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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1095822
審判番号 不服2002-9753  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-11-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-05-30 
確定日 2004-04-22 
事件の表示 平成11年特許願第 68397号「パチンコ球排出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年11月16日出願公開、特開平11-313953〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続きの経緯、本願発明
本願は、平成4年3月13日に出願した特願平4-55397号の一部を分割して、平成11年3月15日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1及び請求項2に係る発明は、平成14年6月27日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

【請求項1】 ケースと、
前記ケースに設けられたスプロケットと、
前記ケースに設けられ、球タンクからのパチンコ球を前記スプロケットに供給する球供給路と、
前記ケースに設けられ、前記スプロケットを回動操作することに基づいて前記スプロケットからパチンコ球を放出するステッピングモータとを備え、
前記球供給路は、前記スプロケットから放出されたパチンコ球が落下する下部直線部を有し、
前記ケースには、前記下部直線部内を落下するパチンコ球を検出する下部球検出センサが前記スプロケットより下方に位置して設けられ、
前記下部直線部は、左右方向の幅寸法がパチンコ球の直径寸法に略等しい鉛直状をなし、
前記球供給路の最上端部には、上方へ向うに従って左右方向の幅寸法が大きくなる部分が設けられ、
前記球供給路のうち上方へ向うに従って左右方向の幅寸法が大きくなる部分は、下端部の左右方向の幅寸法がパチンコ球の直径寸法に略等しく設定され且つ上端部の左右方向の幅寸法がパチンコ球の直径寸法より大きく設定されていることを特徴とするパチンコ球排出装置。

2.引用例に記載された発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用文献4として引用された刊行物である実願平1-141156号(実開平3-80777号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「この考案はパチンコ機等の遊技機において、所定個数の賞球を遊技者に払出すための賞球払出し装置に関する。」(第1頁第14〜16行)
「遊技機の裏側に組付けられる賞球払出し装置Sにおいて、縦長状の賞球ケース1は本体枠の裏面に取着され、賞品ケース1の両側面にそれぞれ形成されたカバー1a,1a間の中央部には中間隔壁2が垂直状に形成されるとともに、賞球ケース1内には1対の通路壁4,4間に形成されて中間隔壁2で仕切られた左右1対の賞球通路3が賞球を収容および通過させるために形成されている。
両賞球通路3の上端部には図示しない賞球貯留タンク内から送出される賞球を導入するための導入口3aがそれぞれ開口されるとともに、両導入口3aの下方には上部がほぼ倒V形状で下部が垂直状の賞球給送路3bがそれぞれ形成され、この両賞球給送路3bの下端には正面ほぼ円形状の賞球放出部3cの前端部がそれぞれ連接され、さらに、両賞球放出部3cの後端にはそれぞれ送出路3dが連接されるとともに、両送出路3dの下方で両賞球通路3の下端には送出口3eがそれぞれ開口されている。」(第3頁第17行〜第4頁第15行)
「賞球ケース1の中央部付近の一側面にはパチンコ機の中央指令装置が所定の払出し球数に合わせて発信するパルス信号によってP方向へ回転制御されるパルスモータ型の払出しモータ9が取着され、………払出しモータ9の出力軸9aには両賞球給送路3b内から賞球Bを1個づつ受取って順次放出するために両賞球放出部3c内に設置された回転体11が軸固定板10を介して位置決めされた状態で共転可能に取付けられ、この回転体11に貫設された正六角形状の嵌合孔には軸固定板10が嵌合されている。」(第5頁第20行〜第6頁第14行)
「回転体11の左部および右部には回転体11の回転動作によって賞球Bを賞球給送路3b側で受取って持上げ、送出路3d側で順次放出するためにそれぞれ凹設されて払出しモータ9の出力軸9aの回りに60°の回転対称状に配列された各6個の球受け部13〜13を有する球受け部列12がそれぞれ形成され、……」(第6頁第15行〜第7頁第1行)
「両賞球通路3の両送出口3eの若干上方には両送出口3e内を通過する賞球数をカウントして検出信号を前記中央指令装置へフィードバックするための近接センサ14,14が設置され、両近接センサ14にそれぞれ開口された検出口は賞球通路3内に装入されている。」(第8頁第4〜9行)
また、引用例において、出力軸9aの軸方向(第1図における紙面に直交する方向)を「前後方向」とし、該前後方向に直交する水平方向(第1図における紙面に沿う横方向)を「左右方向」と本願と同様に定義すると、第1図及び第2図の記載より、送出口3eは、直線状且つ鉛直状をなし、その左右方向の幅寸法が賞球の直径寸法の2倍以上であるとともに、送出口3e内の近接センサ14が配置されている箇所は、賞球が1球ずつしか通過できないように賞球が案内されているものと認められる。
さらに、第1図の記載から、導入口3aは、図面における右方向が開放しているものと認められ、それに加え、第2図の記載から、導入口3aの最上端部に賞球の直径よりも大きい前後方向の幅を有する鉛直部と、該鉛直部の下方に設けられ上方へ向かうに従って前後方向の幅寸法が大きくなる傾斜部とが設けられ、該傾斜部の下端部の前後方向の幅寸法は賞球の直径寸法に略等しく且つ上端部の前後方向の幅寸法は賞球の直径寸法より大きく設定されているものと認められる。
さらにまた、引用例の「払出しモータ9」は、パルス信号より回転制御されるパルス型モータであり、要求される回転角度に応じてステップするものであるから、ステッピングモータであると認められる。

