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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B43L
管理番号 1097582
審判番号 不服2002-7169  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-06-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-04-25 
確定日 2004-05-31 
事件の表示 平成 7年特許願第346165号「塗布具の転写ヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 6月17日出願公開、特開平 9-156298〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年12月12日に出願されたものであって、その請求項1に係る発明は、平成12年10月5日付け手続補正書によって補正された内容を含む明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。ただし、【請求項1】には「上記塗布具の先端に配設される」とあるものの、それ以前に「塗布具」についての記載がないため、「上記」との文言はないものとして認定する。
「【請求項1】 塗布具ケース、転写テープ送出巻回機構及びこれらとは別体の転写ヘッドから構成され、この塗布具ケース内で、転写テープ送出巻回機構における互に噛合する供給ギアと巻取りギアとの駆動により、塗布具の先端に配設される塗布具ケース及び転写テープ送出巻回機構とは別体の転写ヘッドに対して、供給リールカラーに巻回される未使用の糊或は修正塗膜転写テープを送出し巻取りリールカラーに巻回してなる塗布具であって、上記塗布具ケース及び転写テープ送出巻回機構とは別体の転写ヘッドの塗布具ケースより突出した部分を透明にしてなる塗布具の転写ヘッド。」
なお、本審決では、「発明を特定するための事項」という意味で、「構成」という用語を用いる。

2.刊行物等
これに対して、当審における拒絶の理由で引用した、実願平5-24704号(実開平6-78349号)のCD-ROM(以下、「刊行物」という。)、特公昭56-6880号公報(以下、「周知例1」という。)、実願昭58-26624号(実開昭59-131897号)のマイクロフィルム(以下、「周知例2」という。)、実願昭60-60099号(実開昭61-175465号)のマイクロフィルム(以下、「周知例3」という。)、には、それぞれ以下の記載又は図示がある(記載中「・・・」は中略を示す。)。

[刊行物]
ア.「修正塗料転写テープ供給リールをゴム等の弾性材からなるOリングを介して保持して構成される供給リールギアの裏面に、一方向逆回転防止爪を設けてなる字消し具において、容器本体外から巻き取り操作ができるように、操作部を露出する巻戻しボタンを、その巻戻しボタンの操作部の下部に設けた突起をもって修正塗料転写テープ供給リールのカラー部分に係止してなる構造。」(第2頁第1欄、実用新案登録請求の範囲【請求項1】)

イ.「この考案は、印刷物の修正に用い、特に修正塗料転写テープの塗料を転写することにより修正を行う字消し具の構造の改良に関する。」(段落【0001】)

ウ.「供給リールに巻回される修正塗料転写テープが余分にヘッド方向に送り出されてしまっても、容器本体外に露出する巻戻しボタンを逆回転方向に回転させることにより、上記修正塗料転写テープの供給リールは、容器本体内面から立設される供給リール軸において回転自在に軸着される供給リールギアに対してゴム等の弾性材からなるOリングを介して取り付けてなるものであるから、供給リール自体は、供給リールを保持する供給リールギアの裏面に設けられた一方向逆回転防止爪と、容器本体内面に突設された突起との係合によって回転することがなく固定されるものとなるので、この供給リールを保持する供給リールギアと噛合する巻き取りリールギアは回転することがなく、使用済みの修正塗料転写テープがヘッド方向に送り出されることもないものであり、その上Oリングと一体となって逆回転方向に摺動するものとなるので、余分にヘッド方向に送出された修正塗料転写テープを再び供給リール外周に巻回することができる。」(段落【0009】)

エ.「また、未使用の修正塗料転写テープを巻回する供給リール及び使用済みの修正塗料転写テープを巻き取る巻取りリールは、容器本体内において回転自在に軸着されているものであるが、この二分割される容器本体内において、一方の容器本体の内面に立設され、他方の容器本体の内面に向い延長され、先端が供給リールギアの対向する表面に近接して設けられる離隔杆を有してなるから、熱や応力によって容器本体が変形しようとすると、この離隔杆が容器本体内において適度な空間を確保するものとなるので、回転自在に軸着される供給リール及び巻取りリールの回転は確実に維持されるものとなり、修正塗料転写テープによる修正作業を円滑に行うことができる。」(段落【0010】)

オ.「この考案を図に示す実施例により更に説明する。(1)は、この考案の実施例である字消し具であり、この字消し具(1)は、容器本体(2)内において、未使用の修正塗料転写テープ(3)を巻回する供給リール軸(5)に回転自在に軸着される供給リールギア(6)に保持される供給リール(4)と、この供給リール(4)に巻回された修正塗料転写テープ(3)を、容器本体(2)先端に固持されるヘッド(7)を介して使用済みの修正塗料転写テープ(3)として巻き取り、上記供給リール軸(5)に軸着される供給リールギア(6)と噛合してなるものである。」(段落【0011】)

