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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
管理番号 1096218
異議申立番号 異議2003-71872  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-03-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-24 
確定日 2004-02-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3370791号「ポリプロピレン樹脂組成物およびその製造方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3370791号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 [1]手続きの経緯
本件特許第3370791号は、平成6年9月13日に出願された特願平6-219256号の出願に係り、平成14年11月15日にその設定登録がなされた後、住友化学工業株式会社から特許異議の申立てがあり、それに基づく特許取消の理由通知及び明細書の記載不備に関する再度の取消理由の通知に対し、平成16年1月13日付けで、先の訂正請求を取り下げた上で改めて訂正請求がなされたものである。

[2]訂正前の本件特許に対する特許異議申立人の主張の概要
訂正前の本件特許に対し、特許異議申立人住友化学工業株式会社は、下記甲第1号証〜甲第2号証を提示し、本件請求項1、2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、或いはそれに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第1項第3号若しくは同条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきである旨、主張している。

甲第1号証:「住友ノーブレン」のカタログ、住友化学工業株式会社発行
甲第2号証:三井住友ポリオレフィン研究グループ 研究員 堀英明作成 の実験報告書

[3]本件訂正請求
(1)訂正事項
本件訂正請求は、本件明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その訂正事項は以下のとおりである。
(1-1)訂正事項a
請求項1における「メルトテンションが0.1〜2.0g、スウェル比が1.1〜2.0」を「メルトテンションが0.5〜1.5g、スウェル比が1.4〜1.6」に訂正する。
(1-2)訂正事項b
請求項2を削除する。
(1-3)訂正事項c
請求項3〜5の請求項番号を各1繰り上げると共に、そこで引用する請求項番号を訂正後のものに合致させる。
(1-4)訂正事項d
明細書の段落【0007】における「メルトテンションが0.1〜2.0g、スウェル比が1.1〜2.0」を「メルトテンションが0.5〜1.5g、スウェル比が1.4〜1.6」に訂正する。
(1-5)訂正事項e
明細書の段落【0008】の内容を削除する。
(1-6)訂正事項f
明細書の段落【0009】における「請求項3記載の」を「請求項2記載の」に訂正する。
(1-7)訂正事項g
明細書の段落【0010】における「請求項4記載の」を「請求項3記載の」に、「請求項3記載の」を「請求項2記載の」に、各訂正する。
(1-8)訂正事項h
明細書の段落【0011】における「請求項5記載の」を「請求項4記載の」に、「請求項3記載の」を「請求項2記載の」に、各訂正する。
(1-9)訂正事項i
明細書の段落【0017】、段落【0018】、段落【0019】の各内容を削除する。
(1-10)訂正事項j
明細書の段落【0062】、段落【0065】における「実施例5」を「参考例1」に訂正する。
(1-11)訂正事項k
明細書の段落【0066】、段落【0068】における「実施例6」を「参考例2」に、段落【0066】における「上記実施例5」を「上記参考例1」に、各訂正する。
(1-12)訂正事項l
明細書の段落【0069】、段落【0072】における「実施例7」を「参考例3」に、段落【0070】における「実施例5」を「参考例1」に、各訂正する。
(1-13)訂正事項m
明細書の段落【0073】、段落【0076】における「実施例8」を「参考例4」に、段落【0074】における「実施例5」を「参考例1」に、各訂正する。
(1-14)訂正事項n
明細書の段落【0077】(2個所)、段落【0079】、段落【0081】、段落【0083】における「実施例5」を「参考例1」に訂正する。
(1-15)訂正事項o
明細書の段落【0084】(2個所)、段落【0086】における「実施例7」を「参考例3」に訂正する。
(1-16)訂正事項p
明細書の段落【0087】における「メルトテンションが0.1〜2.0g、スウェル比が1.1〜2.0」を「メルトテンションが0.5〜1.5g、スウェル比が1.4〜1.6」に訂正する。
(1-17)訂正事項q
明細書の段落【0088】の内容を削除する。

(2)訂正可否の検討
訂正事項aは、請求項1において、当該ポリプロピレン樹脂組成物のメルトテンション及びスウェル比の規定範囲を狭めるものであるが、訂正後の数値範囲については訂正前の明細書(段落【0015】〜段落【0016】)に明記されていたものであるから、訂正前の明細書に記載した事項の範囲内で特許請求の範囲の減縮をするものである。
訂正事項bは、請求項2を削除するものであるから、訂正前の明細書に記載した事項の範囲内で特許請求の範囲の減縮をするものであることは明らかである。
訂正事項c〜qは、上記特許請求の範囲の訂正に対応させて発明の詳細な説明の記載をこれに整合させるものであるから、訂正前の明細書に記載した事項の範囲内で明りょうでない記載の釈明をするものである。
そして、これら訂正により実質上特許請求の範囲が拡張若しくは変更されるものでもない。
したがって、本件訂正請求は、所定の規定を満足するものとして認めることができる。

