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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02D
管理番号 1099182
審判番号 不服2001-5141  
総通号数 56 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-08-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-04-05 
確定日 2004-06-24 
事件の表示 平成 8年特許願第 13077号「エンジン停止制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 8月12日出願公開、特開平 9-209790〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、
(1)平成8年1月29日の出願であって、平成11年12月3日付、及び平成12年9月11日付で、手続補正がなされ、平成13年2月28日付けで拒絶査定がなされ(発送日:平成13年3月6日)、
(2)それに対し、平成13年4月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成13年5月2日付で手続補正がなされた、
ものである。

II.平成13年5月2日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成13年5月2日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】車両を走行させ、油圧制御式変速機へ油圧を供給する油圧発生手段を駆動するエンジンを、車両運転中の停車状態において一時的に停止するエンジン停止制御装置であって、フットブレーキの踏込み操作による作動状態を検出し、前記フットブレーキの解除を検出したときに即座にエンジン始動指令を出し、前記フットブレーキの解除からアクセル操作が行われるまでの期間にエンジン回転数の立上げを行うことで、車両停車中におけるエンジン停止状態からエンジンを再始動し、前記油圧の供給を開始することを特徴とするエンジン停止制御装置。」と補正された。
上記補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「車両運転中の停車状態においてエンジンを一時的に停止する」について「車両を走行させ、油圧制御式変速機へ油圧を供給する油圧発生手段を駆動するエンジンを、車両運転中の停車状態において一時的に停止する」との限定を付加し、同じく「再始動する」について「再始動し、前記油圧の供給を開始する」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
上記訂正事項「車両を走行させ、油圧制御式変速機へ油圧を供給する油圧発生手段を駆動するエンジンを、車両運転中の停車状態において一時的に停止する」については、願書に最初に添付した明細書の段落【0017】及び【0019】に記載されているから、また、上記訂正事項「再始動し、前記油圧の供給を開始する」については、願書に最初に添付した明細書の段落【0012】に記載されているから、いずれも、新規事項の追加に該当しない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(2)刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された「特開昭58-5444号公報」(以下、「刊行物1」という。)には、
・「本発明は車輌が間断的に短時間停止させられる時燃料を節約するための車輌の内燃機関を自動的に停止させ再始動させる装置に関するものである。本発明はまたこの自動停止及び再始動動作により節約される燃料の量を測定し、表示する装置に関するものでもある。
自動車輌は日常エンジンをかけたまま停止し、そのままの状態で待たねばならないことが多い。このような停止時に燃料を節約するためにエンジンの回転を止め、動ける状態になつた時エンジンを再スタートさせる機構が種々提案されている。」(3頁上左欄19行〜同頁上右欄9行)
・「斯くして自動車に搭載された時本発明エンジン停止/始動装置10は自動的に動作し、自動車が停止信号の所へ来てエンジンが遊転する時自動車のエンジンを停止させ、運転者がエンジンアクセラレータを踏んだ時エンジンを再始動させる。」(4頁下左欄14〜18行)
・「さて自動車が例えば長い交通信号灯のところに来て一旦停止する時は自動的にエンジンが停止する。この時は、(1)点火スイツチ28はオンで、(2)始動ラツチ116は「ON」状態にあり、(3)ブレーキがかかつてブレーキスイッチ24が働き、(4)ウオームアツプ時間遅延装置108は3分間経過しており、(5)自動車が停止し、これが速度センサ32で検出され、2秒の遅延時間(114)が経過する。
