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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A41B
管理番号 1098115
異議申立番号 異議2003-72927  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2002-11-05 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-02 
確定日 2004-05-17 
異議申立件数
事件の表示 特許第3411912号「使い捨て吸収性物品」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3411912号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3411912号は、平成2年10月26日に特許出願した特願平2-289844号の一部を平成12年10月6日に新たな特許出願とした特願2000-307156号の一部をさらに平成14年2月7日に新たな特許出願とし、平成15年3月20日に設定の登録がなされ、平成15年6月3日にその特許掲載公報が発行された後、吉川恭恵より特許異議の申立てがなされたものである。

2.異議申立ての理由の概要
異議申立人吉川恭恵は、証拠として下記の甲第1号証及び甲第2号証を提出し、本件請求項1及び請求項2に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、本件請求項1及び請求項2に係る特許は取り消されるべきであると主張している。
[異議申立人の提出した証拠]
甲第1号証:特表平1-503473号公報
甲第2号証:米国特許第2733715号明細書

3.本件発明
本件請求項1及び請求項2に係る発明は、明細書の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これら両シート間に配置された吸収体とを有する吸収性本体と、中央部に該吸収性本体が接合固定される通気性シートであって、着用時にウエストを囲んで上記吸収性本体を着用者にあてて保持する最外層シートとを備え、
上記最外層シートは、撥水性を有するシートであり、
上記最外層シートの長手方向における両端縁部には、それぞれ上記吸収性本体の外方へ延出するウエストフラップが設けられ、該ウエストフラップには、それぞれウエスト開口部の弾性部材が配置されており、
上記最外層シートには、上記吸収性本体の両側部に凹欠部が形成されており、該凹欠部の形成されているくびれ部分の上方及び下方には、それぞれ、上記吸収性本体の幅方向外方に延出する左右一対のサイドフラップが設けられ、該サイドフラップそれぞれにサイドフラップの弾性部材が該吸収性本体の幅方向に配設されており、
上記サイドフラップの弾性部材は、上記サイドフラップにおける上記くびれ部分寄りの端部を除く部分と上記ウエストフラップとの間に配設されている使い捨て吸収性物品。
【請求項2】上記吸収性本体に、レッグ部にギャザーを形成する弾性部材が配置されている請求項1記載の使い捨て吸収性物品。」

