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審決分類 審判 全部無効 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 訂正を認める。無効としない A61K
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない A61K
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 訂正を認める。無効としない A61K
審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 訂正を認める。無効としない A61K
管理番号 1096955
審判番号 無効2001-35007  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1980-05-10 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-01-11 
確定日 2004-03-08 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第1469541号発明「経皮吸収性抗炎症剤配合のパツプ剤」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第1469541号(昭和63年12月14日設定登録)に係る出願は、昭和53年11月2日にされたものであり(特願昭53-134483号)、56年5月14日付けで拒絶査定に対する審判請求がされた後、昭和61年12月11日に出願公告がされ、昭和62年8月29日付けで旧特許法第64条第1項の規定に基づく明細書の補正がされた。
本件特許に対し、平成13年1月11日に株式会社昭栄から本件無効審判の請求がされ、この請求書の副本を被請求人に送達したところ、その指定期間内である平成13年4月27日に訂正請求がされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
特許権者により請求された明細書の訂正事項は以下のとおりである。
訂正事項a:昭和62年8月29日付け手続補正書の特許請求の範囲、即ち、「(1)カルボキシメチルセルロースナトリウム及び/又はポリアクリル酸ナトリウムからなる保水性基剤と、グリセリンからなる湿潤剤と、アルミニウム塩と、水とを配合したものからなり、インドメタシンが保水性基剤に対して全体重量の0.1〜1.5重量%配合され、更にメントールが添加されていることを特徴とする経皮吸収性抗炎症剤配合のパップ剤」とあるのを、
「(1)カルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムからなる保水性基剤、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる保水性基剤と、グリセリンからなる湿潤剤と、アルミニウム塩と、水とを配合したものからなり、インドメタシンが保水性基剤に対して全体重量の0.1〜1.5重量%配合され、更にメントールが添加されていることを特徴とする経皮吸収性抗炎症剤配合のパップ剤」に訂正する。
訂正事項b:同書第4頁6〜8行および14〜16行の「カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウムからなる保水性基剤」を「カルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムからなる保水性基剤、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる保水性基剤」に訂正する。
訂正事項c:同書第5頁1〜2行および第15頁11〜12行の「カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム」を「カルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムとの併用、又はカルボキシメチルセルロースナトリウム単独」に訂正する。
訂正事項d:同書第5頁5〜6行の「カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム」を「カルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムからなる保水性基剤、又はカルボキシメチルセルロ-スナトリウムからなる保水性基剤」に訂正する。
訂正事項e:同書第5頁14〜15行の「カルボキシメチルセルロースナトリウム及び/又はポリアクリル酸ナトリウムと」を「カルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムからなる保水性基剤、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる保水性基剤に」と訂正する。
訂正事項f:同書第7頁17行、第10頁2行の「実施例2」を「参考例1」と訂正する。
訂正事項g:同書第11頁15行の「本発明品」を「参考例1に示された発明品」と訂正する。
訂正事項h:同書第14頁6行の「実施例1〜2」を「実施例1および参考例1」と訂正する。
訂正事項i:同書第16頁4行の「本発明にかかる実施例」を「参考例1」と訂正する。
訂正事項j:図中、2箇所ある「本発明」をそれぞれ「参考例1」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、特許請求の範囲に「カルボキシメチルセルロースナトリウム及び/又はポリアクリル酸ナトリウムからなる保水性基剤」とあるのを、「カルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムからなる保水性基剤、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる保水性基剤」と訂正するものであり、特許請求の範囲の減縮に相当する。
本件の願書に添付された明細書には、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムを併用することについては、具体的に記載されていない。しかしながら、実施例1に「カルボキシメチルセルロースナトリウム塩4部をグリセリン5部に水66.7部を加えて溶液状にする。・・」と、カルボキシメチルセルロースナトリウムを使用することが記載され、実施例2に「ポリアクリル酸ナトリウム」を使用することが記載され、さらに、本件無効審判請求人が提出の甲第9号証(特開昭53年15413号公報:昭和53年2月13日公開)に、パップ剤において保水性等を向上させる為にポリアクリル酸アルカリ金属塩を含む基剤にカルボキシメチルセルロースを併用し得ることが記載(公報第3頁左上欄第15〜19行)されているように、これら2化合物を併用することは、本件出願前に既に必要に応じて適宜なし得ることであったものであるから、両者を併用することについても、本件発明において実質的に開示されていたに等しいということができ、結局、上記訂正事項は願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
訂正事項b、c、d及びeは、上記訂正事項aと整合させるために訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれも願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
訂正事項f、g、h、i及びjは、本件発明の実施例に該当しない具体例について、その旨を明りょうにしたものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第134条第2項及び同条第5項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.当事者の主張
(1)請求人の主張
請求人は、「『特許第1469541号の特許を無効とする。審判費用は、被請求人らの負担とする。』との審決を求める。」と主張し、証拠方法として下記の甲第1号証ないし甲第19号証を提出しているところ、その理由の概要は次のとおりである。
