形状のケーブル支持体4の開放した下端からケーブル支持体4の包囲する空間に押し込まれていることが記載されている。) しかも、そのような切欠溝の収納空間に対する位置が、必ず中央位置になければならないものでないことは、上記化合物4の記載や上記補正前の本願明細書及び図面にも記載されていたとおり、技術的に明らかな事項である。 そして、刊行物1には「ケーブル導入穴」に相当する「配線挿入孔65」へのケーブル挿入作業における作業性の困難さについて特に記載はないが、天井面から室内へ導出されたケーブルを天井入隅部用配線ボックスを用いて収納保護する天井入隅部用配線ボックスの設置個所および作業内容から当業者であれば普通に認識できる技術的課題であるから、刊行物1記載の天井入隅部用配線ボックスにおけるケーブル端末から必ず導入しなければならない不自由さのある切欠溝のないケーブル導入穴が形成されたケーブル導入板に対して、上記周知技術を適用し、ケーブルの延在長の途中でもケーブル導入穴内に通すことができるように、ベースの上端縁から逆L形に曲げられた天井面に沿い対向して延出された一対のケーブル包囲片にて形成し、該一対のケーブル包囲片にて上記ケーブル導入穴を画成すると共に、該一対のケーブル包囲片の端部を上記ケーブル導入板の前端縁中央部から一側方へ片寄った位置において対向させ、該一対のケーブル包囲片の端部間にケーブル導入用の切欠溝を形成し、上記天井面から導出して垂下されたケーブルを延在長の途中で上記一対のケーブル包囲片を弾性的に拡開しつつ上記切欠溝内に押し込み上記ケーブル導入穴内に割り込ませる構成に変更し、その結果、カバーの上端開口部の内周面が外嵌めするものが上記一対のケーブル包囲片の外周面になるものとすることは、当業者が容易に設計し得る範囲内の事項である。 そして、そのような設計変更による作用効果も予測される範囲内のものにすぎない。 (ニ)なお、請求人は、意見書において、上記刊行物4における導線収容通路のケーブル導入を許容するために曲がる天井部の曲げ支点線と、本願発明における包囲片(ケーブル導入板)の曲げ支点との差違等を挙げて、相違点3についての想到困難性を縷々主張するが、刊行物4は、ケーブル等の長尺体をその延在長の途中で包囲された導入空間へ通す際の包囲部材の切欠溝を利用した周知の技術的工夫について、参考のため例示した文献にすぎず、刊行物4にそのようなケーブル導入時の曲げ支点についての相違があることが、長尺体をその長手方向の部分的な箇所で包囲する部材に切欠溝を設けて長尺体の延在長の途中でも該包囲部材の内部空間へ収納可能とするという周知技術を、刊行物1記載の閉じられたケーブル導入穴に対して適用する際の阻害要因になるものではない。 5.むすび したがって、本願発明は、その出願前日本国内において頒布された刊行物1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-02-06 |
結審通知日 | 2004-02-10 |
審決日 | 2004-02-23 |
出願番号 | 特願平11-365248 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H02G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 清田 健一 |
特許庁審判長 |
後藤 千恵子 |
特許庁審判官 |
水垣 親房 福島 浩司 |
発明の名称 | 天井入隅部用配線ボックス |
代理人 | 中畑 孝 |