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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01K
管理番号 1097876
審判番号 審判1999-20137  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-12-17 
確定日 2004-06-11 
事件の表示 平成 8年特許願第120492号「動物の排泄物吸収剤」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年11月25日出願公開、特開平 9-298966〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年5月15日の出願であって、平成11年11月12日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

2.平成11年12月17日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成11年12月17日付の手続補正を却下する。

[理由]
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「乾燥処理した粉末状のナトリウムベントナイトを主成分とする動物の排泄物吸収剤であって、前記ナトリウムベントナイトの粒径を50ミクロン〜1000ミクロンにすると共に、このナトリウムベントナイトに対して粒径を0.1ミクロン〜0.5ミクロンにした二酸化チタンの粉末を0.5重量%〜1.5重量%添加し、その二酸化チタンと前記ナトリウムベントナイトとの粉末を混合して該ナトリウムベントナイトの表面に二酸化チタンの粉末による白色の皮膜を形成したことを特徴とする動物の排泄物吸収剤。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ナトリウムベントナイト」について、粒径の上限値を「8000ミクロン」から「1000ミクロン」にして「粉末状」のものに限定し、同じく「二酸化チタンの粉末」について、「重量比にして0.1%〜5.0%添加し」から「0.5重量%〜1.5重量%添加し」に限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-1.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-206827号公報(以下、「刊行物1」という。)には、
(1-a)「(1)湿潤後に寝わら箱からの凝集塊の物理的除去に充分な大きさ及び充分な凝集強さの塊に、動物に実質的に接着しないで、凝集し得る吸収剤組成物・・・上記の吸収剤組成物が水膨潤性クレーの非圧縮粒子を含む・・・。
(2)水膨潤性ベントナイトクレーが、ナトリウムベントナイト、カリウムベントナイト、リチウムベントナイト、カルシウムベントナイト及びマグネシウムベントナイト;またはこれらの組合せからなる群から選ばれる・・・。
-中略-
(5)水膨潤性ベントナイトクレーが約50ミクロン〜約3350ミクロンの範囲の粒径を有する・・・。
-中略-
(14)液体の動物かすが、尿・・・を含む・・・。」(1頁特許請求の範囲)
(1-b)「本発明の一つの特徴は、動物廃棄物及び関連する廃棄物のための改良された吸収剤組成物を提供することである。
本発明の別の特徴は、液体の動物かすを有効に吸収し、同時に未湿潤の寝わら箱用吸収剤組成物からの物理的除去に有効な大きさ及び凝集強さの塊に凝集する組成物を提供することである。
本発明の別の特徴は、比較的に乾燥した非接着性の表面を有する間に液体を有効に吸収し、その結果、形成された凝集塊が寝わら箱中に堆積された動物かすに関連する臭気を排除または減少する組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、寝わら箱中に堆積された動物かすに関連する臭気を経済的に排除または減少する組成物を提供することである。
-中略-
本発明の別の特徴は、動物かす、特に動物の尿との接触後に凝集でき、その結果凝集塊が家庭の給排水管による廃棄のために水中に容易に且つ自然に分散し得る、動物かすの吸収剤組成物を提供することである。」(5頁右下欄9行〜6頁右上欄9行)
(1-c)「本発明の寝わら箱用吸収剤組成物は、必要により・・・着色剤・・・を、クレーの水膨潤性を実質的に減少しないでそれらの目的とする機能を果たすのに充分な量で含んでもよい。」(9頁左下欄13-17行)
との記載が認められ、
上記の記載によれば、刊行物1には、
「ナトリウムベントナイトを主成分とする、尿を含む動物かすの吸収剤組成物であって、前記ナトリウムベントナイトの粒径を約50ミクロン〜約3350ミクロンにすると共に、着色剤を含む動物かすの吸収剤組成物。」
との発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が開示されていると認めることができる。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-315330号公報(以下、「刊行物2」という。)には、
(2-a)「動物の排泄物処理材は、一般に、室内で使用されるために、衛生的な感じを与える色調であることが要求されている。」(2頁2欄22-25行)、
(2-b)「【0006】本発明において、着色物質として、顔料・・・を使用することができる。このような顔料・・・には、白色のものとして、・・・炭酸カルシウム、酸化チタン・・・があり、」(3頁3欄28-31行)
(2-c)「【0018】本発明において、排泄物処理材は、・・・例えば1mm以上の粒径の造粒物に造粒されるのが好ましいが、3mm以上の粒径の粒子に造粒すると、例えばトイレ用の箱から室内に散り難くなり、仮令散ったとしても、粒子を拾い集めるのが容易であり、室内の衛生を保つ上で好ましい。しかし、これらの場合、1mm以下の粒子の存在や、3mm以下の粒子の存在を完全に排斥するものではない。」(4頁6欄32-40行)
(2-d)「成形された造粒物の表面への白色粉末の付着は、造粒物が形成されたところで、造粒物表面に、例えば白色粉末を直接付着させたり、」(4頁6欄47-49行)
(2-e)「【作用】本発明において、動物の排泄物処理材は、・・・造粒物が、例えば噴霧により塗布された着色物質で着色されているので、コーヒー特有の褐色の色が隠されて、排泄物処理材の使用時における、例えば室内の調度との調和、衛生感、使用者の好み及び色彩雰囲気等に応じること・・・を可能とし、」(5頁7欄15-21行)
(2-f)「直径6.4mm、長さ12.5mmの細い円柱状の白色造粒物が形成された。
【0038】造粒された・・・着色造粒物は、・・・噴霧ノズル22から、炭酸カルシウム20g、ハイモ株式会社製の高吸水性樹脂ハイモサブ500(登録商標)14g及びポリビニルアルコール1.5gの被覆物質が噴霧された。被覆物質が被着された・・・着色造粒物は、・・・乾燥された。乾燥された・・・着色乾燥造粒物の1mm以上の粒径のものが除かれ、・・・直径5mm、長さ10mmの猫のトイレ用の砂が得られた。
【0039】・・・この猫のトイレ用の砂は、全体が白色を呈して清潔的であり、猫のトイレに・・・敷いて使用されたが、猫は普段と同様にトイレとして使用しており、使用の上で何等支障がなかった。」(7頁11欄15-36行)
と記載されていることが認められる。