本件特許は、公告決定前の昭和56年1月26日に補正されて(以下、「第一回全文補正」という。)出願公告された明細書(甲第2号証:以下、「公告明細書」という。)となり、又、公告決定後の昭和62年8月29日に補正されて(以下、「第二回全文補正」という。)最終的に登録された明細書及び図面(甲第3号証:以下、「最終明細書」という。)となっている。
ア、無効理由1
第一回全文補正は補正の要件(旧特許法第40条)を満たしていないし、また、第二回全文補正も補正の要件(旧特許法第64条第1項及び第2項)を満たしていないから、本件特許に係る出願は手続補正書の提出時(昭和56年1月26日)にされたとみなされ、そうすると、公告明細書に係る発明は、公開公報の実施例と同一であり、新規性又は進歩性がない。
イ、無効理由2
第一回全文補正が補正要件を満たしているとしても、公告明細書は明細書の記載要件(特許法第36条第4項及び第5項)を満たしていないし、又、公告明細書に係る発明は甲第7号証ないし甲第16号証に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ、無効理由3
第二回全文補正が補正要件(旧特許法第64条第1項及び第2項)を満たしているとしても、第一回全文補正は補正要件(旧特許法第40条)を満たしていないから、本件特許に係る出願は手続補正書の提出時(昭和56年1月26日)にされたとみなされ、そうすると、最終明細書及び図面に記載された発明は本件出願の公開公報の実施例と同一であり、新規性又は進歩性がない。
エ、無効理由4
第一回全文補正及び第二回全文補正が補正の要件を満たしているとしても、最終明細書は記載要件(特許法第36条第4項及び第5項)を満たしていないし、又、同明細書に係る発明は甲第7号証ないし甲第16号証に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

甲第1号証:特開昭55-62013号公報(本件の公開公報:出願明細書)
甲第2号証:特公昭61-58445号公報(本件の公告明細書)
甲第3号証:特許庁公報(昭64.2.27発行の本件の旧特許法第64条の規定による補正の掲載:最終明細書)
甲第4号証:特開昭57-81409号公報
甲第5号証:特開昭55-62014号公報
甲第6号証:本件特許権に係る無効審判事件である平成7年審判第13936号及び平成7年審判第13937号の併合事件の審理において平成9年2月18日午後1時特許庁審判廷において行われた証拠調べの証拠調調書の第11〜27頁
甲第7号証:特開昭51-91318号公報
甲第8号証:特開昭53-81616号公報
甲第9号証:特開昭53-15413号公報
甲第10号証:特開昭51-112511号公報
甲第11号証:特開昭52-38016号公報
甲第12号証:特開昭51-26217号公報
甲第13号証:特開昭50-18618号公報
甲第14号証:「薬理と治療」Vol.6、No.10、1978、第115〜129頁、ライフ・サイエンス出版株式会社
甲第15号証:日本薬理学雑誌、第74巻、第2号、(昭和53年3月20日)第18頁
甲第16号証:「薬局」Vol.28、No.9、1977年、第63、67及び68頁
甲第17号証:「準開発基本契約書」1990年12月25日
甲第18号証:「インドメタシン準開発のロイヤリティ支払いに関する件」(平成7年5月8日)及び別添No.1ないし6、
甲第19号証:「医薬品製造業許可証」(昭和62年11月19日)

(2)被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判の費用は請求人の負担とする」との審決を求め、証拠方法として下記の乙第1号証ないし乙第3号証及び参考資料1を提出している。

乙第1号証:本件特許に対する無効審判である平成7年審判第13936号審決
乙第2号証:本件特許に対する平成7年6月28日付け審判請求書(平成7年審判第13936号事件)
乙第3号証:平成10年(行ケ)第227号審決取消請求事件及び平成10年(行ケ)第397号審決取消請求事件の併合事件の判決
参考資料1:吉藤幸朔ら著「特許法概説[第11版]」(株)有斐閣発行、1996年5月30日、第409〜411頁

4.本件発明
上記2.で示したように訂正が認められるから、本件請求項1の発明(以下、「本件発明1」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された下記のとおりのものである。
「(1)カルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムからなる保水性基剤、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる保水性基剤と、グリセリンからなる湿潤剤と、アルミニウム塩と、水とを配合したものからなり、インドメタシンが保水性基剤に対して全体重量の0.1〜1.5重量%配合され、更にメントールが添加されていることを特徴とする経皮吸収性抗炎症剤配合のパップ剤。」

5.当審の判断
(1)請求人の利害関係について
本件請求人 株式会社昭栄は、本件特許権者である審判被請求人からインドメタシンを有効成分とするパップ剤の製造販売の許諾を受けている救急薬品工業株式会社より本件パップ剤の供給を受け、その供給量に応じてロイヤリティを救急薬品工業株式会社に支払うことによって間接的に本件審判被請求人にロイヤリティを支払っていることは、甲第17号証ないし甲第19号証から明らかであるから、本件請求人は利害関係人である。

(2)補正の適否について
請求人は上記2回の全文補正は補正の要件を満たさないと主張をしているので、この点について検討する。
なお、本件特許は昭和53年に出願されたものであるから、旧特許法第40条及び旧特許法第64条の規定に基づき判断される。
1)第一回全文補正について
ア.インドメタシンの含有量について
請求人は、公告明細書の特許請求の範囲第1項において、インドメタシンの含有量を「0.01〜1.5重量パーセント」としている点について、願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)には、インドメタシンの含有量の説明はされておらず、根拠がないと主張している。(審判請求書第13頁18〜第14頁2行)
当初明細書には、インドメタシン含有量に関する総括的記載はないが、請求人も指摘するとおり、実施例1、2及び3にはインドメタシンを含有するパップ剤が記載されており、各実施例におけるパップ剤中の各成分量に対するインドメタシンの相対量は、概略、0.125重量%、0.25重量%、及び0.5重量%である(審判請求書第13頁21〜23行)。
ところで、本件出願前には、インドメタシンをパップ剤とすることは知られていなかったが、インドメタシン自体の抗炎症作用は知られていたのである。そして、一旦インドメタシンをパップ剤として使用し得ること自体が明らかにされれば、パップ剤におけるインドメタシン使用量の下限は、その薬効を奏し得る量において、出願人が好ましいと考える最少量を規定すればよいだけのことであり、一方、上限量については、インドメタシンは難溶性薬物であるからパップ剤として使用できる範囲は自ずと定まるものであるから、上記実施例における使用量及び当業者の一般的な知見に基づいて、インドメタシンの配合量を0.01〜1.5重量%とすることが発明の要旨を変更するとはいえない。
イ.「保水性基剤」という用語の使用について
請求人は、特許請求の範囲第1項で「保水性基剤」なる用語を使用した点について、当初明細書には同用語は記載されておらず、実施例には、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ゼラチン、ジアルデヒド澱粉及びポリアクリル酸ナトリウムが記載されているにすぎないから、他の公知の材料を含むと思われる「保水性基剤」については自明な事項とはいえないと主張している。(同請求書第14頁3〜16行)
