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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E01F
管理番号 1096399
異議申立番号 異議2003-70029  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-07-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-01-07 
確定日 2004-04-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第3299681号「路面標示ブロック」の請求項1及び2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認めない。 特許第3299681号の請求項1に係る特許を取り消す。 同請求項2に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
特許第3299681号の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件請求項1及び2に係る発明」という。)は、平成8年12月21日に特許出願され、平成14年4月19日にその特許権の設定登録がなされ、その後、本件請求項1及び2に係る発明について、異議申立人岡誠一より特許異議の申立てがなされ、取消の理由を通知し、これに対して、その指定期間内である平成15年6月17日に特許異議意見書と共に訂正請求書が提出され、そして、上記異議申立人に審尋し、上記異議申立人より回答書が提出され、さらに、再度の取消の理由を通知し、これに対して、特許異議意見書が提出されたものである。

II.訂正の適否についての判断
平成15年6月17日付けの訂正請求は、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載の「……台形のブロック体を形成し、」を「……台形のブロック体において、」とし、請求項1に記載の「衝撃性能を有してなる」を「衝撃吸収性能と耐荷重性能を有してなる」と訂正するものであるが、当該訂正は、いずれも、特許請求の範囲を減縮するものでなく、また、誤記の訂正及び明りようでない記載の釈明に相当するものでもないから、特許法第120条の4第2項第1ないし3号に規定のいずれの事項も目的としていないので、当該訂正は認められない。

III.特許異議の申立てについての判断
1.異議申立て理由の概要
異議申立人は、証拠として、甲第1号証(特開平7-233511号公報)、甲第2号証(実公昭62-15295号公報)、甲第3号証(実願平5-63061号(実開平7-29005号)のCD-ROM)、甲第4号証(実願昭51-57289号(実開昭52-148518号)のマイクロフィルム)及び甲第5号証(特開平7-9461号公報)を提出し、本件請求項1及び2に係る発明の特許は、前記甲第1乃至3、5号証に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたもので、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取消されるべきものである旨主張している。

2.本件請求項1及び2に係る発明
本件請求項1及び2に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】長方形の天板部の四辺の各辺から互いに対向する面が対称する所定の勾配で下方外側へ傾斜する側板部を有し、前記側板部の下辺の前記天板部より大きい長方形の外周部に囲まれ且つ前記天板部と面平行する解放された底面を有して中空になる一方側に長い台形のブロック体を形成し、前記ブロック体の内部には、天板部及び側板部から解放底面方向へ突出する複数条の長手方向のリブ及び幅方向のリブを所定間隔を置いて設け、これら複数の長手方向のリブと複数の幅方向のリブによってブロック体の内部に多数の桝状の空部を設け、前記ブロック体の外周部に肉盛部を設けて前記長さ方向及び幅方向の複数条のリブの端部が路面の凹凸に対応して接地する間隙を設けて優れた衝撃性能を有してなる路面標示ブロック。
【請求項2】長方形の天板部の四辺の各辺から互いに対向する面が対称する所定の勾配で下方外側へ傾斜する側板部を有し、前記側板部の下辺の前記天板部より大きい長方形の外周部に囲まれ且つ前記天板部と面平行する解放された底面を有して中空になる一方側に長い台形のブロック体を形成し、前記ブロック体の内部には、天板部及び側板部から解放底面方向へ突出する複数条の長手方向のリブ及び幅方向のリブを所定間隔を置いて設け、これら複数の長手方向のリブと複数の幅方向のリブによってブロック体の内部に多数の桝状の空部を設け、前記ブロック体の外周部に肉盛部を設けて前記長さ方向及び幅方向の複数条リブの端部が路面の凹凸に対応して接地する間隙を設けて形成し、前記ブロック体とリブとはFRPチップ10〜40重量%、ポリエチレン55〜90重量%、チタン2重量%の混合組成物を加熱加圧して成形してなる路面標示ブロック。」

3.引用刊行物記載の発明
(1)引用刊行物
当審が通知した再度の取消理由に引用した刊行物は、以下のとおりである。
刊行物1:特開平7-233511号公報(甲第1号証)
刊行物2:特開平8-144213号公報(回答書添付の参考資料1)

