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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B41L |
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管理番号 | 1096373 |
異議申立番号 | 異議2003-70862 |
総通号数 | 54 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-01-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-04-04 |
確定日 | 2004-05-06 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3332267号「孔版印刷装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3332267号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3332267号の請求項1に係る発明についての出願は、平成5年7月13日に特許出願され、平成14年7月26日にその特許権の設定の登録がなされ、請求項1に係る特許について、山口十四治より特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成15年8月29日に特許異議意見書の提出がなされたものである。 2.特許異議の申立てについての当審の判断 (1)特許異議申立ての概要 特許異議申立人山口十四治は、甲第1号証(特開平3-193351号公報)、甲第2号証(特開平5-4438号公報)、甲第3号証(特開昭57-15967号公報)甲第4号証(特開昭52-90951号公報)、及び甲第5号証(特開昭60-198244号公報)を提出して、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて、あるいは、甲第1号証、甲第2号証及び甲第5号証に記載された発明に基づいて、あるいは、甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであると主張している。 (2)本件発明の認定 特許第3332267号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 版胴が所定の着版開始回転位置に位置している状態にて版胴に対し着版すべき孔版原紙を送り込み、版胴を一回転することによって孔版原紙を版胴の外周面に巻き付け装着する孔版印刷装置において、 版胴の外周面に装着され、着版された孔版原紙により覆われるセンサ反応部材と、 版胴が着版開始回転位置に位置している状態下にて前記センサ反応部材と対応する位置に配置され、前記センサ反応部材が孔版原紙により覆われているか否かを検出する孔版原紙有無確認用センサと、 版胴が着版開始回転位置より給紙開始回転位置へ回転変位する回転角範囲内にて前記センサ反応部材と対応する位置に配置され、前記センサ反応部材が孔版原紙により覆われているか否かを検出する着版確認用センサと、 を有していることを特徴とする孔版印刷装置。」 (3)引用刊行物の記載事項 甲第1号証乃至甲第5号証(以下、「刊行物1乃至刊行物5」という。)には、本件発明に関連する事項として、以下のような事項が記載されている(記載中「・・・」は中略を示す)。 [刊行物1:特開平3-193351号公報] ア.「印刷プロセスにおいても、新規マスターがドラム部に巻き付いていない場合、これを検知することができず、印刷動作に入ってしまうため、用紙がインクによってドラム部に貼り付いてしまい、排紙部に排紙されずに巻き上がるという現象が生ずる。・・・また用紙が巻き上がった状態で製版プロセスが実行されるとこの用紙がドラム部に貼付された状態であり、排版されないため、排版部におけるジャムとなったり、用紙の上に新規マスターが巻きつけられるという問題もあった。」(第1頁右下欄第20行〜第2頁左上欄第16行) イ.「製版プロセスを実行する時は、ドラム部9に巻かれている使用済み(印刷済み)のマスターを公知の排版動作により排版部13に排版した後、製版部14において、原稿読み取り部3の読み取り結果に応じてサーマルヘッド8により画像書き込みを行われた(穴を開けられた)新規マスター7をドラム部9に巻き付ける動作が行われる。」(第2頁右下欄第2行〜第9行) ウ.「印刷プロセスを実行する時は、給紙部11から給紙された用紙6に、ドラム部9との接触位置でインク20がスクリーン部21のメツシュ部および画像パターンを形成するマスター7の穴7aを介して供給され、これにより画像が用紙6上に形成される。・・・ドラム部9の外周部にはマスター7の巻き付け検知を行う反射型のフォトセンサからなるセンサ部10が設けられている。」(第2頁右下欄第10行〜第18行) エ.