そこで、この点について検討すると、請求人が提示した「パップ剤」の発明に係る甲第9号証(特開昭53-15413号公報)の第2頁右下欄7〜10行には、「ポリアクリル酸アルカリ金属塩はパップ剤の保水性に役立っており、多価金属によりポリアクリル酸が架橋されると保型性が向上せしめられる。」と記載されており、本件の当初明細書の実施例3で使用されているポリアクリル酸アルカリ金属塩が保水性基剤として使用されることは当業者にとり明らかなことであったといえる。
また、「湿布薬の製造方法」の発明に係る甲第7号証(特開昭51-91318号公報)の第1頁左下欄12〜19行には、「本発明はゼラチンのコロイド水溶液にゼラチンと附加化合体を作る、ジアルデヒド澱粉の水溶液を加えて作った、ゼラチンの附加化合体を主成分として使用することを特徴とするもので、これに周知の湿潤剤、刺激剤、抗アレルギー剤、粘着材、その他を加え多量に水を含んだ湿布効果が大きく使用に便利な湿布薬を提供することを目的とするものである。」と記載されており、同記載によれば、当初明細書の実施例2の「ゼラチン-ジアルデヒド澱粉付加物」が多量に水を含んだ保水性基剤であることも、当業者にとり明らかなことである。
更に、甲第12号証(特開昭51-26217号公報)は「湿布剤用基剤」に係る発明について記載するものであるが、その第2頁左上欄12〜18行には、「本発明の湿布剤用基剤は、セルロース誘導体、ポリアクリル酸ナトリウム、ゼラチン、多価アルコールおよび水を均一に練合したことを特徴とするものである。セルロース誘導体としてはメチルセルロースあるいはカルボキシメチルセルロースナトリウムを使用することができる。・・2種のセルロース誘導体を併用した場合は、得られる基剤の性質にあまり顕著な変化は認められないが、・・」と記載されており、カルボキシメチルセルロースナトリウムを水と均一に練合したものが基剤として使用されることが記載されているのであるから、当初明細書の実施例1に記載されたカルボキシメチルセルロースナトリウムが保水性基剤であることも明らかなことである。
このように、ポリアクリル酸ナトリウム、ゼラチン-ジアルデヒド澱粉付加物、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム等はいずれも「保水性基剤」であり、これら3種類もの保水性基剤が本件発明の基剤として使用できることが記載されているのであるから、これらを総称して「保水性基剤」ということが不適切であるということはできず、また、このように複数の異なる基剤が使用し得る以上、本件発明の基剤をこれらに限定しなければならないとする理由も直ちには見当たらない。このため、「保水性基剤」なる用語が当初明細書で使用されていないとしても、同用語を使用することが直ちに明細書の要旨を変更するものであるとはいえない。
ウ.「湿潤剤」という用語の使用について
請求人は、さらに、特許請求の範囲第1項の「湿潤剤」なる用語の使用について、補正前の明細書には同用語の記載はなく、実施例1〜3にはグリセリンが記載されているだけであるから、同用語は自明な事項とはいえないと主張している。(同請求書第14頁17〜27行)
しかしながら、上記甲第7号証の第2頁右上欄9〜11行に、「・・湿布薬の製造に周知のグリセリンまたはプロピレングリコール等の湿潤剤・・」と記載されていることからもわかるように、グリセリンが湿潤剤であることは周知の事実であった。また、例えば、「パップ剤の製造方法」に係わる甲第11号証(特開昭52-38016号公報)の第3頁右下欄8〜13行に「即ち保湿性を有するポリアクリル酸及びそのアルカリ金属塩並びに吸湿性を有するポリビニールピロリドン及びポリビニールアルコールの相乗作用によって一段と優れた保湿性を有するようになり、薬剤中に水分を保持するとともに乾燥を防止している。」と記載されており、本件発明の実施例2等で使用されているポリビニールアルコールも「湿潤剤」としての機能を有することは、当業者に知られていたものと認められる。
そうすると、本件発明において使用されるグリセリン等を「湿潤剤」と記載することには格別の問題は見出せず、また、湿潤剤として他の化合物を適宜使用することにも格別の阻害要因があったとは考えられないから、上記補正は明細書の要旨を変更するものであるということはできない。
エ.ラットマスタード足蹠浮腫法の結果について
請求人は、当初明細書の第1表はゼラチン基剤に「インドメタシン0.125%群」を含む各種抗炎症薬剤を配合したもののラットマスタード足蹠浮腫法に関する結果であるから、これを公告明細書の第1表においてCMCナトリウム塩を用いた結果とする補正は、当初明細書の記載を越えた補正であり、また、対照無貼用群のデータが当初明細書と公告明細書では異なっていると指摘している。(同請求書第15頁4〜21行)
この点について検討すると、当初明細書においては、ゼラチンとCMCナトリウム塩は共にインドメタシンの経皮吸収用基剤として使用し得るものとして記載されており、その作用・効果において格別異なるものと認識しなければならない理由は当初明細書からは窺えない。このため、当初明細書のインドメタシン含有ゼラチン基剤に代えて、公告明細書においてCMCナトリウム塩基剤を使用し、同基剤のラットマスタード足蹠浮腫法の結果(第1表)を記載したとしても、そのこと自体は明細書の要旨を変更するとはいえない。また、対照無貼用群のデータが当初明細書と公告明細書で異なっていることについては、その差異は微差であり、またこのような差異は生物実験において同じ試験を繰り返す際にしばしば経験されることであるうえ、その相違により対照としての位置付けが変更されるというものでもないから、この点で明細書の要旨を変更するということもできない。
オ.ラットカラゲニン浮腫抑制作用について
請求人は、(i)公告明細書第2表のラットカラゲニン浮腫抑制作用の結果は、出願時の明細書には記載がないから同結果の追加は明細書の要旨を変更する(同請求書第15頁22〜24行)、及び(ii)公告明細書第2表に実施例2の効果を追加した補正は、甲第4号証のデータを流用したと推測されるのであり、公告明細書の実施例2の水性パップ剤とは異なる成分(メントール、カンフルを配合していない)、及び異なるインドメタシン配合量のものについてのデータを追加したものであるから、明細書の要旨を変更するものである(同請求書第16頁1行〜第17頁27行)と主張している。
上記(i)について検討する。当初明細書には、「そこで本発明者は鋭意研究を続けた結果、様々な水性パップ剤に粘膜及び皮膚を経て吸収される抗炎症剤を配合し、ラット足蹠浮腫抑制実験でその有効性を、ヒト貼用試験でその安全性を検討したところ優れた抗炎症作用と“カブレ”発症を想定させうる皮膚発赤作用が少ないことを認め本発明を完成した。」(公報第1頁右下欄11〜17行)と記載されており、しかも、その効果を具体的に確認できるラットマスタード足蹠浮腫法による実験結果(第1表)が記載されていること、及び、いずれの実施例においてもメントールを配合した製剤が記載されていることから、本件発明の所期の目的の1つであるメントールを配合したインドメタシンパップ剤の経皮吸収及びそれによる抗炎症作用は、当初明細書において十分な裏付けとなる具体的資料をもって記載されているといえる。そして、そのように、当初明細書の一般的な記載及びそこに記載された具体的な薬理実験から本件発明の目的及び効果が確認できる場合には、ラットカラゲニン浮腫抑制作用という他の実験方法による薬理試験結果を第2表に追記することは、単に本件発明の効果をより一層明らかにするためのものと理解でき、そのようなことは明細書の要旨を変更するものであるとはいうことはできない。
次に、(ii)について検討すると、甲第4号証の参考例1の水性パップ剤及び公告明細書の実施例2の水性パップ剤はともにインドメタシン含有剤に関するものであるが、前者はグリセリン、酸化チタン、ポリビニルアルコール等を含有するゼラチン及びジアルデヒド澱粉基剤に係るものである(第3頁左下欄「参考例1」)のに対して、後者はl-メントール、d、l-カンフル、塩酸ジフェンヒドラミン等を含有するゼラチン及びジアルデヒド澱粉基剤に係るものであって(第4頁右欄5行以下)、両者は製剤処方において明らかに異なるものであり、また、それらの薬理効果について全く同一というわけではないから、公告明細書の第2表中の実施例2の効果は甲第4号証の実験結果であるとは直ちには断定できない。しかも、上記したとおり、本件発明の目的及びその効果は明細書全体の記載及びラットマスタード足蹠浮腫法による試験結果に関する記載から十分に理解し得るのであるから、請求人が問題とする公告明細書の第2表の実施例2の効果は、単に、本件発明の奏する効果を補足的に説明するものとも考えることができるのであり、請求人が主張する点で直ちに明細書の要旨を変更するものであるということはできない。
