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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B42D
管理番号 1097847
審判番号 不服2001-7150  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-12-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-05-02 
確定日 2004-06-10 
事件の表示 平成7年特許願第131935号「ICカード用モジュール及びICカード」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年12月10日出願公開、特開平 8-324166〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.[手続の経緯・本願発明の内容]
本願は、平成7年5月30日の出願であって、その請求項1乃至7に係る発明は、平成16年1月29日付けの手続き補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項5に記載された発明(以下、「本願発明」という)は次のとおりである。
「【請求項5】ICチップがその端子面から金属バンプを介して基板に接続され、且つ前記ICチップが樹脂封止されてなるICカード用モジュールにおいて、少なくとも前記ICチップ並びに前記基板の剛性よりも高い剛性を有し、前記樹脂封止の面上に固着された補強部材を備えたことを特徴とするICカード用モジュール。」

2.[引用例]
これに対して、当審の拒絶の理由に引用した特開平7-89280号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
1-a「平板状でその表面に配線パターンが配設されたモジュール基材と、このモジュール基材上に配置されたICチップと、このICチップを被覆する樹脂部とを備え、上記配線パターンとICチップの端子とをバンプにより接続したICモジュールにおいて」(【請求項1】)、
1-b「【産業上の利用分野】本発明はICカードに搭載されるICモジュール、特にワイヤレスボンディング方式の一種であるバンプ接続方式を採用したICモジュールの改良に関する。」(【0001】)、
1-c「これらの図に示すように、ICモジュール11は、平板状のプリント基板(モジュール基材)12と、LSI等内蔵のICチップ13と、ICチップ13を封止する樹脂モールド部14と、を有している。」(【0008】)、
1-d「プリント基板12は矩形板状のプラスチック製であって、その表面の略中央部には、ICチップ13が固着、搭載されている。ICチップ13は複数のバンプ18およびダミーバンプ19によってプリント基板12に接着されている。バンプ18はICチップ13の裏面(プリント基板12と対向する面)の電極端子(GND,Vcc,I/O,CLK,RST)をプリント基板12の配線パターン15に接続するものでもある。」(【0010】)、
1-e「これらのバンプ18,19はいずれも導体金属、例えば金、銀等で所定の方法により同時に配設されるものとする。例えばICチップ13の各パッド面に金(Au)バンプ(ワイヤボールバンプ)を配置する。」(【0011】)。
同じく、当審の拒絶の理由に引用した特開平2-9691号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
2-a「従来例では構成材料が、基板1、枠材2、樹脂7等の比較的強度の弱い材料で構成され、しかもICカードは、0.9mm以下の厚さが要求されるため、ICカード用モジュールAの厚さもそれ以下の厚みで構成する必要があるため、強度が弱く、この結果として実用においてICチップ3のクラックの発生...等の品質事故が発生することがあった。本発明はICカード用モジュールの強度を向上させることを目的とする。」(第1頁右欄5〜15行)、
2-b「本発明はICチップの一面側に端子電極、他面側に金属の薄板を配置する構造とするものである。」(第1頁右欄17〜19行)、
2-c「ICチップ3の一面側に端子電極6があり、他方側のモールド樹脂7に凹部7aを形成し、この凹部7aに金属の薄板12を接着剤13により接着したものである。」(第2頁左欄9〜12行)、
2-d「本発明によれば金属の薄板の材質、厚さ、形状を選択することにより曲げ強度のきわめて強いものとすることが可能であり、信頼性の高いものとなる。」(第2頁左欄最下行〜右欄3行)。
2-e 第1図には、金属の薄板12がモールド樹脂7の面上に接着されたICカード用モジュールが示されている。

3.[引用発明の認定]
上記摘示の記載(1-a〜1-e)を含む明細書及び図面によると、引用例1には「ICチップ13がその電極端子から金バンプ18を介してプリント基板12に接続され、且つICチップが樹脂モールド部14により封止されてなるICカードに搭載されるICモジュール11。」(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されている。

4.[対比]
本願発明(前者)と引用例1記載の発明(後者)を対比すると、
後者の「電極端子」、「金バンプ18」、「プリント基板12」、「樹脂モールド部14により封止」、「ICカードに搭載されるICモジュール11」は、それぞれ、
前者の「端子面」、「金属バンプ」、「基板」、「樹脂封止」、「ICカード用モジュール」に対応する。
したがって、両者は、「ICチップがその端子面から金属バンプを介して基板に接続され、且つ前記ICチップが樹脂封止されてなるICカード用モジュール」の点で一致し、次の点で相違する。
相違点:前者では、少なくともICチップ並びに基板の剛性よりも高い剛性を有し、樹脂封止の面上に固着された補強部材を備えているのに対し、後者では、補強部材を備えていない点。

5.[判断]
引用例2の上記記載からみて、引用例2には、ICカード用モジュールの曲げ強度を向上させるために基板に搭載されたICチップのモールド樹脂の面上に金属の薄板が接着されたICカード用モジュールが記載されている。
そして、ICカード用モジュールの曲げ強度を向上させることは、当業者が当然に考慮することであるから、引用例1記載の発明に係るICモジュールの曲げ強度を向上させるために、引用例2の上記技術思想を採用し、その際に、金属の薄板の剛性を相違点に係る本願発明の如く構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。

なお、審判請求書で主張している「ワイヤボンディング方式に比べてICカード用モジュールの厚さを薄くすることができる。」という効果は、バンプ接続方式を採用したICカード用モジュールにおいてよく知られた効果(必要ならば特開平1-128893号公報、特開昭63-227394号公報参照)に過ぎない。
したがって、本願発明は、引用例1及び引用例2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.[むすび]
以上の通りであるから、本願発明は、引用例1及び引用例2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 2004-03-30 
結審通知日 2004-04-06 
審決日 2004-04-19 
出願番号 特願平7-131935
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平井 聡子  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 中村 圭伸
藤井 靖子
発明の名称 ICカード用モジュール及びICカード  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 哲  
代理人 鈴江 武彦  

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