[4]本件発明
本件特許異議申立ての対象とされた請求項1に係る発明(なお、同対象とされていた請求項2に係る発明は、訂正により削除されている。)は、訂正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により構成される以下のとおりのもの(以下、この発明を「本件発明」という。)である。
「230℃での、メルトフローレートが3.0〜60g/10min、メルトテンションが0.5〜1.5g、スウェル比が1.4〜1.6であることを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物。」

[5]特許異議申立てについて
甲第1号証は、住友化学工業株式会社製ポリプロピレンである「住友ノーブレン」に関するカタログであって、種々のグレードのポリプロピレンについて、その密度、メルトフローレート値等の物性値が記載されているが、本件発明で規定する「メルトテンション」と「スウェル比」についての記載はない。
特許異議申立人は、甲第2号証として実験報告書を提出し、甲第1号証に記載されている試料「W501」、「Y101」、「AW661V」の3種について、そのメルトテンション及びスウェル比を測定したところ、メルトテンションについては、それぞれ0.39g、0.24g、0.27gであり、スウェル比については、近似曲線から計算で得た値として、それぞれ1.83、1.75、1.49であったから、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載されていたものである、と主張している。
よつて検討するに、本件明細書は上記のとおり訂正され、その結果、本件発明におけるポリプロピレン樹脂組成物のメルトテンションは0.5〜1.5g、スウェル比は1.4〜1.6とされた。
したがって、当該実験が適正に行われ、そこで得られた測定値は正しく当時のポリプロピレン樹脂組成物の性状を表しているとしても、試料「W501」、「Y101」、「AW661V」は、いずれも本件発明で規定する要件を満たしていないものとなり、したがって、本件発明が甲第1号証に記載されていたものと認めることはできない。
そして本件発明で規定するポリプロピレン樹脂組成物が甲第1号証の記載から当業者が容易に想到し得るとする根拠を見出すこともできない。
よって、本件発明が甲第1号証に記載された発明とも、またこれから当業者が容易に発明をすることができたものともすることはできない。

