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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A41B
管理番号 1098060
異議申立番号 異議2002-72847  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-10-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-11-27 
確定日 2004-03-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3286325号「強化耳パネルを有する使い捨て吸収体」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3286325号の請求項1ないし8に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3286325号は、1998年(平成10年)4月23日を国際出願日とする出願であって、平成14年3月8日に設定の登録がなされ、平成14年5月27日にその特許掲載公報が発行された後、中野馥子より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成15年8月28日に特許異議意見書の提出とともに訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正の内容
特許権者は本件特許明細書の記載を訂正明細書のとおりに訂正することを求めており、その具体的内容は以下のとおりのものである。
A.【特許請求の範囲】の【請求項1】に記載された、
「(c)耳パネルに接合されている強化不織布であって、強化不織布は封じ込め集成体を構成する吸収性コアと重なり合っておらず、強化不織布はバックシートとバリヤーレッグカフスの間かつトップシートの長手方向縁の側面方向外側で固定された近位縁部を有し、強化不織布は疎水性かつ通気性の材料から成る、強化不織布とを備えている吸収体。」を、
「(c)耳パネルに接合されている強化不織布であって、強化不織布は封じ込め集成体を構成する吸収性コアと重なり合っておらず、強化不織布はバックシートとバリヤーレッグカフスの間かつトップシートの長手方向縁の側面方向外側で固定された近位縁部を有し、強化不織布は疎水性かつ通気性の材料から成り、強化不織布の弾性係数は耳パネルとバリヤーレッグカフスの弾性係数と同じである、強化不織布とを備えている吸収体。」と訂正する。
B.【発明の詳細な説明】[特許掲載公報第2頁右欄(第4欄)34〜35行]に記載された、
「強化不織布は疎水性かつ通気性の材料から成っている。」を、
「強化不織布は疎水性かつ通気性の材料から成り、強化不織布の弾性係数は耳パネルとバリヤーレッグカフスの弾性係数と同じである。」と訂正する。

2-2.訂正の目的の適否・新規事項の有無・特許請求の範囲の実質的拡張あるいは変更の有無
訂正事項Aは、訂正前の請求項1に記載された「強化不織布」を、その弾性係数が耳パネルとバリヤーレッグカフスの弾性係数と同じであるとすることで、より下位概念に限定しようとするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、上記の限定事項は、願書に添付した明細書の第15頁第20〜21行[特許掲載公報第8頁左欄(第15欄)第19〜21行]、並びに第12頁第12〜13行、同頁第18〜20行、及び同頁第22〜24行[特許掲載公報第6頁右欄(第12欄)第33〜35行、同42〜43行、及び同46〜49行]の記載に基づくもので、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであり、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項Bは、訂正事項Aの訂正に伴い、対応する明細書の記載を、特許請求の範囲の記載に整合させるものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、訂正事項Aと同様に、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであり、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

2-3.訂正の適否についての結論
したがって、上記の訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2及び3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立ての概要
異議申立人は、証拠として下記の甲第1及び2号証を提出し、訂正前の本件請求項1乃至8に係る発明は、いずれも、甲第1及び2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許を取り消すべきである旨を主張している。
証拠
甲第1号証:特開平10-43234号公報
甲第2号証:特開平4-224750号公報

4.本件発明
上記の訂正が認められるので、本件請求項1乃至8に係る発明は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(なお、訂正明細書の特許請求の範囲の欄における「1.」乃至「8.」の表記は、【請求項1】乃至【請求項8】に相当するものと認め、以下、【請求項1】乃至【請求項8】と表記し、論じる。)
「【請求項1】
長手方向中心線と側面方向中心線を有する吸収体であり、
(a)後部ウエスト部と股部と前部ウエスト部と一対の長手方向縁部と体側表面とその反対側にある衣服側表面とを有する封じ込め集成体であって、封じ込め集成体は、液体透過性トップシートと、これに接合された液体不透過性バックシートと、トップシートとバックシートとの間に位置する吸収性コアと、一対のバリヤーレッグカフスとを有しており、一対のバリヤーレッグカフスは、近位縁部と遠位縁部を有するとともに、封じ込め集成体の長手方向縁部に隣接した位置にあり、バックシートの長手方向縁はトップシートの長手方向縁から側面方向外側に位置している、封じ込め集成体と、
(b)ウエスト部においてバリヤーレッグカフスの近位縁部から側面方向に外側に延びている一対の耳パネルであって、耳パネルとバリヤーレッグカフスは連続した一体の材料片で作られており、耳パネルとバリヤーレッグカフスは疎水性かつ通気性の材料から成る、一対の耳パネルと、
(c)耳パネルに接合されている強化不織布であって、強化不織布は封じ込め集成体を構成する吸収性コアと重なり合っておらず、強化不織布はバックシートとバリヤーレッグカフスの間かつトップシートの長手方向縁の側面方向外側で固定された近位縁部を有し、強化不織布は疎水性かつ通気性の材料から成り、強化不織布の弾性係数は耳パネルとバリヤーレッグカフスの弾性係数と同じである、強化不織布とを備えている吸収体。
【請求項2】
耳パネルが、後部ウエスト部においてバリヤーレッグカフスの近位縁部から側面方向に外側に延びている、請求項1に記載の吸収体。
【請求項3】
耳パネルが、前部ウエスト部においてバリヤーレッグカフスの近位縁部から側面方向に外側に延びている、請求項1に記載の吸収体。
【請求項4】
耳パネルが、前部ウエスト部と後部ウエスト部においてバリヤーレッグカフスの近位縁部から側面方向に外側に延びている、請求項1に記載の吸収体。
【請求項5】
強化不織布が、吸収体の衣服側表面の一部となっている、請求項1に記載の吸収体。
【請求項6】
強化不織布が、股部において封じ込め集成体の長手方向縁部に接合されたストリップを更に備えている、請求項1に記載の吸収体。
【請求項7】
強化不織布とストリップが連続材料片である、請求項6に記載の吸収体。
【請求項8】
ストリップが、バリヤーレッグカフスの近位縁部よりも長手方向中心線から外側により遠位に延びている遠位縁部を有している、請求項7に記載の吸収体。」

5.当審の判断
5-1.請求項1に係る発明について
当審が通知した取消しの理由で引用した刊行物1[特開平4-224750号公報、異議申立人の提出した甲第2号証]には、以下の事項が図面とともに記載されている。
a.「不透液性シートの上面に吸収体を設け、この吸収体の上面に透液性シートを配置し、両シートにより吸収体を包被した紙おむつにおいて、吸収体の側縁から側外方に延在するフラップ部の幅方向および長手方向のほぼ全体が透液性状態とされていることを特徴とする紙おむつ。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)
b.「本発明は、フラップ部分が通気性を有し、蒸れを防止した紙おむつに関する。」(【0001】【産業上の利用分野】)
c.「図1および図2は第1実施例を示している。