カ.パップ剤の効果に関する試験について
請求人は、本件当初明細書の第1表及び第2表に記載された薬理試験結果は、実際はメントール、カンフル等を含有していない甲第5号証に記載の発明の実験結果を流用したものであり、当初明細書に記載されている効果は実験に基づかない根拠のないものであると主張している。(同請求書第18頁1行〜第19頁23行)
しかしながら、公告明細書の第1表に記載のインドメタシンのラットマスタード足蹠浮腫法による結果(当初明細書及び最終明細書にも記載されているものである。)は、少なくとも、甲第5号証に記載された第1表の結果と数値が完全に一致するものではないから、本件公告明細書(当初明細書及び最終明細書)の第1表に記載された結果がメントールを配合していない実験における結果であるとは直ちには断定できない。むしろ、本件当初明細書に記載されている実施例1ないし3ではパップ剤基剤中にメントールが配合されており、本件明細書に記載されたパップ剤の薬理効果についての確認試験は、かかるメントールが配合された実施例或いはそれに準じたメントール配合の製剤についてなされるのが極めて自然であるといえるし、又、実際に、メントール配合のパップ剤が優れた効果を奏し得たことは事実であるから、当初明細書の第1表に記載された薬理試験結果はメントール等が配合されたパップ剤についての結果を示すものであると考えることは、不自然なことではないと認められる。
この点について、請求人は甲第6号証を引用して「本件発明者である岩城利一郎氏の証言により、パップ剤の効果についての実験はメントール等を含有しない系についてのみ行われていた」(請求書第19頁15〜19行)と主張している。しかしながら、一般に、発明者がすべての薬理試験を自ら行っていなければならないというものではなく、単に確認のために行う試験は他の研究者が行うこともあること、及び、上記したとおり、本件明細書には、むしろ、基剤にメントール、カンフル等が含まれたパップ剤に係る試験結果が記載されているとするのが合理的であると考えられるから、請求人の主張は採用できない。
2)第二回全文補正について
ア.カルボキシメチルセルロースナトリウムとポリアクリル酸ナトリウムの併用について
請求人は、「カルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウム」からなる2種の「保水性基剤」を併用することは補正前の公告明細書の特許請求の範囲に記載されていないし、又、発明の詳細な説明にも記載されていないから、特許請求の範囲の減縮に該当しないと主張している。(審判請求書第6頁12行〜第7頁1行)
しかしながら、公告明細書の特許請求の範囲の第2項、第3項及び第4項には、カルボキシメチルセルロースナトリウム-水酸化アルミニウム、ゼラチン-ジアルデヒド澱粉付加物及びポリアクリル酸ナトリウムからなる保水性基剤が記載され、これらを本件発明の具体的な保水性基剤とした上で、同範囲の第1項では「保水性基剤」と総括的に記載しているから、上記請求の範囲第1項の「保水性基剤」なる概念には、最終明細書の特許請求の範囲に記載された「カルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウム」という2種の「保水性基剤」の併用も含まれるものである。
そして、このような2種の化合物の併用が実質的に開示されているといえることは、上記2.(2)の「訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否」の項で述べたとおりである。このため、上記2化合物の併用に係る補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものということができ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、上記補正が違法であるとはいえない。
イ.「アルミニウム塩」を必須成分とすることについて
請求人は、「アルミニウム塩」を必須成分とすることは、補正前の特許請求の範囲に記載されておらず、又、実施例1には水酸化アルミニウムと酢酸アルミニウム、実施例3には硫酸アルミニウムの使用が記載されているにすぎず、アルミニウム塩ではない水酸化アルミニウムをも包含する「アルミニウム塩」なる上位概念への補正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当すること、及び、「耐熱成形性を持たせるためにアルミニウム塩を用いている。」(甲第3号証第2頁15行)との効果の追加も、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであることを主張している。(同請求書第7頁2〜19行)
ところで、公告明細書の実施例1には水酸化アルミニウムと酢酸アルミニウムを使用することが、また、実施例3には硫酸アルミニウムを使用することが記載されており、複数のアルミニウム化合物が使用できることが明らかにされているのであるから、他のアルミニウム化合物は使用できないとすべき特段の事情がない限り、上位概念で記載することは必ずしも否定されるべきではない。
そして、かかる「アルミニウム塩」の使用についての本件出願時の技術水準を検討すると、請求人が提示した甲第9号証には「ポリアクリル酸アルカリ金属塩は・・・、多価金属によりポリアクリル酸が架橋されると保型性が向上せしめられる。この発明のパップ剤においてはポリアクリル酸ナトリウムに対して・・・アルカリ土類金属、アルミニウム、鉄、亜鉛の塩を使用することにより優れた保水性、保型性を得ることができる。」(第2頁右下欄7行〜第3頁左上欄2行)と記載されているとおり、この種のパップ剤基剤にアルミニウム塩を配合することは必要に応じて適宜なされていたことであり、また、水酸化アルミニウムは酢酸アルミニウムと一緒に使用されていることから、水酸化アルミニウムを含む「アルミニウム塩」を必須成分として記載することに格別の支障は生じないといえる。
そして、発明の詳細な説明において、「耐熱成形性を持たせるためにアルミニウム塩を用いている。」(甲第3号証第2頁15行)との効果の追記については、本件公告明細書には、本件発明の特徴について「基剤が・・耐熱成型製剤であるため、・・剤型のクズレ等が全くないこと。」(第2頁左欄16〜18行)であると記載され、本件発明の目的の1つが耐熱性製剤を提供することであったことが明記されていること、及び、上記甲第9号証に記載されているとおり、アルミニウムの塩を加えれば保型性が良くなることが公知であったことから、上記記載が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるということはできない。
したがって、特許請求の範囲における、「アルミニウム塩」を必須成分とする補正は特許請求の範囲の減縮に該当するものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ.「メントール」を必須成分とすることについて
請求人は、メントールを必須成分とすることは公告明細書の特許請求の範囲に記載されていない旨指摘し、さらに、最終明細書の第2頁18〜21行における「メントールを加えることにより、共融混合物が生成し、インドメタシンの融点が低下し、溶解性が高まる」(第2頁20〜21行)という作用効果の追加は、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものであると主張し、裁判例(昭和47年10月17日東高民六版・昭和43年(行ケ)22号)にも言及している。(同請求書第7頁20行〜第8頁28行)
そこで、この点について検討すると、公告明細書に記載された実施例1〜3では、いずれの実施例においてもメントールが配合されているから、これを必須成分とすることは特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
