• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E02D
管理番号 1096193
異議申立番号 異議2002-72531  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-09-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-10-15 
確定日 2004-02-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3275039号「地盤注入装置及び工法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3275039号の請求項1及び2に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3275039号の請求項1ないし3に係る発明は、平成11年3月9日に出願され、、平成14年2月8日にその発明についての特許の設定登録がなされ、その後、異議申立人土山健二より異議の申立てがなされ、平成14年12月9日に取消の理由が通知され、これに対して、その指定期間内である平成15年2月17日に訂正請求がなされ、さらに、平成15年8月1日に取消の理由が通知され、平成15年10月14日に前記訂正請求を取り下げると共に新たに訂正請求をしたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
特許権者が求めている訂正事項は、下記のイないしハからなる。
イ.特許請求の範囲の請求項1ないし3を下記のように訂正する。
「【請求項1】硬化材による膨脹自在な袋体が軸方向の異なる位置に複数個嵌着され、シャンク部に軸方向複段の硬化材吐出口が穿設された外管と、該外管内に挿入され、軸方向複段の細孔からなる硬化材噴射口が穿設され、該噴出口をはさんで複段のパッカが介装された内管とを備えた地盤注入装置において、該袋体間の内管に少なくとも3つのパッカを介装し、このパッカによって内外管の間に隔成されて軸方向に複段の空間を形成し、これら空間に位置する外管にそれぞれ硬化材吐出口を穿設し、かつ該硬化材吐出口と硬化材噴出口を上記相互に軸方向に隔成された同一空間に相互に連通自在にすることにより1注入ステージを長くとり、該複数の硬化材噴出口から同時に、該複数の袋体間の複数の外管吐出口より硬化材を削孔空隙を通して地盤に注入することを特徴とする地盤注入装置。
【請求項2】硬化材による膨脹自在な袋体が軸方向の異なる位置に複数個嵌着され、シャンク部に軸方向複段の硬化材吐出口が穿設された外管と、該外管内に挿入され、軸方向複段の細孔からなる硬化材噴出口が穿設され、該噴出口をはさんで複段のパッカが介装された内管とを備え、該袋体間の内管に少なくとも3つのパッカを介装し、このパッカによって内外管の間に隔成されて軸方向に複段の空間を形成し、これら空間に位置する外管にそれぞれ硬化材吐出口を穿設し、かつ該硬化材吐出口と硬化材噴出口を上記相互に軸方向に隔成された同一空間に相互に連通自在にすることにより1注入ステージを長くとった地盤注入装置を用い、これを地盤に形成した削孔に挿入し、上記袋体を硬化材によって膨脹せしめて削孔の孔壁にシールグラウトを介さず直接的に締着固定した状態にすること並びに、複数の噴出口を有する内管から硬化材を同時に噴出し、上記外管の複数の吐出口より削孔空隙を通して地盤に注入浸透することからなる地盤注入工法。」
ロ.特許明細書の段落【0016】の記載について、「硬化材による・・・注入装置であるようにし、」(特許公報5欄46行〜6欄12行参照)を、
「硬化材による膨脹自在な袋体が軸方向の異なる位置に複数個嵌着され、シャンク部に軸方向複段の硬化材吐出口が穿設された外管と、該外管内に挿入され、軸方向複段の細孔からなる硬化材噴出口が穿設され、該噴出口をはさんで複段のパッカが介装された内管とを備えた地盤注入装置において、該袋体間の内管に少なくとも3つのパッカを介装し、このパッカによって内外管の間に隔成されて軸方向に複段の空間を形成し、これら空間に位置する外管にそれぞれ硬化材吐出口を穿設し、該硬化材吐出口と硬化材噴出口を上記相互に軸方向に隔成された同一空間に相互に連通自在にすることにより1注入ステージを長くとり、該複数の硬化材噴出口から同時に、該複数の袋体間の複数の外管吐出口より硬化材を削孔空隙を通して地盤に注入することを特徴する地盤注入装置であるようにし、」と訂正する。
ハ.特許明細書の段落【0016】の記載について、「而して、硬化材による・・・地盤に浸透するようにする」(特許公報6欄19〜27行参照)を、
「而して、硬化材による膨脹自在な袋体が軸方向の異なる位置に複数個嵌着され、シャンク部に軸方向複段の硬化材吐出口が穿設された外管と、該外管内に挿入され、軸方向複段の細孔からなる硬化材噴出口が穿設され、該噴出口をはさんで複段のパッカが介装された内管とを備え、該袋体間の内管に少なくとも3つのパッカを介装し、このパッカによって内外管の間に隔成されて軸方向に複段の空間を形成し、これら空間に位置する外管にそれぞれ硬化材吐出口を穿設し、かつ該硬化材吐出口と硬化材噴出口が上記相互に軸方向に隔成された同一空間に相互に連通自在にすることにより1注入ステージを長くとった地盤注入装置を用い、これを地盤に形成した削孔に挿入し、上記袋体を硬化材によって膨脹せしめて削孔の孔壁にシールグラウトを介さず直接的に締着固定した状態にすること並びに、複数の噴出口を有する内管から硬化材を同時に噴出し、上記外管の複数の吐出口より削孔空隙を通して地盤に注入浸透する」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項イは、特許明細書の特許請求の範囲の請求項2に限定された事項を請求項1の構成要件とし、請求項2を削除し、請求項3を請求項2とするものであって、請求項1に記載された「該外管の袋体下方側に少なくとも1つの硬化材の吐出口と該内管の複数段のパッカの間に少なくとも1つの硬化材の噴出口が穿設され、」及び「該複数の硬化材噴出口から該複数個の袋体間の複数の外管吐出口より硬化材を地盤に注入する」を、それぞれ「該袋体間の内管に少なくとも3つのパッカを介装し、このパッカによって内外管の間に隔成されて軸方向に複段の空間を形成し、これら空間に位置する外管にそれぞれ硬化材吐出口を穿設し、」及び「該複数の硬化材噴出口から同時に、該複数の袋体間の複数の外管吐出口より硬化材を削孔空隙を通して地盤に注入する」とより具体的に限定するものである。また、訂正後の請求項2も上記と同様の限定がされている。
よって、上記訂正事項イは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