本発明に係る紙おむつでは、ポリエチレン等からなる不透液性シート1と不織布などからなる透液性シート2との間に、綿状パルプ等からなる、たとえば砂時計形または好ましくは図示のように長方形のある程度剛性を有する吸収体3が介在されている。
吸収体3はその形状保持のために吸収紙(図示せず)により包むことができる。不透液性シート1は吸収体3の側縁より若干側方に延在しており、その延在部においてフラップ部材10がたとえばホットメルト接着剤などにより接合されてさらに側方に延在している。また、その接合重ね合わせ部分の上方には、ホットメルト接着剤などによりバリヤーシート4の外側が接合されている。バリヤーシート4の紙おむつ内方には、糸ゴムなどからなる弾性伸縮部材5が固定され、バリヤーカフスBを構成している。このバリヤーカフスBの長手方向両端は、幅方向全体に透液性シート2の上面にホットメルト接着剤などにより接合されており、したがって着用時において、バリヤーカフスBの長手方向中間が、弾性伸縮部材5の収縮力により紙おむつ中央側に向かって斜めに起立するようになっている。なお、透液性シート2の側部は不透液性シート1にホットメルト接着剤などにより固定されている。」(【0012】)
d.「このように構成された紙おむつにおいては、紙おむつの側部全体が通気性のフラップ部材10から構成されているので、脚回り部分において蒸れを防止することができるとともに、紙おむつ長手方向前後においても、汗などによる水分がフラップ部材10を通して透過するので、背中および腹部分における蒸れを防止できる。」(【0013】)
e.「さらに発展させて、図6のように、通気性フラップ部材シートを、フラップ部分において折り返して二重にし、そのフラップ部材10B部分における強度の増大を図ることができる。同様に強度の増大を図るために、図7のように、二枚のフラップ部材シートを重合してもよい。」(【0016】)
f.「ところで、前記の各例においては、フラップ部分において、不透液性シート1および透液性シート2が存在せず、フラップ部材のみで構成されているが、図9および図10に示すように、透液性シート2をフラップ部分に延在して、その延在部分に通気性バリヤーシート4を重合させて蒸れの防止を図ることができる。
図10においては、透液性シート2が完全に幅方向に連続していると、尿が幅方向に伝わり、横漏れの原因ともなるので、途中で不連続化したものである。」(【0021】及び【0022】)
g.【図1】には、おむつの展開状態の平面図が示されている。
h.【図10】には、透液性シート2が吸収体3の幅方向の外側位置で不連続化され、該不連続化位置より外側の透液性シートがバリヤーシート4と重合してフラップを構成するとともに、吸収体の下方に配設された不透液性シート1の側縁部が上記不連続位置の外側に延び、バリヤシート4との間で、上記不連続化位置より外側の透液性シート2の内側端部を挟んでいるおむつの断面図が示されている。
以上の記載から、刊行物1には、【図10】に示される実施例として、「透液性シート2と、不透液性シート1と、それらの間に位置する吸収体3と、一対のバリヤーシート4とを有しており、該バリヤーシート4の内方がバリヤーカフスBを構成し、該バリヤーカフスBの長手方向中間が弾性部材の収縮力によって中央側に向かって斜めに立ち上がるようにされており、上記透液性シート2は、吸収体の外側方向に、不連続化部分を介して延在して、その延在部分で通気性バリヤーシート4に重合し、フラップ部分となっており、上記不透液性シート1の側縁は上記不連続化部分の外側に位置し、透液性シート2の不連続化部分の外側部は、上記吸収体3と重なり合っておらず、上記不透液性シート1と通気性バリヤーシート4との間かつ不連続化部分の外側で固定されている内側縁部を有している紙おむつ」が記載されているということができる。
また、当審が通知した取消しの理由で引用した刊行物2[特開平6-181948号公報]には、「液不透過性の防漏シートと液透過性表面材との間に吸収性の芯体を接着固定し、かつ前記液透過性表面材の上にポケットを形成させるように疎水性の表面シートを貼り重ねた使い捨ておむつであって、前記液不透過性の防漏シートの外層に、該防漏シートよりも幅広でかつ通気性を有したバックシートを配設し、前記バックシートの長手方向両側部の内層に、それぞれ通気性を備えかつ疎水性の表面シートを貼り重ねてサイドフラップ部を形成するとともに、前記表面シートとバックシートとの間に、股ギャザー形成用伸縮弾性体と、ポケットギャザー形成用伸縮弾性体とを伸長状態でシートの長手方向軸線に平行に接着して設け、また貼り重ねてある前記表面シートとバックシートとを前記股ギャザー形成用伸縮弾性体とポケットギャザー形成用伸縮弾性体との間において、切断線がS字形状をなすようにトリミングカットされ、かつトリミングカットされた両耳部をポケット形成部材として前記表面シートの上に重なるように吸収性の芯体の上に固定したこと」を特徴とするおむつの発明(段落番号【0011】【課題を解決するための手段】の記載参照)について、「通気性を有するバックシート2としては、ポリプロピレンメルトブローン不織布、ポリプロピレンポイントエンボスサーマルボンド不織布の疎水性処理素材、孔開きフイルムを用いることができる」こと、及び、「サイドフラップ部を構成する疎水性の表面シート6はポリプロピレンスパンボンド不織布の疎水性処理素材が使用できる」こと(段落番号【0025】の記載参照)等が示されている。
そこで、本件請求項1に係る発明(以下、「前者」という。)と、刊行物1に記載された発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、後者の「紙おむつ」は、前者の「吸収体」に相当し、「長手方向中心線と側面方向中心線、後部ウエスト部と股部と前部ウエスト部と一対の長手方向縁部と体側表面とその反対側にある衣服側表面とを有している」ことは明らかであり(【図1】参照)、後者の「不透液性シート1」及び「吸収体3」は、前者の「液体不透過性バックシート」及び「吸収性コア」にそれぞれ相当し、後者の「バリヤーシート4」は、連続した一体の材料片から成り、その内方斜めに起立する部分は、前者の「一対のバリヤーレッグカフス」に相当し、その上方に位置する端縁部及び下方に位置する接合部は、それぞれ前者でいう「遠位縁部」及び「近位縁部」ということができ、また、上記「バリヤーシート4」の外方に延びる部分は、前者の「耳パネル」に相当し、着用時にはウエスト部に位置する部分を備えている。
また、後者の「透液性シート2」の不連続化した部分より内方の、吸収体3を包被する部分は、前者の「液体透過性トップシート」に相当し、後者の紙おむつも、前者の「トップシート」、「バックシート」、「吸収性コア」及び「バリヤーレッグカフス」に相当する部分で液体等の封じ込めをなす集成体を構成するものと認められる。
そして、後者の「透液性シート2」の不連続化された部分より外方のフラップ部分に延在する部分についてさらに検討すると、該延在部分は通気性バリヤーシート4と重合して、該部位を強化するもので(上記摘示事項e参照)、不織布で形成されうるものであるので(上記摘示事項c参照)、前者でいう「強化不織布」に相当し、「通気性」を具備しているものと認められ(摘示事項b、dも参照)、その不連続化された部分は、前者でいうところの強化不織布の「近位縁部」に相当し、当然、上記の「トップシート」に相当する部分の側縁より外方に位置することになる。
さらに、上記の「強化不織布」に相当する延在する部分は、吸収体3とは重なっておらず、「バックシート」に相当する不透液性シート1の側縁部は、上記不連続化された部分の外側に位置し、上記「強化不織布の近位縁部」に相当する部分が、「バックシート」と「バリヤーカフス」に相当する部分との間、かつ「トップシート」に相当する部材の側縁部の外側で固定されている(【図10】参照)。
以上のとおりであるので、両者は、「長手方向中心線と側面方向中心線を有する吸収体であり、後部ウエスト部と股部と前部ウエスト部と一対の長手方向縁部と体側表面とその反対側にある衣服側表面とを有する封じ込め集成体であって、封じ込め集成体は、液体透過性トップシートと、これに接合された液体不透過性バックシートと、トップシートとバックシートとの間に位置する吸収性コアと、一対のバリヤーレッグカフスとを有しており、一対のバリヤーレッグカフスは、近位縁部と遠位縁部を有するとともに、封じ込め集成体の長手方向縁部に隣接した位置にあり、バックシートの長手方向縁はトップシートの長手方向縁から側面方向外側に位置している、封じ込め集成体と、ウエスト部においてバリヤーレッグカフスの近位縁部から側面方向に外側に延びている一対の耳パネルであって、耳パネルとバリヤーレッグカフスは連続した一体の材料片で作られており、耳パネルとバリヤーレッグカフスは通気性の材料から成る、一対の耳パネルと、耳パネルに接合されている強化不織布であって、強化不織布は封じ込め集成体を構成する吸収性コアと重なり合っておらず、強化不織布はバックシートとバリヤーレッグカフスの間かつトップシートの長手方向縁の側面方向外側で固定された近位縁部を有し、強化不織布は通気性の材料から成る、強化不織布とを備えている吸収体。」である点で一致しており、以下の点で一応の相違がある。