(2)刊行物1及び2記載の発明
刊行物1には、
「【産業上の利用分野】この発明は、自動車用道路の走行車線を区分したり、走行区域を規制したりするため、路面に一時的に固定するための一方向に長い枕木状の路面標識に関するものである。」(1欄41〜44行)、
「舗装道路の車線に沿って配置できるように一方向に長く、断面台形の板状に合成樹脂で形成され、その下面の長さ方向の両端近くに端部穴を、上部まで貫通するように開孔し、対応して設けられた道路上の開孔穴に合成樹脂製の繋留固定具を敷設しアンカーボルトで着脱自在に道路上に敷設固定するものであり、耐衝撃性を向上するために、合成樹脂で成形された断面台形の板状体物の外皮が硬質の合成樹脂で成型され、芯体が軟質の合成樹脂で成型され、……耐圧性を向上さすために、合成樹脂で形成された断面台形の板状体物の外皮と同じ硬質の合成樹脂で道路面に垂直に位置しかつ道路面に接するように複数の力骨(リブ)を設け合成樹脂で形成された断面台形の板状体物の外皮が硬質の合成樹脂からなり、……路面標識と道路面への取付と取外しを容易ならしめるために、合成樹脂で形成された路面標識の両端部に開孔された端部穴と該端部穴に対応して敷設された道路上の繋留固定具を固定するアンカーボルト……からなることを特徴とする路面標識であり、」(2欄22〜46行)及び
「図4は耐荷重性をよくするために力骨(リブ)補強した路面標識の断面図である。力骨10は複数本設ける。外皮3と同じ硬質の合成樹脂で作られる。芯体は分割芯体12を予め作っておいてリブとリブの間に挿入接着する。しかしこれに限定するものではなく、芯体は一体注型してもよい。……該力骨の耐荷重性を大きくするために硬質合成樹脂にガラス繊維を混入して圧入成型してもよいし、金型に予めガラス繊維を配設しておいて硬質合成樹脂を圧入してもよい。」(3欄30〜40行及び図4)と記載され、
図1、2及び4によれば、「路面標識1は、長方形の天板部の四辺の各辺から互いに対向する面が対称する所定の勾配で下方外側へ傾斜する側板部を有し、側板部の下辺の前記天板部より大きい長方形の外周部に囲まれ且つ前記天板部と面平行する解放された底面を有して中空になる一方側に長い断面台形に外皮3を形成し、外皮3の内部には、天板部から開放底面方向へ突出する複数条の幅方向の力骨10を間隔を置いて設けること。」が記載されていると認められる。
以上の記載からみて、刊行物1には、
「長方形の天板部の四辺の各辺から互いに対向する面が対称する所定の勾配で下方外側へ傾斜する側板部を有し、側板部の下辺の前記天板部より大きい長方形の外周部に囲まれ且つ前記天板部と面平行する解放された底面を有して中空になる一方側に長い断面台形に形成された外皮3を形成し、前記外皮3の内部には、天板部及び側板部から解放底面方向へ突出する複数条の幅方向の力骨10を所定間隔を置いて設け、これら複数の力骨10間及び力骨10と側板部間に分割芯体12を充填した優れた衝撃性能を有してなる路面標識。」という発明が記載されていると認られる。
刊行物2には、
「【産業上の利用分野】本発明は、例えば、荒れ地、法面、イベント会場、工事現場車両搬出入路、仮設路等に敷設するための敷板に関するものである。」(1欄18〜20行)、
「図3〜図5に示すように、第2の結合部3を除いて板本体1の裏面にはその外周縁に沿って外周リブ10が形成されている。板本体1の中心には補強のための補助リブとしての円形の環状リブ11が形成されている。第1、第2の結合部2、3間における外周リブ10の各コーナと環状リブ11との間には補強のための主リブとしての第1の放射リブ12が、外周リブ10の各辺のコーナ寄りと環状リブ11との間には同じ主リブとしての第2の放射リブ13がそれぞれ延びている。前記第1の放射リブ12の中間にはもう1つの補強のための補助リブとしての円形の環状リブ14が配設されている。隣接する環状リブ14と第2の放射リブ13との間に連結リブ15が設けられている。第1の放射リブ12と第2の放射リブ13との中間において、外周リブ10から内方へ向かって短い外側リブ16が延びている。
【0013】第2の結合部3の裏面には、格子リブ17が形成されており、その格子リブ17の嵌合部6と対応する部分は嵌合部6の外周面と連続する円弧状に形成されている。
【0014】板本体1の上面及び放射リブ12、13等によって形成される敷板の下面は、板本体1の中心を中心として緩やかに上方へ湾曲した形状をなしている。そして、環状リブ11の下端面と地面等の設置面との間には、中心において高さhの空間が形成される。」(2欄41行〜3欄14行及び図3〜図5)、
「板本体1の裏面には、その外周、中心部及び外周と中心部との間に、各リブ10〜17が設けられているため、全体の強度に優れ、たとえ車両のような重量物の荷重が作用しても破損することがない。しかも、第2の結合部3の裏面には格子リブ17が設けられているため、透孔7及び嵌合部6付近の強度低下を補うことができる。そして、このように、リブ10〜17により強度を確保したため、敷板1を厚くした場合と比較して、軽量化でき、運搬などにおける取扱いが容易となる。
【0020】板本体1の裏面には、第1,第2の放射リブ12,13が設けられている。従って、敷板1の上面に作用する荷重、すなわち応力をその放射リブ12、13に沿って分散でき、応力集中による破損を防止できる。しかも、中心部には環状リブ11が設けられているため、荷重が集中しやすい中心部への応力集中をいっそう防止できる。そして、第1の放射リブ12の中間には環状リブ14が設けられるとともに、それらの環状リブ14及び第2の放射リブ13間が連結リブ15により連結されている。従って、これらのリブ11、12、14が相互に連設されることによって、板本体1の頂部から裏面に向かって生じる応力の集中を分散することでき、しかも第1,第2の放射リブ12,13自体も補強される。また、外側リブ16により板本体1の外周部及び外周リブ10が補強される。さらにまた、環状リブ11、14は荒れ地面の不陸状態を十分にグリップし、板本体1のズレ防止に役立っている。
【0021】加えて、放射リブ12、13等の各リブの下端面は、板本体1の上面の湾曲に合わせて中心から外周に向かって下がり勾配に形成されている。このため、敷板は上部からの荷重に対して高さh分だけ弾性変形して、その荷重を吸収できる。このため、前記各リブの作用とあいまって、さら敷板の耐荷重性が向上するばかりか、連結された敷板全体としてほぼ平坦な面が構成される。」(4欄10〜44行及び図3、図4)と記載されている。