そして、メントールを加えるとインドメタシンの溶解性が高まるということは効果についての記載であって、本件公告明細書には、難溶性であることが知られていたインドメタシンであっても実施例に記載された処方例に従って水を含有する水性パップ剤とすれば、経皮的に吸収され、目的とする抗炎症効果が十分に達成し得ることが記載されていたから、則ち、水を含有する基剤においてパップ剤として使用できる程度にインドメタシンを溶解させる等にて使用し得ることが示されていたうえ、本件発明のすべての実施例においてインドメタシンにメントールが配合されていたのであるから、上記補正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
そして、難溶性のインドメタシンであっても水性パップ剤として使用し得るとして記載され、その程度に溶解性を高めることが可能であるという事実が明細書に示されている場合においては、かかる溶解性をもたらすメカニズム,即ち、メントールの添加により共融混合物が生成されてインドメタシンの溶解性が増大するというメカニズムの追加は、単なる理論的考察についての補足説明にすぎない程度のことであるということができ、したがって、上記補正が実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものであるとはいえない。
また、裁判例についての請求人の主張は、本件発明と事例を異にするものであるから、採用できない。
エ.「インドメタシンの血中濃度の推移」の項目等の追加について
請求人は、発明の詳細な説明の項の「(2)インドメタシンの血中濃度の推移」の項目(甲第3号証第3頁下から26〜3行)及びその結果を示す図(甲第3号証第5頁)の追加、及び、「(効果)」の項目(甲第3号証第4頁下から19〜3行)の追加は、法の許容する「明りょうでない記載の釈明」の範囲を逸脱する補正であると主張している。(同請求書第9頁2〜6行)
請求人が指摘する「インドメタシンの血中濃度の推移」についての実験結果は、本件特許出願が拒絶査定された際に引用された刊行物である特開昭53-81616号公報(甲第8号証と同一)に記載された発明に対する本件発明の進歩性を明らかにするために、昭和55年7月6日付けの審判請求理由補充書において記載され、異議申立において、旧特許法第64条の規定により補正されたものである。同実験結果は、インドメタシンに関する軟膏剤とパップ剤のデータを単に比較したものにすぎず、本件特許出願で、その結果を明細書に記載したことが、直ちに「明りょうでない記載の釈明」の範囲を逸脱するものであるとまではいうことができない。
さらに、請求人が指摘する「(効果)」の項における追加事項についても、そこで記載されていることは、パップ剤にしたことにより経皮吸収性が良くなったとか、軟膏剤に比較して使用による汚れが生じないというような、公告明細書に記載または示唆されている作用効果、及び、上記したとおり引用例との差異を明らかにするために主張された作用効果をまとめて記載した程度のものと考えられるので、そのことが直ちに違法とされるようなものではない。
3)当初明細書と最終明細書の比較について
請求人は、請求書の第9頁7行〜第12頁26行において、当初明細書と最終明細書を比較して、上記1)及び2)で検討した事項と同様な点について縷々主張しつつ、公告明細書を最終明細書とする補正は、当初明細書に記載されていないことを追加する補正であり、明細書の要旨を変更する補正であると主張している(請求書第9頁16〜18行)。
しかしながら、旧特許法第64条第1項にいう「願書に添付した明細書又は図面」とは、出願公告をすべき旨の謄本の送達後の当該補正の時点における明細書又は図面と解すべきであって、右補正が同項ただし書の要件を具備するか否かも、その時点における明細書及び図面を基準として判断されるべきものである。」(最高裁昭63(行ツ)86号、平3・9・17、判例時報1400号第115〜117頁)から、請求人の上記主張については重複して検討する必要はないものである。

(3)無効理由4について
上記5.(2)1)で述べたとおり、第一回の全文補正は明細書の要旨を変更するものとはいえないから適法な補正であり、又、第二回の全文補正は上記5.(2)2)で述べたとおり、旧特許法第64条に規定する要件を満たしているから当該補正は適法にされたものであるから、本件特許出願は昭和53年11月2日にされたものである。
そこで、先ず、請求人が上記3.(1)エ、で主張する無効理由4について検討する。
1)明細書の記載要件について
ア.請求人は、特許請求の範囲において「水とを配合した」点を構成要件として追加したこと、及び発明の詳細な説明において保水量の範囲を30〜80%にしたことについて、「公告明細書によれば水性パップ剤基剤中に多量の水(全体重量50〜80%)を含有させることによって初めてインドメタシンの経皮吸収作用と湿布効果を相加させる目的が達せられるものと理解できる」(審判請求書第29頁2〜5行)のであるから、「その上限・下限の開示が不可決であるにもかかわらず、特許請求の範囲にそれらの数値的限定が示されていないばかりか、実施例その他にも保水量30〜50重量%の場合の配合水量に関して一切記載されていない点で、特許法第36条第4項の条件を充たしているものとはいい難く、特許法第123条第1項第3号の規定に該当する」(同請求書第29頁6〜10行)と主張している。
そこで、上記点について検討すると、請求人が提示した甲第14号証には「外用剤経皮吸収に水分が強く関与するという報告1)もあり、高含水量のパップ剤が多数市販されるようになった。」(第127頁左欄下から3行〜右欄第1行)と記載されているとおり、通常、かなりの水がパップ剤に含有されていることは当業者にとって常識ともいえる事柄であった。また、市販されているパップ剤の水分含有率については、同号証の「各社パップ剤の水分含有率、ヒト貼用時の蒸発量と貼用後の残存量」と題する表1(第128頁)から、「14.0±1.0」〜「54.6±0.8」の範囲にあることが明らかであり、さらに、「以上より、水分の経時的保有と蒸発量が一定でかつ1時間に最低約1gの蒸発量を有するパップ剤が経時的に湿布効果を示しているとすれば、これに適合するのはR-AS、Z-RP、S-SP,P-PSおよびP-PLの5種であると考察できる。」(第129頁右欄4〜9行)と記載されているから、湿布効果を発揮し得るものとして適当な市販品が5種あり、その中で水分含有率が最も低いものはP-PLで、その水分含有率は33.6±1.3(表1)であることがわかる。以上のことから、パップ剤において湿布効果が好適に発揮されるためには、水分含有率は30%以上であることは当業者にとり明らかなことであり、このため、本件発明における保水量の下限を30重量%とすることは、かかる公知の技術常識に基づいて当業者ならば無理なく理解でき、また決定し得ることである。一方、上限値については公告明細書に明記されているとおりである(公報第2頁第3欄22〜29行)。
したがって、本件発明において保水量を30〜80%であるとする点については、本件明細書の記載及び上記公知の技術に基づいて判断すれば、請求人が主張する如く、この点で明細書の記載が不備であるということはできない。
さらに、請求人は上限値及び下限値を特許請求の範囲において限定する必要があると主張しているが、本件出願当時、パップ剤にインドメタシンを含有させることは画期的な研究であったということができるのであり(平成7年審判第13936号審決取消訴訟に対する判決書(平成10年(行ケ)第227号審決取消請求事件及び平成10年(行ケ)第397号審決取消請求事件の併合判決:乙第3号証第28頁10〜13行)、しかも、パップ剤にして経皮吸収させることによりインドメタシンの公知の製剤に見られた諸々の欠点を改善し得たという顕著な効果を奏し得たのであるから、そのような本件発明においては、保水量の上限及び下限といった事項を特許請求の範囲に記載しなければならないとすることはできない。
よって、上記点で本件明細書の記載が不備であるとすることはできない。
イ.請求人は、本件発明のように配合成分が公知の原料によって構成される場合には、各有効成分のアルミニウム塩、メントール、グリセリン等について、その配合量を特許請求の範囲に明記すべきであると主張している。(同請求書第29頁11〜20行)