[相違点1]前者において、耳パネルとバリヤーレッグカフス及び強化不織布は疎水性かつ通気性の材料から成るとされているのに対し、後者においては、それらに相当する部分を構成するバリヤーシート及び透液性シートは通気性は備えているが疎水性については開示されていない点。
[相違点2]前者において、強化不織布の弾性係数は耳パネルとバリヤーレッグカフスの弾性係数と同じであると規定されているが、後者においてはそれらに相当する部分を構成するシートの弾性係数については開示されていない点。
そこで上記の相違点について検討する。
[相違点1]について
上記刊行物2に記載された発明において、液透過性表面材の上にポケットを形成させるように貼り重ねられる「疎水性の表面シート」は、通気性を備え且つ疎水性であり、前者でいう「バリヤーレッグカフス」に相当する部分を形成し、さらに、通気性のバックシートと貼り重ねられて前者でいう「耳パネル」に相当するサイドフラップを構成している。そして上記「通気性のバックシート」は、疎水処理された不織布から形成されることが記載されており、上記表面シートに貼り重ねられサイドフラップを強化しているものである。すなわち、刊行物2には、前者における「耳パネル」、「バリヤーレッグカフス」及び「強化不織布」に相当する部分を構成する材料のいずれをも「疎水性かつ通気性」とすることが記載されている。
そして、当業者が上記刊行物2に記載された技術的事項を後者のおむつに適用することに格別の困難性はなく、また、そのことによって奏される効果も、上記刊行物1及び2に記載された事項から当業者が容易に予測しうるものと認められる。
[相違点2]について
上記相違点2に係る構成に関して本件明細書には、「好ましくはバリヤーレッグカフス32に用いられる不織布材料と、強化不織布に用いられる不織布材料は、実質的に同じ弾性係数を有する。従ってこれら二つの材料は、ストレッチ中及びストレッチ後に大体同じ回復力を有する。このことは、装着者へのより良いフィット及びより良い快適性、及びより良い装着の容易さを得るのに役立つ。」と記載されている。
しかしながら、おむつ等の使い捨て吸収体が、装着者に装着される際、耳パネルやレッグカフスが伸長され、また収縮することは自明の事項であり、該伸長及び収縮する部分が重ね合わされ接合された二枚のシート状物から成るとき、該二枚のシート状物の伸縮特性が同じであることが好ましいことも当業者にとっては自明の事項である。そして、「弾性係数」は、伸縮特性を示す指標として、普通に用いられているものであるから、上記の当業者にとって自明の事項に鑑みれば、前者における、強化不織布と耳パネル及びバリヤーレッグカフスに相当する部分を構成する後者のシートの弾性係数を実質的に同じものとすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項であり、その効果も容易に予測しうる範囲のものである。
以上のとおりであるから、本件請求項1に係る発明は、技術常識に鑑みれば、上記刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、特許権者は、異議意見書において、刊行物1に記載された発明を、図6及び図7に示された実施例に基づいてのみ認定した上で、刊行物1には本件発明の構成が記載されていない旨主張しており、当審が取消理由で指摘した図10に示された実施例については言及していないが、図10に示された実施例により開示される事項は上述のとおりであるので、当該特許権者の主張は妥当でない。

5-2.本件請求項2乃至8に係る発明について
本件請求項2乃至4に係る発明は、請求項1に係る発明の構成に加えて、耳パネルが、バリヤーレッグカフスの近位縁部から側面方向外側に延びる部位を、それぞれ、「後部ウエスト部」、「前部ウエスト部」及び「前部ウエスト部と後部ウエスト部」と特定するものであるが、上記刊行物1には、上記「耳パネル」に相当するフラップ部分が、おむつの前後のウエスト部において、接合部すなわち上記バリヤーレッグカフスの近位縁部に相当する部分から外側に延びている点が記載されており(【図1】参照)、これを前後ウエスト部のいずれか一方のみに設けるようにすることも、当業者が適宜なし得る設計変更と認められるので、上記本件請求項1について述べたと同じ理由により、本件請求項2乃至4に係る発明も、技術常識に鑑みれば、上記刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件請求項5に係る発明は、請求項1に係る発明の構成に加えて、強化不織布が吸収体の衣服側表面の一部となっていることを規定するものであるが、上記刊行物1に記載された発明においても、該「強化不織布」に相当する透液性シートのフラップを構成する部分は、体側と反対の面すなわち衣服側表面の一部を構成していることは技術常識に照らして明らかであるので、上記本件請求項1について述べたと同じ理由により、本件請求項5に係る発明も、技術常識に鑑みれば、上記刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
さらに、本件請求項6に係る発明は、請求項1に係る発明の構成に加えて、強化不織布が、股部において封じ込め集成体の長手方向縁部に接合されたストリップを更に備えていることを規定し、本件請求項7に係る発明は上記ストリップが強化不織布と連続部片であることを規定し、本件請求項8に係る発明は、上記強化不織布と連続部材のストリップがバリヤーレッグカフスの近位縁部よりも長手方向外側により遠位に延びている遠位縁部を有していることを規定するものであるが、上記刊行物1の【図1】を参照すれば、おむつ長手方向中間部すなわち股に対応する部分に、不透液性シート、透液性シート及び吸収体からなる本件請求項6乃至8に係る発明でいう封じ込め集成体に相当する部分の長手方向縁部にバリヤーレッグカフスの近位縁部に相当する位置から外側に延び、更に遠位の遠位縁部を有する細幅のフラップ部分が記載されており、該細幅のフラップ部分が、本件請求項6乃至8に係る発明の「ストリップ」に相当するものと認められ、これを【図10】で示される実施例についてみると、該細幅のフラップ部分には、本件請求項6乃至8に係る発明の「強化不織布」に相当する透液性シートの不連続化部分の外側部がバリヤシートに接合されて存在することも技術常識に照らして明らかであるので、刊行物1には、強化不織布を構成するシートの一部から成る、すなわち強化不織布の連続部片であり、バリヤーレッグカフスの近位縁部よりも長手方向外側により遠位に延びている遠位縁部を有するストリップが示されていることになるので、上記本件請求項1について述べたと同じ理由により、本件請求項6乃至8に係る発明も、技術常識に鑑みれば、上記刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件請求項2乃至8に係る発明は、いずれも、技術常識に鑑みれば、上記刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本件請求項1乃至8に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、本件請求項1乃至8に係る特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
強化耳パネルを有する使い捨て吸収体
【発明の詳細な説明】
分野
本発明は、使い捨て吸収体に関する。より詳しくは、強化耳パネルを有する使い捨て吸収体に関する。
背景
乳幼児及びその他の失禁者は、尿及びその他の体の排泄物を受入れて封じ込めるために、おむつ等の吸収体を装着する。吸収体は、排出された物質を封じ込める機能と、これらの物質を装着者の体及び装着者の衣服及び寝具から隔離する機能の両方を果たす。おむつの後部を装着者の両側でおむつの前部に接着するテープタイプのおむつや、装着者が吸収体をパンツのように穿いて装着できる、テープタイプ設計の留め工程をまったく必要としない「穿く」タイプのおむつを含め、多くの様々な基本的設計を有する使い捨て吸収体がこの技術で知られている。
同様に使い捨ておむつの外側は、吸収されたあらゆる液体がおむつを通過して、隣接する物、例えば衣類、寝具等を汚すのを防ぐために、柔軟性のある液体及び蒸気不透過性シートで覆われうることも知られている。これらの外側カバーは一般にバックシートと呼ばれており、液体不透過性フィルム、例えばポリエチレンから構成されていることが多い。このようなバックシートは、液体がおむつを通過するのを防ぐが、これらはまた、おむつを暑苦しいと感じさせ、装着するのが不快であると感じさせることがある。これは、特にこの製品の後部ウエスト部及びサイド耳部においてこれらが空気及び/又は湿分不浸透性であるためである。