上記訂正事項ロ及びハは、上記訂正事項イの訂正に伴い、明細書の記載を整合させたものであり、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記訂正事項イないしハは、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載の「内管には流体によって膨張する少なくとも3つのパッカと該パッカの間に少なくとも1つ位置する複数の噴出口から硬化材が同時に噴出されるようにされている」、段落【0016】に記載の「該内外管の間に形成された空間が軸方向に複数段形成される」(特許公報6欄1〜2行参照)、「該硬化材の吐出口と該硬化材の噴出口が上記相互に軸方向に隔成された同一空間に相互に連通されている」(同6欄6〜8行参照)、「該内管には流体によって膨張する少なくとも3つのパッカと該パッカの間に位置する複数の噴出口から硬化材が同時に噴出されるようにされている」(同6欄14〜17行参照)さらに段落【0019】に記載の「吐出口から、削孔空隙に均等量注入出来るようにし、」(同6欄48〜49行参照)等と記載されたものより、限定したものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、上記訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1)本件の請求項1及び2に係る発明
特許第3275039号の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1及び2」という。)は、前記「2.訂正の適否についての判断」に記載したように、平成15年10月14日付けの訂正が認められるから、該訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載からみて、次のとおりのものである。
「【請求項1】硬化材による膨脹自在な袋体が軸方向の異なる位置に複数個嵌着され、シャンク部に軸方向複段の硬化材吐出口が穿設された外管と、該外管内に挿入され、軸方向複段の細孔からなる硬化材噴出口(「噴射口」は誤記、合議体注)が穿設され、該噴出口をはさんで複段のパッカが介装された内管とを備えた地盤注入装置において、該袋体間の内管に少なくとも3つのパッカを介装し、このパッカによって内外管の間に隔成されて軸方向に複段の空間を形成し、これら空間に位置する外管にそれぞれ硬化材吐出口を穿設し、かつ該硬化材吐出口と硬化材噴出口を上記相互に軸方向に隔成された同一空間に相互に連通自在にすることにより1注入ステージを長くとり、該複数の硬化材噴出口から同時に、該複数の袋体間の複数の外管吐出口より硬化材を削孔空隙を通して地盤に注入することを特徴とする地盤注入装置。
【請求項2】硬化材による膨脹自在な袋体が軸方向の異なる位置に複数個嵌着され、シャンク部に軸方向複段の硬化材吐出口が穿設された外管と、該外管内に挿入され、軸方向複段の細孔からなる硬化材噴出口が穿設され、該噴出口をはさんで複段のパッカが介装された内管とを備え、該袋体間の内管に少なくとも3つのパッカを介装し、このパッカによって内外管の間に隔成されて軸方向に複段の空間を形成し、これら空間に位置する外管にそれぞれ硬化材吐出口を穿設し、かつ該硬化材吐出口と硬化材噴出口を上記相互に軸方向に隔成された同一空間に相互に連通自在にすることにより1注入ステージを長くとった地盤注入装置を用い、これを地盤に形成した削孔に挿入し、上記袋体を硬化材によって膨脹せしめて削孔の孔壁にシールグラウトを介さず直接的に締着固定した状態にすること並びに、複数の噴出口を有する内管から硬化材を同時に噴出し、上記外管の複数の吐出口より削孔空隙を通して地盤に注入浸透することからなる地盤注入工法。」

(2)刊行物に記載された発明
当審で通知した取消の理由で引用し、本件出願前に頒布された刊行物1(特開昭51-130008号公報(甲第2号証))には、
1頁右下欄8ないし13行、2頁右上欄12行ないし右下欄15行及び図面の記載によれば、
「注入材11による膨脹自在な可撓性袋体6が軸方向の異なる位置に複数個嵌着され、軸部に軸方向複数の注入材11の注入部5が穿設された外管1と、該外管内に挿入され、軸方向複数の細孔からなる注入材11のストレーナー8が穿設され、該ストレーナー8をはさんで2つのパッカー9,9が介装された内管2とを備えた地盤改良装置において、該可撓性袋体6,6間の内管に2つのパッカー9,9を介装し、このパッカー9,9によって内外管の間に隔成されて軸方向に1段の空間を形成し、この空間に位置する外管1に注入部5を穿設し、かつ該注入部5とストレーナー8が上記相互に軸方向に隔成された同一空間に相互に連通自在にされ、内管2を引上げ、あるいは降下しつつ、該複数のストレーナー8から、2個の可撓性袋体6,6間の外管1の注入部5より注入材11を注入孔10空隙を通して地盤に注入する地盤改良装置。」(以下、「刊行物1記載の発明1」という。)及び、
「注入材11による膨脹自在な可撓性袋体6が軸方向の異なる位置に複数個嵌着され、軸部に軸方向複数の注入材11の注入部5が穿設された外管1と、該外管内に挿入され、軸方向複数の細孔からなる注入材11のストレーナー8が穿設され、該ストレーナー8をはさんで2つのパッカー9,9が介装された内管2とを備え、該可撓性袋体6,6間の内管に2つのパッカー9,9を介装し、このパッカー9,9によって内外管の間に隔成されて軸方向に1段の空間を形成し、この空間に位置する外管1に注入部5を穿設し、かつ該注入部5とストレーナー8を上記相互に軸方向に隔成された同一空間に相互に連通自在にされた地盤改良装置を用い、これを地盤に形成した注入孔10に挿入し、上記可撓性袋体6を注入材11によって膨脹せしめて注入孔10の孔壁にシールグラウトを介さず直接的に締着固定した状態にすること並びに、内管2を引上げ、あるいは降下しつつ、複数のストレーナー8を有する内管2から注入材11を噴出し、上記外管1の複数の注入部5より注入孔10空隙を通して地盤に注入浸透する地盤改良工法。」(以下、「刊行物1記載の発明2」という。)という発明が記載されていると認められる。
同じく、刊行物2(特開昭64-52910号公報(甲第3号証))には、
1頁右下欄14ないし19行、2頁右下欄16行ないし3頁右上欄11行、3頁右下欄16行ないし4頁左上欄2行及び図面によれば、
「内管22に少なくとも3つのパッカー30、30・・30を介装し、このパッカー30、30・・30によって内外管の間に隔成されて長手方向に複数個の空間31を形成し、これら各空間31にはそれぞれ外管吐出口25および内管噴射口28を位置させ、外管吐出口25と内管噴射口28とを同一空間に相互に連通自在にすることにより1注入ステージを長くとり、複数の内管噴射口28から同時に、複数の外管吐出口25より注入液を地盤23に注入する注入管装置およびこの装置を用いた地盤注入工法。」という発明が記載されていると認められる。

