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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1095605
審判番号 不服2001-7440  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-01-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-05-07 
確定日 2004-04-12 
事件の表示 平成 4年特許願第158310号「プラスチック製蓋材」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 1月11日出願公開、特開平 6- 1368〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明の特定
本願は、平成4年6月17日の出願であって、その請求項1-6に係る発明は、平成13年6月5日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1-6に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「最上層として設けられ融点が200℃以上の耐熱性ポリエステルフィルムと、中間層として耐熱性ポリエステルフィルム側から順次設けられた未延伸ポリプロピレンフィルム及びエチレンビニルアルコ-ル共重合体フィルムと、最下層としての共押出し二層フィルムとからなり、前記共押出し二層フィルムはポリエチレン-ポリプロピレンブレンドポリマ-よりなる凝集破壊性シ-ラント層と、該ポリエチレン-ポリプロピレンブレンドポリマ-との熱融着性の良好な樹脂よりなる支持層の二層よりなり、且つその支持層側面が中間層側に向くように積層されていることを特徴とするプラスチック製蓋材。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由(平成11年10月28日付け拒絶理由通知)に引用され、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である実願昭57-61445号(実開昭58-164750号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「最上層としてのポリカ-ボネ-トフィルムと中間層としてのポリ塩化ビニリデンコ-ト未延伸ナイロンフィルム及び未延伸ポリプロピレンフィルムと最下層としての共押出し二層フィルムとからなる積層材であり、前記共押出し二層フィルムはポリエチレン-ポリプロピレンブレンドポリマ-よりなる凝集破壊性シ-ラント層と該ポリエチレン-ポリプロピレンブレンドポリマ-との熱融着性の良好な樹脂よりなる支持層の二層よりなり、且つその支持層側面が中間層側に向くように積層されていることを特徴とする蓋材。」(実用新案登録請求の範囲第1項)
(2)「本考案において、ポリカ-ボネ-トフィルム(1)は成形性、耐熱性、保形性などの性質を蓋材に付与するために積層するもので」(明細書第5頁第18-20行)
(3)「ポリ塩化ビニリデンコ-ト未延伸ナイロンフィルム(2)は蓋材に酸素バリア-性を付与するために積層するもので」(明細書第6頁第7-9行)
(4)「第2図は本考案の別の実施態様(8)を示す。この実施態様はポリ塩化ビニリデンコ-ト未延伸ナイロンフィルム(2)及び未延伸ポリプロピレンフィルム(3)の積層順序が入れかわっている点が第1図示のものと異なるものである。」(明細書第9頁第5-9行)
(5)「ポリカ-ボネ-トフィルム80μ、ポリ塩化ビニリデンコ-ト未延伸ナイロン30μ、未延伸ポリプロピレン50μ…《途中略》…この積層材を真空成形により落し蓋を成形した。次にこの蓋を、70℃の酒の充填されたポリプロピレン容器に240℃でヒ-トシ-ルした。」(明細書第11頁第11行-第12頁第1行)

上記(1)〜(5)の記載事項により、引用例記載の「蓋材」はプラスチック製であることは明らかであるので、結局、引用例には、
「最上層として設けられたポリカ-ボネ-トフィルムと、中間層としてポリカ-ボネ-トフィルム側から順次設けられた未延伸ポリプロピレンフィルム及びポリ塩化ビニリデンコ-ト未延伸ナイロンフィルムと、最下層としての共押出し二層フィルムとからなり、前記共押出し二層フィルムはポリエチレン-ポリプロピレンブレンドポリマ-よりなる凝集破壊性シ-ラント層と、該ポリエチレン-ポリプロピレンブレンドポリマ-との熱融着性の良好な樹脂よりなる支持層の二層よりなり、且つその支持層側面が中間層側に向くように積層されているプラスチック製蓋材。」(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比・判断
