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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 D05B
管理番号 1095871
審判番号 不服2002-6133  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-02-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-04-10 
確定日 2004-05-19 
事件の表示 平成11年特許願第206742号「ミシン」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月 2日出願公開、特開2000- 33191、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年12月28日に出願した特願平4-348598号の出願の一部を、平成11年7月21日に特許法第44条第1項の規定により分割して新たな特許出願としたものであって、その請求項1及び2に係る発明は、平成14年4月10日付け手続補正書により全文補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
縫製物を送る縫製物送り機構と、ミシンの主駆動軸の回転に連動して回転する偏心カムの偏心作用によって針を揺動させる針揺動機構と、前記針の針落ち位置を変える基線変換機構と、前記基線変換機構による針落ち位置からの針の揺動範囲を調節する針揺動調節機構と、を有するミシンにおいて、常には前記偏心カムの偏心作用によって前記針を揺動させ、前記針の針落ち位置を変える時にのみ前記基線変換機構を電気的に駆動する基線変換駆動手段と、前記針落ち位置からの針の揺動範囲を調整する時にのみ前記針揺動調節機構を電気的に駆動する揺動調節駆動手段と、主駆動軸に設けたエンコーダと、予め縫いデータが入力されており、縫製時に前記縫製物送り機構が作動して縫製物を送りながら、前記エンコーダ出力に応じて、縫いデータに基づいて基線変換駆動手段及び揺動調節駆動手段を制御することにより、基線変換機構及び針揺動調節機構を作動させ、針落ち位置を調整すると共に針の揺動範囲を調節する制御手段とを備えたことを特徴とするミシン(以下、「本願第1発明」という。)。
【請求項2】
前記縫製物送り機構を電気的に駆動する送り駆動手段による布送り量を制御する送り制御手段を有し、主駆動軸の回転により、前記エンコーダ出力に応じて、形状縫いデータ又は返し縫データ、及び穴かがり縫いデータに基づいて前記基線変換駆動手段、前記揺動調節駆動手段及び前記送り制御手段を制御することにより、形状縫い又は返し縫いを形成してから該形状縫い又は返し縫い上に穴かがり縫いを形成することを特徴とする請求項1に記載のミシン(以下、「本願第2発明」という。)。」

2.本願第1発明について
ところで、原査定の拒絶の理由に引用された、何れの文献(以下、これら文献をまとめて「引用例」という。)にも、本願第1発明の
「ミシンの主駆動軸の回転に連動して回転する偏心カムの偏心作用によって針を揺動させる針揺動機構」と、「基線変換機構を電気的に駆動する基線変換駆動手段」と、「針揺動調節機構を電気的に駆動する揺動調節駆動手段」とを組合せた構成、即ち、
頻繁に稼働する針揺動機構は機械的なカム機構を採用し、必要時しか使用しない基線変換機構や、針揺動調節機構は、電気的制御可能な手段を採用した構成、
さらに、上記構成に加え、予め用意された縫いデータを用いて自動化を可能とするための構成である「主駆動軸に設けたエンコーダと、予め縫いデータが入力されており、縫製時に前記縫製物送り機構が作動して縫製物を送りながら、前記エンコーダ出力に応じて、縫いデータに基づいて基線変換駆動手段及び揺動調節駆動手段を制御することにより、基線変換機構及び針揺動調節機構を作動させ、針落ち位置を調整すると共に針の揺動範囲を調節する制御手段」を備えることについての記載や、示唆がない。
そして、本願第1発明はこれらの構成を備えることにより、明細書記載の
「針の揺動自体は偏心カムの偏心作用により行い、基線変更機構及び針揺動調節機構を縫いデータに基づいて電気的な駆動手段を適時適量だけ駆動することができるので、基線位置又は針揺動量を変更するときにのみ前記電気的な駆動手段を駆動することにより、複雑な針振り制御が簡単に行えると共に、高速での脱調が無くなりミシンを高速にできる。」との引用例記載のものから予測し得ない効果を奏するものである。
したがって、本願第1発明は、引用例記載のものに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
なお、審査官は、基線変換機構と針揺動調節機構とを独立に駆動可能なミシンが1部の引用例(特公昭29-8080号公報、実公昭60-56号公報)に記載され、且つ、ミシン内の調節機構を小型モータ(電気的駆動手段)で駆動調節することが周知の技術課題(特公平4-55720号公報、特開昭61-199884号公報を例示)であるから、本願第1発明は当業者が容易に想到できたものとの判断をしている。
しかし、この判断は、本願第1発明が、頻繁に稼働する機構は機械的機構を採用し、必要時しか使用しない機構は電気的制御可能な手段を採用するとの技術的思想である点や、この思想をミシンの針揺動機構、基線変換機構、針揺動調節機構に適用した点、さらに、これに加え、予め用意された縫いデータを用いて自動化を可能とするための構成を具体的に限定した点について何も論究していないので、この判断は採用できない。

3.本願第2発明について
本願第2発明は、本願第1発明に請求項2記載の構成を付加したものであるので、前記2.に記載したのと同様の理由で、引用例記載のものに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4.むすび
以上のとおり、本願第1発明及び本願第2発明は、引用例記載のものに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2004-05-07 
出願番号 特願平11-206742
審決分類 P 1 8・ 121- WY (D05B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西山 真二  
特許庁審判長 鈴木 公子
特許庁審判官 粟津 憲一
奥 直也
発明の名称 ミシン  

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