(3)対比・判断
(本件発明1について)
本件発明1と刊行物1記載の発明1とを対比すると、刊行物1記載の発明1の「注入材11」、「可撓性袋体6」、「軸部」、「軸方向複数の」、「(注入材11の)注入部5」、「(注入材11の)ストレーナー8」、「パッカー9」、「注入孔10」、「地盤改良装置」が、それぞれ、本件発明1の「硬化材」、「袋体」、「シャンク部」、「軸方向複段の」、「硬化材吐出口」、「硬化材噴出口」、「パッカ」、「削孔」、「地盤注入装置」に相当するから、両者は、「硬化材による膨脹自在な袋体が軸方向の異なる位置に複数個嵌着され、シャンク部に軸方向複段の硬化材吐出口が穿設された外管と、該外管内に挿入され、軸方向複段の細孔からなる硬化材噴出口が穿設され、該噴出口をはさんで複段のパッカが介装された内管とを備えた地盤注入装置において、該袋体間の内管にパッカを介装し、このパッカによって内外管の間に隔成されて軸方向に空間を形成し、該空間に位置する外管に硬化材吐出口を穿設し、かつ該硬化材吐出口と硬化材噴出口を上記相互に軸方向に隔成された同一空間に相互に連通自在にすることにより、該複数の硬化材噴出口から、外管吐出口より硬化材を削孔空隙を通して地盤に注入する地盤注入装置。」である点で一致し、
本件発明1は、袋体間の内管に少なくとも3つのパッカを介装し、このパッカによって複段の空間を形成し、1注入ステージを長くとり、複数の硬化材噴出口から同時に、該複数の袋体間の複数の外管吐出口より硬化材を地盤に注入するのに対して、刊行物1記載の発明1は、内外管の間にパッカによって隔成されて空間が軸方向に1段形成されているにすぎず、内管を引上げ、あるいは降下しつつ、複数の硬化材噴出口から袋体間の外管の吐出口より硬化材を地盤に注入する点で、相違している。
そこで、上記相違について検討すると、
刊行物2には、内管に少なくとも3つのパッカ(刊行物2記載の「パッカー」が相当する。以下、括弧内は同様。)を介装し、このパッカによって内外管の間に隔成されて軸方向(長手方向)に複数段(複数個)の空間を形成し、これら各空間にはそれぞれ吐出口(外管吐出口)および噴出口(内管噴射口)を位置させ、吐出口と噴出口とを同一空間に相互に連通自在にすることにより1注入ステージを長くとり、複数の噴出口から同時に、複数の吐出口より硬化材(注入液)を地盤に注入する地盤注入装置(注入管装置)が記載されており、刊行物1記載の発明1に刊行物2記載の発明を適用して、上記相違点の本件発明1に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本件発明1による格別の効果も認められない。
したがって、本件発明1は、上記刊行物1及び2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(本件発明2について)
本件発明2と上記刊行物1記載の発明2とを対比すると、刊行物1記載の発明2の「注入材11」、「可撓性袋体6」、「軸部」、「軸方向複数の」、「(注入材11の)注入部5」、「(注入材11の)ストレーナー8」、「パッカー9」、「地盤改良装置」、「注入孔10」、「地盤改良工法」が、それぞれ、本件発明2の「硬化材」、「袋体」、「シャンク部」、「軸方向複段の」、「硬化材吐出口」、「硬化材噴出口」、「パッカ」、「地盤注入装置」、「削孔」、「地盤注入工法」に相当するから、両者は、「硬化材による膨脹自在な袋体が軸方向の異なる位置に複数個嵌着され、シャンク部に軸方向複段の硬化材吐出口が穿設された外管と、該外管内に挿入され、軸方向複段の細孔からなる硬化材噴出口が穿設され、該噴出口をはさんで複段のパッカが介装された内管とを備え、該袋体間の内管にパッカを介装し、このパッカによって内外管の間に隔成されて軸方向に空間を形成し、該空間に位置する外管に硬化材吐出口を穿設し、かつ該硬化材吐出口と硬化材噴出口を上記相互に軸方向に隔成された同一空間に相互に連通自在にする地盤注入装置を用い、これを地盤に形成した削孔に挿入し、上記袋体を硬化材によって膨脹せしめて削孔の孔壁にシールグラウトを介さず直接的に締着固定した状態にすること並びに、複数の噴出口を有する内管から硬化材を噴出し、上記外管の吐出口より削孔空隙を通して地盤に注入浸透することからなる地盤注入工法。」である点で一致し、
本件発明2が、袋体間の内管に少なくとも3つのパッカを介装し、このパッカによって複段の空間を形成し、1注入ステージを長くとった地盤注入装置を用い、複数の噴出口を有する内管から硬化材を同時に噴出し、外管の複数の吐出口より地盤に注入するのに対して、上記刊行物1記載の発明2は、内外管の間にパッカによって隔成されて空間が軸方向に1段形成されているにすぎず、内管を引上げ、あるいは降下しつつ、複数の硬化材噴出口から該1段の空間および外管の吐出口より地盤に注入する点で相違している。
しかしながら、刊行物2には、内管に少なくとも3つのパッカ(刊行物2記載の「パッカー」が相当する。以下、括弧内は同様。)を介装し、このパッカによって内外管の間に隔成されて軸方向(長手方向)に複数段(複数個)の空間を形成し、これら各空間にはそれぞれ吐出口(外管吐出口)および噴出口(内管噴射口)を位置させ、吐出口と噴出口とを同一空間に相互に連通自在にすることにより1注入ステージを長くとった地盤注入装置(注入管装置)を用い、複数の噴出口から同時に、複数の吐出口より硬化材(注入液)を地盤に注入浸透する地盤注入工法が記載されており、上記刊行物1記載の発明2に上記刊行物2記載の発明を適用して、上記相違点の本件発明2に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本件発明2による格別の効果も認められない。
したがって、本件発明2は、上記刊行物1及び2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件発明1及び2は、上記刊行物1及び2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1及び2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
したがって、本件発明1及び2についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
地盤注入装置及び工法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】硬化材による膨脹自在な袋体が軸方向の異なる位置に複数個嵌着され、シャンク部に軸方向複段の硬化材吐出口が穿設された外管と、該外管内に挿入され、軸方向複段の細孔からなる硬化材噴射口が穿設され、該噴出口をはさんで複段のパッカが介装された内管とを備えた地盤注入装置において、該袋体間の内管に少なくとも3つのパッカを介装し、このパッカによって内外管の間に隔成されて軸方向に複段の空間を形成し、これら空間に位置する外管にそれぞれ硬化材吐出口を穿設し、かつ該硬化材吐出口と硬化材噴出口を上記相互に軸方向に隔成された同一空間に相互に連通自在にすることにより1注入ステージを長くとり、該複数の硬化材噴出口から同時に、該複数の袋体間の複数の外管吐出口より硬化材を削孔空隙を通して地盤に注入することを特徴とする地盤注入装置。
