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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B
管理番号 1096114
審判番号 不服2003-6001  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-02-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-10 
確定日 2004-05-06 
事件の表示 平成7年特許願第353464号「壁面構築パネル用成形ガスケット及びこれを用いた通水路形成用壁面構築パネルユニット」拒絶査定に対する審判事件[平成9年2月18日出願公開、特開平9- 49269]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成7年12月26日の出願(優先権主張:平成7年5月26日)であって、平成15年2月17日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年4月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月8日付で手続補正がなされた。

【2】平成15年5月8日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年5月8日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)本件補正
本件補正は、請求項1を次のとおりに補正することを含むものである。
「壁面構築パネルWPを縦方向並びに横方向に突き合わせて建造物の壁面を構築する壁面施工において、前記壁面構築パネルWPにおける平坦な突き合わせ端面Efに取り付けて、前記壁面構築パネル相互の端面間目地幅を確保するとともに、構築された壁面の外部側OSと内部側ISとの間を端面の長さ方向に沿って連続状に遮断するための成形ガスケットであって、
前記壁面構築パネルWPにおける平坦な突き合わせ端面Efに対して面的に接し得る平坦なベースプレート部分2と、前記平坦なベースプレート部分2の一方の面側2aに設けた接着剤層と、前記ベースプレート部分2の他方の面側2bから外方に向けて突出する弾性材料からなるチューブ状の外部側シール部3と、前記ベースプレート部分2の他方の面2b側から外方に向けて突出し、外部側シール部3に対して間隔Dを隔てて平行する弾性材料からなるチューブ状の内部側シール部4と、前記内部側シール部であって、前記外部側シール部3に対面する外周面に斜め外方に向けて突出する長さ方向に沿って連続的にのびるリップ部7とを備え、前記リップ部7は、当該成形ガスケットを壁面構築パネルWPにおける平坦な突き合わせ端面Efに取り付け、該成形ガスケットを突き合わせた際、対をなす相手側の成形ガスケットのリップ部と弾発的に係合して凸条12を形成し、前記リップ部を設けた側のチューブ状シール部への水の進入を遮断するものからなり、隣接するパネルの突き合わせ時に、対をなす外部側シール部、内部側シール部並びに両ベースプレート部分とによって通水路空間Gを形成するものからなることを特徴とする壁面構築パネル用成形ガスケット。」(以下、「補正発明」という。)
上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正発明が、その特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された、実願昭46-101553号(実開昭48-58607号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載がある。(摘記に際し、現在通常、小文字で表記される文字については、そのように置き換えた。)
「PCパネル側部の取付溝15に固着する為のアンカー部10を下半部に設け、上半部の左右に中空の環状部14、14’をその中央に溝12が形成されるように設けた弾性体より成るPC版用目地ガスケット。」(1頁5〜9行)
「本考案はプレキャストコンクリートカーテンウォール用の目地ガスケットに関する。」(1頁11〜12行)
「本考案に係る目地用ガスケットは……シール部を二重にし、更にそのシール部とシール部の間に水切り用エアポケットを設けたガスケットを提供するにある。」(2頁13〜18行)
「第3図は、本考案に係るガスケット……横断面形状を示している。該ガスケットはPCパネルの取付溝15にアンカー部10と……中空の環状部14、14’とリップ13、13’及び該リップ13、13’の間に設けられた溝12から成っている。
該ガスケットの取付状態を第4図に示す。該ガスケットはそのアンカー部10を各PCパネル1及び1’の互いに向い合った位置に設けられたガスケット取付溝15、15’に埋め込むようにして取付け、お互いのガスケットの環状部14をつき合せる。
該環状部14はガスケットが有する弾性により互いに密着し、水密性能を有する。更にリップ13、13’も互いに接し溝12は中空となる。
第5図は第2図のC-C’線断面図である。即ちPCパネルの隅角部の断面図である。該角部は……ガスケット同志がクロスし、その為に環状部分が圧縮され、水密性能の低下を招くおそれがあった。
本考案に係るガスケットを使用する場合には隅角部のガスケットのクロス点には溝12に十字型のプレート7及び8を挿入し、水密性の低下を防いでいる。」(3頁12行〜4頁17行)