カ.「そして、供給リール軸(5)に回転自在に軸着され、未使用の修正塗料転写テープ(3)を巻回してなる供給リール(4)を保持してなる供給リールギア(6)の裏面には、容器本体(2)の内面に突設した環状の突起(11)に対して係合自在となり、その先端を供給回転方向に斜面を有する一方向逆回転防止爪(12)を一体に設けると共に、更に、容器本体(2)外から巻き取り操作ができるように操作部(14)を露出する巻戻しボタン(13)を、その巻戻しボタン(13)の操作部(14)の下部に一体に成形された突起(15)を以て、修正塗料転写テープ(3)の供給リール(4)のカラー(9)部分に一体に係止すると共に、上記修正塗料転写テープ(3)の供給リール(4)を容器本体(2)内面から立設される供給リール軸(5)に軸着される供給リールギア(6)に対してゴム等の弾性材からなるOリング(16)を介して取り付けてなるものである。」(段落【0012】)

キ.「また、二分割される容器本体(2)内において、一方の容器本体(2’)の内面に立設され、他方の容器本体(2”)の内面に向い延長され、先端が供給リールギア(6)の対向する表面(8)に近接する離隔杆(19)を有してなるものである。」(段落【0013】)

ク.【図5】には、下側の容器本体2の、ヘッド7を保持する軸と、供給リール軸5との間に、別の軸(以下、「軸A」という。)が設けられること、下部にギア(以下、「ギアA」という。)を備えるカラー形状の部材(以下、「カラーA」という。)が、軸Aに保持されること、カラーAに転写テープ3の一端が保持され、カラー部分9に転写テープの他端が保持されること、ヘッド7は、容器本体2、供給リールギア6、カラー部分9及びカラーAとは別体のものであることが示されている。

ケ.【図1】及び【図3】には、ヘッド7が容器本体2から突出した部分を有することが示されている。

[周知例1]
コ.「本発明は、紙面の線、文字等を、局部的に消しゴムによつて消す際に使用する金属製の字消し板に関する。周知のように、字消し板は薄いほど精密に消すことができる。そこで金属製の薄板が使用されるが、・・・金属板であるから、字消し孔の部分は紙面を透視できるが、その周辺の隠れた部分は見えない。このため、こみ入つた図面の中の線等を限られた一部分だけ消すような場合・・・錯誤により、消すべきでない部分を消してしまうことが間々ある。・・・この問題は、字消し板を透明材、例えば、透明なセルロイド等によつて製作すればよい」(第1欄第23行〜第2欄第5行)

[周知例2]
サ.「本考案はモータの駆動によって消ゴムを回転させ消字動作を簡便化せしめる電動消ゴムに係り、消字動作時の削り屑の飛散を防止する為の屑よけカバーに関するものである。」(明細書第1頁第11行〜第14行)

シ.「尚前記屑よけカバー(11)は前記消ゴムの周囲の一部分のみを覆うものであるから消字作業を妨げることはなく、しかも透明であるから消字状態も確認できて非常に都合が良い。」(明細書第4頁第14行〜第17行)

[周知例3]
ス.「本発明は一般に使用されるゴム印に関し、とくにかたより,かたむき,位置づれ等の問題を起こさず捺印ができるゴム印に関する。」(明細書第1頁下から第7行〜下から第5行)

セ.「上述した従来のゴム印はゴム部,柄部とも不透明であり捺印を行なう際直接インクをつけた印面を見ることができず、捺印したい場所よりズレたりかたむいたりし、とくに数個のゴム印で数文字を順序よく捺印する場合不揃いが出る欠点があった。」(明細書第2頁第2行〜第7行)

ソ.「ゴム印1は文字,記号,数字等を彫った透明のゴム2を同じく透明の材料例えばプラスチックを用いた柄3に透明な接着剤を用いてハリツケあるいは圧入等により、とりつけ一体化しておりどの方向からも透視できる。・・・本考案は構成部材を透明にすることにより捺印文字の位置づれ,かたむきおよび数文字を続けて捺印する場合間隔を柄およびゴムを透視して確認しながら正確に捺印できる効果があり」(明細書第2頁第14行〜第3頁第4行)