以上の記載によれば、引用例には、
「賞球ケース1と、前記賞球ケース1に設けられた回転体11と、前記賞球ケース1に設けられ、賞球貯留タンクからの賞球を前記回転体11に供給する賞球通路3と、前記賞球ケース1に設けられ、前記回転体11を回動操作することに基づいて前記回転体11から賞球を放出するパルスモータ型の払出しモータ9とを備え、前記賞球通路3は、前記回転体11から放出された賞球が落下する送出口3eを有し、前記賞球ケース1には、前記送出口3e内を落下する賞球を検出する近接センサ14が前記回転体11より下方に位置して設けられ、前記送出路3eは、左右方向の幅寸法が賞球の直径寸法の約2倍となっている鉛直状をなし、前記賞球通路3の最上端部には、賞球の直径よりも大きい前後方向の幅を有する鉛直部と、該鉛直部の下方に設けられ上方へ向かうに従って前後方向の幅寸法が大きくなる傾斜部とが設けられ、前記傾斜部は、下端部の前後方向の幅寸法が賞球の直径寸法に略等しく設定され且つ上端部の前後方向の幅寸法が賞球の直径寸法より大きく設定されている賞球払出し装置」(以下、「引用発明」という。)
との発明が開示されていると認めることができる。

3.本願発明と引用発明との対比
本願発明と、引用発明とを比較すると、
引用発明の「賞球ケース1」、「回転体11」、「賞球貯留タンク」、「賞球」、「賞球通路3」、「パルスモータ型の払出しモータ9」「送出口3e」、「近接センサ14」、「賞球払出し装置」は、それぞれ本願発明の「ケース」、「スプロケット」、「球タンク」、「パチンコ球」、「球供給路」、「ステッピングモータ」、「下部直線部」、「下部球検出センサ」、「パチンコ球排出装置」に相当するものと認められる。
そうすると、両者は「ケースと、前記ケースに設けられたスプロケットと、前記ケースに設けられ、球タンクからのパチンコ球を前記スプロケットに供給する球供給路と、前記ケースに設けられ、前記スプロケットを回動操作することに基づいて前記スプロケットからパチンコ球を放出するステッピングモータとを備え、前記球供給路は、前記スプロケットから放出されたパチンコ球が落下する下部直線部を有し、前記ケースには、前記下部直線部内を落下するパチンコ球を検出する下部球検出センサが前記スプロケットより下方に位置して設けられ、前記下部直線部は鉛直状をなしているパチンコ球排出装置」である点で一致し、
以下の点で相違しているものと認められる。
・ 相違点1
本願発明は、下部直線部の左右方向の幅寸法がパチンコ球の直径寸法に略等しくなっているのに対し、引用発明は、送出路3eの左右方向の幅寸法が賞球の直径寸法の2倍以上となっている点。
・ 相違点2
本願発明が、前記球供給路の最上端部には、上方へ向うに従って左右方向の幅寸法が大きくなる部分が設けられ、前記球供給路のうち上方へ向うに従って左右方向の幅寸法が大きくなる部分は、下端部の左右方向の幅寸法がパチンコ球の直径寸法に略等しく設定され且つ上端部の左右方向の幅寸法がパチンコ球の直径寸法より大きく設定されているのに対し、引用発明は、球供給路の最上端部には、パチンコ球の直径よりも大きい前後方向の幅を有する鉛直部と、該鉛直部の下方に設けられ上方へ向かうに従って前後方向の幅寸法が大きくなる傾斜部とが設けられ、前記傾斜部は、下端部の前後方向の幅寸法がパチンコ球の直径寸法に略等しく設定され且つ上端部の前後方向の幅寸法がパチンコ球の直径寸法より大きく設定されている点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。
i. 相違点1について
引用発明を認定した引用例に記載の送出口3eは、その左右方向の幅寸法は確かに賞球の直径寸法の2倍以上であるものの、送出口3e内の近接センサ14が配置されている箇所は、賞球が1球ずつしか通過できないように案内されており、検出ミスが無いように1球ずつ確実に賞球を検出するために、送出口3e内の近接センサ14の箇所のみを賞球の径と略同一とするか、送出口3e内全体を賞球の径と略同一とするかは、賞球の検出ミスの有無という観点からみれば構成が実質的に相違するともいえず、当業者が必要に応じ適宜選択し得た事項にすぎない。
ii. 相違点2について
引用発明は、幅寸法が変化する傾斜部が、最上端部ではなくややその下方に位置するものの、最上端部に幅広の鉛直部が存在するものであり、このような構成であれば、ケースの取付誤差等の事情によって生ずる、球タンクからケースの導入口へ供給されるパチンコ球の落下位置の幅広方向のずれを許容し、その落下位置がずれた場合にも許容範囲であれば、パチンコ球が導入口の最上端部に引っかかる恐れは生じないものと認められる。
しかるに、球供給路の最上端部にパチンコ球の直径よりも大きい箇所が存在していれば、傾斜部が、球供給路の最上端部の下方に設けられているか、最上端部に設けられているかは機能的に相違なく、パチンコ球を受け入れる樋などの通路の端部をパチンコ球の直径より大きくしておくことが、実公昭45-13622号公報や特開昭52-54545号公報等に開示されているように周知技術であることを考慮すれば、傾斜部を球供給路の最上端部に設けることは当業者が適宜なし得た単なる設計的事項にすぎない。
また、引用発明は、鉛直部及び傾斜部の幅が広くなる方向が前後方向であるが、供給されるパチンコ球の落下位置のずれが生じ得る方向に対応して、幅が広くなる方向を設定することは、当業者が適宜なし得た単なる設計的事項程度のことにすぎない。

そして、本願発明の奏する作用・効果は、引用発明及び周知技術より当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、この特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならないから、請求項2に係る発明については検討するまでもないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-02-17 
結審通知日 2004-02-24 
審決日 2004-03-08 
出願番号 特願平11-68397
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦澤田 真治  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 前田 建男
鉄 豊郎
発明の名称 パチンコ球排出装置  
代理人 佐藤 強  

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