この衣類の外側に布の外見及び布様の感触を与えるために、バックシートフィルムにラミネートあるいは接着された不織布材料を備えている使い捨ておむつもあり、従って装着者及び介護者は衣服の様な感触を得る。しかしながらこのような衣類は、硬くて嵩ばっているか、表面がざらざらしていることがある。このような不織布材料の使用はまた、吸収体の製造に関連した原料費を増加させることもある。特に例えば失禁があるか又は寝たきりの大人が使用する、比較的大きいサイズの衣類の場合である。
従って強度を犠牲にすることなく、製造の費用効果が良いのに、特にサイド耳区域において使い捨て吸収体に通気性及び柔らかさを備えさせたいという要望が依然として存在する。本発明の利点及び利益のすべてを提供するものは、現存する技術には存在しない。
概要
本発明は、長手方向中心線と側面方向中心線を有する吸収体に関連しており、この吸収体は、(a)後部ウエスト部と股部と前部ウエスト部と一対の長手方向縁部と体側表面とその反対側にある衣服側表面とを有する封じ込め集成体を備えており、封じ込め集成体は、液体透過性トップシートと、これに接合された液体不透過性バックシートと、トップシートとバックシートとの間に位置する吸収性コアと、一対のバリヤーレッグカフスとを有しており、一対のバリヤーレッグカフスは、近位縁部と遠位縁部を有するとともに、封じ込め集成体の長手方向縁部に隣接した位置にあり、バックシートの長手方向縁はトップシートの長手方向縁から側面方向外側に位置しており、吸収体は更に、(b)ウエスト部においてバリヤーレッグカフスの近位縁部から側面方向に外側に延びている一対の耳パネルを備えており、耳パネルとバリヤーレッグカフスは連続した一体の材料片で作られており、耳パネルとバリヤーレッグカフスは疎水性かつ通気性の材料から成っており、吸収体は更に、(c)耳パネルに接合されている強化不織布を備えており、強化不織布は封じ込め集成体を構成する吸収性コアと重なり合っておらず、強化不織布はバックシートとバリヤーレッグカフスの間かつトップシートの長手方向縁の側面方向外側で固定された近位縁部を有し、強化不織布は疎水性かつ通気性の材料から成り、強化不織布の弾性係数は耳パネルとバリヤーレッグカフスの弾性係数と同じである。
本発明のこれら及び他の特徴や側面や利点は、本開示を読むことで、当業者には明らかであろう。
図面の簡単な説明
明細書は、本発明を特に指摘して明確に請求する請求の範囲で結んでいるが、本発明は添付図面を参照して行う下記の実施形態の記述から、より良く理解されるであろう。
図1は、下部構造を見せるためにいくつかの部分が切り取られている本発明の好ましい実施形態の平面図であり、この製品の内側(体側)表面が見る人の方を向いている。
図2aは、図1の断面線2‐2に沿う簡略横断面図である。
図2bは、図1の断面線2‐2に沿う本発明のもう一つの実施形態の簡略横断面図である。
図3は、図1に示されている実施形態の斜視図である。
図4は、図3の一部分の拡大図である。
図5は、図1に示されている実施形態の平面図であり、この製品の外側(衣服側)表面が見る人の方に向けられている。
詳細な説明
本発明は使い捨て吸収体に関する。ここで用いられている用語「吸収体」は、体の排泄物を吸収して封じ込める装置のことを言い、より特定すれば、体内から排出される様々な排泄物を吸収して封じ込めるために装着者の体に、又は体の近くに配置される装置のことを言う。用語「使い捨て」は、ここでは、洗濯されたり、あるいは吸収体として復元又は再使用されるためのものではない吸収体について記載するために用いられている(すなわちこれらはただ一回の使用後に捨てられ、好ましくはリサイクルされるか、堆肥にされるか、あるいはまた環境に優しい方法で処分されるものである)。「一体型」吸収体とは、統合されて調和した物体を形成するための別々の部品から形成され、従って別々のホルダーとライナーのように別々に操作される部品を必要としない吸収体のことを言う。
本発明の吸収体の好ましい実施形態は、図1に示されている一体型使い捨て吸収体、すなわちおむつ20である。ここで用いられている用語「おむつ」は、一般に乳幼児及び失禁者が装着する吸収体であって、装着者の胴体下部の周りに装着される吸収体のことを言う。しかしながら本発明はまた、その他の吸収体、例えば失禁用ショーツ、失禁用下着、おむつホルダー及びライナー、女性用衛生衣類、トレーニングパンツ等にも適用しうると理解すべきである。
図1は、平らに広げられた非収縮状態にある(すなわち弾性誘発された収縮が引張って広げられている)おむつ20の平面図であり、この構造のいくつかの部分は、おむつ20の構成をより明確に示すために切り取られており、装着者の方に向いているおむつ20の部分、すなわち内側表面(すなわち体側表面)40が、見る人の方に向けられている。図1に示されているように、おむつ20は好ましくは、液体透過性トップシート24と、このトップシートに接合された液体不透過性バックシート26と、トップシート24とバックシート26との間に位置する吸収性コア28とを備えている。この吸収性コア28は、一対の向かい合った長手方向縁部60を有している封じ込め集成体を備えている。バックシート26は、吸収性コア28に吸収されて封じ込められた排泄物が、おむつ20と接触する物、例えばベッドシーツ及び下着を濡らすのを防ぐ。このおむつは、好ましくはさらに前部耳パネル31と、後部耳パネル30と、バリヤーレッグカフス32と、留め具装置36とを備えており、留め具装置36は好ましくは少なくとも一対の固定部材37とランディング部材38とを備えている。さらにウエスト弾性部(図示されていない)を備えていてもよい。
おむつ20は、内側表面40(図1においては見る人の方に向けられている)と、この内側表面40の反対側にある外側表面(すなわち衣服側表面)42と、後部ウエスト部44と、この後部ウエスト部44の反対側にある前部ウエト部46と、後部ウエスト部44と前部ウエスト部46の間に位置する股部48と、おむつ20の外側外辺部又は縁部によって画定される、サイド縁部が50で末端縁部が52で示される周辺部とを有している。後部ウエスト部44と前部ウエスト部46は、周辺部の末端縁部52から股部48まで延びている。
おむつ20の内側表面40は、使用中に装着者の体に隣接した位置にあるおむつ20の部分を備えている(すなわち内側表面40は、一般にトップシート24の少なくとも一部分と、このトップシート24に接合された他の要素によって形成されている)。外側表面42は、装着者の体から離れた位置にあるおむつ20の部分を備えている(すなわち外側表面42は、一般にバックシート26の少なくとも一部分と、このバックシート26に接合された他の要素とから形成されている)。ここで用いられている用語「接合された」は、要素をもう一方の要素に直接付着させることによって一つの要素がもう一方の要素に直接固定されている形態、及び要素をこれ自体がもう一方の要素に付着されている一つ又は複数の中間部材に付着させることによって、要素がもう一方の要素に間接的に固定されている形態を包含する。
おむつ20はまた、二つの中心線、すなわち長手方向中心線100と横断方向中心線110とを有している。ここで用いられている用語「長手方向」は、おむつ20が装着されている時に立っている装着者を左半身と右半身とに二分する垂直平面と一般に一直線になる(例えばほぼ平行になる)おむつ20の平面内にある線や軸や方向のことを言う。ここで用いられている用語「横断方向」は、長手方向に一般に直行するおむつの平面内にある線や軸や方向のことを言う(これは装着者を前半身と後半身とに分けるものである)。
トップシート24及びバックシート26は、吸収性コア28のものよりも一般に大きい長さ及び幅のサイズを有する。トップシート24及びバックシート26は、吸収性コア28の縁部を越えて延びており、これによっておむつ20の周辺部が形成される。トップシート24とバックシート26と吸収性コア28は、よく知られた多様な形状に組立てることができるが、封じ込め集成体形状の例は、1975年1月14日にKenneth B.Buellに発行された「使い捨ておむつ用の収縮性サイド部分(Contractible Side Portions for Disposable Diaper)」と題する米国特許第3,860,003号や1992年9月29日にKenneth B.Buellらに発行された「予め配置された弾性柔軟性ヒンジを有する動的弾性ウエスト部材を有する吸収体(Absorbent Article With Dynamic Elastic Waist Feature Having A Predisposed Resilient Flexural Hinge)」と題する米国特許第5,151,092号に記載されている。
