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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02G |
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管理番号 | 1097705 |
審判番号 | 不服2001-14054 |
総通号数 | 55 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-02-12 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-08-09 |
確定日 | 2004-06-07 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第207077号「通信ケーブル保護管」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 2月12日出願公開、特開平11- 41772〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本願発明 本願は、平成9年7月15日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成13年5月21日受付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。 「【請求項1】 親管路内に複数本挿入配管し、それぞれに通信ケーブルを挿通保護する管体であって、管壁(1)が管軸方向において環状の凹凸波形状に形成され、凸波形の頂上部がほぼ平坦面(2)に形成され、当該平坦面(2)の管軸方向の長さLと、凹波形の底部(3)と凹部を形成する両側壁部(4),(5)とがなす管軸方向の長さlとの比がL>lを満足させる状態に形成されている通信ケーブル保護管。」 2.引用刊行物と、その記載事項 イ)これに対して、当審が平成15年10月30日付けで通知した拒絶理由通知書に引用した刊行物は、次のとおりである。 <引用刊行物> 刊行物1:実願平4-33234号(実開平5-91116号)のCD-ROM 刊行物2:実公平7-22547号公報 刊行物3:実願平1-72678号(実開平3-12687号)のマイクロフィルム 刊行物4:平成7年2月8日特許庁意匠課資料係に受け入れられたFRANKISCHEのカタログ(公知資料HD07003946号が掲載されている外国カタログ)の表紙、第4頁、第7頁 刊行物5:平成5年8月27日特許庁意匠課資料係に受け入れられたCorma Inc.のカタログ(公知資料HD05027194号、同HD0527217号が掲載されている外国カタログ)の第2頁、第31頁 刊行物6: 実願平5-26555号(実開平6-80314号)のCD-ROM ロ)そして、刊行物1は、インナーダクト用複合管に係り、特に、ケーブル用電線管路等に使用するインナーダクト用複合管に関するものであって(段落【0001】)、刊行物1には、 (1a)その段落【0002】〜【0004】に、【従来の技術】として、 「従来、ケーブル用電線管路については、あらかじめ設計し確定された口径の電線管へ決まった数の電線ケーブルを引き込む方式が用いられていた。しかし、最近では、情報通信網の発達により、将来的にも予備的に布設できるよう、電線管を多条布設することがよく行なわれている。この場合、大口径の既設管路の中に予めインナーダクト管として複数本の電線管を入れておくことは、新たに電線ケーブルを引き込む際に別に改めて布設配管する手間も省略できるので便利である。 【0003】 ところで、インナーダクト管を引き入れる既設管路は、長尺であって、ある程度まで曲りのあることを想定する必要がある。このため、インナーダクト管としては、全長が1本もので製造できる(コイル状に巻き取れる)波付け可撓性管が好ましく使用されている。 【0004】 また、これら波付け可撓性管は、既設管路の中に引き入れる際に、一般に摩擦により張力がかかり、過大な力が必要とされるだけでなく、変形や破損を生ずる場合がある。このため、摩擦を小さくするために、かつ、多少伸びても破損等を生じないために、後で戻る性質のあるプラスチック製の波付け可撓性管が広く用いられている。」と記載され、 (1b)続く段落【0005】に、【考案が解決しようとする課題】として、「しかしながら、このようなプラスチック製波付け可撓性管を複数本、既設管路中に引き入れる際には、可撓性管が互いにねじれたり、既設管路の途中でひっかかったりするために、作業に支障をきたしていた。」という問題があることを記載した上で、 (1c)次いで段落【0006】に、「このため、図3に示すように、複数本の可撓性管の側面同士を溶着等により接合することにより一体化させ、この一体化した管を、既設管路中に一挙に引き込む方法が考案された。