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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20061739 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 (訂正、訂正請求) 取り消して特許、登録 C07H
管理番号 1097618
審判番号 不服2002-17395  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2004-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-09-09 
確定日 2004-06-21 
事件の表示 特許権延長登録願2000-700051拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願については、特許権の存続期間の延長登録をすべきものとする。 特許番号 特許第1221784号 延長の期間 5年 特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容 平成14年12月26日付手続補正書により補正された願書に記載の とおり 
理由 本願に係る特許法第67条第2項の政令で定める処分の対象となった物は、一般名「アジスロマイシン 水和物」である。
一方、本件特許の明細書の特許請求の範囲第2項には、「N-メチル-11-アザ-10-デオキソ-10-ジヒドロエリスロマイシンA・・・から選んだ特許請求の範囲第1項記載の誘導体。」と記載され、引用されている第1項にはエリスロマイシンA誘導体について一般式(1)の記載がある。

原査定の理由は、「本特許権存続期間延長登録願の対象とする特許第1221784号の特許請求の範囲第1項に記載の化合物と、医薬品輸入承認書(2100AMY00049000)に添付された承認申請書の図1の「アジスロマイシン 水和物」とは、第5位、第3位、第13位の置換基の立体配置が異なっており、両者は一致していないから、この出願に係る特許発明の実施には、特許法第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められない。」というものであるが、審判請求人は、上記立体配置の相違は、化合物の相違を意味するものではなく、当業者であれば、両化合物の一般名、化学名、本件明細書の記載、技術常識から両化合物が同一であることが理解可能であるとして、資料1〜12を提出している。

そこで、本件特許に係る化合物と処分の対象となった化合物の同一性について検討するに、本件特許明細書(特公昭58-58357号公報)の第3頁5欄19行〜6欄13行及び第5頁の実施例1の記載によれば、本件特許化合物の1つであるN-メチル-11-アザ-10-デオキソ-10-ジヒドロエリスロマイシンAは、
1)エリスロマイシンAオキシムのベックマン転位
2)ついで得られた生成物の還元によってエリスロマイシン系の15員の半合成抗生物質、即ち11-アザ-10-デオキソ-10-ジヒドロエリスロマイシンAを合成する工程
3)この化合物をホルムアルデヒド及び蟻酸と反応させてメチル化する工程
により得られることが記載されている。
エリスロマイシンAをエリスロマイシンAオキシムとする工程及び上記1)〜3)の反応工程においてエリスロマイシンAに存在する不整炭素はいずれも反応に関与することはなく、技術的に見ればエリスロマイシンAが有する立体構造はN-メチル-11-アザ-10-デオキソ-10-ジヒドロエリスロマイシンAにそのまま引き継がれるものと認められる。
一方、本件明細書の特許請求の範囲第2項のN-メチル-11-アザ-10-デオキソ-10-ジヒドロエリスロマイシンAは第1項を引用しているから、第1項の一般式(1)の構造を有する化合物として特定されていると解されるが、エリスロマイシンAの立体構造として現在確定している構造の表記(メルクインデックス13版p655参照)とは3位、5位及び13位において相違している。
エリスロマイシンAは本件特許出願前にすでに単一の化合物として単離同定されているが、本件特許出願当時、その立体構造の表記については、本件特許の請求の範囲第1項の一般式(1)と同じ立体配置による表記(資料1)のほか、各炭素の位置でのR、S表記は同じであるが異なる立体表記(資料2)も存在し、出願後においても官能基を環の内側に書くか外側に書くかなどで表記が区々であったことが資料3〜11から窺われる。したがって、立体配置の表記の相違が直ちに化合物の相違を意味するとすることはできない。

そして、上記のとおり、本件特許の化合物はエリスロマイシンAを原料とし、その本来の立体配置に影響を与えない製造工程を経て製造されるものであり、本件特許明細書にはエリスロイマイシンAの本来の立体配置を変換することについての記載は皆無であることを勘案すれば、一般式(1)における5位、13位についての相違は置換基を環の内側に記載したか外側に記載したかに由来すると思われる表記上の差であって実質的な相違ではなく、また、3位については明らかな誤記ということができ、本件特許請求の範囲第1項の一般式(1)はエリスロマイシンAの立体配置をそのまま引き継いだ誘導体を意味するものということができる。
一方、本件処分に係るアジスロマイシン水和物におけるアジスロマイシンは、承認申請資料(平成16年4月7日に提出された参考資料)の「アジスロマイシン 水和物」の製造方法欄に記載の工程1〜4の反応式によれば、本件特許明細書中の N-メチル-11-アザ-10-デオキソ-10-ジヒドロエリスロマイシンAの製造方法と同じ方法によって製造され、図1の構造式からみてエリスロマイシンAの立体構造がそのまま引き継がれたものである。
そうすると、アジスロマイシンと本件特許の N-メチル-11-アザ-10-デオキソ-10-ジヒドロエリスロマイシンAとは同一の化合物であって、承認申請の対象化合物である「アジスロマイシン水和物」と実質的に同一の物ということができる。

したがって、原査定の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2004-05-28 
出願番号 特願2000-700051(P2000-700051)
審決分類 P 1 8・ 71- WY (C07H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田村 聖子  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 深津 弘
竹林 則幸
発明の名称 新規エリスロマイシンA誘導体及びその製造法  
復代理人 江尻 ひろ子  
復代理人 村上 清  
代理人 栗田 忠彦  
代理人 社本 一夫  

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