(1)対比
本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、後者の「ポリカ-ボネ-トフィルム」は上記「2.引用例(2)、(5)」の記載事項より耐熱性を有するものであるから、後者の「ポリカ-ボネ-ト」と前者の「融点が200℃以上の耐熱性ポリエステルフィルム」は、共に「耐熱性フィルム」である点で共通している。また、後者の「ポリ塩化ビニリデンコ-ト未延伸ナイロンフィルム」は上記「2.引用例(3)」の記載事項により酸素バリヤ-性を有するものであるから、後者の「ポリ塩化ビニリデンコ-ト未延伸ナイロンフィルム」と前者の「エチレンビニルアルコ-ル共重合体フィルム」は、ともに「酸素バリヤ-性のフィルム」である点で共通している。
してみると、両者は、
「最上層として設けられた耐熱性フィルムと、中間層として耐熱性フィルム側から順次設けられた未延伸ポリプロピレンフィルム及び酸素バリヤ-性のフィルムと、最下層としての共押出し二層フィルムとからなり、前記共押出し二層フィルムはポリエチレン-ポリプロピレンブレンドポリマ-よりなる凝集破壊性シ-ラント層と、該ポリエチレン-ポリプロピレンブレンドポリマ-との熱融着性の良好な樹脂よりなる支持層の二層よりなり、且つその支持層側面が中間層側に向くように積層されているプラスチック製蓋材。」である点で一致し、次の点で相違している。
〈相違点1〉
最上層として設けられた耐熱性フィルムが、本願発明では、「融点が200℃以上の耐熱性ポリエステルフィルム」であるのに対し、引用例記載の発明では、ポリカ-ボネ-トフィルムである点。
〈相違点2〉
中間層としての酸素バリヤ-性のフィルムが、本願発明では、「エチレンビニルアルコ-ル共重合体フィルム」であるのに対し、引用例記載の発明では、ポリ塩化ビニリデンコ-ト未延伸ナイロンフィルムである点。
(2)判断
(ア)相違点1について
ポリエチレンテレフタレ-ト等耐熱性ポリエステルフィルムの融点が200℃以上であることは出願時の技術常識であって、しかも、このような耐熱性ポリエステルフィルムを蓋材の最上層として設けることは、周知技術(必要ならば、特開平2-205574号公報、特開平3-289463号公報、特開平4-128156号公報、特公平2-12188号公報参照)である。
してみると、引用例記載の発明の「プラスチック製蓋材」の最上層としての耐熱性フィルムに関して、上記周知技術を適用して、上記相違点1に係る本願発明と同様な構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
(イ)相違点2について
エチレンビニルアルコ-ル共重合体が酸素を遮断するガスバリヤ-材料であることは出願時の技術常識であり、しかも、蓋材の積層材の層構造にガスバリヤ-性を付与するためにエチレンビニルアルコ-ル共重合体フィルムを用いることも周知技術(必要ならば、実願平2-5539号(実願平3-97066号)のマイクロフィルム、実願平1-36900号(実開昭2-129024号)のマイクロフィルム、特開昭54-148687号公報参照)である。
してみると、引用例記載の発明の「プラスチック製蓋材」の中間層としての酸素バリア-性のフィルムに関して、上記周知技術を適用して、上記相違点2に係る本願発明と同様な構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本願発明の効果は、引用例記載の発明及び前記各周知技術から、当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものとはいえない。
よって、本願発明は、引用例記載の発明及び前記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は、特許請求の範囲の請求項2-6に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-02-19 
結審通知日 2004-02-20 
審決日 2004-03-02 
出願番号 特願平4-158310
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前田 幸雄渡邊 豊英  
特許庁審判長 松縄 正登
特許庁審判官 奥 直也
溝渕 良一
発明の名称 プラスチック製蓋材  
代理人 永井 浩之  
代理人 岡田 淳平  
代理人 吉武 賢次  
代理人 森 秀行  
代理人 名塚 聡  
代理人 勝沼 宏仁  

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