しかしこのような場合には、可撓性管5が互いに拘束される結果、管としての可撓性が失われて既設管路の曲部に対応できないという問題がある。」と、図3図示の方法では、まだ問題が残るとして、 (1d)段落【0007】以下に、「そこで、本考案は、複数の可撓性管を、既設管路に引き入れる際に可撓性管同士が互いにねじれたり、既設管路の途中でひっかかることなく、かつ、本来有する可撓性を保持した複数本の可撓性管が一体化されてなるインナーダクト用複合管を提供することを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するために、本考案は、少なくとも2本の波付け可撓性管が、長さ方向に相互に引き揃えられ、その一定間隔ごとに、相互の管がその円周上の少なくとも1点にて互いに溶着または接着剤により接着され一体化されていることを特徴とするインナーダクト用複合管を提供する。・・・」と記載されている。 ハ)また、「波付複合管」に関する刊行物2には、 (2a)第1〜2欄の[従来技術]の項に、「従来の可撓性ケーブル管路としては、1重構造の波付管が主として用いられ、1条の波付管には1条のケーブル等が収納されるのが原則であった。即ち、例えば電力ケーブルと制御ケーブルを布設する場合には、それぞれを布設するための波付管を別々に布設し、これら波付管の中に1条ずつ電力ケーブルと制御ケーブルとを布設していた。」と、 (2b)続く第2欄の[考案が解決しようとする課題]の項に、「しかしながら、このような構造では、波付管の布設費は、ケーブル等の布設条数に比例して多くなる問題点があった。また、このような問題点を回避するため、1条の波付管の中に複数条のケーブル等を収納すると、ケーブル等が相互に接触し、挿入性が悪く、且つケーブル等に損傷を与える問題点があった。 本考案の目的は、複数条の管の布設を一度ですますことができる波付複合管を提供することにある。」と、 (2c)そして、第2〜3欄の[課題を解決するための手段]の項に、「上記の目的を達成するための本考案の構成を説明すると、本考案は波付外管の中に波付内管が収容されてなる波付複合管において、前記波付内管の波付ピッチAと前記波付外管の波付ピッチBとの関係はB≧2Aとなっていることを特徴とする。」と、それぞれ記載されているとともに、 (2d)第3欄の[作用]の項に、「このような複合構造の波付複合管は、一度の布設作業で複数の管の同時布設が行える。また、複数条のケーブル等を布設する場合には、1条の波付外管内に布設し、他は波付内管内に布設する。このようにすると、複数条のケーブル等を相互に接触させることなく、共通の波付外管内に布設できる。 特に、波付内管の波付けのピッチAと波付外管の波付けのピッチBとの関係をB≧2Aとすると、波付内管と波付外管の波付けによる凹凸部が噛み合わないようにすることができ、可撓性や引込み性を向上させることができる。」(第3欄5〜15行)と記載され、 (2e)第3〜4欄の[実施例]の項には、(i)大径の波付外管1の中に小径の波付内管2が収容された構造になっていることを図示している第1図(A)(B)が、その考案に係る波付複合管の一実施例を示したものであるとの説明とともに、上記の波付けのピッチA、Bを有する波付内外管とする理由が、お互いの波付けによる凹凸部が噛み合わないようにすることで、可撓性や引込み性を向上させるためであると記載され(第3欄32〜36行)、上記の波付けのピッチA、Bを有する波付内外管の波付け形状は、管軸方向において凹凸波形状に形成され、凸波形の頂上部がほぼ平坦面に形成されたものであることが、第1図(B)に図示されているし、 (ii)「このような波付複合管は、例えば波付外管1内と波付内管2内とに電力ケーブル,通信ケーブル,光ファイバケーブル,電線,通信線,光ファイバ心線等のいずれかを別々に布設する用途に使用する。このように布設すると、これらケーブル等を相互に接触させることなく、該波付複合管内に布設できる。」(第3欄40〜45行)と、そのような管の内部に挿通し保護されるケーブルとして「通信ケーブル」も対象になっていることが、 (iii)そして、「波付外管1内における波付内管2の本数は、複数条であってもよい。」(第4欄12〜13行)と記載されている。 ニ)さらに、刊行物3〜6には、管軸方向において環状の凹凸波形状に形成され、凸波形の頂上部がほぼ平坦面に形成されたケーブル保護管としての波付き可撓性管が記載されている。刊行物3には、その凹凸波形の山部の長さl1と谷部の長さl2との比l1/l2は通常0.5〜4であることが記載され(第3頁18〜19行)、刊行物4の表紙および第7頁左上部ならびに下段中央の写真には、波付き管の凹凸波形の凸波形の頂上部平坦面の管軸方向の長さLと、凹波形の底部と凹部を形成する両側壁部とがなす管軸方向の長さlとの比がL>lを満足するものが示されている。 