これらの状態が前部検出され且つ第1の論理部82に入力信号が与えられると、これから自動停止ラツチ124の2個の端子に出力信号を出す。すると自動停止ラツチ124からリレードライバ72を介して点火電力制御リレー74に信号が送られ、この点火電力制御リレーが働らいて、点火コイル又は電子点火装置16に至る接続を切り、これが働らけないようにする。これによりエンジンが停止する。」(7頁上右欄3〜18行)
・「アクセラレータペダル42を踏むことにより自動始動スイツチ22が閉成し、これがリード線86aを介して入力信号として与えられる。」(7頁下右欄7〜10行)
・「本発明エンジン停止/始動装置10はDとLとにつき選択できるギヤ選択器付きの自動トランスミツシヨン自動車をスタートさせることができる。こうすれば自動始動サイクルが完了した後運転者がトランスミツシヨンをギヤに入れるに必要な時間が省ける。」(8頁上左欄6〜11行)
と記載されている。
上記各記載、及びFIG_1ないしFIG_4cの記載からみて、刊行物1には、
自動車を走行させ、ギヤ選択器付の自動トランスミツシヨンを駆動するエンジンを、自動車運転中の停車状態において一時的に停止するエンジン停止/始動制御装置10であって、ブレーキの操作による作動状態は検出し、アクセラレータペダル42の踏みを検出したときにエンジン始動指令を出し、エンジン回転数の立上げを行うことで、自動車停車中におけるエンジン停止状態からエンジンを再始動するエンジン停止/始動制御装置10。
が記載されていると認められる。
原査定の拒絶の理由に引用された「実願昭56-77572号(実開昭57-193035号)のマイクロフィルム」(以下、「刊行物2」という。)には、
・「本考案は自動車用エンジンの始動及び停止を制御する装置に関し、特に車両減速時の燃費向上技術に関する。」(2頁1〜3行)
・「エンジン暖機状態においてエンジン減速状態をブレーキ踏み込みで検出し、かかる減速時には自動的に燃料供給及びイグニツシヨン電流供給を停止してエンジン停止を行うとともに、再始動に際してはアクセル踏み込みの前にブレーキ踏み込みを解除することに着目してブレーキ踏み込み解除時にエンジンの再始動を行ない得るように構成する一方、エンジンが暖機完了前であれば暖機促進の意味からブレーキ作動の有無に拘わらず、エンジン停止を行なわない構成としたエンジン作動制御装置を提供するものである。」(3頁16行〜4頁6行)
・「従つてブレーキペダルを踏み込んでいる状態、即ちエンジン減速状態ではブレーキスイツチ7がオフとなりエンジン停止・再始動スイツチ回路5がオフとなつて燃料供給回路C,点火回路Dが開成され、同時に再始動回路Bも開成される。」(6頁19行〜7頁3行)
・「ブレーキ踏み込み状態はもちろん急減速時をも含むが、緩減速状態をも含むものである。
一旦停止したエンジンはアクセルを踏み込む前に必ずブレーキの踏込みを放すから、ブレーキスイツチ7がオンとなりアクセル踏込みによる加速前に、再始動回路Bが閉成されてスタータモータ4が作動し、同時に燃料供給回路C及び点火回路Dが閉成されてエンジンが再起動回転される。従つてエンジンブレーキを除くブレーキ踏込み時の全減速領域においてエンジンが停止され、且つその後の加速に対する応答遅れがない。 前記再始動が完了すればエンジン回転速度が所定値以上となり、」(7頁14行〜8頁6行)
・「この場合、その燃費向上は急減速時に限らずブレーキ踏込み時のあらゆる減速時に対応できるものである。又、減速後の加速を行う場合、ブレーキ踏込みを解除した後にアクセルを踏込んで加速するため加速の応答性が良い。」(9頁13〜18行)
と記載されている。
上記各記載、及び第1図ないし第2図の記載からみて、刊行物2には、
自動車を走行させるエンジンを、自動車運転中において一時的に停止するエンジン作動制御装置であって、ブレーキペダルでのブレーキの踏込み操作による作動状態を検出し、前記ブレーキペダルでのブレーキの解除を検出したときにエンジン始動指令を出し、前記ブレーキペダルでのブレーキの解除からアクセル操作が行われるまでの期間にエンジン回転数の立上げを行うことで、エンジン停止状態からエンジンを再始動するエンジン作動制御装置。
が記載されていると認められる。
原査定の拒絶の理由に引用された「実願昭57-19430号(実開昭58-122761号)のマイクロフィルム」(以下、「刊行物3」という。)には、
・「本考案は自動車用エンジン(主として内燃機関)の制御装置に関し,特にエンジンの停止と始動とを自動的に制御する装置に関する。 近年,信号待ちや交通渋滞時等の停車時におけるアイドリングによる燃料消費を節約し,燃費を低減するため,自動車が停止するとエンジンを停止し,発進時にエンジンを始動する装置が開発されている。」(1頁13〜20行)
・「特に最近の自動車には,パワーステアリング装置やパワーブレーキ装置のようにエンジンの動力による補助力が与えられている装置が多いので,エンジン停止のまま発車すると,上記の補助力が与えられないため,ハンドルが急に重くなり,ブレーキの効きが悪くなるので,安全上の問題が生じるおそれもあった。」(4頁1〜7行)