弾性的収縮性ガスケットカフス63は、おむつ20の周辺部に隣接して配置され、好ましくは各サイド縁部50に沿って各バリヤーレッグカフス32に隣接して配置され、従ってガスケットカフス63は、おむつ20を装着者の足に対して引き寄せて保持する傾向がある。あるいはまたガスケットカフス63は、末端縁部52のどちらか又は両方に隣接して配置されて、ウエストカフスを生じうる。ガスケットカフスは、おむつ技術においてよく知られているあらゆる手段を備えていてもよい。例えばBuellの米国特許第3,860,003号及びKievetらの米国特許第4,515,595号を参照のこと。図1に示されているような好ましい実施形態において、ガスケットカフス63は、バックシート26の延長部と、少なくとも股部48において吸収性コア28の長手方向縁部60からこれに沿って外側に延びているバリヤーレッグカフス32の一部分とから形成されている。
フラップ弾性部材65は、弾性的収縮性条件においてガスケットカフス63と操作によって(operatively)組み合わされ、従って正常な非抑制形状において、フラップ弾性部材はガスケットカフスを効果的に収縮させるか又はギャザーを寄せる。フラップ弾性部材65の長さは、一般におむつの設計によって決定され、この技術で知られているあらゆる手段によっておむつに付着されてもよい。
吸収性コア28は、圧縮性があり、形に沿いやすく、装着者の皮膚に刺激を与えず、液体、例えば尿及びその他のいくつかの体の排泄物を吸収及び保持しうるあらゆる吸収性部材であってもよい。吸収性コア28は、非常に多様なサイズ及び形状(例えば長方形、砂時計形、「T」形、非対称等)において、使い捨ておむつ及びその他の吸収体に通常用いられている非常に多様な液体吸収性材料から製造することができる。例えば一般にエアフェルトと呼ばれている微粉砕木材パルプである。その他の適切な吸収性材料の例には、クレープセルロースワッディング;コフォームを含むメルトブロウンポリマー;化学的剛化、変性、又は架橋セルロース繊維;ティシューラップ及びティシューラミネートを含むティシュー;吸収性フォーム;吸収性スポンジ;超吸収性ポリマー;吸収性ゲル化材料;あるいはあらゆる同等の材料又は材料の組合わせが含まれる。
吸収性コア28の形状及び構成は、様々であってもよい(例えば吸収性コアは、様々なキャリパーゾーン、親水性勾配、超吸収性勾配、又は比較的低い平均密度及び比較的低い平均坪量の受入れゾーンを有していてもよく;あるいは一つ又はそれ以上の層又は構造を備えていてもよい)。さらには吸収性コア28のサイズ及び吸収能力もまた、乳幼児から大人までの様々な装着者に合わせるために様々なものであってもよい。しかしながら吸収性コア28の総吸収能力は、おむつ20の設計負荷及び意図された用途に適合するものであるべきである。
おむつ20の実施形態の一つは、前部ウエスト部に耳部を有するが、後部ウエス卜部には一般に長方形形状を有する非対称修正T形吸収性コア28を有する。本発明の吸収性コア28として用いるための吸収構造の他の例は、1986年9月9日にWeismanらに発行された「高密度吸収構造(High‐Density Absorbent Structures)」と題する米国特許第4,610,678号;1987年6月16日にWeismanらに発行された「二重層コアを有する吸収体(Absorbent Articles With Dual‐Layered Cores)」と題する米国特許第4,673,402号;1989年12月19日にAngstadtに発行された「ダスチング層を有する吸収性コア(Absorbent Core Having A Dusting Layer)」と題する米国特許第4,888,231号;及び1989年5月30日にAlemanyらに発行された「比較的低い密度及び比較的低い坪量の受入れゾーンを有する高密度吸収性部材(High Density Absorbent Members Having Lower Density and Lower Basis Weight Acquisition Zones)」と題する米国特許第4,834,735号に記載されている。
この吸収性コア28はあるいはまた、1993年8月10日にAlemanyらに発行された「弾性ウエスト部材及び向上した吸収性を有する吸収体(Absorbent Article With Elastic Waist Feature and Enhanced Absorbency)」と題する米国特許第5,234,423号や1992年9月15日にYoungとLaVonとTaylorに発行された「失禁管理のための高効率吸収体(High Efficiency Absorbent Articles For Incontinence Management)」と題する米国特許第5,147,345号に詳細に記載されているような吸収性貯蔵コアの上に配置された、化学的剛化繊維の受入れ/分配コアを含む二重コア装置を備えていてもよい。
トップシート24は、好ましくは接着手段(図示されていない)、例えばこの技術でよく知られている手段によって、吸収性コア28及びバックシート26に接合されている。本発明の好ましい実施形態において、トップシート24及びバックシート26は、おむつ周辺部において互いに直接接合され、当業者に知られているあらゆる適切な接着手段によって吸収性コア28にこれらを直接接合することによって間接的に接合されている。
トップシート24は、好ましくは柔軟で感触が柔らかく、装着者の皮膚に刺激を与えない。さらにはトップシート24は、好ましくは液体透過性であり、液体(例えば尿)がその厚みを容易に透過するようにさせている。適切なトップシート24は広い範囲の材料から製造することができる。例えば織布及び不織布材料;ポリマー材料、例えば開口成形熱可塑性フィルム、開口プラスチックフィルム、及び油圧成形熱可塑性フィルム;多孔質フォーム;網状化フォーム;網状化熱可塑性フィルム;及び熱可塑性スクリムである。適切な織布及び不織布材料は、天然繊維(例えば木材繊維又は綿繊維)、合成繊維(例えばポリマー繊維、例えばポリエステル、ポリプロピレン、又はポリエチレン繊維)から構成されていてもよく、あるいは天然繊維と合成繊維との組合わせから構成されていてもよい。
トップシート24は、トップシート24を通過して吸収性コア28に含じ込められた液体から装着者の皮膚を隔離するため(すなわち再湿潤を防ぐため)に、好ましくは疎水性材料からできている。トップシート24が疎水性材料からできている場合、トップシート24の少なくとも上部表面は、液体がより素早くトップシートを通って移動するように親水性になるように処理されている。これによって、体の排泄物がトップシート24を通って引き込まれて、吸収性コア28によって吸収されるのではなく、トップシート24から流れ落ちる可能性が減る。
トップシート24は、これを界面活性剤で処理することによって親水性にされてもよい。トップシート24を界面活性剤で処理するのに適した方法には、トップシート24の材料に界面活性剤をスプレーすること、及びこの材料を界面活性剤中に浸漬することが含まれる。このような処理及び親水性についてのより詳細な説明は、1991年1月29日にReisingに発行された「多数層吸収層を有する吸収体(Absorbent Articles with Multiple Layer Absorbent Layers)」と題する米国特許第4,988,344号や1991年1月29日にReisingに発行された「急速受入れ吸収性コアを有する吸収体(Absorbent Articles with Rapid Acquiring Absorbent Cores)」と題する米国特許第4,988,345号に含まれている。
もう一つの好ましいトップシート24は、開口成形フィルムを備えている。開口成形フィルムがトップシート24には有用であるが、その理由は、これらが体の排泄物に対して透過性があるのに非吸収性であり、液体が逆流して装着者の皮膚を再び濡らす傾向が少なくなるからである。従って体と接触している成形フィルムの表面は乾いたままであり、これによって体が汚れることが少なくなり、装着者にとってより快適な感触が生じる。適切な成形フィルムは、1975年12月30日にThompsonに発行された「先細り毛管を有する吸収構造(Absorptive Structures Having Tapered Capillaries)」と題する米国特許第3,929,135号や1982年4月13日にMullaneらに発行された「汚れ抵抗性トップシートを有する使い捨て吸収体(Disposable Absorbent Article Having A Stain Resistant Topsheet)」と題する米国特許第4,324,246号や1982年8月3日にRadelらに発行された「繊維様特性を示す弾性プラスチックウエブ(Resilient Plastic Web Exhibiting Fiber‐Like Properties)」と題する米国特許第4,342,314号や1984年7月31日にAhrらに発行された「光沢のない可視表面及び布様触感を示す巨視的膨張三次元プラスチックウエブ(Macroscopically Expanded Three‐Dimensional Plastic Web Exhibiting Non‐Glossy Visible Surface and Cloth‐Like Tactile Impression)」と題する米国特許第4,463,045号や1991年4月9日にBairdに発行された、「多層ポリマーフィルム(Multilayer Polymeric Film)」と題する米国特許第5,006,394号に記載されている。