[6]むすび
以上の次第で、本件特許異議申立人の提示する証拠によっては、訂正後の本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ポリプロピレン樹脂組成物およびその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 230℃での、メルトフローレートが3.0〜60g/10min、メルトテンションが0.5〜1.5g、スウェル比が1.4〜1.6であることを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項2】 メルトフローレートが0.5〜4g/10minのポリプロピレン樹脂をパーオキサイドと共に混練し、メルトフローレートを2〜60g/10minに上昇させた第1のポリプロピレン樹脂に、高分子量成分を含む第2のポリプロピレン樹脂を添加することを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】 前記第2のポリプロピレン樹脂のメルトフローレートが、0.1〜2g/10minであることを特徴とする請求項2記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】 前記第2のポリプロピレン樹脂が、メルトフローレートが5〜20g/10min、かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が10以上のものであることを特徴とする請求項2記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、加工性、特に延伸性に優れ、繊維物性の良好なマルチフィラメントに適したポリプロピレン樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレンからなるマルチフィラメントはロープ、ネット、カーペットなどのパイルヤーン、不織布の原糸等に広く用いられている。
この際、ポリプロピレンを溶融紡糸後、延伸を行い配向結晶化させることにより、繊維物性の向上、特に、高弾性率化、高強度化をできることは広く知られている。
ここで、パーオキサイドと共に混練し、分子量を低下させ、さらに分子量分布を狭くすること(以下、ビスブレイクと称することもある)によって、延伸性を向上させ、高強度化することが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このようなビスブレイクを行ったポリプロピレンであると、ビスブレイクを行わない同程度のメルトフローレート(JIS K6758 以後、MFRと略記する)を有するポリプロピレンと比較して、延伸性が良好なために到達強度(最大延伸倍率での強度)は高くなるものの、同一延伸倍率での強度は小さくなる傾向がある。
また、一般に、ポリプロピレン樹脂を溶融押出延伸法により延伸できる倍率は10倍程度であり、それ以上の延伸倍率では、延伸切れや、白化が生じ易く、高破断強度をもつポリプロピレンからなるマルチフィラメントを得ることは極めて困難である。
そこで、到達強度も重要であるが、延伸倍率が最大でないときの破断強度を高めることも重要である。
【0004】
延伸性と、延伸後の繊維物性は、用いるポリプロピレン樹脂組成物の分子量、分子量分布、および延伸前の未延伸糸の分子配向状態の影響を大きく受ける。
高強度を発現させるためには、一般に、分子量が比較的大きな、即ち、MFRの小さなポリプロピレンが用いられる。
しかし、分子量が大きくなると、延伸性が低下してしまうため、マルチフィラメントとして、結局のところ強度向上を望めないばかりでなく、紡糸性も低下し、成形時の紡糸切れの原因となる。
他方、ポリプロピレン樹脂のMFRを高め、分子量が小さいものとすると、延伸性は向上するものの、破断強度が小さくなるばかりでなく、溶融張力が低下し、紡糸性も低下し、成形時の紡糸切れの原因となる。
したがって、延伸性と強度を共に高めることは事実上、極めて困難なことである。
【0005】
また、通常のマルチフィラメントの成形において、その成形速度とメルトフローレートは比例するため、生産速度を高める(現在、1000m/分以上の生産速度が希求されている。)ためには、メルトフローレートの高いポリプロピレン樹脂を使用しなければならない。
しかし、メルトフローレートの高いポリプロピレン樹脂からなるマルチフィラメントであっては、その強度が小さいものである。
他方、強度を高めようと、メルトフローレートの低いポリプロピレン樹脂を使用すると、生産速度が遅くなってしまい、工業生産上、好ましくない。
よって、強度の高いマルチフィラメントを高速生産することも極めて困難とされている。
【0006】
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、延伸性に優れると共に、延伸倍率が小さくとも、良好な加工性や、高い破断強度を有するマルチフィラメント、または強度を低下することなく高速生産の可能なマルチフィラメントに適したポリプロピレン樹脂組成物およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載のポリプロピレン樹脂組成物は、230℃での、メルトフローレートが3.0〜60g/10min、メルトテンションが0.5〜1.5g、スウェル比が1.4〜1.6であることを特徴とするものである。
【0008】
【0009】
請求項2記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法は、メルトフローレートが0.5〜4g/10minのポリプロピレン樹脂をパーオキサイドと共に混練し、メルトフローレートを2〜60g/10minに上昇させた第1のポリプロピレン樹脂に、高分子量成分を含む第2のポリプロピレン樹脂を添加することを特徴とするものである。
【0010】
請求項3記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法は、請求項2記載の製造方法において、第2のポリプロピレン樹脂のメルトフローレートが、0.1〜2g/10minであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法は、請求項2記載の製造方法において、第2のポリプロピレン樹脂が、メルトフローレートが5〜20g/10min、かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が10以上のものであることを特徴とするものである。
【0012】