【請求項2】硬化材による膨脹自在な袋体が軸方向の異なる位置に複数個嵌着され、シャンク部に軸方向複段の硬化材吐出口が穿設された外管と、該外管内に挿入され、軸方向複段の細孔からなる硬化材噴出口が穿設され、該噴出口をはさんで複段のパッカが介装された内管とを備え、該袋体間の内管に少なくとも3つのパッカを介装し、このパッカによって内外管の間に隔成されて軸方向に複段の空間を形成し、これら空間に位置する外管にそれぞれ硬化材吐出口を穿設し、かつ該硬化材吐出口と硬化材噴出口を上記相互に軸方向に隔成された同一空間に相互に連通自在にすることにより1注入ステージを長くとった地盤注入装置を用い、これを地盤に形成した削孔に挿入し、上記袋体を硬化材によって膨脹せしめて削孔の孔壁にシールグラウトを介さず直接的に締着固定した状態にすること並びに、複数の噴出口を有する内管から硬化材を同時に噴出し、上記外管の複数の吐出口より削孔空隙を通して地盤に注入浸透することからなる地盤注入工法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】開示技術は、地盤の改良工事、地盤の液状化防止や大深度掘削の際の地盤の補強効果を図る施工の技術に関するものであり、特に、液状化防止施工工事のように大容量地盤の地盤改良のための硬化材の地盤への注入の技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より地盤掘削や大深度地下工事の周辺地盤をはじめ、地下水の存在による流動性を帯びた地盤の液状化現象に対する安定化施工技術は当該地盤に形成した削孔に注入管を挿入してセメントモルタルや薬液等の硬化材を注入することにより地盤を部分的に或いは、広領域的に強化する施工態様が広く用いられてきた。
【0003】而して、地盤の強化安定化施工に用いる技術にも種々の開発改良研究がなされて近時、図7に示す様な袋体5を軸方向で所定ピッチで有する2重管ダブルパッカ方式の管体1を用いる注入工法が実用されているようになり、該種工法は地盤の地山に所定の削孔を形成し、該削孔の内部にシールグラウト13を充填し、該管体1を該形成した削孔内に挿入し、該外管1に挿入した内管から袋体5内に設けた吐出口3′を介し、それに外設したスリーブ4′を開き、セメントミルク等の充填材6を送給し、該袋体5を膨脹させて、削孔の孔壁に密着締着させた後、図示しない内管を挿入して外管の管体1の所定間隔部位で設けた吐出口3′を介し、所定の硬化材を注入し、該管体1の該吐出口3′の外側に嵌設したスリーブ4を開いて上記シールグラウト13を割裂し、地盤の削孔の孔壁を介し、地盤中に硬化材の注入を行って安定化を図るようにするものである。
【0004】しかしながら、液状化防止工法のように、広範囲の地盤に1本の注入管から硬化材を広範囲に注入しようとする場合、注入管1のまわりのシールグラウト13によるシールによって、硬化材19が地盤に浸透するための地盤への開口部が少なく、毎分当たりの多量の吐出量を均質に長時間、広範囲に均等に浸透し続けることが困難であるという難点があった。
【0005】又、図8に示す様に、地盤の地山7に所定サイズの削孔8を形成し、外管12の軸方向所定ピッチで形成した所定サイズの吐出口9を所定段数開口し、該各吐出口9に環設状にゴムスリーブ10を環設してストレーナー11を設けた外管12をシールグラウト13を介して該削孔8の内部に挿入し、該外管12の内部に内管17をゴムパッカ14,14を所定間隔で有して挿入し、該各ゴムパッカ14間に空間15を形成し、噴出口16を内管17の軸方向に所定数穿設形成し、ゴムパッカ14間の空間15に外管12の吐出口9と内管17の噴出口16とを相互に連通状態にさせ、所定のストロークでのステップアップ方式により内管17内の硬化材19の通路18から圧送される該硬化材19を該内管12の噴出口16を通り、ゴムパッカ14,14間の空間15を介し、外管12の吐出口9介し、ゴムスリーブ10を開いて削孔8の孔壁内のスリーブグラウト13の割裂を介し、地盤の地山内に浸透注入されるようにされている。
【0006】尚、硬化材通路18から硬化材19を内管17の噴出口16を経て空間15を介し、外管12の吐出口9を介し、スリーブグラウト13を割裂する。
【0007】而して、当該図8によるパッカ方式の注入管1′にあっては、内管17内の硬化材通路18からの所定ストロークのステップアップ方式での硬化材は外管12の外側のスリーブグラウト13を割裂し、地盤の地山7に浸透することは可能ではあり、又図9,10に示す様に、ポンプ圧、即ち、内管17内の圧力に対応して外管12の吐出口9の外側の地盤の抵抗圧力が様々に変化しても、該内管17内の細孔の噴出口16(例えば図9に於いてはその口径1.0mm、図10においては2.5mm)によって、外側の抵抗圧力がある程度変化しても、該噴出口16からの吐出流量は、例えば、図9においては管内圧力を50kg/cm2の場合、地盤の抵抗圧が0〜30kg/cm2内で変化しても、ほぼ4.5l/minの噴射量を得、図10に於いても同様に、ほとんど9l/minと変化が無く、ほぼ一定であることが実験的に確かめられてはいる。
【0008】しかるに、上記工法は、実際の施工においては、外管12と削孔8孔壁の間に位置するスリーブグラウト13が削孔内で沈殿を生じたり、周辺からの砂の崩壊によって砂と混じる深さ方向に不均質に固結し、その結果、注入液の吐出浸透が困難にはなる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】又、上述図7によるダブルパッカ方式においても、所定ストロークのステップアップ方式での硬化材19のシールグラウト13を割裂しての注入態様では原理的には均質な注入流量が得られるはずであるが、現実の該硬化材19の注入に際しては該シールグラウト13の部分的濃淡や、削孔壁の破壊による密度の変化等による固結状態の変化のため原理通りにはいかず、内管圧力と噴出口16径に対応した所定量の均質な注入が期待出来ない欠点があった。
【0010】このことは、複段の吐出口9から同時に所定量の注入をする事を不可能にし、短い注入ステージで一段一段ごとに注入せざるを得ない事になる。
【0011】したがって、該種在来態様の地盤注入工法では広大な面積地盤の液状化防止施工が能率よく出来ない欠点があった。