おむつ20は好ましくはさらに、封じ込め集成体の長手方向縁部25に隣接した位置にある弾性化バリヤーレッグカフス32を備えている。このバリヤーレッグカフス32は、液体及びその他の体の排泄物の改良された封じ込めを与える。各バリヤーレッグカフス32は、脚部において体の排泄物の漏れを減じるためのいくつかの様々な実施形態のどれを備えていてもよい。(バリヤーレッグカフス32はまた、レッグバンド、サイドフラップ、弾性化レッグカフス、又は弾性カフスと呼ばれることもある。)ここでのバリヤーレッグカフスの実施形態の非限定的な例は、次の米国特許に記載されている。米国特許第3,860,003号は、サイドフラップと一つ又はそれ以上の弾性部材とを有する収縮性脚部開口部を備えて、弾性化レッグカフス(ガスケットカフス)を生じる使い捨ておむつについて記載している。1990年3月20日にAzizらに発行された「弾性化フラップを有する使い捨て吸収体(Disposable Absorbent Article Having Elasticized Flaps)」と題する米国特許第4,909,803号は、脚部の封じ込めを改良するために、「立ち上った」弾性化フラップ(バリヤーカフス)を有する使い捨ておむつについて記載している。1987年9月22日にLawsonに発行された「二重カフスを有する吸収体(Absorbent Article Having Dual Cuffs)」と題する米国特許第4,695,278号は、ガスケットカフスとバリヤーカフスとを含む二重カフスを有する使い捨ておむつについて記載している。1989年1月3日にDragooに発行された「漏れ抵抗性二重カフスを有する吸収体(Absorbent Article Having Leakage‐Resistant Dual Cuffs)」と題する米国特許第4,795,454号は、漏れ抵抗性カフスについて記載している。1987年11月3日にBuellに発行された「使い捨て排泄物封じ込め衣類(Disposable Waste Containment Garment)」と題する米国特許第4,704,115号は、遊離液体を衣類内部に封じ込めるような形状のサイド縁部漏れガード溝部を有する使い捨ておむつ又は失禁用衣類を開示している。
各バリヤーレッグカフス32は、封じ込め集成体22に接合された近位縁部33、遠位縁部35、及び間隔あけ手段77、すなわち例えば遠位縁部35を封じ込め集成体22の液体受入れ表面(トップシート24)から離しておくための間隔あけ弾性部材77を有する。バリヤーレッグカフス32の近位縁部33は、好ましくはガスケットカフス63の内側にあり、好ましくはコア28の長手方向縁部60とフラップ弾性部材65との間にあるが、このことは次のようにしてなされる。すなわち、シール手段(別に示されてはいない)、例えば接着剤ビーズによってバリヤーレッグカフスの一つのセグメントをバックシート26に付加して、近位縁部33に沿って漏れ抵抗性シールを形成し、トップシート24を通る液体の吸上げに対してバリヤーを作り、液体がバリヤーカフス32の下でおむつ20の縁部まで吸上げられるのを防ぐことによってなされる。
本発明のバックシート26は、好ましくは図2に示されているように、外側表面70aと体側表面70bとを有するプラスチックフィルム27を備えている。このプラスチックフィルム27は、好ましくは液体(例えば尿)に対して不透過性であり、好ましくは薄いプラスチックフィルムから製造される。しかしながらプラスチックフィルム27は、好ましくは蒸気をおむつ20から逃がす。好ましい実施形態において、プラスチックフィルムには微孔質ポリエチレンフィルムが用いられる。適切な微孔質ポリエチレンフィルムは、日本国名古屋の三井東圧化学(Mitsui Toatsu Chemicals,Inc.)によって製造され、エスポワール(Espoir)という商品として販売されているものである。
プラスチックフィルムに適した材料は、約0.012mm(0.5ミル)〜約0.051mm(2.0ミル)の厚さを有する熱可塑性フィルムであり、好ましくはポリエチレン又はポリプロピレンを備えている。好ましくはこのプラスチックフィルムは、約5g/m2〜約35g/m2の坪量を有する。しかしながらその他の柔軟性液体不透過性材料も用いることができることに注目すべきである。ここで用いられている用語「柔軟性」は、柔軟性があり、かつ装着者の体の一般的形状及び輪郭に沿いやすい材料のことを言う。
通常のおむつ(図示されていない)において、バックシート22は、一般的にはプラスチックフィルム27とこのプラスチックフィルム27の外側表面70aに接合された不織布ウエブとを備えており、ラミネートを形成している。不織布ウエブは、一般的にはプラスチックフィルム27の外側表面70aの全部又は実質的に全部を覆っており、前部ウエスト部46、後部ウエスト部44、及び股部48において、封じ込め集成体区域22の全部の上に広がっている。換言すれば、この通常のバックシートラミネートの不織布ウエブ部分は、おむつ20の外側表面42の全体を覆っている。この通常の形状は、ある程度の布様の感触及び衣服様の外見を与えるが、これは不織布ラミネート材料それ自体のコストによって、並びにラミネーションプロセスの製造及び/又は供給費用、特に大人用の製品の場合は、これらの製品のサイズのために高価になることがある。これについては、装着者特に大人の装着者の中には硬くて不快であると感じる人もいる。
本発明の好ましい実施形態において、おむつの外側表面42の実質的に全体を覆っている、プラスチックポリマーフィルムと不織布ウエブとから構成される通常のバックシートラミネートは排除される。その代り、封じ込め集成体22を実質的に覆っていない強化不織布90が与えられる。図3〜図5を参照すると、本発明の好ましい実施形態において、バックシートは封じ込め集成体区域22に存在するプラスチックフィルム27を備えている。プラスチックフィルム27は、前部及び後部耳パネル区域30及び31には備えられていない。その理由は、このプラスチックフィルム27は、排泄物、特に尿を吸収するためのコア材料28が無いところには必要とされないからである。バックシートはさらに、不織布ウエブを備えている。前述したように、この不織布90は封じ込め集成体22と実質的に重なり合っていない。
しかしながら不織布材料の通常の層を取り除くということは、一般的には耳部においておむつの全体的強度における低下という欠点を有するものである。従って本発明の好ましい実施形態において、後部耳パネル部30又は前部耳パネル部31のうちの少なくとも一つに強化不織布材料90が備えられている。従って強化不織布90と耳パネル30及び/又は31の不織布材料との組合わせは、強くて柔らかい耳部を生じる。さらには封じ込め部22における嵩張りは、このような好ましい実施形態においては取り除かれる傾向がある。その理由は、ここにはより少ない材料が備えられているからである。封じ込め部22においてこのような嵩張りを取り除くことは、大人の装着者用の吸収体において特に望ましい。その理由は、このような製品は、赤ちゃん又は子供用に必要とされるよりも分厚いコアを必要とする傾向があるからである。
本発明の好ましい実施形態において、強化不織布90は、後部耳パネル部30又は前部耳パネル部31のどちらかに備えられていてもよい。さらにより好ましい実施形態において、強化不織布90は、後部耳パネル部30又は前部耳パネル部31の両方に備えられていてもよい。
図3〜図5を参照して、耳パネル30及び31の好ましい形状を記載するものとする。後部耳パネル30の各々は、後部ウエスト部44においてバリヤーレッグカフス32の近位縁部33から側面方向に外側に延びている。各後部耳パネル30は、好ましくはバリヤーレッグカフス32の延長部を備えている。好ましくは後部耳パネル30とバリヤーレッグカフス32は、連続した一体型材料片から形成されている。あるいはまた多数材料片が備えられていてもよく、これらは同じ材料又は異なる材料からできていてもよい。
同様に前部耳パネル31の各々は、前部ウエスト部46においてバリヤーレッグカフス32の近位縁部33から側面方向に外側に延びている。各前部耳パネル31は好ましくはまた、バリヤーレッグカフス32の延長部を備えている。好ましくは前部耳パネル31とバリヤーレッグカフス32は、連続した一体型材料片から形成されている。あるいはまた多数材料片が備えられていてもよく、これらは同じ材料又は異なる材料からできていてもよい。
非常に好ましいのは、後部耳パネル30、前部耳パネル31、及びバリヤーレッグカフス32のすべてが、連続した一体型材料片、好ましくは不織布材料から形成されているような形状である。