しかしながら、上記したとおり、本件特許発明はパップ剤にインドメタシンを配合した点で画期的な研究であり、あるいは、パップ剤にインドメタシンとメントールを配合した点で画期的な研究であるといえるから、特許請求の範囲において各有効成分の配合量までを特定する必要性は認められない。
ウ.請求人が「『カルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムからなる保水性基材』のような2種の保水性基材の併用は、実施例としての記載がなく、発明の詳細な説明でも具体的に言及していない」と主張する点については(同請求書第29頁21〜25行)、上記2.(2)及び5.(2)2)アで述べたとおり、本件明細書にこれら2種の基剤の併用が実質的に開示されているといえるから、この点で本件明細書は記載が不備であるということはできない。
エ.請求人は、特許請求の範囲の「インドメタシンが保水性基材に対して全体重量の0.1〜1.5重量%配合され、更にメントールが添加されている」との記載は、発明の詳細な説明の「水に溶解しないインドメタシンをメントール及びグリセリンに溶解させ、CMCナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウムからなる保水性基材に分散させ」るとの記載と内容が一致しないと主張している。(同請求書第29頁26行〜第30頁2行)
この点について検討すると、本件特許請求の範囲には、本件発明のパップ剤を構成する各種配合成分が列記されているが、同範囲の記載全体からすると、「更にメントールが添加されている」という記載は各成分の配合順序についてまで規定する経時的な記載というよりは、むしろ、単に配合成分を並べて記載したものと考え得るから、この点で明細書の記載が不備であるということはできない。
オ.請求人は、実施例2はCMCナトリウム塩を用いていないものであるから本件の実施例ではなく、このため「(2)インドメタシンの血中濃度の推移」の項目及びそれについての図は、本件特許とは無関係であると主張している。(請求書第30頁3〜6行)
この点について検討すると、最終明細書の「(2)インドメタシンの血中濃度の推移」の項には、「実施例2に示された発明品と・・・・の軟膏剤を皮膚に塗布した時のインドメタシンの血中濃度の推移について調べた。」(第3頁第1表の下)と記載されており、また、実施例2は「ポリアクリル酸ナトリウム」(保水性基剤)及び「グリセリン」(湿潤剤)を使用し、これにメントール、硫酸アルミニウムを配合し、さらに0.5重量%のインドメタシンを含有させたパップ剤であるから、訂正前の本件特許発明に係る一具体例について記載するものである。ところで、保水性基剤として「ポリアクリル酸ナトリウム」を使用するものは、本件の分割出願(特許第1543282号、特願昭62-214182号、特公平1-24129号公報)との関係で訂正請求された特許請求の範囲には含まれないものとなったが、元々、「ポリアクリル酸ナトリウム」は「CMCナトリウム塩」とともに本件発明の範囲内に含まれていたものであり、両者は共に本件発明の所期の目的を達成し得るものとして認識されているのであるから、例え、「ポリアクリル酸ナトリウム」が本件訂正請求後の発明からは除外されたとしても、これは本件発明が所期の目的・効果を達成し得ることを示す上で依然として意味あるものであり、このため、上記「(2)」の項に記載された事実、及びそれを示す図面が「ポリアクリル酸ナトリウム」に関するものであったとしても、本件特許発明の奏する効果を明らかにするものとして必要な記載である。このため、請求人が主張する如く、この点で明細書の記載が不備であるということは到底できない。
カ.請求人は、「(3)ラットカラゲニン浮腫抑制作用」の項で用いられている参考例のパップ剤はその構成が不明であり、本件発明のパップ剤の実施例であるとはいえないと主張して、明細書の記載が不備であると主張している。(請求書第30頁7〜16行)
そこで、この点について検討すると、ラットカラゲニン浮腫抑制作用は公告明細書及び最終明細書のいずれにおいても第2表に記載されており、又、同表における数値が一致することから、最終明細書の参考例は公告明細書の実施例2に対応するものであることが理解でき、それ故、前者の参考例はゼラチン-ジアルデヒド澱粉付加物を保水性基剤とするパップ剤の薬理効果に関するものであることが明らかである。ところで、このゼラチン-ジアルデヒド澱粉付加物に関する実施例は、本件発明の進歩性等とは無関係に最終明細書からは削除されたため、「参考例」として記載されたものである。そのため,「参考例」という記述について請求人が主張するようなやや不明瞭な点があるとしても、上記記述は本件発明を理解する際に意義あるものであるから、請求人が主張するように本件明細書の記載が不備であるとまではいうことはできない。
以上のとおりであるから、最終明細書が特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていないということはできない。
2)進歩性について
請求人は、「以上要するに、本件発明(最終明細書)の上記構成要件1〜6において、いわゆる保水性基剤や湿潤剤等の混合基剤(構成要件1及び2)に薬効成分を加えた(構成要件5)パップ剤に関しては、甲第8号証を除く甲第7号証〜甲第13号証に記載されており、内服によるインドメタシンの副作用を回避して経皮吸収の外用剤に適用することは甲第8号証に明確に開示されている。また、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び/又はポリアクリル酸ナトリウムからなる保水性基剤(構成要件1)と、グリセリンからなる湿潤剤(構成要件2)と、メントール(構成要件6)の使用と、その量的範囲については通常のパップ剤基剤の配合成分として慣用されていたものであり、構成要件3のアルミニウム塩の使用及びその作用効果については甲第9号証に記載されて公知のものであった。そして、インドメタシン含有量0.1〜1.5重量%(構成要件5)は通常のパップ剤における薬効成分の使用量の範囲に入る程度のもの(必要ならば、甲第8号証を参照)といえるから、これら甲第7号証〜甲第13号証の組み合わせによって、当業者であれば本件発明を即座に実現できたものといわざるを得ない。しかも、その効果についても、インドメタシンの経皮吸収性と水性パップ剤の湿布効果との相加作用が期待できることは余すことなく開示されているのである。」(請求書第32頁6〜22行)と主張しており、請求人は特定の甲号証を主引例とすることなく、上記甲各号証の組み合わせについて直ちに論じている。
そこで、上記請求人の主張について検討すると、インドメタシンをパップ剤に配合することについては、請求人の提示するいずれの甲号証にも何も記載されていないし、また、インドメタシンをパップ剤とすることの示唆がないのであるから、上記各甲号証に記載の公知技術を組み合わせる動機も存在していなかったといえる。
一方、本件発明のインドメタシン配合パップ剤は、第1表に記載されたラットマスタード足蹠浮腫法による抗炎症作用効果についての試験結果によれば、他の抗炎症剤を配合したものに比較して、少なくとも貼用後6時間まで最大の抑制効果を発揮しており、他の抗炎症剤に比較して抜群に優れた経皮吸収による抗炎症作用を示していることが明らかである。
また、インドメタシンの血中濃度の推移に関する測定結果によれば(最終明細書第3頁及び第5頁の「(2)インドメタシンの血中濃度の推移」の項目及び図を参照)、実施例2に記載の「ポリアクリル酸ナトリウム」を保水性基剤とするパップ剤は、甲第8号証に記載された、本件と同じ経皮吸収剤である軟膏剤と比較すると、6時間経過後においてはより優れた持続効果を示すことが明らかであるから、本件発明はこの点においても優れた効果を奏し得たものである。この点について、請求人は実施例2は本件の実施例ではないから、これらの効果を参酌することはできないとも主張する。(同請求書第32頁23〜26行)しかしながら、最終明細書の実施例2に記載の「ポリアクリル酸ナトリウム」基剤は本件の分割出願との関係で、訂正請求された特許請求の範囲から削除され、また、同基剤を使用するものは参考例1と訂正されているものの、「ポリアクリル酸ナトリウム」基剤は、「カルボキシメチルセルロースナトリウム塩」等とともに使用される基剤として公告明細書に記載されていたものであり、それらの基剤を代表して最終明細書に記載の血中濃度推移試験で使用されたものであるから、「ポリアクリル酸ナトリウム」基剤で得られると同様な効果は他の基剤についても敷衍できると考えられるものであり、血中濃度の推移に関する効果は参酌し得るものである。