「マスター7が巻き付けられていない場合は、光吸収部22(第3図)に対向したセンサ部10の発光側からの光は光吸収部22に吸収され、受光側に反射光が達せず、またマスター7がドラム部9に巻き付けられている場合は、マスター7の反射率が高いため、反射光が受光側に届く。このことによりマスター7の有無をセンサ部10および制御部2で検知・判断することができる。」(第3頁右上欄第7行〜第15行) オ.「本発明によれば、制御手段は、製版プロセス実行時においては、ドラム部に使用済みマスターが巻き付いていることを検知手段からの信号で判断した時、排版動作を指示し、また、排版動作後、ドラム部にマスターが残っていないことを検知して製版動作を指示する。一方、制御手段は、印刷プロセス実行時においては、ドラム部に新規マスターが巻き付いていることを検知して印刷動作の指示を行い、そうでない時は印刷動作を停止する。従って、用紙のドラム部への巻き上がり、巻き上がった用紙上への新規マスターの巻き付け、あるいはマスターの2重巻き付けなどのトラブルを未然に防止することができる。」(第3頁右下欄第19行〜第4頁左上欄第12行) [刊行物2:特開平5-4438号公報] カ.「26は版胴21のクランプ部、27は原紙28先端がクランプ部26に挿入クランプされたことを検知するクランプ検知センサで、該クランプ検知センサ27の検知により・・・原紙排出ローラー23を停止させるようになっている。」(段落【0006】) キ.「原紙28は製版部20で製版された後、原紙送りローラー22へ送られ更に先に進む。・・・原紙排出ローラー23により先端がクランプ部26に挿入クランプされる。これをクランプ検知センサ27が検知し、・・・原紙排出ローラー23は停止する。・・・この状態で原紙送りローラー22を所定時間駆動させると、原紙28は2点鎖線のように下方にたるみを形成する。所定時間経過後製版が完了すると原紙駆動モーター29は停止し、原紙送りローラー22の回転は停止する。・・・この時、停止している原紙排出ローラー23は内蔵されたワンウエイクラッチにより原紙に張力を与え乍ら原紙移送方向にゆるみ回転するようになっているので、たるんだ原紙28は適度の張力を与えられ乍ら原紙排出ローラー23から円滑に引き出され版胴21に巻き付けられる。」(段落【0008】〜【0010】) [刊行物3:特開昭57-15967号公報] ク.「第2図は反射形ホトセンサからなるマスタ検知信号発生部材11を示す。マスタ検知信号発生部材11は、版胴6の表面に比べてマスタ7の表面が光を反射しにくいことから、版胴6の反射光量よりやや少なくかつマスタ7の反射光量より確実に多い反射光量値をあらかじめ決めておき、反射光量が前記あらかじめ決められた値より小さいときマスタ検知信号を発生するようになつている。第3,4図は別のマスタ検知信号発生部材21を示し、・・・30は図示しないフレームに取付けられたマイクロスイツチ、31は軸24にアーム23と一体に取付けられた検出板である。版胴6にマスタ7がセツトされていないときは、・・・マイクロスイツチ30を繰返しオン、オフさせる。これに対して、版胴6にマスタ7がセツトされているときは、・・・マイクロスイツチ30はオフ状態に保たれる。そしてこの状態において、マスタ検知信号発生部材21はマスタ検知信号を発生するようになつている。」(第2頁右上欄第2行〜左下欄第17行) [刊行物4:特開昭52-90951号公報] ケ.「本発明はマスターを用いる印刷、(例えばオフセツト印刷等の軽印刷)に全て利用できる。印刷用マスターを使用する印刷機ではマスターが確実にマスター支持部材に取付られている必要がある。」(第1頁右下欄第12行〜第15行) コ.「第2図の吸引/排気口内に投光ランプを設け、マスターがないときはドラムの吸引/排気口201〜204から外部に光が放出される様にダクト208を通し電気を供給する。一方受光部は第1図示の光電素子114を配置・・・してあれば、ドラムにマスターが密着している状態では受光素子114には光が当らない。マスターがズレたり脱落した場合には受光素子に光が当り、マスターの脱着状態を検知できる。」(第3頁右下欄第6行〜第16行) サ.「本発明の実施によりマスターを用いる印刷機に於けるマスターの異常装着、それにより発生するマスターのジヤムを防止できる。更に印刷機の様に高速度で1枚のマスターから多数枚の印刷を高速度で行なう装置ではマスターの異常装着に起因する多数の不良プリント作成のムダをなくすことができる。」(第4頁右上欄第14行〜左下欄第4行) [刊行物5:特開昭60-198244号公報] シ.「この様な印刷装置に於いては使用され得るマスターは、例えば導電性基板上に合成樹脂等から成る電気絶縁性物質で、再生すべきオリジナル書類の画像に相応する像パターンを形成したもの、或いは前記の様な像パターンを金属シート上にフオトレジスト又はフオトポリマー等を用いて作成したもの、更には例えば酸化亜鉛複写シート紙に既知の電子写真プロセスで電気絶縁性の樹脂像を形成したもの等で、画像再生処理を繰返し施し得る像パターンの形成されたものである。」