強化不織布90は、好ましくは後部耳パネル30又は前部耳パネル31の少なくともどちらか一つに接合されている。好ましくは強化不織布90は、強化不織布90がおむつ20の外側表面42の一部であり、後部耳パネル30がおむつの内側表面40の一部であるように、バリヤーレッグカフス32に対して配置されている。強化不織布90の近位縁部95は、好ましくはバックシートプラスチックフィルム27とバリヤーレッグカフス32との間に固定されている。この好ましい配列は図3に示されており、図4において拡大部分としてよりはっきりと見られる。
好ましくは耳パネル30及び/又は31は、並置区域全体において連続ビーズグルーによってその耳部に位置する強化不織布90に固定されている。二つの不織布層のこの固定手段は、硬さを生じることなく、良好な強度と一体性とを与えると考えられる。あるいはまた、当業者に知られているその他のあらゆる接着手段を、耳パネルと強化不織布とを備える二つの不織布を固定するために用いることもできる。
強化不織布90は、封じ込め集成体22と実質的に重なり合わないように備えられている。例えば吸収体の外側(衣服側)表面の図面である図5に最も明確に見られるように、封じ込め集成体部22には強化不織布90の材料は実質的に備えられていない。
後部耳パネル30に強化不織布90aが備えられ、前部耳パネル31にも強化不織布90bが備えられているような好ましい実施形態において、この強化不織布90がさらに、股部において長手方向に延びている不織布材料ストリップ94を備えるのが好ましい。強化不織布に好ましいこの形状は、図5に明確に示されている。より好ましくは強化不織布90及びストリップ94は、単一材料片から切り取られ、図5に示されているように連続不織布材料片が形成される。
しかしながら強化不織布90はあるいはまた、おむつの前部、股部、及び後部のどれか、又は全部に備えられていてもよい。これは一体型不織布材料片として備えられていてもよく、このことは前述したように好ましいが、あるいはまた別々のセグメントとして備えられていてもよい。別々のセグメントとして備えられている場合、各セグメントは、同じか又は異なる材料組成のものであってもよい。
好ましい実施形態において、股部48に位置する強化不織布90のストリップ部94は、バリヤーレッグカフス32の近位縁部33よりも長手方向中心線100から外側により遠位に延びている遠位縁部97を有する。従ってストリップ94の遠位縁部97は、おむつの周辺部のサイド縁部50の一部を形成する。この構成は、次のように装着者へのより大きい快適性を与える。バックシートのプラスチックフィルム27の一部は、漏れを防ぐためにバリヤーレッグカフス32にラミネートされている。このプラスチック27は、おむつの外側表面42の一部であり、これは装着者の股部の脚部区域において装着者の体と接触する傾向がある。一般的にはこれは硬く、装着者にとって「蒸れる」感触を生じるか、あるいはその他の不快感を生じることがある。しかしながらストリップ94の遠位縁部97を、バリヤーレッグカフス32の近位縁部33を越えて延ばし、従って図1と図3と図5に示されているように、ストリップ94がおむつのサイド縁部50(すなわち周辺部)の一部にされることによって、バックシートの比較的硬いプラスチック材料27ではなく、ストリップ94の比較的柔らかい不織布材料が、装着者の皮膚と接触することになる。
図4に最も明確に示されているように、好ましい実施形態において、強化不織布90は、プラスチックフィルム27とバリヤーレッグカフス32との間において封じ込め集成体22に固定されている。図3に示されているように、強化不織布90は、シャシービーズグルー84及びサイドシールグルー80によって封じ込め集成体22に固定されていてもよい。このようなグルーは一般的には使い捨て吸収体の要素を固定するために用いられる。(例証を容易にするために、シャシービーズグルー84は、おむつの片側のみに示されている。)
サイドシールグルー80を有する吸収体の典型的な構成において、サイドシールグルー80は、製造プロセス中に股部48において完全に切り抜かれるのが普通である。このプロセスでは、股部48に形成された脚部開口部は、おむつ20が備える様々な要素が組合わされた後で切り抜かれる。従ってこの典型的な構成が本発明の好ましい実施形態と関連して用いられるとすれば、強化不織布90のストリップ94は、股部48において完全に放置される(be left)か、大部分がこの製品の残りのものと接着されないであろう。このことは望ましくない。その理由は、漏れのリスクが増加するからだけでなく、このような接着されていないストリップは容易に引き裂けうるからである。さらには一般的に魅力的でない外見、及び介護中の装着における不便さ、及び装着中の不快感が、結果として生じるであろう。
本発明の好ましい実施形態において、この問題は、レッグ弾性部65とサイド縁部50との間に塗布されるシャシービーズグルー84も同様にこのストリップ94を封じ込め集成体22に固定するのに十分なほどの幅を、股部48においてストリップ94に与えることによって解決される。
従って前記のような本発明の好ましい実施形態において、ストリップ94は、封じ込め集成体に、その全長及び幅にわたってしっかりと接着される。さらにはシャシービーズグルー84によるストリップ94の固定が好ましい。シャシービーズグルーの使用は、接着の一体性及び強度を与えつつも、ビーズ間の柔軟性のあるオープン区域によって装着者に柔らかくて快適な感触を与える。あるいはまた、当業者に知られている封じ込め集成体22にストリップ94を固定させるためにその他の手段を用いてもよい。
通常の製品においてのように、図3において陰影が付けられている部位として示されているように、前部ウエスト部44及び後部ウエスト部46において、末端シールグルー82も備えられている。この末端シールグルー82は、前部ウエスト部44及び後部ウエスト部46からの漏れを防ぐのに役立つ。その理由はこのコア28が、一般的にはこの製品の周辺部の末端縁部52までずっと延びているわけではないからである。
さらにはここに記載されている好ましい方法において、強化不織布90とストリップ94とを接着させることによって、装着者への皮膚の刺激を避けることができる。これは、装着者の皮膚と接触するシームが作られないからである。
あるいはまた強化不織布90の近位縁部95は、外側表面プラスチックフィルム27に固定されてもよい。しかしながらこのような実施形態においては、ストリップ94の封じ込め集成体22への接着は、さらに難しくなる傾向がある。
好ましくはバリヤーレッグカフス32に用いられる不織布材料と、強化不織布に用いられる不織布材料は、実質的に同じ弾性係数を有する。従ってこれら二つの材料は、ストレッチ中及びストレッチ後に大体同じ回復力を有する。このことは、装着者へのより良いフィット及びより良い快適性、及びより良い装着の容易さを得るのに役立つ。
図2bに示されているもう一つの実施形態において、トップシート24は、バリヤーレッグカフス32及び後部耳パネル30(及び/又は前部耳パネル31)と隣接して並置されるように広がっていてもよい。この実施形態において、トップシート24の延長部24aは、本質的には強化不織布と同じ機能を果たす。トップシートの延長部24aは、後部耳パネル、前部耳パネル、又は股部のどれか又は全部に備えられていてもよい。しかしながらこの実施形態と関連して漏れのリスクが増加することもある。これは、トップシート材料の少なくともいくつかの部分の親水性が、液体の吸上げに寄与することがあるからである。例えばこのような実施形態における漏れのリスクを緩和するために、トップシート24は、コア区域において親水性にされ、延長区域24aにおいて疎水性になるように処理されてもよいであろう。しかしながらトップシートのこのような処理に関連したコストは増加する傾向がある。
耳パネル、バリヤーレッグカフス、及び強化不織布に用いうる不織布ウエブ材料は、好ましくは空気透過性である。不織布ウエブは、天然繊維(例えば綿繊維又は木材繊維)を備えていてもよく、あるいはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、あるいはこのような繊維のあらゆる組合わせの繊維を備えていてもよい。さらには不織布ウエブは、カード、スパンメルト、メルトブロウン、又は通風接着されていてもよく、あるいはその他のあらゆる特性を有していてもよく、あるいはこの技術で知られているあらゆる方法で製造されてもよい。好ましくは不織布ウエブは、おむつの他の要素へのこの材料の熱接着を可能にするのに十分な熱可塑性材料から構成されている。
ここで用いるのに適した不織布ウエブは、好ましくは二成分繊維から製造されているスパンボンド不織布ウエブである。好ましくはこの二成分繊維は、ポリエチレンとポリプロピレンとを含んでいる。より好ましくはこの二成分繊維は、ポリプロピレンのコアとポリエチレンのシースとを有する。この二成分繊維は、好ましくはポリエチレン約55〜約95重量%を有する。最も好ましくはこの二成分繊維は、ポリエチレン約70〜約90重量%を有する。