更に、本件発明はインドメタシンをパップ剤という特定の剤形にしたことにより始めて、打撲、捻挫、関節炎等の消炎、鎮痛の緩解において大きな比重を占める湿布効果が得られることはいうまでもないことであり、このことは「ラットカラゲニン浮腫抑制作用」の試験結果から明らかである。
以上のとおりであるから、本件発明は顕著な効果を奏し得たものといえる。
したがって、甲第7号証ないし甲第16号証に記載された発明に基づいて、当業者が本件発明を容易にすることができたとすることはできない。

(4)無効理由1〜3について
無効理由1〜3の前提となる「第一回全文補正及び/又は第二回全文補正は補正の要件を満たさない」とする請求人の主張は上記したとおり認められるものではないので、無効理由1〜3についての請求人の主張についても採用できないものである。

6.むすび
したがって、審判請求人が主張する無効理由及び証拠方法によっては、本件特許を無効にすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
経皮吸収性抗炎症剤配合のパップ剤
(57)【特許請求の範囲】
(1)カルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムからなる保水性基剤、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる保水性基剤と、グリセリンからなる湿潤剤と、アルミニウム塩と、水とを配合したものからなり、インドメタシンが保水性基剤に対して全体重量の0.1〜1.5重量%配合され、更にメントールが添加されていることを特徴とする経皮吸収性抗炎症剤配合のパップ剤。
【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は、消炎鎮痛剤に関し、薬効成分としてインドメタシンを溶解し基剤中に分散させたパップ剤に関するものである。
インドメタシンは、1-(p-chlorobenzoyl)-5-methoxy-2-methyl-indole-3-acetic acid(分子式:C19H16ClNO4,分子量:357.79)の化学名を有するすぐれた非ステロイド性消炎鎮痛剤である。インドメタシンは、水及び通常の溶媒に対して溶けにくいという性質を持っている。
(従来技術)
従来市場に出ている消炎鎮痛剤パップ剤としては、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール等のサリチル酸系薬剤を主薬とするものが知られている。一方、消炎鎮痛軟膏剤として、インドメタシンと、グリコール類、低級アルコール及び水の混合物からなる媒体に溶解させ、ゲル化してなる消炎鎮痛軟膏が開発され知られている(特開昭53-81616号)。
(発明が解決しようとする問題点)
しかしながら、かかる従来のパップ剤及びインドメタシン配合の軟膏剤には次のような欠点があった。
a サリチル酸系パップ剤の場合
抗炎症作用が期待されるサリチル酸系薬剤は、皮膚への刺激が強いために適用や連用は好ましくなかった。
又エステルであるために経時変化が著しく、薬効の長期安定性に欠ける欠点があった。
b インドメタシン配合の軟膏剤の場合
▲1▼インドメタシンの溶解手段として多量のエタノール及びプロピレングリコールを使用しているために、皮膚への刺激が強く、カブレ等の発症がある〔高野正彦著:薬局 Vol 24, No.4 (1973年)〕。
▲2▼ゲル軟膏の場合は、その都度良くすりこむことが必要なために使用に際して手間がかかる。
▲3▼軟膏であるため塗りむらが生じ易く、投与量を一定に調整しにくい。
▲4▼塗布した後に衣服を着用した場合、衣服にゲル剤と匂い及び色(黄色)が付着してしまう欠点がある。そこで、上記サリチル酸系パップ剤及びインドメタシン軟膏剤の欠点を克服した薬剤の開発が望まれていた。
(問題点を解決するための手段)
本発明は、かかる従来技術の欠点に鑑み、主薬や基剤の皮膚への刺激作用が弱く、主薬の経時変化が少なく、又皮膚への刺激性の強い溶解剤を含有せず、投与量の調整が容易である消炎鎮痛剤を提供することを目的として鋭意検討した結果、水に溶解しないインドメタシンをメントール及びグリセリンに溶解させ、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムからなる保水性基剤、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる保水性基剤に分散させ、水とアルミニウム塩で反応させたパップ剤を発明した。
このインドメタシン配合のパップ剤は、サリチル酸系パップ剤及びインドメタシン軟膏剤の欠点を克服し得た新規な発明であり、実用上大きな価値を有するものである。
すなわち、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムからなる保水性基剤、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる保水性基剤と、グリセリンからなる湿潤剤と、アルミニウム塩と、水とを配合したものからなり、インドメタシンが保水性基剤に対して全体重量の0.1〜1.5重量%配合され、更にメントールが添加されたインドメタシン配合のパップ剤を発明した。
保水性基剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムとの併用、又はカルボキシメチルセルロースナトリウム単独を採用したが、これは他の基剤に比較して増粘性や保水性に優れ、且つ粘着性をも有するためである。
カルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムからなる保水性基剤、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる保水性基剤は、基剤全体に対して70〜80重量%まで水分を保持し得る性格を有するものであり、これらを適宜配合することにより水分を30〜80重量%含水させたパップ剤を作成することができる。
保水性基剤と水分量のバランスがくずれると離水し、水分が支持体である不織布等へ移行し、成型性を保ち得なくなる。
カルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムからなる保水性基剤、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる保水性基剤にゼラチン等を併用して保水させるようにしてもよい。カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウムに耐熱成形性を持たせるためにアルミニウム塩を用いている。アルミニウム塩としては、水酸化アルミニウム、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等を単独または混合して用いる。
メントールを配合したが、これはインドメタシンを溶解することが出来ると共に、インドメタシンの経皮吸収を助長する作用も有するためである。
メントールを加えることにより、共融混合物が生成し、インドメタシンの融点が低下し、溶解性が高まることにより皮膚への吸収性も増大する。
湿潤剤としてグリセリンを採用したが、グリセリンは低刺激性であると共に、インドメタシンの溶解を助長する効果を有するためである。
グリセリンの配合量は、保水性基剤の配合量との関係である程度定まる。
尚、メントールにカンフル及び/又は抗ヒスタミン剤として基剤からくるかぶれを防ぐ為のジフェンヒドラミンを添加すると更にインドメタシンの溶解性がよくなる。
又この他にpH調整剤、防腐剤、色素、キレート剤、乳化剤、酸化防止剤等を添加しても差し支えない。
次に本発明の水性パップ剤の製造法を実施例にて説明する。
実施例1