上記記載によれば、中空となる溝12が、水切り用エアポケットとして機能することが、当業者に明らかな事項である。
そして、図面の記載によれば、中空の環状部14,14’は、PCパネルの側部に接する略平坦な部分と略円弧状の部分とから構成され、リップ13,13’は、各環状部14,14’の互いに対向する側に設けられ、互いに接するリップ13,13’が凸条をなしていること、及び、プレート7及び8と中空な溝12との間にはいくつかの連通空間が形成されている(特に、第4,5図)ことが、当業者に明らかな事項である。
また、ガスケットは前後対称形状であるから、第4図において、図面下方を室外側、上方を室内側と見て何ら差し支えなく、その場合、環状部14が室内側環状部、環状部14’が室外側環状部となることも、当業者に明らかな事項である。

したがって、刊行物には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「縦横に並べてカーテンウォールを構成するPCパネルの、側部に取付ける目地ガスケットであって、
PCパネル側部の取付溝15に固着する為のアンカー部10を一側に設け、他側の左右に、略平坦な部分と略円弧状の部分とから構成される中空の室内側環状部14,室外側環状部14’をその中央に溝12が形成されるように設けた弾性体より成り、
各環状部14、14’の互いに対向する側にリップ13,13’を有し、
対向するガスケットの各環状部14,14及び14’,14’をつき合せることにより、弾性により互いに密着するとともに、リップ13,13及び13’,13’も互いに接して凸条をなし、中空の溝12、すなわち水切り用エアポケットが形成され、
ガスケット同士のクロス点では、溝12に十字型のプレート7及び8が、いくつかの連通空間を形成するように挿入される、
目地ガスケット。」

(3)対比・判断
補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「PCパネル」、「カーテンウォール」、「側部」、「中空の室内側環状部14」、「中空の室外側環状部14’」、「(室内側環状部14に設けた)リップ13」、及び「目地ガスケット」は、補正発明の「壁面構築パネルWP」、「建造物の壁面」、「突き合わせ端面Ef」、「チューブ状の内部側シール部4」、「チューブ状の外部側シール部3」、「リップ部7」、及び「成形ガスケット」にそれぞれ相当する。そして、補正発明の「接着剤層」も引用発明の「アンカー部10」も共に「固着手段」であり、また、補正発明の「通水路空間G」も引用発明の「水切り用エアポケット」も共に「水切り空間」である点で共通するから、両者は以下の3点で相違し、その他の点に実質的な差異はない。

相違点1:「固着手段」が、補正発明では、平坦なベースプレート部分の一方の面側に設けた接着剤層であるのに対し、引用発明では、アンカー部である点
相違点2:「リップ部」が、補正発明では、内部側シール部(だけ)に備えられているのに対し、引用発明では、内外両方のシール部(各環状部)にそれぞれ備えられている点
相違点3:「水切り空間」が、補正発明では、通水路空間であるのに対し、引用発明では、水切り用エアポケットであり、該エアポケットが通水機能を有しているかどうかについて記載がない点

上記各相違点について検討する。

<相違点1について>
相違点1として摘記した補正発明の技術事項は、原査定時に周知例として提示された、実願平2-62449号(実開平4-21606号)のマイクロフィルム等にみられるとおり、補正発明の属する技術分野において従来周知のものであり、補正発明がそのような周知技術を採用した点には何らの技術的意義も認められず、当業者が必要に応じ適宜なし得る設計変更にすぎない。