・「本考案は上記のごとき従来技術の種々の問題を解決するためになされたものであり,通常の運転操作のみによって自動的にエンジンを停止,始動させ,かつ安全上も問題のないエンジン制御装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため本考案においては,駐車ブレーキの操作に応じてエンジンを停止させ,駐車ブレーキのリリースボタンの操作に応じてエンジンを始動させ,」(4頁13〜16行)
・「また駐車ブレーキの操作は全く通常の運転操作であるから,操作が煩雑になるおそれもなく,更に自動変速機装備車にも適用出来る等,多くの優れた効果を得ることが出来る。」(5頁13〜16行)
・「したがって停車時に駐車ブレーキをかけるとエンジンが自動的に停止し,かつ発進時に駐車ブレーキを解除するとエンジンが自動的に始動するので,停車中のアイドリングによる無駄な燃料消費をなくすことが出来る。」(20頁5〜9行)
・「また坂道の駐車時からの発進時においても,発進のために駐車ブレーキを解除すれば必ずエンジンが始動するから,パワーステアリングやパワーブレーキ等の補助力に影響が生じることがなく,安全である。」(25頁5〜8行)
と記載されている。
上記各記載、及び第1図ないし第7図の記載からみて、刊行物3には、
自動車を走行させ、パワーステアリングやパワーブレーキ等に補助力を与えるエンジンを、自動車運転中の停車状態において一時的に停止するエンジン制御装置であって、駐車ブレーキの操作による作動状態を検出し、前記駐車ブレーキの解除を検出したときにエンジン始動指令を出し、車両停車中におけるエンジン停止状態からエンジンを再始動するエンジン制御装置。
が記載されていると認められる。
(3)対比及び判断
本願補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の「自動車」、「エンジン停止/始動制御装置10」は、それぞれ、本願発明の「車両」、「エンジン停止制御装置」に相当するので、両者は、
車両を走行させるエンジンを、車両運転中の停車状態において一時的に停止するエンジン停止制御装置であって、検出したときにエンジン始動指令を出し、エンジン回転数の立上げを行うことで、車両停車中におけるエンジン停止状態からエンジンを再始動するエンジン停止制御装置。
の点で一致し、
(イ)本願補正発明では、油圧制御式変速機へ油圧を供給する油圧発生手段を駆動するエンジンを、停止するエンジン停止制御装置であって、フットブレーキの踏込み操作による作動状態を検出し、前記フットブレーキの解除を検出したときに即座にエンジン始動指令を出し、前記フットブレーキの解除からアクセル操作が行われるまでの期間にエンジン回転数の立上げを行うことで、車両停車中におけるエンジン停止状態からエンジンを再始動し、前記油圧の供給を開始するエンジン停止制御装置であるのに対して、刊行物1に記載された発明では、ギヤ選択器付の自動トランスミツシヨンを駆動するエンジンを、停止するエンジン停止制御装置であって、ブレーキの操作による作動状態は検出し、アクセラレータペダル42の踏みを検出したときにエンジン始動指令を出し、エンジン回転数の立上げを行うことで、車両停車中におけるエンジン停止状態からエンジンを再始動するエンジン停止制御装置である点、
で相違する。
相違点(イ)について検討する。
本願補正発明と刊行物2に記載された発明とを対比すると、刊行物2に記載された発明の「自動車」、「エンジン作動制御装置」、「ブレーキペダルでのブレーキの踏込み操作」、「ブレーキペダルでのブレーキの解除」は、それぞれ、本願発明の「車両」、「エンジン停止制御装置」、「フットブレーキの踏込み操作」、「フットブレーキの解除」に相当するので、刊行物2には、「車両を走行させるエンジンを、車両運転中において一時的に停止するエンジン停止制御装置であって、フットブレーキの踏込み操作による作動状態を検出し、前記フットブレーキの解除を検出したときにエンジン始動指令を出し、前記フットブレーキの解除からアクセル操作が行われるまでの期間にエンジン回転数の立上げを行うことで、エンジン停止状態からエンジンを再始動するエンジン停止制御装置。」が記載されていると認められる。
本願補正発明と刊行物3に記載された発明とを対比すると、刊行物3に記載された発明の「自動車」、「エンジン制御装置」は、それぞれ、本願発明の「車両」、「エンジン停止制御装置」に相当するので、刊行物3には、「車両を走行させ、パワーステアリングやパワーブレーキ等に補助力を与えるエンジンを、車両運転中の停車状態において一時的に停止するエンジン停止制御装置であって、駐車ブレーキの操作による作動状態を検出し、前記駐車ブレーキの解除を検出したときにエンジン始動指令を出し、車両停止中におけるエンジン停止状態からエンジンを再始動するエンジン停止制御装置。」が記載されていると認められる。
