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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N |
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管理番号 | 1100427 |
審判番号 | 不服2001-9535 |
総通号数 | 57 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-06-07 |
確定日 | 2004-07-15 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第268336号「内燃機関の排気浄化装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 4月28日出願公開、特開平 9-112257〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】手続きの経緯 本願は、平成7年10月17日の出願であって、その請求項1〜3に係る発明は特許を受けることができないとして、平成13年4月27日に前審において拒絶査定がなされた。 これに対し、平成13年6月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成13年6月21日付けで手続補正がなされたものである。 そして、この補正は、明細書の「特許請求の範囲」を変更するものを含むものであって、該変更は、願書に添付された明細書の特許請求の範囲を、特許法第17条の2第1項第3号の規定により平成13年6月21日付けの手続補正書に記載のとおりに補正するものである。 【2】平成13年6月21日付けの手続補正について ・[補正却下の決定の結論] 平成13年6月21日付けの手続補正を却下する。 ・[理由] (1)補正の内容 出願人が求めている特許請求の範囲に関する補正の内容は、次のとおりである。 特許請求の範囲の請求項1の記載を、 「【請求項1】 複数の気筒を有し、負荷に応じて一部の気筒への燃料の噴射を休筒させる減筒運転を行う内燃機関において、減筒運転時に稼動する気筒からの排気が導かれる第1排気通路と、この第1排気通路に設けられた低温用酸化触媒と、減筒運転時に休止する気筒からの排気が導かれる第2排気通路と、この第2排気通路と前記第1排気通路が合流した主排気通路と、この主排気通路に設けられた主酸化触媒とを備え、減筒運転時、稼動する気筒の第1排気通路から同稼動する気筒の吸気通路だけへ直接的に排気を還流させる排気還流通路を設けたことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。」と補正する。 そして、上記下線部を付した事項を新たに付け加えるこの補正は、本願の願書に最初に添付した明細書の段落[0026]、[0027]、図1の記載によれば、新規事項を追加するものではなく、また、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認める。 そこで、補正後の請求項1に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか否か)について、以下に検討する (2)補正後の発明 上記補正後の請求項1〜3に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「補正発明1」という。)は、上記(1)の箇所で既述したとおりのものである。 (3)引用刊行物の記載事項 これに対し、原査定の拒絶の理由で引用した実願昭53-51422号(実開昭54-155015号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、次の技術的事項が記載されている。 ・引用例1; (a)「従来多気筒エンジンにおいて、その燃費を向上させるために運転状態に応じて燃料を供給する気筒数を変えるようにしたエンジンが知られている。これはエンジンの負荷が小さいときには、燃料を供給する気筒数を減らし、燃料が供給された気筒の負荷を増大させ、結果として燃費の良い高負荷範囲での運転を可能とするものである。」(明細書第2頁第15行〜第3頁第6行) (b)「ところで、かかる気筒数制御エンジンでは燃費向上のメリットは大きいが、反面、燃料が供給される気筒(全気筒に燃料を供給する場合も含む)は常に高負荷運転が行われるためNOxの排出量が増加する傾向にある。そこで、排気環流を行うこともあるが、排気環流のみではNOx低減効果も充分でなく、また、せつかく燃費を向上させようとするのに対して悪影響を与えるという欠点があった。このため、燃費を悪化させることなく、排気を浄化する装置として、触媒装置を利用することが考えられる。」(明細書第4頁第3〜14行) (c)「第3図は、第2図の詳細説明図で6気筒の気筒数制御エンジンの例を示し、エンジン1の第1気筒から第3気筒を休止気筒、第4気筒から第6気筒を稼動気筒とし、2,3は夫々の排気通路で、合流して合流排気通路4となり、大気に開放する。