<相違点2について>
リップ部を内部側シール部(だけ)に備える点に、格別の技術的意義は認められず、当業者が必要に応じ適宜なし得る設計的事項にすぎない。

<相違点3について>
引用発明の水切り空間である水切り用エアポケットは上記認定のとおり、ガスケット同士のクロス点においても連通しているから、侵入した雨水が、空間内で、横目地部分では左右に移動可能であり、縦目地部分ではクロス点を越えて下方に流下可能であることは、当業者が容易に想起し得る事項である。
そうすると、引用発明の水切り用エアポケットは、補正発明の通水路空間と同様の機能を発揮し得るものであるから、相違点3として摘記した各発明の技術的事項に実質的な差異はない。

そして、補正発明が奏する作用効果も、当業者が予期し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定によりその特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

以上のように、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり、決定する。

【3】本願発明について
(1)本願発明
本願の各請求項に係る発明は、平成15年5月8日付手続補正が上記のとおり却下されたので、平成14年8月12日付手続補正書により補正された明細書、及び、図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定されるとおりの次のものと認める。
「【請求項1】壁面構築パネルWPを縦方向並びに横方向に突き合わせて建造物の壁面を構築する壁面施工において、前記壁面構築パネルWPにおける平坦な突き合わせ端面Efに取り付けて、前記壁面構築パネル相互の端面間目地幅を確保するとともに、構築された壁面の外部側OSと内部側ISとの間を端面の長さ方向に沿って連続状に遮断するための成形ガスケットであって、
前記壁面構築パネルWPにおける平坦な突き合わせ端面Efに対して面的に接し得る平坦なベースプレート部分2と、前記平坦なベースプレート部分2の一方の面側2aに設けた固着手段と、前記平坦なベースプレート部分2の他方の面側2bに、外方に向けて突出する弾性材料からなるチューブ状の第1のシール部3と、前記平坦なベースプレート部分2の他方の面2b側に外方に向けて突出し、前記第1のシール部3に対して間隔Dを隔てて平行する弾性材料からなるチューブ状の第2のシール部4と、前記第1および第2のシール部の少なくとも一方であって、その互いに対面する外周面に斜め外方に向けて突出する長さ方向に沿って連続的にのびるリップ部7とを備えてなることを特徴とする壁面構築パネル用成形ガスケット。
【請求項2】(記載を省略)
【請求項3】(記載を省略)」
(以下、請求項1記載の発明を「本願発明」という。)

(2)引用刊行物
これに対し、原査定の拒絶の理由で引用された刊行物、及び、その記載事項は、上記【2】(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明と、上記【2】で検討した補正発明とを対比すると、本願発明の「固着手段」、「第1のシール部3」、「第2のシール部4」、及び「第1および第2のシール部の少なくとも一方であって、その互いに対面する外周面」が、補正発明では「接着剤層」、「外部側シール部3」、「内部側シール部4」、及び「内部側シール部であって、前記外部側シール部3に対面する外周面」にそれぞれ限定されると共に、補正発明を特定する事項の一部である「リップ部7は、当該成形ガスケットを壁面構築パネルWPにおける平坦な突き合わせ端面Efに取り付け、該成形ガスケットを突き合わせた際、対をなす相手側の成形ガスケットのリップ部と弾発的に係合して凸条12を形成し、前記リップ部を設けた側のチューブ状シール部への水の進入を遮断するものからなり、隣接するパネルの突き合わせ時に、対をなす外部側シール部、内部側シール部並びに両ベースプレート部分とによって通水路空間Gを形成するものからなる」との事項を、本願発明は省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正発明が上記【2】(3)に記載したとおり、刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-01-20 
結審通知日 2004-02-10 
審決日 2004-03-01 
出願番号 特願平7-353464
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E04B)
P 1 8・ 121- Z (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 家田 政明  
特許庁審判長 山田 忠夫
特許庁審判官 木原 裕
鈴木 憲子
発明の名称 壁面構築パネル用成形ガスケット及びこれを用いた通水路形成用壁面構築パネルユニット  
代理人 武石 靖彦  
代理人 村田 紀子  

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