i)刊行物1に記載された発明は、「車両運転中の停車状態において一時的に停止するエンジン停止制御装置であって・・・車両停車中におけるエンジン停止状態からエンジンを再始動するエンジン停止制御装置」であり、刊行物2には、「一旦停止したエンジンはアクセルを踏み込む前に必ずブレーキの踏込みを放すから、ブレーキスイツチ7がオンとなりアクセル踏込みによる加速前に、再始動回路Bが閉成されてスタータモータ4が作動し、同時に燃料供給回路C及び点火回路Dが閉成されてエンジンが再起動回転される。」(7頁16行〜8頁1行)とも記載さており、アクセルが操作される前にエンジンが再始動されることをも示しており、刊行物3には、「自動車運転中の停車状態において一時的に停止するエンジン制御装置であって、・・・ブレーキの解除を検出したときにエンジン始動指令を出し、車両停車中におけるエンジン停止状態からエンジンを再始動するエンジン制御装置」が、記載されていると認められ、そして、刊行物2及び刊行物3には、前記認定の如き発明が記載されていると認められる。
更に、刊行物2及び刊行物3に記載された発明並びに刊行物1に記載された発明は、エンジン停止制御装置という同一の技術分野に属するものである。
したがって、エンジンを、停止するエンジン停止制御装置であって、フットブレーキの踏込み操作による作動状態を検出し、前記フットブレーキの解除を検出したときにエンジン始動指令を出し、前記フットブレーキの解除からアクセル操作が行われるまでの期間にエンジン回転数の立上げを行うことで、車両停車中におけるエンジン停止状態からエンジンを再始動するエンジン停止制御装置とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
ii)「即座に」については、刊行物2には、「一旦停止したエンジンはアクセルを踏み込む前に必ずブレーキの踏込みを放すから、ブレーキスイツチ7がオンとなりアクセル踏込みによる加速前に、再始動回路Bが閉成されてスタータモータ4が作動し、同時に燃料供給回路C及び点火回路Dが閉成されてエンジンが再起動回転される。」(7頁16行〜8頁1行)と記載され、第2図には、ブレーキスイッチ7、再始動回路B、スタータモータ4、燃料供給回路C、及び点火回路Dが(点火装置12とともに)記載されており、本願補正発明については、明細書においても、「フットブレーキの解除を検出したときに即座にエンジン始動指令を出し」(段落【0011】)、「フットブレーキの解除後即座にエンジン再起動の指令が出され」(段落【0012】)、「このコントローラ17には、車速、ブレーキの作動状態、及びバッテリ15の電圧値が入力される。」(段落【0021】)、『(B)「ブレーキがON状態」』(段落【0023】)、「また(B)の条件は、ブレーキの作動状態を示す情報に基づき判断される。」(段落【0025】)、『(D)「ブレーキが解除されたこと」』(段落【0030】)、「条件(D)が成立したことの判断は、ブレーキの作動状態(ON/OFF)を示す情報を基に、ブレーキOFFを検知したことをもってブレーキの解除(ON→OFF)と判断することにより行われる。」(段落【0031】)、「エンジン停止後はブレーキのON/OFF状態を検出して判断する(S5、条件(D))。ブレーキONの場合には」(段落【0036】)、「またステップS5においてブレーキOFFを検出した場合、ブレーキが解除されたものと判断し、ステップS7へ進み上記と同様にエンジンを始動する。」(段落【0036】)、「エンジン停止後、ブレーキが解除されると、本制御装置はブレーキ解除を検出してエンジン再始動のための制御信号を出力する(図中E)。」(段落【0039】)、及び「コントローラ31には、実施形態1と同様に車速、ブレーキの作動状態及びバッテリ37の電圧値が入力される。」(段落【0051】)と、記載されているので、格別な差異は認められない。
iii)車両を走行させ、油圧制御式変速機へ油圧を供給する油圧発生手段を駆動するエンジンは、周知事項である(必要なら、特開昭61-180052号公報、特開平5-338473号公報等参照。)。
そして、エンジンが、油圧制御式変速機へ油圧を供給する油圧発生手段を駆動するのであれば、エンジンを再始動する場合には、前記油圧の供給を開始することは、自明である。
しかも、刊行物1には、「本発明エンジン停止/始動装置10はDとLとにつき選択できるギヤ選択器付きの自動トランスミツシヨン自動車をスタートさせることができる。こうすれば自動始動サイクルが完了した後運転者がトランスミツシヨンをギヤに入れるに必要な時間が省ける。」(8頁上左欄6〜11行)とも記載されており、エンジン停止制御装置において、自動変速機を設けること(及び自動変速機を駆動すること)が記載されていると認められる。
更に、刊行物3には、「特に最近の自動車には,パワーステアリング装置やパワーブレーキ装置のようにエンジンの動力による補助力が与えられている装置が多いので,エンジン停止のまま発車すると,上記の補助力が与えられないため,ハンドルが急に重くなり,ブレーキの効きが悪くなるので,安全上の問題が生じるおそれもあった。」(4頁1〜7行)及び「また坂道の駐車時からの発進時においても,発進のために駐車ブレーキを解除すれば必ずエンジンが始動するから,パワーステアリングやパワーブレーキ等の補助力に影響が生じることがなく,安全である。」