【作用】
本発明においては、分子量の決定、すなわちMFRは成形性と物性との兼ね合いにより決定される。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物においては、MFR(230℃)が、3.0〜60g/10minであることが必要とされる。この値は、6.0〜40g/10minであればより好ましく、さらに7.5〜20g/10minであればより好ましい。
MFRが3.0g/10min未満であると、溶融紡糸時の紡糸切れが多発し、特に延伸性が低下し、高い破断強度を有するマルチフィラメントが得られない。
他方、MFRが60g/10minを超えると、延伸性は向上するが、破断強度が低下し、高い破断強度を有するマルチフィラメントが得られない。
【0013】
未延伸糸の配向は、メルトテンション、スウェル比に大きく影響される。
未延伸糸の分子配向が低い場合、延伸性は高くなるが、同一延伸倍率で比較した破断強度は低くなる。
また、未延伸糸の分子配向が高い場合、同一延伸倍率で比較した破断強度は高くなるものの、延伸性が低下してしまう。
よって、高強度のマルチフィラメントを得るには、未延伸糸の配向状態、即ちメルトテンション、およびスウェル比が重要である。
【0014】
尚、本発明においてメルトテンションとは、230℃において、直径1.0mm、長さ10mmのキャピラリーにより、0.36cm3の吐出量で押出し、50m/分の速度で巻き取った時の巻取張力を示す。
また、本発明において、スウェル比とは、230℃において、直径1.0mm、長さ10mmのキャピラリーにより、マルチフィラメントの一般的な紡糸時の剪断速度である1.0×103sec-1で押出した条件でのものとする。
【0015】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物では、メルトテンションが0.1〜2.0gであることが必要である。この値は、0.3〜1.8gであればより好ましく、さらに0.5〜1.5gであればより好ましい。
メルトテンションが0.1g未満であると、溶融紡糸時の紡糸切れ、ロールへの糸掛時の操作性の悪化、さらに破断強度の低下、破断伸度の大幅な低下が生じ易くなる。
他方、メルトテンションが2.0gを超えると、紡糸時の紡糸切れや、延伸性の低下が生じるため、高い破断強度を有するマルチフィラメントを得ることができない。
【0016】
さらに、本発明のポリプロピレン樹脂組成物においては、スウェル比が1.1〜2.0であることが必要である。この比は、1.2〜1.8であればより好ましく、さらに1.4〜1.6であれば特に好ましい。
この比が、1.1未満であると、延伸性は向上するが、破断強度の低下が生じるため、高強度のマルチフィラメントが得られにくい。
他方、2.0を超えると、延伸性が著しく低下し、高い破断強度を有するマルチフィラメントが得られない。
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
上記本発明のポリプロピレン樹脂組成物を得る手段としては、ポリプロピレンを直接重合することにより得る方法や、2種類以上の異なるポリプロピレン樹脂を混合する方法などがあるが、2種類以上の異なるポリプロピレン樹脂を混合する方法が容易である。
【0021】
2種類以上の異なるポリプロピレン樹脂を混合する方法としては、次に示す方法がある。
まず、任意のポリプロピレン樹脂をパーオキサイドと共に押出機で混練し、MFRを上昇させ、分子量分布を狭くさせ、結晶性を低下させた第1のポリプロピレン樹脂を調製する。この時点で、この第1のポリプロピレン樹脂は、メルトテンションとスウェル比の低下を招き、延伸性が向上する割には強度が向上しないものの、紡糸性と延伸性の優れたものとなる。
次に、この第1のポリプロピレン樹脂に、高分子量成分を含む第2のポリプロピレン樹脂を少量混合する。
この混合により、分子間の絡み合いが増加するため、メルトテンション、スウェル比が高くなり、優れた紡糸性、延伸性を維持し、高強度のマルチフィラメントが成形できるポリプロピレン樹脂組成物が得られるようになる。
【0022】
ここで使用した第1のポリプロピレン樹脂は、パーオキサイドと共に混練し、MFRを高める前にあっては、MFRが0.5〜4.0g/10minの単独重合体であるものが好ましい。
また、第1のポリプロピレン樹脂は、パーオキサイドと混練し、MFRを2〜60g/10min、好ましくは、5〜50g/10min、より好ましくは20〜50g/10min、さらには30〜50g/10minに上昇させたものが好適である。
パーオキサイドと混練した後のMFRが2g/10min未満であると、高分子量成分を含む第2のポリプロピレン樹脂を混合した後のポリプロピレン樹脂組成物のMFRも2g/10min未満となりがちで、生産速度が1000m/分以上での延伸性が低下し、もって高い破断強度を有するマルチフィラメントを得ることが困難である。
また、MFRが60g/10minを超えると、第2のポリプロピレン樹脂の混合後であっても、MFRが60g/10minを超え易く、生産速度が1000m/分以上での延伸性は向上するものの、破断強度が低下してしまう。
【0023】
また、ビスブレイクされた第1のポリプロピレン樹脂は、そのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略記する)による比(Mw/Mn)が、2.5〜5.0のものが好ましい。
【0024】
尚、重量平均分子量(Mw)は、Ni個の分子量Miの分子(i=1,2,…)からなる多分散系において、ΣNiMi2/ΣNiMiで求まるもので、光散乱法、GPC法などで得られる。
同様に、数平均分子量(Mn)は、ΣNiMi/ΣNiで求まるもので、末端基定量法、沸点上昇法、凝固点降下法、浸透圧法、GPC法などで得られる。
また、Z平均分子量(Mz)は、ΣNiMi3/ΣNiMi2で求まるもので、沈降平衡乱法、GPC法などで得られる。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)、Z平均分子量(Mz)は、140℃で溶離液としてオルト-ジクロロベンゼンを用い、プレカラムとしてShodex H200p(昭和電工(株)製)及び分離カラムとしてShodex A80MS’(昭和電工(株)製)を用いて測定した。
【0025】
また、ここで使用される高分子量成分を含む第2のポリプロピレン樹脂とは、Z平均分子量(Mz)が80×104以上のポリプロピレン樹脂とする。
【0026】
この第2のポリプロピレン樹脂としては、次の2種のポリプロピレン樹脂のいずれかを用いることが望ましい。