2-2.対比
そこで、本願補正発明と刊行物1記載の発明とを対比する。
刊行物1記載の発明において、動物かすの吸収剤組成物を製造する場合、乾燥処理したナトリウムベントナイトを用いることは技術常識であり、
刊行物1記載の発明の「尿を含む動物かすの吸収剤組成物」は、本願補正発明の「動物の排泄物吸収剤」に相当し、
本願補正発明の「二酸化チタン」は、着色剤であり、
刊行物1記載の発明の「着色剤を含む」は、「ナトリウムベントナイトに対して着色剤を添加した」と同じことを意味するから、
両者は、
「乾燥処理したナトリウムベントナイトを主成分とする動物の排泄物吸収剤であって、前記ナトリウムベントナイトの粒径を50ミクロンを下限値にすると共に、このナトリウムベントナイトに対して着色剤を添加した動物の排泄物吸収剤。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1>本願補正発明は、ナトリウムベントナイトを、その粒径の上限値を「1000ミクロン」として、「粉末状」のものとしているのに対して、刊行物1記載の発明では、かかる限定が付されていない点。
<相違点2>本願補正発明は、着色剤を「粒径を0.1ミクロン〜0.5ミクロンにした二酸化チタンの粉末」とし、「ナトリウムベントナイトに対して0.5重量%〜1.5重量%」添加したのに対して、刊行物1記載の発明では、かかる限定が付されていない点。
<相違点3>本願補正発明は、「二酸化チタンとナトリウムベントナイトを混合して該ナトリウムベントナイトの表面に二酸化チタンの粉末による白色の皮膜を形成した」のに対して、刊行物1記載の発明では、かかる限定が付されていない点。