稼動排気通路3に三元触媒5を介装すると共に、合流排気通路4に触媒装置6を介装する。この触媒装置6は前述のように三元触媒であることが望しいが、酸化触媒でも良い。」(明細書第7頁第9行〜第8頁第2行) (d)「一部気筒稼働時には、排気は排気通路3側のみに排出され、この排気の総合空燃比が理論空燃比近傍にフィードバック制御されるので、この排気は三元触媒5によってNOx,CO,HC共に浄化される。休止気筒の排気通路2側には空気が流出するが、稼動気筒側の排気と合流混合されるので温度を大きく下げることなく触媒装置6に流入し、この空気の混入した排気は触媒装置6によってHC,COの酸化浄化を更に助長されて大気中に排出される。」(明細書第9頁第8行〜第10頁第2行) (e)「この時、NOx排出量が特に増大するのが、一部気筒を休止させた時であることから、全気筒稼働時にはCO,HCを主に触媒装置6で浄化し、NOxは排気環流を行うこと等によって達成できる場合があり、この場合には、触媒装置6は酸化触媒で足りる。尚、排気環流は、稼動気筒側の排気通路3から吸気側へ環流通路12、環流制御弁13を介して環流する。これによって、運転状態にかかわらず排気を環流することが可能となる。」(明細書第10頁第11行〜第11頁第5行) また、第3図の記載から、全気筒の吸気通路が合流するサージタンク(吸気側)に、環流通路12を介して稼働気筒側の排気が環流されることが、看取できる。 以上の記載a〜e、及び、第3図の記載からみて、 引用例1には、 「複数の気筒を有し、負荷に応じて一部の気筒への燃料の噴射を休筒させる減筒運転を行うエンジンにおいて、減筒運転時に稼動する気筒からの排気が導かれる排気通路3と、この排気通路3に設けられた三元触媒5と、減筒運転時に休止する気筒からの排気が導かれる排気通路2と、この排気通路2と前記排気通路3が合流した合流排気通路4と、この合流排気通路4に設けられた触媒装置6(三元触媒又は酸化触媒)とを備え、稼動する気筒の排気通路3から吸気側のサージタンクへ排気を還流させる還流通路12を設けたエンジンの排気浄化装置」、 という発明が記載されているものと認められる。 (4)対比 (対比) そこで、補正発明1と引用例1に記載された発明とを対比すると、 引用例1に記載された発明の「排気通路3」、「排気通路2」、「合流排気通路4」、「環流通路12」、「エンジン」は、それぞれ、補正発明1の「第1排気通路」、「第2排気通路」、「主排気通路」、「排気環流通路」、「内燃機関」に相当する。 また、引用例1に記載された発明の「三元触媒5」と、補正発明1の「低温用酸化触媒」は、排気を浄化する「排気浄化触媒」という限りで一致し、引用例1に記載された発明の「触媒装置6(三元触媒又は酸化触媒)」と、補正発明1の「主酸化触媒」は、主排気通路に設けられて排気を浄化する「主排気浄化触媒」という限りで一致する。 そして、補正発明1の「吸気通路」は吸気側に設けられるものであるから、引用例1に記載された発明の「吸気側」と一致する。 したがって、両者は、 「複数の気筒を有し、負荷に応じて一部の気筒への燃料の噴射を休筒させる減筒運転を行う内燃機関において、減筒運転時に稼動する気筒からの排気が導かれる第1排気通路と、この第1排気通路に設けられた排気浄化触媒と、減筒運転時に休止する気筒からの排気が導かれる第2排気通路と、この第2排気通路と前記第1排気通路が合流した主排気通路と、この主排気通路に設けられた主排気浄化触媒とを備え、稼動する気筒の第1排気通路から同稼動する気筒の吸気側へ排気を還流させる排気還流通路を設けた内燃機関の排気浄化装置」、 で一致し、以下の各点(イ)〜(ハ)で相違している。 (相違点) (イ)補正発明1は、「排気浄化触媒」が低温用酸化触媒であり、「主排気浄化触媒」が主酸化触媒であるのに対し、引用例1に記載された発明は、「排気浄化触媒」が三元触媒5であり、「主排気浄化触媒」が触媒装置6(三元触媒又は酸化触媒)である点。 (ロ)補正発明1は、減筒運転時に排気を環流させるものであるのに対し、引用例1に記載された発明は、減筒運転時に排気を環流させるものであるのか、不明である点。 (ハ)補正発明1は、稼動する気筒の吸気通路だけへ直接的に排気を還流させるものであるのに対し、引用例1に記載された発明は、吸気側のサージタンクへ排気を還流させるものである点。 (5)判断 以下、前記各相違点(イ)〜(ハ)について検討する。 (相違点の検討) ・相違点(イ)について; ところで、実願平2-86053号(実開平4-44427号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、「従来の技術」を説明する箇所に、次のような記載がある。 「ガソリン機関から排出されるHC、COとNOを浄化するために排気系に三元触媒を設置することは、既に広く実用化されているが、ディーゼル機関では、吸気量を絞ることなく燃料噴射量でのみ出力を制御し、空燃比も大幅にリーンであることから、理論空燃比付近でのみ有効に働く三元触媒を用いることができない。