カルボキシメチルセルロース(以下CMCと略称する)ナトリウム塩4部をグリセリン5部に水66.7部を加えて溶液状とする。
この中にdl-カンフル0.3部、チモール0.1部、1-メントール0.3部、ポリビニルアルコール0.5部を添加し均一に撹拌混合する。
これにインドメタシン0.125部を加え分散させる。次いで水酸化アルミニウム1部をグリセリン10部に分散した液と酢酸アルミニウム2部を水10部に溶解した水溶液との混合液を上記CMCナトリウム塩溶液中に攪拌下に添加し混合するとペースト状のパップ剤を得る。
参考例1
ポリアクリル酸ナトリウム 4.0g
酸化亜鉛 1.0g
硫酸アルミニウム 1.0g
グリセリン 25.0g
ゼラチン 4.0g
インドメタシン 0.5g
dl-カンフル 0.2g
dl-メントール 0.3g
ジフェンヒドラミン 0.1g
水 63.9g
▲1▼ グリセリンにポリアクリル酸ナトリウム、酸化亜鉛をよく混合する。
▲2▼ ゼラチンを水で加温溶解する。
▲3▼ ▲1▼に▲2▼を加え高速攪拌して混合する。
▲4▼ ▲3▼の混合物にインドメタシン、dl-カンフル、dl-メントール、ジフェンヒドラミンを添加する。
▲5▼ 残りの水に硫酸アルミニウムを溶解する。
▲6▼ ▲4▼に▲5▼を加え均一に攪拌混合すると水性パップ剤が得られる。
以下に本発明の水性パップ剤の効果の詳細を記す。
(1)ラットマスタード足蹠浮腫法
Wistar系雄性ラット(体重120〜160g)を1群6匹として用いた。起炎剤は、マスタードを用時1%トラガント生理食塩水に5%懸濁液として用いた。
ラットの右後肢足蹠の容積を測定した後、5%マスタード0.1mlを足蹠皮下注射し、直ちに実施例1の水性パップ剤(4.5cm×5.0cm)を伸縮包帯およびサージカルテープにて貼附固定し、注射後1,3,6時間目に足蹠容積を測定した。
なお、コントロールはパップ剤を貼附しない群とした。
結果を第1表に示す。

(2)インドメタシンの血中濃度の推移
参考例1に示された発明品と特開昭53-81616号の公報に記載された実施例-1の軟膏剤を皮膚に塗布した時のインドメタシンの血中濃度の推移について調べた。
SD系雄性ラット(体重210〜260g)を一群3匹として用い、ラット背部被毛を電気バリカン及び電気カミソリにて剪毛する。
本発明のパップ剤5cm×7cm(膏体3g:インドメタシンとして15mgに相当する)をラットの背部に伸縮性包帯で巻き付るようにして貼り、サージカルテープにて固定する。
軟膏剤1.5g(インドメタシン15mgに相当する)をラットの背部の5cm×7cmに塗布する。それぞれ1,2,4,6及び8時間後に頚静脈から採血し、遠心分離により血清を分離し、測定試料とした。
インドメタシンの定量
血清1.0mlを採血し、pH5.0のクエン酸緩衝液1.0mlを加え、次いでジクロルエタン5.0mlを加え15分振とうした。
ジクロルエタン4.0mlを採取し、減圧下留去後、残留物にn-プロピルアイオダイドを加え、n-プロピルエステル体とし、ガスクロマトグラフィーで定量した。
ガスクロマトグラフィーの条件は以下の通りである。
カラム:3% SE54chromosorb W(80〜100メッシュ)
長 さ:2m
温 度:250℃
流 速:60ml/min、窒素ガス
結果を図に示す。
図に示されるように血中濃度は6時間経過後より参考例1に示された発明品の方が軟膏剤よりも優れていることが判明した。8時間経過後においては約25%の優位性が認められた。
なお、引用軟膏剤がエタノールを含有しているため、密封包帯法(ODT)が禁止されていることから、現実に即した投与方法を採用する目的で軟膏剤は単純塗布を行った。
(3)ラットカラゲニン浮腫抑制作用
SD系雄性ラット(体重180〜200g)を一群5〜8匹として用いた。ラット右後足蹠皮下に1%λ-カラゲニン0.1mlを皮下注射後、直ちに参考例の水性パップ剤(3cm×3cm)を伸縮性包帯およびサージカルテープにて貼附固定し、3時間貼付後パップ剤を除去し、3、4および5時間後の足容積を測定した。
なお、コントロールはパップ剤を貼付しない群とし、対照とし参考例のパップ剤よりインドメタシンを除いたパップ剤をも測定した。
結果を第2表に示した。

第2表の結果より明らかな如く、水性パップ剤のみにも消炎効果が認められるものの、インドメタシンを含有した参考例のパップ剤にはインドメタシンの効果と保水性基剤の湿布効果が相加的に表れていることが認められる。
また、ヒト貼用試験では実施例1および参考例1の製剤においてほとんど“カユミ”および皮膚発赤は認められなかった。
(効 果)
本発明によるインドメタシン配合のパップ剤は、既知のインドメタシン含有軟膏が皮膚刺激性を有するエタノール、プロピレングリコールによりインドメタシンを溶解させていたために皮膚に刺激を与えたが、本発明のパップ剤ではこれらを用いずにメントール及びグリセリンを採用し、保水性基剤に分散させたので皮膚への刺激が少なく、さらに、インドメタシンの皮膚への吸収性も良い。
また、インドメタシンを軟膏とせずパップ剤化したので、患部への投与量を一定に調整することが容易であり、皮膚にすり込む必要がないので簡単便利である。
インドメタシン含有パップ剤は、インドメタシン軟膏を塗布した場合に比べ衣服が汚れずに済む。
本発明における主薬のインドメタシンは、従来のパップ剤のサリチル酸系薬剤に比べ、皮膚に貼付した時に刺激を与えることが少なく、非揮散性のため長時間にわたり薬効を持続することができるとともに薬剤の経時安定性にすぐれる。
保水性基剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムとの併用、又はカルボキシメチルセルロースナトリウム単独を採用し、更にアルミニウム塩を用いたので従来のパップ剤に比較して耐熱成型性に優れると共に含水量を増加することができ、また粘着性にすぐれているため皮膚に安定的に薬物を吸収させることができる。
その結果、インドメタシンの消炎鎮痛効果として、水分による湿布効果により打撲、捻挫、関節痛、筋肉痛に加えさらに、インドメタシンの消炎鎮痛効果として変形性関節症、腱・腱鞘炎等への適応の拡大も期待される。
【図面の簡単な説明】
図は、参考例1と軟膏剤との血中濃度の推移を示すグラフである。
【図面】

 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2004-01-16 
結審通知日 2004-01-21 
審決日 2004-02-04 
出願番号 特願昭53-134483
審決分類 P 1 112・ 113- YA (A61K)
P 1 112・ 121- YA (A61K)
P 1 112・ 532- YA (A61K)
P 1 112・ 531- YA (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 角 昭久  
特許庁審判長 眞壽田 順啓
特許庁審判官 横尾 俊一
竹林 則幸
松浦 新司
深津 弘
登録日 1988-12-14 
登録番号 特許第1469541号(P1469541)
発明の名称 経皮吸収性抗炎症剤配合のパツプ剤  
代理人 稲木 次之  
代理人 稲木 次之  
代理人 友松 英爾  
代理人 友松 英爾  
代理人 押本 泰彦  
代理人 押本 泰彦  
代理人 友松 英爾  
代理人 吉川 正伸  
代理人 稲木 次之  
代理人 稲木 次之  
代理人 岡本 利郎  
代理人 岡本 利郎  
代理人 岡本 利郎  
代理人 稲木 次之  
代理人 友松 英爾  
代理人 吉川 正伸  
代理人 押本 泰彦  
代理人 押本 泰彦  
代理人 稲木 次之  
代理人 友松 英爾  
代理人 押本 泰彦  
代理人 押本 泰彦  
代理人 吉川 正伸  
代理人 岡本 利郎  
代理人 押本 泰彦  
代理人 吉川 正伸  
代理人 友松 英爾  
代理人 岡本 利郎  
代理人 吉川 正伸  
代理人 吉川 正伸  
代理人 三和 晴子  
代理人 岡本 利郎  
代理人 友松 英爾  
代理人 吉川 正伸  
代理人 稲木 次之  
代理人 岡本 利郎  
代理人 渡辺 望稔  
代理人 高見 憲  
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