4.証拠の記載
甲第1号証には、「弾性不織ウエブが単数又は複数のギャザリング可能な不織ウエブに合わされ、ウエスト開口部、脚開口部、中央股セクション、この股セクションで分離された前後パネル及び前記脚開口部とウエスト開口部及び前記前パネルと後ろパネルの間にそれぞれ延びこれらを相互接続している1対のサイドパネルを構成している、通気性のあるエラストマー不織製外側カバー」、及び、「液体浸透性ある体側のライナー、液体不浸透性のバリヤ及びその間に置かれた吸収性の複合材を含む、前記前後パネル及び前記股セクションの上にほぼ積重なることのできる吸収性のインサート構造」を含む「解剖学的に体形に合う、一般に自己調整式3次元使い捨て吸収性下着」の発明(特許請求の範囲1.の記載参照)が記載され、その実施例として、外側カバー(12)には、その股セクション(16)から切りとられた脚部開口部(18)を有する全体として漏刻形(くびれた形状)の断面形状を有し、それと合わせて側面方向に相反する耳状部分(24、26)の前方対をもつ前方パネル(28)と、もう1つの耳状部分の後方対(20、22)をもつ後方パネル(30)を構成していることが望ましいこと(第3頁右下欄第15〜21行の記載参照)、吸収性構造(32)は、例えば熱又は超音波により生成されるタイプの自生ボンドを用いて外側カバー(12)にとりつけ一体化された個別のインサートの形をしていること(第4頁左上欄第6〜11行の記載参照)、(外側カバーの)前方(13)及び後方(14)のウエストセクションはできればウエスト開口部に沿って完成したウエストヘム(66)を有していることが望ましいこと(第5頁左上欄第4〜6行の記載参照)、インサートが着用者の会陰部の輪郭により密にそうようにするため、ライナー(34)に股のゴム繊維入り布(60)を適用することもできること(第5頁左上欄第25〜27行の記載参照)、上記外側カバーのウエストヘム(66)内に付加的な弾性部材をとりこんで、弾性ギャザーを提供することもできること(第5頁右上欄第12〜22行の記載参照)、外側カバーはポリオレフィンを含むエラストマ不織積層材料で作られること(第6頁左上欄第13行〜同頁右上欄第24行の記載参照)等が図面とともに記載されており、第6図には、外側カバー(12)の中央部に、インサート(32)が配置され、中央股セクション(16)において、インサート(32)の両側部に凹欠部が形成され、それによるくびれ部の長手方向両側(上方及び下方)に幅方向外方に延出する左右1対の耳状部分をもつ前パネル及び後ろパネルが形成されている態様、及び、該くびれ部におけるインサート構造(32)の長手方向に沿って、一対の股のゴム繊維入り布(60)が配設されている態様が、また、第8乃至11図には、外側カバーを備えた吸収性下着の着用状態が示されている。
上記の記載から、甲第1号証には、「液体浸透性ある体側のライナーと、液体不浸透性のバリヤと、これらの間に置かれた吸収性の複合材とを有するインサート構造と、中央部に該インサート構造がとりつけ一体化される、通気性の外側カバーとを備え、上記インサート構造の長手方向に沿ってゴム繊維入り布が配置され、上記外側カバーは、ポリオレフィンを含む材料で作られ、その長手方向における両端縁部には、ウエストヘムが設けられ、該ウエストヘムには弾性部材が配置され、インサートの両側部における外側カバーには凹欠部が形成されており、該凹欠部の形成されているくびれ部分の上方及び下方にはそれぞれ上記インサートの幅方向外方に延出する左右一対の耳状部材をもつ前パネル及び後ろパネルが設けられている使い捨て吸収性下着」が記載されている。
甲第2号証には、異議申立人の提出した翻訳文を参照すると、「股部及び弾性的に集合させられた腰部をもつ防水シート材料からなるパンツ覆材と上述のパンツ覆材の股部内において同じ場所を占めるように合わされた中央部をもつおむつパッドとの組み合わせからなる幼児用ガーメント」に係る発明が記載されており(第3欄第25行〜第4欄第8行、claim2.の記載参照)、その実施例として、上記パンツ覆材の内側の腰周り部23に縦方向に離れて3本の円周弾性帯24、24’、24”が配されており、その最上帯24は折り返し縁縫い26内に覆われ、その下の2本はウエスト開口部と脚開口部との間に配されていることが図面とともに示されている(第2欄第28〜46行及びFIG.1〜5の記載参照)。