4.対比・判断
(本件請求項1に係る発明について)
本件請求項1に係る発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、
刊行物1記載の発明の「断面台形」、「外皮3」、「力骨10」及び「路面標識」は、本件請求項1に係る発明の「台形」、「ブロック体」、「リブ」及び「路面標示ブロック」に相当しているから、両者は、「長方形の天板部の四辺の各辺から互いに対向する面が対称する所定の勾配で下方外側へ傾斜する側板部を有し、前記側板部の下辺の前記天板部より大きい長方形の外周部に囲まれ且つ前記天板部と面平行する解放された底面を有して中空になる一方側に長い台形のブロック体を形成し、前記ブロック体の内部には、天板部及び側板部から解放底面方向へ突出する複数条の幅方向のリブを所定間隔を置いて設けて優れた衝撃性能を有してなる路面標示ブロック。」である点で、一致しているが、
(1)本件請求項1に係る発明は、長手方向のリブ及び幅方向のリブを設け、これら複数の長手方向のリブと複数の幅方向のリブによってブロック体の内部に多数の桝状の空部を設けているのに対して、刊行物1記載の発明は、幅方向のみにリブが設けられ、ブロック体の内部のリブ間等に芯体が充填されている点、及び、
(2)本件請求項1に係る発明の、ブロック体の外周部に肉盛部を設けて長さ方向及び幅方向の複数条のリブの端部が路面の凹凸に対応して接地する間隙を設けている点は、刊行物1には、記載されていない点で、相違している。
そこで、上記相違点について検討する。
相違点(1)について
刊行物2には、敷板において、板本体1(本件請求項1に係る発明の「ブロック体」に相当する。以下、括弧内は本件請求項1に係る発明の相当する事項を示す。)の裏面(「内部」)には、全域に複数の放射リブ12,13と複数の環状リブ11,14等を設け、該リブにより板本体1(「ブロック体」)の裏面(「内部」)に多数の空部を設け、本件請求項1に係る発明と同等の耐荷重性能を有する構造の発明が記載されていると認められ、そして、荷重を受けるブロック体の平面形状又は裏面形状が矩形であれば、複数の長手方向のリブと複数の幅方向のリブによってブロック体の内部に多数の桝状の空部を設けたものとすることは、本件の出願前、周知の技術事項にすぎない(例えば、刊行物2の3欄6〜7行、4欄14〜16行及び図3の記載、実公昭62ー15295号公報(甲第2号証)、特開平8-209610号公報の5欄15〜25行及び図15、図16の記載を参照されたい。)といえるから、相違点(1)において、刊行物1記載の発明に代えて、本件請求項1に係る発明のようにすることは、当業者であれば、容易になし得ることである。
相違点(2)について
刊行物2には、敷板において、板本体1(「ブロック体」)の裏面(「内部」)にはその外周縁(「外周部」)に沿って外周リブ10(「肉盛部」)を設け、放射リブ12,13と環状リブ11,14の下端(「端部」)が路面と間隙をなすよう形成することにより、本件請求項1に係る発明と同等の上部からの荷重に対して弾性変形して、荷重を吸収するようにした発明が記載されていると認められ、相違点(2)における本件請求項1に係る発明の事項は、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用することにより、当業者が容易に想到できることである。