1つは、プロピレンの単独重合体であり、MFRが、0.1〜2.0g/10min、より好ましくは0.5〜1.0g/10minのポリプロピレン樹脂である。
この第2のポリプロピレン樹脂において、MFRが0.1g/10min未満であると、この第2のポリプロピレン樹脂の分散を十分に行うことが困難で、ゲル状となり、紡糸時の糸切れが発生しやすくなるからである。
他方、MFRが2.0g/10minを超えると、混合後のMzが35×104未満となり、混合前の第1のポリプロピレン樹脂と同程度の破断強度しか得ることができない。
【0027】
また、もう1種の第2のポリプロピレン樹脂としては、分子量分布が十分に広く、比較的MFRの高いプロピレンの単独重合体である。すなわち、この第2のポリプロピレン樹脂の場合は、GPCにより測定された重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が10以上でかつMFRが5.0〜20g/10min、より好ましくは8.0〜15g/10minのものである。
MFRが5.0g/10min未満の場合は、高分子量成分を有するポリプロピレン樹脂が十分に分散せず、ゲル状となり、紡糸時の紡糸切れが生じやすい。
他方、MFRが20g/10minを超えると、混合後のMzが35×104未満となりがちで、混合前の第1のポリプロピレン樹脂と同程度の破断強度しか得られない。
【0028】
第2のポリプロピレン樹脂の添加量は、第1のポリプロピレン樹脂に対して、1.0〜20%(重量比)であることが好ましく、3〜10%であればより好ましい。
1.0未満であると、混合後のMzが35×104未満となり、混合前の第1のポリプロピレン樹脂と同程度の破断強度しか得られない。
他方、20%を超えると、延伸性が低下し、到達強度は結果として、第1のポリプロピレン樹脂と同程度または小さくなることがある。
【0029】
上記第1のポリプロピレン樹脂と第2のポリプロピレン樹脂の混合方法は特に限定されるものではないが、それぞれの樹脂のペレットを計量後、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等で分散させ、直接成形機の押出機に投入するドライブレンドによるものが好ましい。
樹脂ペレットを混合後、押出機により混練を行い、再度、ペレット化し、紡糸する方法もあるが、この方法によると、上記ドライブレンドによる方法と比して、延伸性が低下し、その結果、到達強度が低下することがある。
【0030】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物には、混合の際、各種の添加剤を添加しても良い。混練中の組成物の劣化を防止するために公知の酸化防止剤、マルチフィラメントの品質を向上させるための公知の紫外線劣化防止剤、帯電防止剤、耐熱剤、耐候剤、難燃剤、滑剤、顔料等を添加することができる。
また、成形性を向上させるため、滑剤として、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸、ステアリン酸リチウム、12-ヒドロキシステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、12-ヒドロキシステアリン酸ナトリウム等のアルカリ金属の高級脂肪酸塩、ステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のアルカリ土類金属の高級脂肪酸塩を添加しても良い。
【0031】
得られたポリプロピレン樹脂組成物は、押出機により、マルチフィラメント用ノズルから吐出されてマルチフィラメントに成形される。
押出温度は混合物が劣化せず、フィラメントの集合体が成形加工できる範囲でできるだけ高い方が望ましい。
ここで使用されるノズルは各吐出されたフィラメントが均一に冷却されるものが好ましい。
【0032】
冷却された未延伸マルチフィラメントは冷却ダクトで冷却固化される。ここでの冷却は、単糸フィラメントが互いに融着しない程度であれば良く、冷却ダクトの温度は、0〜50℃の範囲が好適である。
冷却後、オイリングローラーにより集束剤が付与された後、ロールにより巻き取られる。
巻き取られた未延伸糸は、延伸され、高強度化される。この際、一旦、ボビンに巻き取られた後に別の工程で延伸を行う方法と、巻き取られた後に直接延伸を行う方法があるが、本発明でのポリプロピレン樹脂組成物であると、どちらの方法も適用することができる。
【0033】
【実施例】
〔実施例1〕
MFRが1.0g/10minのポリプロピレン樹脂をジターシャリブチルパーオキサイドと共に混練し、MFRを8.5g/10minに上昇させて第1のポリプロピレン樹脂を調製した。
次に、この第1のポリプロピレン樹脂に、MFRが12g/10min、GPCによって得られる比(Mw/Mn)が10であるポリプロピレン樹脂を5%混合した。
得られたポリプロピレン樹脂組成物は、230℃におけるMFR(JIS K6758)が、8.7g/10min、メルトテンションが0.5g、スウェル比が1.4、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した比(Mw/Mn)が3.7、Mzが50.2×104であった。
【0034】
次に、このポリプロピレン樹脂組成物を40mmφ押出機を用いて押出温度280℃にて0.6mmφ、68孔からなるマルチフィラメント用紡糸ノズルにより30g/minの吐出量で押し出した。押し出されたマルチフィラメントを冷却温度18℃、冷却風速0.5m/min、長さ900mmからなる冷却ダクトで冷却後、オイリングローラーで油剤を付与した後、周速度100/minのゴデッドロールで巻き取り、未延伸糸を得た。
【0035】
得られた未延伸マルチフィラメントを表面温度115℃に保持された加熱ゴデッドロール対により、引出し速度35m/minで延伸した。
この際、最大延伸倍率を測定すると共に、最大延伸倍率未満の所定の延伸倍率での各種物性を測定した。
得られた延伸マルチフィラメントの最大延伸倍率(最大倍率)と、各延伸倍率での測定結果を下記表に示した。
【0036】
尚、破断強度および破断伸度は、日本工業規格(JIS)L 1013に準じて行ったもので、試料であるマルチフィラメントを引張試験機のつかみに30cmの間隔で取り付け、これを30±2cm/msの引張速度で引張り、算出したものである。すなわち、初荷重をかけた時の伸びを緩み(E1(mm))とし、試料が切断した時の荷重(g)と伸び(mm)を測定し、次式▲1▼及び▲2▼にあてはめた。
【0037】
【数1】