2-3.判断
上記相違点について検討する。
<相違点3>について
上記刊行物2には、動物の排泄物処理材を構成する造粒物を白色に着色する点((2-e)及び(2-f)参照。)、白色の着色物質として二酸化チタンを使用する点((2-b)参照。なお、(2-b)に記載の「酸化チタン」は、「二酸化チタン」であることは明らかである。)、造粒物の表面に白色粉末を直接付着させる点((2-d)参照。)、及び、着色物質で着色されることにより造粒物の色が隠される点((2-e)参照。)が記載され、これらの記載を総合すると、上記刊行物2には、動物の排泄物処理材を構成する造粒物の表面に二酸化チタンの白色粉末を直接付着することにより、造粒物の色が隠されて造粒物が白色に着色される点が記載されていると認められる。
そうすると、上記刊行物2に記載の動物の排泄物処理材と同一技術分野に属する動物の排泄物吸収剤の発明である刊行物1記載の発明において、着色剤として二酸化チタンの白色粉末を採用し、動物の排泄物吸収剤を構成する部材であるナトリウムベントナイトの表面に二酸化チタンの白色粉末を直接付着して白色に着色すべく、二酸化チタンとナトリウムベントナイトを混合することは、当業者であれば容易に想到し得ることであり、上記混合により、二酸化チタンの白色粉末により白色に着色されてナトリウムベントナイトの色が隠されることとなるから、ナトリウムベントナイトの表面には二酸化チタンの粉末による白色の皮膜が形成されるものと認められる。
<相違点1>について
刊行物1記載の発明におけるナトリウムベントナイトの粒径は約50ミクロン〜約3350ミクロンであるから、50ミクロン〜1000ミクロンの粉末状のものを含んでおり、本願明細書の「ナトリウムベントナイトは、50ミクロン〜1000ミクロンの微粒にした粉末状、あるいは粒径を1000ミクロン〜8000ミクロンにした顆粒状のものを利用できるが、白色度の点では粉末状が好ましい。」(段落【0019】)との記載事項のみでは、ナトリウムベントナイトの上限値を1000ミクロンにすることにより格別の臨界的意義があるとも認められないので、ナトリウムベントナイトの粒径の上限値を1000ミクロンにすることは、刊行物1記載の発明におけるナトリウムベントナイトの粒径の範囲内で、当業者が必要に応じて適宜に設定し得る数値の限定にすぎない。
<相違点2>について
上記「<相違点3>について」で述べたように、刊行物1記載の発明において、「二酸化チタンとナトリウムベントナイトを混合して該ナトリウムベントナイトの表面に二酸化チタンの粉末による白色の皮膜を形成」する点は、当業者であれば容易に想到し得ることであり、白色の皮膜を形成するにあたり、二酸化チタンの粉末の粒径、及び、ナトリウムベントナイトに対しての二酸化チタンの粉末の添加量を考慮することは、設計上当然のことであって、
白色の顔料として通常使用される二酸化チタンの粉末の粒径が0.1ミクロン〜0.5ミクロンの範囲にあることは、周知である(例えば、特開昭63-85178号公報(特に、2頁右上欄12-15行の記載参照。)、特開平2-204326号公報(特に、1頁右下欄8、9行の記載参照。)、及び、特開昭63-265948号公報(特に、2頁右下欄18-末行の記載参照。))から、このような周知の粒径の二酸化チタンを採用することは、単なる設計的事項にすぎない。
また、刊行物1記載の発明を認定した刊行物1には、動物かすの吸収剤組成物(動物の排泄物吸収剤)は、着色剤を、ナトリウムベントナイトの水膨潤性を実質的に減少しないでそれらの目的とする機能を果たすのに充分な量で含む旨((1-a)(1-c)参照。)の記載があることから、着色剤として採用した二酸化チタンの粉末の添加量を、ナトリウムベントナイトの水膨潤性が損なわれ排泄物の凝集効果が低下してしまうことが無く、しかも、ナトリウムベントナイトを白色に着色するのに必要な量である、「ナトリウムベントナイトに対して0.5重量%〜1.5重量%」に設定することは、当業者が必要に応じて適宜に設定し得る設計的事項にすぎない。

そして、本願補正発明の作用効果も、上記刊行物1、2に記載された発明及び上記周知のものと比較して格別顕著なものとも認められない。
したがって、本願補正発明は、上記刊行物1、2に記載された発明及び上記周知のものに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成11年12月17日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成11年10月5日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「粒径を50ミクロン〜8000ミクロンにした乾燥処理したナトリウムベントナイトに、粒径を0.1ミクロン〜0.5ミクロンにした二酸化チタンの粉末を重量比にして0.1%〜5.0%添加し、そのナトリウムベントナイトと二酸化チタンの粉末とを混合して該ナトリウムベントナイトの表面に二酸化チタンの粉末による白色の皮膜を形成したことを特徴とする動物の排泄物吸収剤。」

3-1.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物、及び、その記載事項は、上記「2-1.」に記載したとおりである。

3-2.対比・判断
本願発明は、上記「2.」で検討した本願補正発明から、「ナトリウムベントナイト」について、粒径の上限値を「8000ミクロン」から「1000ミクロン」にして「粉末状」のものにした限定、及び、「二酸化チタンの粉末」について、「重量比にして0.1%〜5.0%添加し」から「0.5重量%〜1.5重量%添加し」にした限定、を除いたものである。
そうすると、本願発明を特定するために必要な事項を全て含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が、上記「2-3.」に記載したとおり、上記刊行物1及び2に記載された発明及び上記周知のものに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、上記刊行物1、2に記載された発明及び上記周知のものに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-3.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記刊行物1、2に記載された発明及び上記周知のものに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-04-08 
結審通知日 2004-04-16 
審決日 2004-04-28 
出願番号 特願平8-120492
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A01K)
P 1 8・ 121- Z (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関根 裕吉田 佳代子  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 渡部 葉子
白樫 泰子
発明の名称 動物の排泄物吸収剤  
代理人 羽鳥 亘  

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