【0012】このように、従来の注入手段では、注入ステージ長を長くとればとる程、周辺地盤の土質が変化するため、浸透の大きな土層に注入液が注入し、ステージ全長からの周辺地盤への浸透が困難となるネックがあり、このため注入管の管体1のまわりにシールグラウト13によるシールを形成すると、該シールグラウト13の存在により、周辺地盤への開口部が小さくなるため、毎分当りの吐出量を大きくすると、注入圧力が過大になり、又、長時間浸透し続けると、ゲル化物が該注入管の管体1のまわりのシールグラウト13の開口部を閉塞して長時間の注入を阻害するというネックがあった。
【0013】
【発明の目的】そこで、発明者(出願人)は注入硬化材の上述地盤への注入の技術的事項に鑑み、液状化防止工事等の施工の如く、広大な土量を硬化材によって経済的に改良するには、▲1▼ 1注入ステージを長くとり、▲2▼ 1ステージ当りの毎分の注入量を大きく▲3▼ 1ステージ当り長時間注入し続けて大量に薬液を注入して、広範囲を浸透固結する事が即ち、図7,8のいずれの工法でも必要である事に着目し、前述の液状化防止注入工事や大深度地盤の硬化材注入による地盤改良において、地盤7の土性の変化と地盤7中に形成した削孔8の孔壁の崩落等に対する抵抗圧力が変化しても、安定した吐出量が一定した状態で注入が保持され、大容積土量の改良を設計通りの大量の注入を長時間継続して実施せしめ、又、大注入ステージに一気に均一に注入して固結し、造成体の地盤内の構築が設計通りに行なわれ得るようにして建設産業における土木技術利用分野に益する優れた地盤注入装置及び工法を提供せんとするものである。
【0014】上述事項に基づいて出願人は新たな装置及び工法を案出したものであり、当該工法及び装置は、従来の二重管ダブルパッカ工法の機能を持つと共に砂質土から粘性土まで地盤性状に応じた合理的な注入改良が出来、猶且つ、工期の短縮に寄与するべく開発した画期的な注入技術である。
【0015】そして、該新規注入工法を図12によって、その原理態様を更に略説すると、当該図12の(イ)に示す様に、注入外管建込みケーシング用の孔8を地盤7中に削孔し、(ロ)に示す様に、袋体26を装着した注入外管21を該削孔8中に建込み、該外管21内に(ハ)に示す様に、内管28を挿入して袋体26内に硬化材を充填注入して、該袋体26の削孔8に対するパッカ形成をすると共にその周辺地盤の圧密強化26′し、(ニ)に示す如く、上記挿入した内管28を介して浸透性硬化材の注入をするようにする。
【0016】
【課題を解決するための手段】上述原理態様、及び目的に沿い先述特許請求の範囲を要旨とするこの出願の発明の構成は、前述課題を解決するために、硬化材による膨脹自在な袋体が軸方向の異なる位置に複数個嵌着され、シャンク部に軸方向複段の硬化材吐出口が穿設された外管と、該外管内に挿入され、軸方向複段の細孔からなる硬化材噴射口が穿設され、該噴出口をはさんで複段のパッカが介装された内管とを備えた地盤注入装置において、該袋体間の内管に少なくとも3つのパッカを介装し、このパッカによって内外管の間に隔成されて軸方向に複数の空間を形成し、これら空間に位置する外管にそれぞれ硬化材吐出口を穿設し、該硬化材吐出口と硬化材噴出口を上記相互に軸方向に隔成された同一空間に相互に連通自在にすることにより1注入ステージを長くとり、該複数の硬化材噴出口から同時に、該複数の袋体間の複数の外管吐出口より硬化材を削孔空隙を通して地盤に注入することを特徴とする地盤注入装置であるようにし、又、この出願の発明は複数の吐出口が設けられている外管内に挿入されて地盤中に硬化材を注入する内管を有する注入装置であって、該内管には流体によって膨脹する少なくとも3つのパッカと該パッカの間に位置する複数の噴出口から硬化材が同時に噴射されるようにされているようにもし、又、当該上述態様において、上記各隔成された空間に圧力センサーが臨まれるようにもし、而して、硬化材による膨脹自在な袋体が軸方向の異なる位置に複数個嵌着され、シャンク部に軸方向複段の硬化材吐出口が穿設された外管と、該外管内に挿入され、軸方向複段の細孔からなる硬化材噴出口が穿設され、該噴出口をはさんで複段のパッカが介装された内管とを備え、該袋体間の内管に少なくとも3つのパッカを介装し、このパッカによって内外管の間に隔成されて軸方向に複段の空間を形成し、これら空間に位置する外管にそれぞれ硬化材吐出口を穿設し、かつ該硬化材吐出口と硬化材噴出口が上記相互に軸方向に隔成された同一空間に相互に連通自在にすることにより1注入ステージを長くとった地盤注入装置を用い、これを地盤に形成した削孔に挿入し、上記袋体を硬化材によって膨脹せしめて削孔の孔壁にシールグラウトを介さず直接的に締着固定した状態にすること並びに、複数の噴出口を有する内管から硬化材を同時に噴出し、上記外管の複数の吐出口より削孔空隙を通して地盤に注入浸透することからなることを第二の基幹とした技術的手段を講じたものである。
【0017】尚、上述構成においては、一般に袋体への硬化材の注入によるパッカの形成は地盤への注入に先行するが、袋体への注入と地盤への注入を同時に行っても、袋体への注入は注入量が少ないため初期の段階でパッカが形成され、その後、地盤への注入が継続する事になる。
【0018】又、上述態様においては、袋体には急結性のモルタルや瞬結液等を注入すると施工が急速に行われる。
【0019】
【作用】上述構成において、施工順を説明すると、この出願の発明の技術は工法は、二重管ダブルパッカ工法の優位性をより展開した硬化材の地盤中への注入が出来るようにしたものであり、特殊な構造の注入内管を有し、注入外管に例えば、2メートルごと等に挿着した袋体に、セメントミルク、又は、ゲルタイムが瞬結〜長結の硬化材を充填して、削孔によって乱れた地盤と注入外管の空隙を密着させて強力なパッカ作用で2メートルごと等に拘束した地盤を1ステージとして、前述した特殊な構造の内管を外管に挿入して上下2段の吐出口から、削孔空隙に均等量注入出来るようにし、当該工法は、従来の二重管ダブルパッカ工法の機能を持つと共に砂質土から粘性土まで地盤性状に応じた合理的な注入改良が出来、猶且つ、工期の短縮に寄与する画期的な注入技術であり、外管のシヤンク部に少なくとも1つ通常は複数の袋体が挿着され、又、各内外管の間のリング状の間隙には硬質プラスチック製等のパッカやエアパッカ(空気や水や窒素等のような不活性ガスなどの流体で膨脹するパッカを含む)等が設けられるようにする。
【0020】該外管の内部には硬化材供給通路を有する内管が外管に締着するゴム或いは、エアタイプのパッカが所定間隔に相互に相隣る間隔部に空間を形成し、内管管路の断面積よりも内管の硬化材の噴出口の面積の合計が小さくなるように細孔の噴出口に形成され、各袋体がセメントモルタル等の硬化材により膨出して削孔の壁面に緊着状態で締着され、該袋体の膨脹により袋体周辺の地盤も圧密化されて実質的に膨脹した袋体以上の大サイズのパッカ体となり、該各袋体を越えて薬液が浸透しないようにし、1注入ステージの長さを大きくとる事による外管まわりの削孔空間の孔壁の崩落等による吐出抵抗が生じても、内管の細孔の噴出口からの硬化材が該空間に噴射する事により硬化材が管外の抵抗圧力の変化にも関わらず、複数の外管の吐出口から所定量安定して一定状態で吐出され、確実に所定の注入ステージにおいて地盤中に均質的に注入浸透されて、所定サイズの長尺の造形体が所定大エリアに形成される。