スパンボンド不織布ウエブは望ましくは、スパンボンド二成分プラスチック繊維の繊維方向が使い捨て吸収体の長手方向と一直線になるように使い捨て吸収体に配置される。好ましくはスパンボンド不織布ウエブは、使い捨て吸収体の横断方向に少なくとも80gf/cm、より好ましくは少なくとも180gf/cmの引張り強さを有する。
もう一つの適切な不織布ウエブは、好ましくは二成分繊維からできているカード不織布ウエブである。好ましくはこの二成分繊維は、ポリエチレンとポリエチレンテレフタレートとを含んでいる。好ましくはこの二成分繊維は、ポリエチレンテレフタレートのコアとポリエチレンのシースとを有する。好ましい実施形態において、この二成分繊維は、ポリエチレン約50〜約95重量%を有する。最も好ましくはこの二成分繊維は、ポリエチレン約55〜約95重量%を有する。
さらにもう一つの実施形態において、二成分繊維は、異なる種類のポリプロピレンを含んでいてもよい。より好ましくはこの二成分繊維は、比較的高い融点を有するポリプロピレンのコアと、比較的低い融点を有するポリエチレンのシースとを有する。
好ましい実施形態において、この不織布ウエブは、日本国岐阜のハビックス株式会社(Havix Co.,Ltd.)からE‐2341として入手しうるカード不織布ウエブである。この不織布ウエブは、ポリエチレン(PE)とポリエチレンテレフタレート(PET)との二成分繊維からできている。PE/PET比は約60/40である。PE/PET二成分繊維は、大きさが2d×51mmである。
もう一つの好ましい実施形態において、不織布ウエブは、日本国東京の三井石油化学工業(Mitsui Petrochemical Industries Ltd.)から入手しうるスパンボンド不織布ウエブである。この不織布ウエブは、ポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)との二成分繊維からできている。PE/PP比は約80/20である。PE/PP二成分繊維は、厚さが約2.3dである。
バックシート26は、好ましくは吸収性コア28の外側表面に隣接して配置されており、好ましくはこの技術で知られているあらゆる適切な接着手段でこれに接合されている。例えばバックシート26は、均一連続接着剤層、パターン接着剤層、又は一列の別々の接着剤の線や螺旋やスポットによって吸収性コア28に固定されてもよい。満足すべきことが分っている接着剤は、ミネソタ州セントポール(St.Paul,Minnesota)のエイチ・ビー・フラー社(H.B.Fuller Company)によって、HL‐1258として製造されているものである。接着剤フィラメントのオープンパターンネットワークを備えている適切な接着手段の例は、1986年3月4日にMinetolaらに発行された「使い捨て排泄物封じ込め衣類(Disposable Waste‐Containment Garment)」と題する米国特許第4,573,986号に開示されている。渦巻き状に螺旋パターンにされたいくつかの接着剤フィラメント線を備えている他の適切な接着手段は、1975年10月7日にSprague Jr.に発行された米国特許第3,911,173号や1978年11月22日にZiekerらに発行された米国特許第4,785,996号や1989年6月27日にWereniczに発行された米国特許第4,842,666号に示されている装置及び方法によって例証されている。あるいはまた接着手段は、熱接着、圧力接着、超音波接着、動的機械的接着、あるいはこの技術で知られているその他のあらゆる適切な手段又はこれらの接着手段の組合わせを備えていてもよい。
前部ウエスト部46及び後部ウエスト部44においてより大きい延伸性を与えるために、吸収性コアがバックシート26及び/又はトップシート24に接合されていないような、本発明の実施形態も考えられる。追加部材、例えば一つ又は複数の液体不透過性バリヤー材料(図示されていない)が、吸収性コア28の外側表面とバックシート26との間に配置されている別の実施形態も考えられる。このようなバリヤー部材のどれも、吸収性コア28に接合されていてもよく、接合されていなくてもよい。さらにはバックシート26は、バックシート26と吸収性コア28との間に配置されている一つ又は複数のあらゆるバリヤー材料に接合されていてもよく、接合されていなくてもよい。
ここに開示されている実施形態は多くの利点を有している。例えばこれらは、これらの部位において製品の強度を犠牲にすることなく、吸収体の耳部においてより良い通気性と柔らかさを与えることができ、さらには費用の節約をも生じうる。これは、一つの製品あたり必要とされる不織布材料の量が少なくなるからである。装着者の快適さもまた、ここに開示されている本発明の実施形態の場合増していると考えられる。
すべての引例はその全体が参照してここに組込まれる。あらゆる参考文献の引用は、請求されている発明に対する先行技術としての有効性についての決定に関して認められているのではない。
ここに記載されている実例や実施形態は例証を目的とするだけであり、これらに鑑みて様々な修正や変更が、本発明の範囲から逸脱することなく当業者に示唆されるものと理解される。
(57)【特許請求の範囲】
1. 長手方向中心線と側面方向中心線を有する吸収体であり、
(a) 後部ウエスト部と股部と前部ウエスト部と一対の長手方向縁部と体側表面とその反対側にある衣服側表面とを有する封じ込め集成体であって、封じ込め集成体は、液体透過性トップシートと、これに接合された液体不透過性バックシートと、トップシートとバックシートとの間に位置する吸収性コアと、一対のバリヤーレッグカフスとを有しており、一対のバリヤーレッグカフスは、近位縁部と遠位縁部を有するとともに、封じ込め集成体の長手方向縁部に隣接した位置にあり、バックシートの長手方向縁はトップシートの長手方向縁から側面方向外側に位置している、封じ込め集成体と、
(b) ウエスト部においてバリヤーレッグカフスの近位縁部から側面方向に外側に延びている一対の耳パネルであって、耳パネルとバリヤーレッグカフスは連続した一体の材料片で作られており、耳パネルとバリヤーレッグカフスは疎水性かつ通気性の材料から成る、一対の耳パネルと、
(c) 耳パネルに接合されている強化不織布であって、強化不織布は封じ込め集成体を構成する吸収性コアと重なり合っておらず、強化不織布はバックシートとバリヤーレッグカフスの間かつトップシートの長手方向縁の側面方向外側で固定された近位縁部を有し、強化不織布は疎水性かつ通気性の材料から成り、強化不織布の弾性係数は耳パネルとバリヤーレッグカフスの弾性係数と同じである、強化不織布とを備えている吸収体。
2. 耳パネルが、後部ウエスト部においてバリヤーレッグカフスの近位縁部から側面方向に外側に延びている、請求項1に記載の吸収体。
3. 耳パネルが、前部ウエスト部においてバリヤーレッグカフスの近位縁部から側面方向に外側に延びている、請求項1に記載の吸収体。
4. 耳パネルが、前部ウエスト部と後部ウエスト部においてバリヤーレッグカフスの近位縁部から側面方向に外側に延びている、請求項1に記載の吸収体。
5. 強化不織布が、吸収体の衣服側表面の一部となっている、請求項1に記載の吸収体。
6. 強化不織布が、股部において封じ込め集成体の長手方向縁部に接合されたストリップを更に備えている、請求項1に記載の吸収体。
7. 強化不織布とストリップが連続材料片である、請求項6に記載の吸収体。
8. ストリップが、バリヤーレッグカフスの近位縁部よりも長手方向中心線から外側により遠位に延びている遠位縁部を有している、請求項7に記載の吸収体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-10-28 
出願番号 特願平11-541455
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (A41B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 千葉 成就  
特許庁審判長 鈴木 美知子
特許庁審判官 杉原 進
山崎 勝司
登録日 2002-03-08 
登録番号 特許第3286325号(P3286325)
権利者 ザ、プロクター、エンド、ギャンブル、カンパニー
発明の名称 強化耳パネルを有する使い捨て吸収体  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 坪井 淳  
代理人 村松 貞男  
代理人 橋本 良郎  
代理人 白根 俊郎  
代理人 橋本 良郎  
代理人 白根 俊郎  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 坪井 淳  
代理人 風間 鉄也  
代理人 村松 貞男  
代理人 風間 鉄也  

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