5.対比・判断
5-1.請求項1に係る発明について
本件請求項1に係る発明と上記甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証に記載された「使い捨て吸収性下着」、「液体浸透性ある体側のライナー」、「液体不浸透性のバリヤ」、「吸収性の複合材」、「インサート(構造)」、「外側カバー」、「耳状部分」は、それぞれ、本件請求項1に係る発明の「使い捨て吸収性物品」、「液透過性のトップシート」、「液不透過性のバックシート」、「吸収体」、「吸収性本体」、「最外層シート」、「サイドフラップ」に相当し、上記外側カバーは、吸収性のインサート(構造)がとりつけ一体化すなわち接合固定され、着用時にウエストを囲んで該インサート(構造)を着用者にあてて保持するものと認められ、甲第1号証に記載されたウエストヘムは、インサート(吸収性本体)の長手方向外方に延出する部分である点で本件請求項1に係る発明のウエストフラップと共通し、そこに配置される弾性部材は、本件請求項1に係る発明のウエスト開口部の弾性部材に相当するので、両者は
「液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これら両シート間に配置された吸収体とを有する吸収性本体と、中央部に該吸収性本体が接合固定される通気性シートであって、着用時にウエストを囲んで上記吸収性本体を着用者にあてて保持する最外層シートとを備え、
上記最外層シートの長手方向における両端縁部には、それぞれ上記吸収性本体の外方へ延出する部分が設けられ、該延出部分には、それぞれウエスト開口部の弾性部材が配置されており、
上記最外層シートには、上記吸収性本体の両側部に凹欠部が形成されており、該凹欠部の形成されているくびれ部分の上方及び下方には、それぞれ、上記吸収性本体の幅方向外方に延出する左右一対のサイドフラップが設けられている使い捨て吸収性物品。」
である点で一致しており、下記の点で相違している。
[相違点1]本件請求項1に係る発明の最外層シートは、撥水性を有するシートとされているのに対し、甲第1号証には、外側カバーが、ポリオレフィンを含むエラストマ不織積層材料で作られることは記載されているが、「撥水性」であることは明記されていない点。
[相違点2]本件請求項1に係る発明の最外層シートは、サイドフラップそれぞれにサイドフラップの弾性部材が該吸収性本体の幅方向に配設されており、上記サイドフラップの弾性部材は、上記サイドフラップにおける上記くびれ部分寄りの端部を除く部分と上記ウエストフラップとの間に配設されているとされているのに対し、甲第1号証には、外側カバーの耳状部分にインサートの幅方向に弾性部材を配置することについて記載も示唆もされていない点。
そこでまず、上記の【相違点2]について検討する。
異議申立人の提出した甲第2号証には、パンツ覆材とおむつパッドとからなる幼児用ガーメント、すなわち本件請求項1に係る発明でいう吸収性物品の外層をなすパンツ覆材の腰周り部に、3本の円周弾性帯が配されることが記載されており、そのうちの2本が配置される位置は、ウエスト開口部と脚開口部との間であるという点では、本件請求項1に係る発明の最外層シートのサイドフラップあるいは甲第1号証に記載された外側カバーの耳状部分の位置に対応しており、吸収性部材であるおむつパッドの幅方向に配置されているということができる。
しかしながら、甲第2号証に記載されたパンツ覆材は、その構造、形状において、本件請求項1に係る発明の最外層シートあるいは甲第1号証に記載された外側カバーとは全く相違するものであり、幅方向の弾性帯が脚開口部とウエスト開口部の間に配置されるというのみで、甲第1号証に記載された外側カバーの耳状部分にインサートの幅方向に弾性部材を配置し、吸収性本体の両側部で凹欠部の形成されているくびれ部分の上方及び下方に、それぞれ、上記吸収性本体の幅方向外方に延出する左右一対のサイドフラップと特定されたサイドフラップの、くびれ部分寄りの端部を除く部分と上記ウエストフラップとの間という特定された位置に弾性部材を配置するという本件請求項1に係る発明の構成とすることが当業者にとって容易に想到し得た事項であるとすることはできない。
さらに、甲第1号証に記載された外側カバーは「エラストマー不織製」であって、それ自体全体的に弾性を具備することを勘案すれば、甲第1号証に記載され外側カバーの耳状部分に弾性部材を配置するということは当業者は通常は想起しないものと認められる。
したがって、上記【相違点1】について検討するまでもなく、本件請求項1に係る発明は上記甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
異議申立人は、甲第2号証に記載されたパンツ覆材の弾性ベルトの配置箇所が甲第1号証に記載された耳状部分の領域であり、本件請求項1に係る発明の脚開口部とウエスト開口部の間の領域に該当することをもって、甲第2号証に記載された事項を甲第1号証に記載された使い捨ておむつに適用することは当業者が容易になし得る程度の事項である旨主張するが、甲第2号証に記載された事項を甲第1号証に記載された発明に適用し得ないことは上記のとおりであるのでこの主張は採用できない。

5-2.請求項2に係る発明について
本件請求項2に係る発明は、本件請求項1に係る発明をさらに限定して特定するものであり、本件請求項1に係る発明の構成を全て具備しているので、上記「5-1.請求項1に係る発明について」で述べたと同じ理由により、上記甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1及び請求項2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び請求項2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1及び請求項2に係る特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-04-23 
出願番号 特願2002-30587(P2002-30587)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A41B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 植前 津子  
特許庁審判長 鈴木 美知子
特許庁審判官 粟津 憲一
溝渕 良一
登録日 2003-03-20 
登録番号 特許第3411912号(P3411912)
権利者 花王株式会社
発明の名称 使い捨て吸収性物品  
代理人 羽鳥 修  

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