【0021】又、各空間にあっては、圧力センサーを設ければ、該空間に於ける硬化材の注入浸透圧が確実に作用していることが地上に於いても、測定可能であり、袋体の削孔孔壁に対する締着作用と噴出口からの硬化材の安定した量での空間の地山に対する長時間継続する注入浸透が行われて、大サイズ、長尺の円筒状の構造物が地盤内に形成されて液状化現象の発生防止や大深度地盤の掘削が安定して行われるようにしたものであり、又、外管に設けた袋体の数は上下1組の他に、複数組であってもよいし、又、少なくとも1つあればよい。即ち、注入袋間が短い場合は、地上側に袋体を1つ設け、該袋体の下方側の外管に複段の吐出口を設け、該後段の吐出口から所定の注入量を2度以上注入することが出来るようにしたものである。
【0022】
【発明の実施の形態】次に、この出願の発明の実施しようとする形態を実施例の態様として図1乃至図7及び図11〜13を参照して説明すれば以下の通りである。
【0023】尚、第8以下の図面と同一態様部分は同一符号を用いて説明するものである。
【0024】図示態様は地盤の液状化防止の硬化材19の注入の施工態様であり、図1乃至図4に示す態様において、20はこの出願の発明の一つの要旨の中心を成す所定ストロークステップアップ方式をとる地盤注入装置であり、概略の構図は図1,2に示す様に、所定サイズの径の鋼製、或いは、合成樹脂製の外管21と該外管21に対し軸方向所定位置に所定段数設けられた硬質プラスチック製、或いは、ゴム製のパッカ29…を装備する内管28、及び、該外管21のシヤンクに設定間隔で設けられた複数個の合成樹脂製等の袋体26から成るものであり、該外管21の先端の底部が蓋体27により、盲状態に閉塞されており、その先端部の袋体の26…の上下端はリング体24,24により外管21の該側面に締着されて、膨縮自在にされている。
【0025】そして、該袋体26の内側の外管21には所定の硬化材吐出口25が穿設されており、該各吐出口25の外側面にはこれをカバーするようにゴム製のスリーブ23が環設されている。
【0026】又、該外管21のシヤンク部には所定間隔で(同一ピッチ間隔とは限らない)上記袋体26,26…が装備されており、該各袋体26の内側の外管21の側面には硬化材吐出口25が上述の如く穿設され、又、その外側にはゴム製のスリーブ23が、上述同様に開閉自在に設けられている。
【0027】又、図1に示す様に、m外管21は所定の長尺にするべくターンパックルタイプのジョイト22を介して、ユニット外管が設定長さに連結されるようにされている。
【0028】而して、上述する如く、注入装置20は削孔8に対し、その内部にスリーブグラウト13は図8に示す在来態様の如くは充填介装はされておらず、外管21の所定ピッチで装備されている各袋体26は該外管21の側面に対し折り畳まれたり、巻き込まれたりした状態で地盤の削孔8内にスムーズに挿入して予めプレボーリングされた地層ごとの各ステージに各袋体26,26間が対応するようにセットされるようにされている。
【0029】而して、各袋体26,26間の外管21の内部に挿入された内管28に所定ピッチで環設装備されたゴム製やプラスチック製のパッカ29,29間には噴出口34,34…が開口形成されて、内部の硬化材通路18を対し、図示しない地上の圧送ポンプから圧送される硬化材19を前述図8に基づいて説明した図9,10に示す様に、基本的に内管28の外側の抵抗圧力の状況の変化に関係なく所定ストロークのステップアップステージごとに一定の設定量で硬化材19を地盤の内に注入することが出来るようにされている。
【0030】又、該内管28の内部に所定ピッチで設けられたゴム製やプラスチック製のパッカ29,29間の空間32に対する周公知の圧力センサーを設けることが可能であり、該各圧力センサーに対するリードケーブルが該内管28内にて地上に延設されている。
【0031】尚、該内管28の先端には図2に示す様に盲ボルト27′が封塞されて密封状態にされている。
【0032】上述構成の注入装置20において、地盤注入工法の実施態様を説明すると、全ステージに一挙に硬化材を注入浸透させるに、図4に示す実施例の態様の如く、地盤の地山7に設計サイズで形成した削孔8に対し、スリーブグラウト13を在来態様の如く充填介装しない状態で外管21に所定ピッチで挿着環設した各袋体26を外装した状態で所定深度まで挿入する。
【0033】そして、内管28の内部の硬化材19の送給通路18に対し、図示しない地上からの圧送ポンプを介し、所定の硬化材19を圧送供給すると、該硬化材19は図示しない通路から噴出されて、各袋体26を膨脹させ、当該膨脹された各袋体26は削孔8の孔壁に内側から当接密着して締着状態になり、又、その膨脹力により周辺の地盤を経時的に圧密状態26′にされて、挿入状態の削孔8内に於ける挿入セット姿勢を保持する。
【0034】かくして浸透のための硬化材19は圧送ポンプを介して袋体26,26間のスリーブグラウト13の充填介装されていない部分は内管28の各パッカ29,29間の空間を32を介し、蓄圧状態を保持し外管21の吐出口25を介しての袋体26による削孔8に対する圧設固着によるパッカ効果によって削孔8の孔壁内へ浸透注入し、この際前述した如く、該削孔8の孔壁8′に当該図4に示す様に、崩落現象が生じて吐出口25のいくつかの部分に目詰まり等が生じても、前述した図9,10に示した如く、内管28の噴出口34からは抵抗圧力に関係無く、該内管28内への圧力(ポンプ圧)を該噴出口34の口径に対応して、所定の一定量の硬化材19が、一定に噴射されて、所定量が周辺に浸透し、外管21の吐出口25から全ての注入深度に対する硬化材19の均一な注入浸透がされて長時間大量に注入し続けて所定大サイズの柱状の造形体を地盤7中に設計通りに造成することが出来る。
【0035】そして、図11,12,13により基本的施工の実施例の態様を追加的に示すと、図11に示す様に、特殊な構造の内管28で、外管21に2mごと等に挿着した袋体26に、外管21を挿入してセメントミルク、又は、ゲルタイムが瞬結〜長結の硬化材19を圧送して、削孔8によって乱れた地盤と外管21の空隙を密着圧密化させ、該袋体26で2mごと等に拘束した地盤を1ステージとして、内管28により前述した該内管28を外管21に挿入して上下2段の吐出口25から、削孔空隙に硬化材19を均等量注入出来るようにし、そして、当該実施例を図12により更に順序的に説明すると、(イ)に示す様に、注入外管建て込みケーシングで地盤中に削孔8を形成し、(ロ)に示す様に、袋体26を挿着した注入外管21を建込み、(ハ)、(ニ)に示す様に内管28を外管21内に挿入して袋体26内に硬化材を充填注入して該袋体26の強力なパッカを形成を介して周辺地盤の圧密強化地盤26′とし、(ニ)に示す如く外管21内に内管28を挿入して浸透性硬化材19の圧入をするようにする。