(25頁5〜8行)とも記載されており、駐車ブレーキの解除を検出したときにエンジン始動指令を出すことにより、パワーステアリングやパワーブレーキ等の補助力に影響が生じることがなく、安全である、ことが記載されていると認められ、エンジンにより油圧を供給する油圧発生手段が駆動される油圧制御式変速機も、エンジンの動力による力が与えられている装置であるので、また、「パワーステアリングやパワーブレーキ等の」と記載されているので、油圧制御式変速機へ油圧を供給する油圧発生手段を駆動するエンジンとし、エンジンを再始動し、油圧の供給を開始することとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、同時に、刊行物3には、平成13年5月2日付の手続補正書の段落【0054】における【発明の効果】の項に記載された「エンジン始動のためのタイムラグによる違和感やショックを運転者に与えることがな」(平成13年5月2日付の手続補正書3頁6〜7行)いこと、及び「油圧制御式変速機に供給される油圧がアクセルONに先だって立ち上げられ、アクセル操作時には正常な変速機制御が実行される」(平成13年5月2日付の手続補正書3頁9〜10号)こととの効果が示唆されていることにもなる。
したがって、油圧制御式変速機へ油圧を供給する油圧発生手段を駆動するエンジンを停止するエンジン停止制御装置であって、エンジンを再始動し、油圧の供給を開始するエンジン停止制御装置とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
以上のことより、刊行物2及び刊行物3に記載された発明並びに周知事項を刊行物1に記載された発明に適用し、もって、油圧制御式変速機へ油圧を供給する油圧発生手段を駆動するエンジンを、停止するエンジン停止制御装置であって、フットブレーキの踏込み操作による作動状態を検出し、前記フットブレーキの解除を検出したときに即座にエンジン始動指令を出し、前記フットブレーキの解除からアクセル操作が行われるまでの期間にエンジン回転数の立上げを行うことで、車両停止中におけるエンジン停止状態からエンジンを再始動し、前記油圧の供給を開始するエンジン停止制御装置とすることは、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、刊行物1ないし刊行物3に記載された発明、及び周知事項から当業者であれば予測できる程度のものである。
(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

III.本願発明について
平成13年5月2日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成12年9月11日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】車両運転中の停車状態においてエンジンを一時的に停止するエンジン停止制御装置であって、フットブレーキの踏込み操作による作動状態を検出し、前記フットブレーキの解除を検出したときに即座にエンジン始動指令を出し、前記フットブレーキの解除からアクセル操作が行われるまでの期間にエンジン回転数の立上げを行うことで、車両停車中におけるエンジン停止状態からエンジンを再始動することを特徴とするエンジン停止制御装置。」
(1)刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、前記「II.(2)」に記載したとおりである。
(2)対比及び判断
本願発明は、前記II.で検討した本願補正発明から「車両運転中の停車状態においてエンジンを一時的に停止する」の限定事項である「車両を走行させ、油圧制御式変速機へ油圧を供給する油圧発生手段を駆動するエンジンを、車両運転中の停車状態において一時的に停止する」との構成を省き、同じく「再始動する」の限定事項である「再始動し、前記油圧の供給を開始する」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「II.(2)」に記載したとおり、刊行物1ないし刊行物3に記載された発明、及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1ないし刊行物3に記載された発明、及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1ないし刊行物3に記載された発明、及び周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-04-13 
結審通知日 2004-04-20 
審決日 2004-05-10 
出願番号 特願平8-13077
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F02D)
P 1 8・ 121- Z (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 所村 美和  
特許庁審判長 西野 健二
特許庁審判官 亀井 孝志
鈴木 充
発明の名称 エンジン停止制御装置  
代理人 吉田 研二  
代理人 石田 純  
代理人 金山 敏彦  

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