ここで、SDは破断時の強さ(g)であり、dは試料の繊度(デニール)である。
【数2】

ここで、E1は緩み(mm)、E2は切断時の伸び(mm)、Lはつかみ間隔である。
尚、試験は、10回繰り返し、その平均値を表に示した。
【0038】
初期弾性率も日本工業規格(JIS)L 1013に準じて行ったもので、図1に示されるような荷重-伸張曲線を作成し、該グラフから、原点近くで伸張変化に対する荷重変化の最大点A(切線角の最大点)を求め、次式▲3▼により算出した。
【数3】

ここで、Pは切線角の最大Aにおける荷重(g)、dは繊度(デニール)、lは試験長(mm)、l’はTHの長さ(HはA点の垂線の足、Tは切線と横軸との交点)である。
【0039】
【表1】

【0040】
上記表1から、実施例1のポリプロピレン樹脂組成物であると、最大延伸倍率が大きく、また破断強度や破断伸度、初期弾性率が高いことがわかる。
【0041】
〔実施例2〕
MFRが1.0g/10minのポリプロピレン樹脂をジターシャリブチルパーオキサイドと共に混練し、MFRを8.5g/10minに上昇させた。
次に、このポリプロピレン樹脂に、MFRが0.5g/10min、GPCによって得られる比(Mw/Mn)が5.7であるポリプロピレン樹脂を7%混合した。
得られたポリプロピレン樹脂組成物は、230℃におけるMFR(JIS K6758)が、8.0g/10min、メルトテンションが0.7g、スウェル比が1.5、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した比(Mw/Mn)が3.9、Mzが42.5×104であった。このポリプロピレン樹脂組成物を上記実施例1と同様な方法により、マルチフィラメントとして、紡糸、延伸を行った。得られた延伸マルチフィラメントの物性と延伸倍率の関係を表2に示した。
【0042】
【表2】

【0043】
上記表2から、実施例2のポリプロピレン樹脂組成物であると、最大延伸倍率が大きく、また破断強度や破断伸度、初期弾性率が高いことがわかる。
【0044】
〔実施例3〕
230℃におけるMFR(JIS K6758)が、10.0g/10min、メルトテンションが0.7g、スウェル比が1.6、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した比(Mw/Mn)が3.9、Mzが43.1×104であるポリプロピレン樹脂組成物を上記実施例1と同様な方法により、マルチフィラメントとして、紡糸、延伸を行った。
得られた延伸マルチフィラメントの物性と延伸倍率の関係を表3に示した。
【0045】
【表3】

【0046】
上記表3から、実施例3のポリプロピレン樹脂組成物であると、最大延伸倍率が大きく、また破断強度や破断伸度、初期弾性率が高いことがわかる。
【0047】
〔実施例4〕
230℃におけるMFR(JIS K6758)が、20.0g/10min、メルトテンションが0.7g、スウェル比が1.4、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した比(Mw/Mn)が4.5、Mzが45.9×104であるポリプロピレン樹脂組成物を上記実施例1と同様な方法により、マルチフィラメントとして、紡糸、延伸を行った。
得られた延伸マルチフィラメントの物性と延伸倍率の関係を表4に示した。
【0048】
【表4】

【0049】
上記表4から、実施例4のポリプロピレン樹脂組成物であると、最大延伸倍率が大きく、また破断強度や破断伸度、初期弾性率が高いことがわかる。
【0050】
〔比較例1〕
230℃におけるMFR(JIS K6758)が、70.0g/10min、メルトテンションが0.2g、スウェル比が0.9、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した比(Mw/Mn)が6.0、Mzが30.0×104であるポリプロピレン樹脂組成物を上記実施例1と同様な方法により、マルチフィラメントとして、紡糸、延伸を行った。
得られた延伸マルチフィラメントの物性と延伸倍率の関係を表5に示した。
【0051】
【表5】

【0052】
表5から、この比較例1の樹脂組成物であると、上記本発明に該当する各実施例の樹脂組成物と比して、最大延伸倍率が小さく、よって到達強度が低く、しかも同一延伸倍率においても破断強度、破断伸度、初期弾性率が低いことがわかる。
【0053】
〔比較例2〕
230℃におけるMFR(JIS K6758)が、1.5g/10min、メルトテンションが2.5g、スウェル比が2.1、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した比(Mw/Mn)が3.3、Mzが80×104であるポリプロピレン樹脂組成物を上記実施例1と同様な方法により、マルチフィラメントとして、紡糸、延伸を行った。
得られた延伸マルチフィラメントの物性と延伸倍率の関係を表6に示した。
【0054】
【表6】

【0055】
表6から、この比較例2の樹脂組成物であると、上記本発明に該当する各実施例の樹脂組成物と比して、最大延伸倍率が小さく、よって到達強度が低いことがわかる。
【0056】
〔比較例3〕
実施例1における第1のポリプロピレン樹脂をそのまま用いて、押出機を使用し、紡糸、延伸を行った。
得られた延伸マルチフィラメントの物性と延伸倍率の関係を表7に示した。
【0057】
【表7】

【0058】
表7から、この比較例3の樹脂組成物であると、上記本発明に該当する各実施例の樹脂組成物と比して、最大延伸倍率が小さく、到達強度が低いことがわかる。
【0059】
〔比較例4〕
実施例2における第1のポリプロピレン樹脂をそのまま用いて、押出機を使用し、紡糸、延伸を行った。
得られた延伸マルチフィラメントの物性と延伸倍率の関係を表8に示した。
【0060】
【表8】