【0036】而して、当該工法の設計態様の実例として、図11〜図13に示す様に
▲1▼注入管の埋設間隔 P=2m×2mの正方形配置にし、
▲2▼注入速度 f=30l/minとし、
▲3▼注入管1孔当たり改良平面積 Ap=2m×2m=4m2
▲4▼1ステージ当たりの改良土量(m3)を
V=2m(改良高さ)×4m2=163とし
▲5▼1ステージ当たりの硬化材19の注入量(kl)Q
Q=V×(0.35〜0.40)=50.6〜6.4kl
ここで;0.35〜0.40は注入率である。
▲6▼1ステージ当たり注入時間
tl=6kl÷0.03kl/min=200min=3.3時間(注入継続時間)
▲7▼袋体26の注入充填量(l)q
q=60l
として長時間による大量の注入を可能とすることが出来る。
【0037】尚、袋体26に硬化材19を圧入して膨脹する事により該周辺地盤は経時的に圧密強化され実質的に袋体26よりも大サイズのパッカ体26′となり、各パッカ体26′を越えて注入液が逸脱することはなく、図11、図12の(ニ)に示す様に設計地層のステージ内に注入浸透して凝固していく。
【0038】そして、袋体26,26間の空間にはシールグラウト13が充填されておらず、削孔の崩落等が生じても上記特殊な内管28を通して外管21を介し硬化体26′は所定の深度に於いて所定に形成される。
【0039】この点が、この出願の発明の重要なポイントである。
【0040】したがって、該外管21に設けた膨脹性の袋体26の介在により、又、地盤の地山7に形成した削孔8内にスリーブグラウト13が在来態様の如く、介装充填されていないため、内管28から噴出された硬化材は図9,10に示すデータの如く確実に均一状態で全てのステージの地層地盤に対し注入浸透することが出来、設計通りの大サイズの造形体を地盤中に形成することができる。
【0041】又、外管21の吐出口25は図2に示す様に、上下の袋体26、26間に複数設けてもよいし、図4の態様に示す如く上下の袋体26,26間に少なくとも1つ設けてもよい。
【0042】当該プロセスにおいて、外管21と内管28のリング状の間隙部32に各相隣るパッカ29,29間に形成される空間32の蓄圧状態な圧力センサー(設置した場合は)により所定に検出されて地上の図示しない測定装置において蓄圧状態、即ち、注入が行われていることが検出されていく。
【0043】なお、該空間32における硬化材19の注入状態が確認され、圧力測定データによっては、各ゴムパッカ29の外管21の削孔8の内壁8′に対する締着状態をより確実にして硬化材19の噴出を設計通りに保証することが出来る。
【0044】そして、外管21の硬化材19の吐出口25からの硬化材19の逆流はスリーブ23によってこれを確実に防止することが出来る。
【0045】このようにすることにより、図5に示す様に、注入装置20を縦方向、或いは斜め方向に交叉して地盤7に挿入セットし、液状防止施工を行うことが出来るものである。
【0046】又、設計変更的な態様としては、パッカについてゴム製のパッカのみばかりでなく、エアパッカにすることが出来ることは勿論のことである。
【0047】例えば、図6の28′は内管28の注入部であり、該内管注入部28′は軸方向所定ピッチでエアパッカ29′、29′…とアエやガス(例えば窒素ガス)や水等の液体の作動流路30′と注入液の流路40が2重管又は並列で(もし、注入管流路が2本あるなら、3重管又は、3本の並列管となる)作動液の吐出口30′′を介して空間29′′に作動流体を注入して、ゴム製からなる該ゴムパッカ29′,29′を膨脹させて外管21の内壁に圧着させ、注入液を噴出口34から噴射して空間32を介して外管21の噴出口25,25から地盤7中に注入する。その作用効果は上述実施例と実質的に変わりはないものである。
【0048】又、当該図6に示す内管28の注入部28′の一部、或いは、所定間隔に可撓性管体を用いる事により可撓性内管とし外管21が土圧で曲がっても内管を容易に挿入出来る。
【0049】そして、該内管28の注入部28′に至る迄の注入液やパッカ作動用流体の流路30′は2重管又は並列等の可撓性ホースを用いる事も出来る。
【0050】この出願の発明の実施形態において、内管28を図2に示す様に、注入ステージを上方に移向しながら注入してもよいし、又、図4に示す様にすれば、多数の複段の注入ステージを1度に注入する事も出来るし、又、該内管28を固定したまま、全注入の深度の注入ステージを1度に注入する事が出来る。
【0051】
【発明の効果】以上、この出願の発明によれば、基本的に軟弱地盤の液状化防止工事や構築物の基礎の掘削に対する補強工事等の施工において、地盤中に2重管ダブルパッカー方式による硬化材注入施工を行うに、外管のシヤンク部に軸方向少なくとも1段或いは、複段の袋体が挿着され、該外管内に内管を挿入して、該袋体にセメントミルク等の硬化材を圧入して、該袋体を膨脹させて削孔部に固結体を形成して削孔に密着固定させる事により、多数の外管を対象地盤に設け、各袋体が固結液の固化によって地盤に固定された後、外管の該袋体間に穿設された硬化材の吐出口から硬化材が削孔空間を介し、地盤中に注入浸透させて施工するに、袋体間に少なくとも一つの外管の硬化材の吐出口を設け、一方、内管には複数段に設けられたパッカ間に位置する内管の硬化材噴出口が穿設されている注入装置としたことにより、硬化材の吐出口と硬化材の噴出口が一連となって設けられた注入管のパッカによって隔成された同一空間に相互に連通されているように形成されていることにより、外管の硬化材の吐出口に削孔の崩落等による抵抗圧力が生じても、又、土層の違いによる抵抗圧力が生じても、内管の硬化材の噴出口から常に所定量の硬化材の噴出が保証され、1注入ステージを長くとり、1ステージ当たりの毎分の吐出量を大きくしても均質に所定深度に所定量注入され、1ステージ当たり長時間注入し続けて大量の硬化材の注入をすることが出来、したがって、地盤中に確実に設計通りの大サイズの超長尺で大径の筒体等の造形物が形成されることが出来るという優れた効果が奏される。
【0052】又、外管のシヤンク部に複数設けられた袋体にセメントミルク等の作動液を圧入して該袋体を膨脹し、周辺地盤を圧密する事により確実に極めて強大なパッカ効果を形成する。
【0053】このため、外管まわりにシールグラウトによるシール形成の必要がなくなり、上下の1組の袋体に囲まれた削孔空間全体に於て周辺地盤に硬化材が浸透することとなる。
【0054】ここで1ステージという言葉を一度に注入する注入管の軸方向の単位区間として使うとすると、1ステージ当りの硬化材源の浸透面積が非常に大きくなるため、毎分当りの吐出量を大きくしても、低圧で注入出来ることになり、土粒子間の浸透注入が可能になるという優れた効果が奏される。
