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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1099064
審判番号 不服2002-21299  
総通号数 56 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-11-01 
確定日 2004-06-23 
事件の表示 特願2000-73286「プリント配線母板、プリント配線母板加工用金型及びプリント配線母板の加工方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年9月28日出願公開、特開2001-267700〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年3月16日の出願であって、本願の請求項1〜14に係る発明は、平成14年8月12日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜14に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのもの(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)と認める。
「プリント配線母板から打ち抜かれたプリント回路板が元の穴にはめ込まれ、かつ、
前記プリント配線母板の少なくとも対向する2辺の耳部には、複数のスリットが設けられていることを特徴とするプリント配線母板。」

2.引用刊行物およびその記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された特開平3-46291号公報(以下、「引用例」という。)には「タイバープッシュバック式ピン穴加工済プリント基板」に関して、第1〜3図とともに以下の記載がある。
A)「タイバー基板の長手方向に一定間隔にプリントされたプリント部が抜き戻しされ且つプリント部にピン穴が穿設された多数のプリント基板を保持するタイバープッシュバック式ピン穴加工済プリント基板に於いて、前記各プリント基板間の位置でタイバー基板の左右両側縁から内側にスリットを設けると共に各プリント基板の四隅周辺でタイバー基板に捨穴を設けたことを特徴とするタイバープッシュバック式ピン穴加工済プリント基板。」(特許請求の範囲:第1頁左下欄6〜15行)
B)「近時ピン実装プリント基板1を製作する際、第3図に示す如くタイバー基板4の長手方向に一定間隔にプリントされたプリント部5が抜き戻しされ且つプリント部5にピン穴6が穿設された多数のプリント基板7を保持するタイバープッシュバック式ピン穴加工済プリント基板8が用いられている。
・・・上記タイバープッシュバック式ピン穴加工済プリント基板8における多数のプリント基板7はタイバー基板4から抜かれた際、その周縁にばりが生じる為、抜き穴7aに戻された際ばりが抜き穴7aに無理に圧入される結果タイバー基板4にストレスが生じ、タイバープッシュバック式ピン穴加工済プリント基板8には反りが発生する。」(第1頁右下欄11行〜第2頁左上欄11行)
C)「本発明のタイバープッシュバック式ピン穴加工済プリント基板は、各プリント基板間の位置でタイバー基板の左右両側辺から内側にスリットを設けると共に各プリント基板の四隅周辺でタイバー基板に捨穴を設けているので、各プリント基板を抜いた際に周縁や抜き穴内縁にばりが生じ、その状態で抜かれたプリント基板を抜き穴に戻された際、ばりが抜き穴に圧入される結果として生じるストレスがスリットや捨穴で吸収される結果、各プリント基板を抜き穴に戻して保持したタイバープッシュバック式ピン穴加工済プリント基板には全く反りが発生しないものである。」(第2頁右上欄12行〜左下欄3行)
D)「実施例のタイバープッシュバック式ピン穴加工済プリント基板8′は反りが発生しないので、従来のように反りを補正する必要が無い。従って、その後実施例のタイバープッシュバック式ピン穴加工済プリント基板8′を移送し乍ら各プリント基板7のピン穴6へのリードピンの実装作業や半導体等電子部品のチップ実装作業さらには検査、出荷作業を効率良く行うことができる。しかもピン穴6へのリードピンの実装時にストレスが生じないものである。
尚、実施例のタイバープッシュバック式ピン穴加工済プリント基板8′に於けるスリット9や捨穴10は、プリント基板7の抜き戻し後或いは抜き戻し前のいずれにおいて設けても良く、また同時加工が寸法的に可能な場合はそれでも良い。
またスリット9や捨穴10の形状や個数は実施例のものに限るものではなく、タイバー基板4及びプリント基板7の形状、サイズにより適宜選定されるものである。」(第3頁左上欄2〜20行)

上記A)〜D)の記載と併せて第1図を参酌すれば、上記引用例のタイバープッシュバック式ピン穴加工済プリント基板8′は、タイバー基板4から打ち抜かれたプリント部5を元の抜き穴にはめ込んで、その後の実装作業や検査、出荷作業を行うものであって、タイバー基板4の左右両側辺に複数のスリット9が設けられると共に、タイバー基板の各プリント基板4の四隅周辺に捨穴が設けられ、プリント基板が抜き穴に戻された際、ばりが抜き穴に圧入される結果として生じるストレスが、該スリットや捨穴で吸収される結果、各プリント基板を抜き穴に戻して保持したタイバープッシュバック式ピン穴加工済プリント基板には全く反りが発生しないものと認められる。
したがって、上記引用例には、
「タイバー基板4から打ち抜かれたプリント部5が抜き穴にはめ込まれ、かつ、
前記タイバー基板4の左右両側辺には、複数のスリット9が設けられているタイバープッシュバック式ピン穴加工済プリント基板8′。」の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されているものと認める。

3.本願発明と引用例記載の発明との対比
本願発明と引用例記載の発明とを対比すれば、引用例記載の発明の「タイバー基板4」、「タイバープッシュバック式ピン穴加工済プリント基板8′」は、共に本願発明の「プリント配線母板」に相当しており、また、引用例記載の発明の「プリント部5」、「抜き穴」は、それぞれ本願発明の「プリント回路板」、「元の穴」に相当している。さらに、引用例記載の発明におけるタイバー基板4の「左右両側辺」は、プリント配線母板の「対向する2辺」ということができるから、本願発明と引用例記載の発明は、
「プリント配線母板から打ち抜かれたプリント回路板が元の穴にはめ込まれ、かつ、
前記プリント配線母板の対向する2辺には、複数のスリットが設けられているプリント配線母板。」
である点で一致し、以下の相違点で相違しているものと認める。
<相違点>
本願発明のスリットは、プリント配線母板の対向する2辺の耳部に設けられるのに対し、引用例記載の発明のスリット9は、プリント配線母板であるタイバー基板4の左右両側辺から内側に設けられるものの、該左右両側辺が耳部といえるものか否か明らかでない点。