【0061】
表8から、この比較例4の樹脂組成物であると、上記本発明に該当する各実施例の樹脂組成物と比して、最大延伸倍率が小さく、到達強度が低く、しかも同一延伸倍率においても破断強度、破断伸度、初期弾性率が低いことがわかる。
【0062】
〔参考例1〕
MFRが1.0g/10minのポリプロピレン樹脂をジターシャリブチルパーオキサイドと共に混練し、MFRを20g/10minに上昇させ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した比(Mw/Mn)が3.6、Mzが30×104の第1のポリプロピレン樹脂を調製した。
次に、この第1のポリプロピレン樹脂に、MFRが0.5g/10minであるポリプロピレン樹脂を10%(重量比)ドライブレンドにより混合した。
得られたポリプロピレン樹脂組成物は、230℃におけるMFR(JIS K6758)が、21g/10min、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した比(Mw/Mn)が3.8、Mzが42×104であった。
【0063】
次に、このポリプロピレン樹脂組成物を40mmφのフルフライトスクリューの押出機を用いて押出温度280℃にて0.6mmφ、68孔からなるマルチフィラメント用紡糸ノズルにより60g/minの吐出量で押し出した。押し出されたマルチフィラメントを冷却温度18℃、冷却風速0.5m/min、長さ900mmからなる冷却ダクトで冷却後、オイリングローラーで油剤を付与した後、周速度200/minのゴデッドロールで巻き取り、未延伸糸を得た。
得られた未延伸マルチフィラメントを表面温度115℃に保持された加熱ゴデッドロール対により、繰り出し速度200m/minで延伸を行った。
そして、最大延伸倍率を測定すると共に、最大延伸倍率未満の所定の延伸倍率での各種物性を測定した。
得られた延伸マルチフィラメントの最大延伸倍率(最大倍率)と、各延伸倍率での測定結果を下記表に示した。
【0064】
【表9】

【0065】
上記表9から、参考例1のポリプロピレン樹脂組成物であると、最大延伸倍率が大きく、また破断強度や破断伸度、初期弾性率が高いことがわかる。
【0066】
〔参考例2〕
MFRが1.0g/10minのポリプロピレン樹脂をジターシャリブチルパーオキサイドと共に混練し、ビスブレイクし、MFRを20g/10minに上昇させ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した比(Mw/Mn)が3.6、Mzが30×104の第1のポリプロピレン樹脂を調製した。
次に、この第1のポリプロピレン樹脂に、MFRが12g/10min、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した比(Mw/Mn)が10であるポリプロピレン樹脂を7%(重量比)ドライブレンドにより混合した。
得られたポリプロピレン樹脂組成物は、230℃におけるMFR(JIS K6758)が、21g/10min、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した比(Mw/Mn)が4.2、Mzが45×104であった。
次に、このポリプロピレン樹脂組成物を上記参考例1と同様にして、紡糸、延伸を行った。
得られた延伸マルチフィラメントの最大延伸倍率と、各延伸倍率で測定した各種物性の関係を表10に示した。
【0067】
【表10】

【0068】
上記表10から、参考例2のポリプロピレン樹脂組成物であると、最大延伸倍率が大きく、また破断強度や破断伸度、初期弾性率が高いことがわかる。
【0069】
〔参考例3〕
MFRが0.5g/10minのポリプロピレン樹脂をジターシャリブチルパーオキサイドと共に混練し、MFRを32g/10minに上昇させ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した比(Mw/Mn)が2.7、Mzが28×104の第1のポリプロピレン樹脂を調製した。
次に、この第1のポリプロピレン樹脂に、MFRが12g/10min、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した比(Mw/Mn)が10であるポリプロピレン樹脂を20%(重量比)ドライブレンドにより混合した。
得られたポリプロピレン樹脂組成物は、230℃におけるMFR(JIS K6758)が、30g/10min、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した比(Mw/Mn)が3.5、Mzが37×104であった。
【0070】
次に、このポリプロピレン樹脂組成物を上記参考例1と同様にして、紡糸、延伸を行った。
得られた延伸マルチフィラメントの最大延伸倍率と各延伸倍率での各種物性の関係を表11に示した。
【0071】
【表11】

【0072】
上記表11から、参考例3のポリプロピレン樹脂組成物であると、最大延伸倍率が大きく、また破断強度や破断伸度、初期弾性率が高いことがわかる。
【0073】
〔参考例4〕
MFRが2.0g/10minのポリプロピレン樹脂をジターシャリブチルパーオキサイドと共に混練し、MFRを45g/10minに上昇させ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した比(Mw/Mn)が3.9、Mzが30×104の第1のポリプロピレン樹脂を調製した。
次に、この第1のポリプロピレン樹脂に、MFRが0.5g/10minであるポリプロピレン樹脂を10%(重量比)ドライブレンドにより混合した。
得られたポリプロピレン樹脂組成物は、230℃におけるMFR(JIS K6758)が、43g/10min、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した比(Mw/Mn)が4.3、Mzが40×104であった。
【0074】
次に、このポリプロピレン樹脂組成物を上記参考例1と同様にして、紡糸、延伸を行った。
得られた延伸マルチフィラメントの最大延伸倍率と各延伸倍率で測定した各種物性の関係を表12に示した。
【0075】
【表12】