【0055】又、広範囲に一挙に硬化材を浸透せしめることが可能となるために、長時間注入し続けても、注入源の浸透面積が広いため、浸透源がゲル化物で閉束される事はないという効果も奏される。
【0056】又、袋体の膨脹効果によって、パッカ周辺が広く圧密されているため、実際の袋体よりも大きなパッカ効果が形成されていることになり、硬化材がパッカを越えて上方削孔空間に逸出し難いという効果もある。
【0057】したがって、長時間硬化材を圧入し続けても、硬化材が系外に逸出する事なく広範囲の地盤を均質に浸透固結する事が可能となる優れた効果が奏される。
【0058】よって、全ステージに対する均一な硬化材の注入が一挙に行え、設計通りの造形体が成形することが出来るという優れた効果が奏される。
【0059】又、1ステージ内の内管の噴出口の合計面積が内管の断面積より小径に形成されているために図9,図10に示す様に、管内圧力を所定圧力以上(通常5kg/cm2以上)に保つ事により、削孔の崩落等が生じて抵抗圧力の相違が生じても、内管の噴出口から吐出口径に対応した所定量の硬化材の噴出が保証され、結果的に設計通りの地盤中の造形体が全ステージに渡って形成出来るという優れた効果が奏される。
【0060】又、外管と内管の内のリング状の間隙に軸方向所定ピッチで挿着されたパッカ間の圧力空間に圧力センサーを設けた場合、該各圧力空間の硬化材圧が地上にて、リードケーブルを介し検出することが出来るために、圧力空間における硬化材の蓄圧充填状態が検出され確実に硬化材の地盤中への注入が行われていることが確認出来るという優れた効果が奏される。
【0061】又、パッカ作用等が優れているため、上記注入装置を地盤の広いエリアにブロックごとに集中的に時間をずらせて注入施工を行うことが出来る態様も採用可能であるいうメリットもある。
【0062】又、地盤が施工対象として広いエリアである場合には、ブロックごとに注入装置を集中させて同時或いは時間をずらせて注入施工を行うことにより当該地盤のエリアごとの性情にあわせて、注入施工を行うことが出来、施工能力が良く、工期も設計通りに変更出来るという優れた効果が奏される。
【0063】又、シールグラウトを削孔内に介装する事がないために、外管の吐出口に対する抵抗圧力が種々変化したり、或いは、削孔の孔壁に崩落現状が生じて吐出抵抗が変化しても、そして、一部の吐出口の前面が崩落現象によって埋まっても、内管の噴出ノズルの噴出口からはポンプ圧と噴出口径に対応した一定量の硬化材の噴出量が保証されるために該削孔空間を介し、注入ステージの全長に亘って地盤中の硬化材の所定量の浸透注入が確保され、したがって、設計通りの大サイズの長尺の地盤内の造形体の構築が設計通りに行われるという優れた効果が奏される。
【0064】このようにして得られる地盤改良は液状化現象防止のみならず、各種地盤の掘削工事における補強効果も充分に奏することができ、シールド掘削等の工事の施工においても、補強材効果が発揮され、トンネル掘削時の止水と補強等にも多大な効果が発揮出来るという優れた効果が奏される。
【0065】又、各パッカ間に形成される空間に外管の吐出口からの硬化材吐出と内管の噴出口とが相互に連通されているために、一方の外管の吐出口が閉塞状態になったり、詰まり抵抗が大きくなっても、内管の噴出口からの硬化材の一定量の噴出が保証され、掘削空間を介し、地盤に対する硬化材の浸透注入が行われるという優れた効果が奏される。
【0066】又、外管内に挿入される注入液用内管を細径にして複数本併設して2液式の注入液を通って任意に調節したゲル化時間の注入液で地盤を固結する事も出来るという優れた効果が奏される。
【0067】この点からも、地盤の地山に対する予定通りの大サイズ、長尺の地盤内の造成体の構築がなされるという優れた効果が奏される。
【0068】更に、この出願の発明の地盤注入装置を各袋体の膨脹を介しての圧密後に地盤のブロックごとに集中的に行ううことも出来るために、大面積エリアの地盤に対する所定の地盤改良工事が高能率に行えるという優れた効果が奏される。
【0069】そして、地盤の全てのステージに対する上下方向や斜め方向の硬化材の浸透注入が一挙に行える為に施工能率が良く管理も難しやすく、極めて高能率で施工間の短縮化が可能であり、優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の発明の地盤注入装置の部分断面側面図である。
【図2】部分拡大要部断面図である。
【図3】外管の拡大断面側面図である。
【図4】削孔に挿入された注入装置の施工要領説明断面図である。
【図5】施工態様の液状化防止施工技術に関する模式断面図である。
【図6】内管の他の実施例の分解断面図を示すものであり、(イ)、(ロ)は分解接続の部分縦断面図である。
【図7】従来技術に基づく袋体を装着したスリーブグラウトを介在した2重管ダブルパッカ注入の概略断面図である。
【図8】同じく、従来技術に基づくスリーブグラウト介装の削孔に対する貯槽装置の施工断面図である。
【図9】図8による抵抗圧力と細孔の噴出口からの流量のノズル一定における送管グラフ図である。
【図10】細孔の噴出口のサイズを変えた場合の抵抗圧力と噴出口からの流量の送管図である。
【図11】この出願の発明の基本的実施例の概略模式側断面図である。
【図12】同施工順の模式側断面図であり、(イ)はケーシング削孔の模式側断面図、(ロ)は外管建込み模式側断面図、(ハ)は袋体による地盤圧密強化の模式側断面図、(ニ)は浸透性硬化材注入の模式側断面図である。
【図13】図11の模式平断面図である。
【符号の説明】
26 袋体
21 外管
25 硬化材吐出口
29 パッカ
34 硬化材噴出口
20 地盤注入装置
28 内管
7 削孔
32 空間
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-12-11 
出願番号 特願平11-61252
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (E02D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 深田 高義  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 山田 忠夫
山口 由木
登録日 2002-02-08 
登録番号 特許第3275039号(P3275039)
権利者 強化土エンジニヤリング株式会社
発明の名称 地盤注入装置及び工法  
代理人 染谷 仁  
代理人 染谷 仁  
代理人 富田 幸春  
代理人 富田 幸春  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