3.対比・判断
(1)刊行物記載の発明の認定
上記記載ウ乃至カ並びにクからみて、ギアAは巻き取りリールギアであり、供給リールギア6、カラー部分9、ギアA及びカラーAが、修正塗料転写テープ3の送出巻回機構を構成しているといえる。
上記記載ア〜ケを含む明細書及び図面によると、刊行物には、下記の発明が記載されている。
「容器本体2(2’,2”)、修正塗料転写テープ3の送出巻回機構及びこれらとは別体のヘッド7から構成され、この容器本体2(2’,2”)内で、修正塗料転写テープ3の送出巻回機構における互に噛合する供給リールギア6とギアAとの駆動により、字消し具1の先端に配設される容器本体2(2’,2”)及び修正塗料転写テープ3の送出巻回機構とは別体の転写ヘッド7に対して、カラー部分9に巻回される未使用の修正塗料転写テープ3を送出しカラーAに巻回してなる字消し具1であって、上記容器本体2(2’,2”)及び修正塗料転写テープ3の送出巻回機構とは別体の転写ヘッド7が容器本体2(2’,2”)より突出した部分を有する字消し具1のヘッド7。」(以下、「刊行物発明」という。)

(2)本願発明と刊行物発明との一致点及び相違点
本願発明と刊行物発明とを比較する。
刊行物発明の「容器本体2(2’,2”)」、「修正塗料転写テープ3」、「修正塗料転写テープ3の送出巻回機構」、「ヘッド7」、「供給リールギア6」、「ギアA」、「字消し具1」、「カラー部分9」、「カラーA」は、それぞれ本願発明の「塗布具ケース」、「転写テープ」、「転写テープの送出巻回機構」、「転写ヘッド」、「供給ギア」、「巻取りギア」、「塗布具」、「供給リールカラー」、「巻取りリールカラー」に相当する。
刊行物発明における「上記容器本体2(2’,2”)及び修正塗料転写テープ3の送出巻回機構とは別体の転写ヘッド7が容器本体2(2’,2”)より突出した部分を有する」と、本願発明の「上記塗布具ケース及び転写テープ送出巻回機構とは別体の転写ヘッドの塗布具ケースより突出した部分を透明にしてなる」は、上記塗布具ケース及び転写テープ送出巻回機構とは別体の転写ヘッドが、塗布具ケースより突出した部分を有する点で共通する。
したがって、両者は、
「塗布具ケース、転写テープ送出巻回機構及びこれらとは別体の転写ヘッドから構成され、この塗布具ケース内で、転写テープ送出巻回機構における互に噛合する供給ギアと巻取りギアとの駆動により、塗布具の先端に配設される塗布具ケース及び転写テープ送出巻回機構とは別体の転写ヘッドに対して、供給リールカラーに巻回される未使用の糊或は修正塗膜転写テープを送出し巻取りリールカラーに巻回してなる塗布具であって、上記塗布具ケース及び転写テープ送出巻回機構とは別体の転写ヘッドが、塗布具ケースより突出した部分を有する塗布具の転写ヘッド。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
転写ヘッドの塗布具ケースより突出した部分について、本願発明では、透明にしてなるのに対して、刊行物発明では、透明であるかどうか明らかではない点。

(3)本願発明と刊行物発明との相違点の判断
転写ヘッドの塗布具ケースより突出した部分が非透明であれば、該突出部により視界が遮られ、紙に対する位置決めが困難となることは、当業者に自明である。
一方、紙に対する作業を行う各種の文房具において、紙に対する作業位置の位置決めを容易とするために、視界を遮る原因となる部材を透明とすることは、本件出願前周知である(例えば、周知例1乃至3、実願平5-60724号(実開平7-26177号)のCD-ROM、実願平1-79650号(実開平3-19698号)のマイクロフィルム等を参照。)。
そして、刊行物発明と前記周知の技術は、紙に対する作業を行う文房具という、同一の技術分野に属する。
してみると、刊行物発明において、視界を遮る原因となっている転写ヘッドの塗布具ケースより突出した部分について、前記周知の技術を採用することは、それによって転写ヘッドの機能が損なわれる訳でなく、採用することに阻害要因はないから、相違点は、当業者が容易に想到し得ることである。

(4)本願発明の進歩性の判断
相違点は、当業者にとって容易想到であり、相違点に係る構成による格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は、刊行物発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明すなわち本願の請求項1に係る発明は、特許を受けることができないから、本件出願は拒絶されるものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-03-22 
結審通知日 2004-03-30 
審決日 2004-04-12 
出願番号 特願平7-346165
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B43L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三輪 学木村 史郎  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 中村 圭伸
藤井 靖子
発明の名称 塗布具の転写ヘッド  
復代理人 湯浅 正彦  

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