【0076】
上記表12から、参考例4のポリプロピレン樹脂組成物であると、最大延伸倍率が大きく、また破断強度や破断伸度、初期弾性率が高いことがわかる。
【0077】
〔比較例5〕
参考例1における第1のポリプロピレン樹脂をそのまま用いて、参考例1と同様にして、紡糸、延伸を行った。
得られた延伸マルチフィラメントの諸物性と延伸倍率の関係を表13に示した。
【0078】
【表13】

【0079】
表13から、この比較例5の樹脂組成物であると、上記参考例1の樹脂組成物と比して、同一延伸倍率での強度が低いことがわかる。
【0080】
〔比較例6〕
MFRが1.0g/10minのポリプロピレン樹脂をジターシャリブチルパーオキサイドと共に混練し、MFRを8.4g/10minに上昇させた第1のポリプロピレン樹脂を調製した。
次に、この第1のポリプロピレン樹脂に、MFRが12g/10min、GPCによる比(Mw/Mn)が10であるポリプロピレン樹脂を7%(重量比)ドライブレンドにより混合した。
【0081】
次に、このポリプロピレン樹脂組成物を上記参考例1と同様にして、紡糸、延伸を行った。
得られた延伸マルチフィラメントの延伸倍率と測定した各種物性の関係を表14に示した。
【0082】
【表14】

【0083】
表14から、この比較例6の樹脂組成物であると、上記参考例1の樹脂組成物と比して、延伸性が悪く、よって到達強度が低くなっていることがわかる。
【0084】
〔比較例7〕
参考例3における第1のポリプロピレン樹脂をそのまま用いて、参考例3と同様にして、紡糸、延伸を行った。
得られた延伸マルチフィラメントの諸物性と延伸倍率の関係を表15に示した。
【0085】
【表15】

【0086】
表15から、この比較例7の樹脂組成物であると、上記参考例3の樹脂組成物と比して、最大延伸倍率が小さくて到達強度が低く、しかも同一延伸倍率での強度が小さくなっていることがわかる。
【0087】
【発明の効果】
請求項1記載のポリプロピレン樹脂組成物は、230℃での、メルトフローレートが3.0〜60g/10min、メルトテンションが0.5〜1.5g、スウェル比が1.4〜1.6であることを特徴とするものである。
【0088】
【0089】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、メルトフローレートが0.5〜4g/10minのポリプロピレン樹脂をパーオキサイドと共に混練し、メルトフローレートを2〜60g/10minに上昇させた第1のポリプロピレン樹脂に、高分子量成分を含む第2のポリプロピレン樹脂を添加することにより容易に製造される。
【0090】
この際、第2のポリプロピレン樹脂が、そのメルトフローレートが、0.1〜2g/10minのものであるか、または、メルトフローレートが5〜20g/10min、かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が10以上のものであることが好ましい。
【0091】
上記本発明のポリプロピレン樹脂組成物であると、延伸性が高いので、高い到達強度を維持しつつも、延伸倍率を低く抑えた場合であっても、破断強度を十分に高めることができる。
よって、本発明のポリプロピレン樹脂組成物からなるマルチフィラメントであると、延伸倍率に拘束されることなく、破断強度の高いものとなる。
【0092】
また、本発明のポリプロピレン樹脂組成物であると、メルトフローレートが大きいにもかかわらず、破断強度の高いものであるから、高い破断強度を有するマルチフィラメントを例えば、1000m/分以上の高速成形により生産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
荷重-伸張曲線を示すグラフである。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-02-04 
出願番号 特願平6-219256
審決分類 P 1 652・ 113- YA (C08L)
P 1 652・ 121- YA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 森川 聡  
特許庁審判長 柿 崎 良 男
特許庁審判官 石井 あき子
中 島 次 一
登録日 2002-11-15 
登録番号 特許第3370791号(P3370791)
権利者 昭和電工株式会社
発明の名称 ポリプロピレン樹脂組成物およびその製造方法  
代理人 鈴木 三義  
代理人 村山 靖彦  
代理人 高橋 詔男  
代理人 西 和哉  
代理人 高橋 詔男  
代理人 久保山 隆  
代理人 西 和哉  
代理人 中山 亨  
代理人 村山 靖彦  
代理人 鈴木 三義  
代理人 青山 正和  
代理人 志賀 正武  
代理人 志賀 正武  
代理人 青山 正和  
代理人 榎本 雅之  

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