4.相違点の検討
一般にプリント基板の周囲部分に耳部を形成することは引用例を挙げるまでもなく慣用技術であるから、上記刊行物の発明で、スリット9を形成したタイバー基板4の左右両側辺を、プリント基板の耳部(プリント回路板が打ち抜かれた後に残る枠状部材の内の外枠部分)として構成することは当業者が適宜なし得たものというべきである。
そして、本願発明が奏する作用効果は、上記引用例記載の発明に示唆された事項から予測される程度以上のものではない。
したがって、本願発明は、上記引用例記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人(以下、「請求人」という。)は、審判請求書の第3頁9〜11行で「本願発明の特徴は、プリント配線母板にスリット(プリント回路板に直接接しておらず、かつプリント配線母板の外周に連通している切り込み)を形成し、かつプリント配線母板から捨穴(プリント回路板に直接接しており、かつプリント配線母板の外周に連通していない穴)を無くした点にある。」と主張しているが、本願の請求項1には、プリント配線母板の少なくとも対向する2辺の耳部に複数のスリットが設けられていることについては記載されているが、これ以外の穴やスリット等についてはその有無について何ら言及されていないから、本願の請求項1の記載では、本願発明がプリント配線母板にスリット以外に捨穴を有するものを除外しているということはできない。
また、たとえ本願発明のプリント配線母板が、捨穴を形成せず、スリットのみを形成したプリント配線母板であったとしても、上記引用例記載の発明のプリント基板におけるスリット9と捨穴10が、摘記事項C)に「・・・ストレスがスリットや捨穴で吸収される・・・」と並列的に記載されていることからも解るように、夫々が単独でもプリント基板に生じるストレスを吸収する作用効果を奏するものであって、また、プリント基板に生じるストレスを吸収する作用効果が、両者の相乗効果によってはじめて奏されるものでないことは当業者において自明である(この点につき、例えば実願昭59-192016号(実開昭61-106064号)のマイクロフィルム、実願昭59-192017号(実開昭61-106065号)のマイクロフィルムを参照されたい。前者はスリットのみで歪み吸収効果を奏し得ることが周知技術であることを示しており、後者はコーナー部分に隣接する透孔のみで剪断応力の吸収効果を奏しうることが周知技術であることを示している。なお、前者のスリットは切り込みとして形成されたものではないが、切り込み状のスリットと細長い穴状のスリットが、共に応力の緩和作用を有することは、例えば特開平9-181403号公報の抜き穴17,切り欠き19にみられるように周知技術であり、また、申立人も本願明細書の【0019】で「プリント回路板が複数列に渡って打ち抜かれる場合には、耳部にスリットを設けることに加えて、プリント配線母板の中央部に細長い角穴を設けるようにしても良い。」と自ら認めているところである。)から、上記引用例記載の発明におけるスリット9を単独で用いても、プリント基板に生じるストレスを吸収する作用効果が奏しうるであろうことは当業者が容易に想到し得るところであって、上記引用例記載の発明において、スリット9を単独で用いることは当業者が容易に行うことができたものである。
(この点につき、請求人は審判請求書の第5頁22〜27行で、「歩留まり向上機能及び脱落防止機能は、スリットを備えた基板であれば必ず奏する『独立した機能』あるいは『寄せ集め的な機能』ではなく、基板にスリットを形成し、かつ基板から捨穴を無くすという条件が揃ったときに初めて顕在化する『限定的な機能』であり・・・本願出願前においては、基板の反りを無くすために捨穴又は孤立穴を設けることが当業者の間で常識とされていた・・・のであるから、スリットと捨穴の双方を必須の構成要素とする引用文献1の記載に基づいて、スリットを形成し、かつ捨穴を無くすことによって、実用上十分な反りの低減効果が得られる点は、当業者が容易に予測し得たものでもない。」と主張しているが、請求人の主張する「歩留まり向上機能」とは、捨穴があるとその分だけプリント回路板の間隔が広くなるということであり、「脱落防止機能」とは、捨穴があるとその分だけプリント回路板が脱落しやすくなるということ(平成14年8月12日付けの意見書の第4頁26行〜第5頁12行)であって、これらはスリットの有無とは直接関係のない事項であるとともに、もし、捨穴があるとその分だけプリント回路板の間隔を広くしなければならず、捨穴があるとその分だけプリント回路板が脱落しやすくなる(これに関しては、前述の実願昭59-192017号(実開昭61-106065号)のマイクロフィルムの記載等からみて若干疑問である。)のであれば、スリット9を単独で用いても、プリント基板に生じるストレスを吸収する作用効果が奏し得るであろうことは、上述したように当業者が容易に想到し得るところであることからして、上記引用例記載の発明で、そのような不都合が起こらないように捨穴を用いないことは当業者が容易に行うことができたものというべきである。)。

5.むすび
以上詳述したとおり、本願の請求項1に係る発明は、上記引用例記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そして、このような進歩性を有しない発明を包含する本願は、特許請求の範囲の請求項2〜14に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-04-27 
結審通知日 2004-04-27 
審決日 2004-05-12 
出願番号 特願2000-73286(P2000-73286)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 落合 弘之中川 隆司  
特許庁審判長 八日市谷 正朗
特許庁審判官 田々井 正吾
ぬで島 慎二
発明の名称 プリント配線母板、プリント配線母板加工用金型及びプリント配線母板の加工方法  
代理人 上野 登  
代理人 小林 かおる  
代理人 畠山 文夫  
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