(第1頁右下欄第17行〜第2頁左上欄第6行) ス.「像形成シートに熱現像処理が施されて作成されたマスターMはオリジナル書類の複製画像を得る為に静電印刷処理が施される。静電印刷処理はドラム10の周辺に配設されている帯電部11、現像部12、転写部13、クリーニング部14によって実行される。」(第4頁左下欄第9行〜第14行) セ.「マスタがドラムに装着されているかを検出するチエツクルーチンに進む。まずチエツクルーチンを示す表示器LED6を点灯させ・・・ドラムを正転・・・させる。ドラムが3回転してプリント位置HAL2を3回検出すると・・・LED6を消す。そしてマスタ検出器PH5の入力ポートを読込んでPH5がHかをチエツクする。マスタにはマスタ検出用の黒いチエツクゾーンがあるのでドラム面の白と区別できる。」(第9頁左下欄第8行〜第20行) (4)対比・判断 本件発明と上記刊行物1乃至5に記載された発明とを対比すると、上記刊行物1乃至5のいずれにも、「版胴が着版開始回転位置に位置している状態下にて前記センサ反応部材と対応する位置に配置され、前記センサ反応部材が孔版原紙により覆われているか否かを検出する孔版原紙有無確認用センサと、版胴が着版開始回転位置より給紙開始回転位置へ回転変位する回転角範囲内にて前記センサ反応部材と対応する位置に配置され、前記センサ反応部材が孔版原紙により覆われているか否かを検出する着版確認用センサと、を有している」構成、つまり、孔版原紙有無確認用センサ、着版確認用センサという2つのセンサを備えると共に、これら2つのセンサを、版胴が着版開始回転位置に位置している状態下にてセンサ反応部材と対応する位置、版胴が着版開始回転位置より給紙開始回転位置へ回転変位する回転角範囲内にてセンサ反応部材と対応する位置のそれぞれに配置する構成については何も記載されていなく、示唆もされていない。 因みに、上記刊行物1には、光吸収部22がマスター7に覆われているか否かを検出する反射型のフオトセンサからなるセンサ部10を備える孔版印刷装置が、上記刊行物2には、原紙28先端がクランプ部26に挿入されたことを検知するクランプ検知センサ27を備える孔版印刷装置が、上記刊行物3には、版胴6の表面がマスタ7に覆われているか否かを検出する反射形ホトセンサからなるマスタ検知信号発生部材11を備える印刷機が、上記刊行物4には、マスターがズレたり脱落したことを検知する受光素子114を備える印刷機が、上記刊行物5には、マスタがドラムに装着されているかを検出するマスタ検出器PH5を備える印刷機が、それぞれ記載されていると認められるものの、いずれも単一のセンサを備える印刷機であり、これらを組み合わせる動機付けが無く、仮に組み合わせても、上記構成を備える孔版印刷装置が得られるものでもない。 また、上記構成は、当該技術分野で周知の事項であるともいえない。 してみれば、上記構成は、当業者が容易に想起できたものとは認められない。 そして、本件発明は、上記構成を備えることにより、「版胴が着版開始回転位置に位置している状態にて、孔版原紙有無確認用センサにより一回前の孔版原紙が版胴に装着されているか否かの検出が行われ、版胴が着版開始回転位置より給紙開始回転位置へ回転変位する回転角範囲内にて着版確認用センサにより新しい孔版原紙が版胴に装着されているか否かの検出が行われるから、製版時に直ちに排版処理を開始することが可能になり、また孔版原紙が版胴に正しく巻き付け装着されない着版ミス時に給紙が開始される不具合の発生を回避したうえで、新しい孔版原紙を製版しつつこれを版胴に巻き付け装着するための版胴の回転時に、給紙を開始して孔版印刷を開始することが可能になり、これらのことから着版処理に要する全体の時間が短縮され、ファーストプリントが得られるに要する時間が従来に比して短くなる。」(特許明細書の段落【0054】)という上記刊行物1乃至5に記載のものからは期待できない格別の効果を奏するものである。 したがって、本件発明は、上記刊行物1乃至5に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すことができない。 また、他に本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件請求項1に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2004-04-08 |
出願番号 | 特願平5-173260 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(B41L)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 山本 一、畑井 順一 |
特許庁審判長 |
砂川 克 |
特許庁審判官 |
藤井 靖子 中村 圭伸 |
登録日 | 2002-07-26 |
登録番号 | 特許第3332267号(P3332267) |
権利者 | 理想科学工業株式会社 |
発明の名称 | 孔版印刷装置 |
代理人 | 和田 成則 |