(本件請求項2に係る発明について)
本件請求項2に係る発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、
刊行物1記載の発明の「断面台形」、「外皮3」、「力骨10」及び「路面標識」は、本件請求項2に係る発明の「台形」、「ブロック体」、「リブ」及び「路面標示ブロック」に相当しているから、両者は、「長方形の天板部の四辺の各辺から互いに対向する面が対称する所定の勾配で下方外側へ傾斜する側板部を有し、前記側板部の下辺の前記天板部より大きい長方形の外周部に囲まれ且つ前記天板部と面平行する解放された底面を有して中空になる一方側に長い台形のブロック体を形成し、前記ブロック体の内部には、天板部及び側板部から解放底面方向へ突出する複数条の幅方向のリブを所定間隔を置いて設けて優れた衝撃性能を有してなる路面標示ブロック。」である点で、一致しているが、
(1)本件請求項2に係る発明は、長手方向のリブ及び幅方向のリブを設け、これら複数の長手方向のリブと複数の幅方向のリブによってブロック体の内部に多数の桝状の空部を設けているのに対して、刊行物1記載の発明は、幅方向のみにリブが設けられ、ブロック体の内部のリブ間等に芯体が充填されている点、(2)本件請求項2に係る発明の、ブロック体の外周部に肉盛部を設け、長さ方向及び幅方向の複数条のリブの端部が路面の凹凸に対応して接地する間隙を設けている点は、刊行物1には、記載されていない点、及び
(3)本件請求項2に係る発明の、ブロック体とリブとはFRPチップ10〜40重量%、ポリエチレン55〜90重量%、チタン2重量%の混合組成物を加熱加圧して成形してなる点は、刊行物1には、記載されていない点で、相違している。
そこで、上記相違点について検討する。
上記相違点(1)及び(2)については、上記「(本件請求項1に係る発明について)」で判断したとおりである。
相違点(3)について
相違点(3)における本件請求項2に係る発明の事項は、刊行物2に記載がなく、また、異議申立人が提出した甲第5号証には、熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法であって、熱可塑性樹脂に強化繊維を混入して発泡成形することが記載されているもの、上記相違点(3)における本件請求項2に係る発明の事項を想到させるものでなく、また、その他の甲第1乃至4号証にも記載されていない。
したがって、本件請求項2に係る発明は、刊行物1及び2記載の発明又は甲第1乃至3、5号証に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

5.むすび
以上のとおり、本件請求項1に係る発明は、刊行物1及び2記載の発明並びに上記周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
本件請求項2に係る発明の特許については、特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことができず、また、他に取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-03-08 
出願番号 特願平8-354827
審決分類 P 1 651・ 121- ZE (E01F)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 小林 俊久  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 藤原 伸二
長島 和子
登録日 2002-04-19 
登録番号 特許第3299681号(P3299681)
権利者 東洋ゴム工業株式会社 株式会社タイボー
発明の名称 路面標示ブロック  
代理人 藤田 耕三  
代理人 藤田 耕三  

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