3.本願発明と刊行物1記載の発明との対比・検討 刊行物1には、従来技術として、前記記載(1a)、(1b)の如く、大口径の既設管路内に複数本挿入配管され、それぞれに電線ケーブルを挿通保護する波付け可撓性管が記載されている。 その「既設管路」は、本願発明の「親管路」に相当するものであるから、本願発明とこの従来技術の電線ケーブルの保護管とを対比すると、両者は、 (一致点) 「親管路内に複数本挿入配管し、それぞれにケーブルを挿通保護する管体であって、管壁が管軸方向において凹凸波形状に形成されているケーブル保護管」 である点で一致するが、次の点で相違する。 (相違点1) 挿通するケーブルが、本願発明では、「通信ケーブル」であるのに対し、刊行物1には通信ケーブルを挿通することが記載されていない点。 (相違点2) 保護管の波付けが、本願発明では、「管壁が管軸方向において環状の凹凸波形状に形成され、凸波形の頂上部がほぼ平坦面に形成され、当該平坦面の管軸方向の長さLと、凹波形の底部と凹部を形成する両側壁部とがなす管軸方向の長さlとの比がL>lを満足させる状態に形成されている」ものであるのに対し、刊行物1にはその点が記載されていない点。 しかしながら、親管路内に複数本挿入配管し、それぞれにケーブルを挿通保護する管体であって、管壁が管軸方向において凹凸波形状に形成されているケーブル保護管に挿通保護されるケーブルとして、通信ケーブルもあることは刊行物2に記載されている(前記記載(2e(ii))参照)。 そして、ケーブル保護管としての波付き可撓性管の波形状として、管軸方向において環状の凹凸波形状に形成され、凸波形の頂上部がほぼ平坦面に形成されたものは、刊行物3〜6にも見られるように周知の形状にすぎないところ、波付け管の凹凸同士の噛み合いが、可撓性や引き込み性を低下させることが刊行物2に記載されている(前記記載(2d)、(2e(i))参照)。刊行物2においては親管に相当する大径の波付き外管と外管の内部に挿入する小径の波付き内管の凹凸波形同士の噛み合わせ防止について両者の凹凸寸法を工夫しているものであるが、外管の中に複数の波付内管を挿入配管する際には、複数の内管の凹凸波形状同士の噛み合いがそれらの外管への挿入作業の妨げとなることは、刊行物2の記載に接した当業者であれば普通に想到するところであり、当該平坦面の管軸方向の長さLが凹波形の底部と凹部を形成する両側壁部とがなす管軸方向の長さlより大きければ、凹部に凸部が落ち込み噛み合うことがないことから、そのLとlとの比がL>lを満足させる状態に形成されたケーブル保護管を使用して、親管に複数挿入配置する保護管の凹凸波形状同士の噛み合いを防止するようなことは、当業者であれば普通に設計しうる範囲内の事項である。しかも、当該長さLとlとの比がL>lを満足させる状態に形成された電線やケーブルの波付き保護管も、刊行物3,4に記載の如く、本願出願前から公知のもので格別新規な保護管ではない。 なお、請求人は、刊行物1の図3の従来の複合管だけが刊行物1記載の従来技術ととらえ、刊行物1には、既設管に対して複合管を一度だけ挿入するという思想はあるが、後に必要が生じた場合に可撓性内管を追加挿入するという思想は全く存在しない旨主張しているが、図3の従来の複合管に至る以前に、そもそも複合管化されていない波付け可撓性管を既設管に複数挿入する従来技術があることは、刊行物1の前記記載(1a)〜(1b)のとおりである。そして、本願発明は外管内への内管の増設使用に関する特定がなされているものでもないし、しかも、複数の波付け可撓性管を複合管化して一度の挿入作業で挿入するのではなく、個別の管を複数本挿入する、すなわち複数の挿入作業がなされるなされる場合、既に挿入されている波付け可撓性管があれば、直後であれ、時間が空いた後であれ、波付け可撓性管同士の凹凸同士の相互干渉が起こりうることには変わりがなく、個別管の挿入作業間隔の長短が波付け可撓性管同士の噛み合い等による挿入抵抗の大小に影響する事項でもないから、請求人の外管内への内管の増設使用に基づく本願発明想到困難性についての主張も採用できない。 4.むすび したがって、本願発明は、刊行物1〜4に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-02-24 |
結審通知日 | 2004-03-16 |
審決日 | 2004-03-29 |
出願番号 | 特願平9-207077 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H02G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 清田 健一 |
特許庁審判長 |
後藤 千恵子 |
特許庁審判官 |
福島 浩司 水垣 親房 |
発明の名称 | 通信ケーブル保護管 |
代理人 | 甲斐 寛人 |