そのため、例えば、特開昭62-51727号公報にもあるように、排気系にHC、CO(SOF)を酸化処理する酸化触媒を設けると共に、NOについては排気の一部を吸気中に環流させることにより低減をはかっている。この場合、ディーゼル機関の排気温度はガソリン機関よりも相対的に低く、酸化触媒の働きが不十分となりがちで、このためとくに排気温度の低い運転領域では、吸気通路に設けた絞弁により吸気を絞って排気温度を上昇させ、酸化触媒によるHC、COの浄化効率を高めるようにしている。」(明細書第1頁第18行〜第2頁第15行) それゆえ、上記刊行物1、等に記載されるように、例えば、(三元触媒を用いることができない)ディーゼル機関では、排気系に酸化触媒を設けると共に、排気の一部を吸気中に環流させることにより、もって、機関から排出されるHC、COとNOを低減することは、本願出願前、当業者にとって周知の技術事項であるものと認められる。 また、このようなディーゼル機関において、(Pt等の貴金属系の)「低温用酸化触媒」を用いることは、一例として、実願昭62-92057号(実開昭63-200613号)のマイクロフィルム、等に記載されるように、本願出願前、当業者にとって周知の技術事項である。 さらに、ディーゼル機関においても、負荷に応じて一部の気筒への燃料の噴射を休筒させる減筒運転を行うことは、本願出願前、当業者にとって周知の技術事項である。 してみると、引用例1記載の発明を、例えば、(減筒運転を行う)ディーゼル機関に適用し、また、当該適用に際し、引用例1記載の発明の三元触媒5及び触媒装置6を、共に酸化触媒とするとともに、そのうち特にエンジンの負荷が小さい減筒運転時に稼働する気筒側の排気通路3に設けられる酸化触媒を「低温用酸化触媒」とすることは、引用例1記載の発明が排気環流通路を備えるものであり、しかも、当該適用を妨げる特段の事情も存在しない以上、当業者が容易になし得るものであるというべきである。 したがって、引用例1記載の発明を、例えば、ディーゼル機関に適用し、もって、補正発明1の相違点(イ)に係る事項のように構成することは、当業者が容易になし得るものである。 ・相違点(ロ)について; 上記刊行物1に記載されるように、ディーゼル機関の排気温度はガソリン機関よりも相対的に低く、酸化触媒の働きが不十分となりがちなことは、本願出願前、当業者にとって周知の技術事項であるから、前述のように、引用例1記載の発明を、例えばディーゼル機関に適用するに際し、排気浄化触媒を酸化触媒とする場合において、特に、低負荷時、即ち、減筒運転時には排気温が低くなり、酸化触媒の働きが不十分になることが起こり得ることは、当業者が当然に予測し得るものと認められる。 しかるに、触媒を活性化させるために、排気環流通路を介して排気を環流させ、排気温を上昇させることは、原査定の拒絶の理由で、特開昭49-116418号公報、等を引用して既に指摘されたように、本願出願前、当業者にとって周知の技術事項である。 したがって、引用例1記載の発明を、例えば、ディーゼル機関に適用するに際し、排気浄化触媒を酸化触媒とする場合、当該周知事項を勘案して、減筒運転時、排気通路3(第1排気通路)に設けられた酸化触媒の働きを十分なものとさせる(即ち、活性化させる)ために、引用例1記載の発明の環流通路12(排気環流通路)により、排気の一部を吸気中に環流させ、もって、補正発明1の相違点(ロ)に係る事項のように構成することは、当業者が容易に想到し得るものと認められる。 ・相違点(ハ)について; 稼動する気筒の第1排気通路から同稼動する気筒の吸気通路だけへ直接的に排気を還流させることは、一例として、特開昭59-3133号公報、等に記載されるように、本願出願前、当業者にとって周知の技術事項であるから、引用例1記載の発明を、例えばディーゼル機関に適用するに際し、当該周知の技術事項を勘案し、上記「相違点(ロ)について」の箇所で述べた減筒運転時における酸化触媒の活性化を一層図るために、補正発明1の相違点(ハ)に係る事項のように構成することは、当業者が容易になし得るものと認められる。 (効果について) そして、補正発明1の特定事項によってもたらされる効果も、引用例1に記載された発明、及び上記各周知事項から当業者であれば当然予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 (まとめ) 以上のとおり、補正発明1は、引用例1に記載された発明及び上記各周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (6)むすび したがって、上記補正後の請求項2、3に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうかの検討をするまでもなく、上記補正は、特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合しないので、当該補正は認められない。 それゆえ、本件補正は、特許法第159条第1項の規定によって準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 【3】本願発明について (1)本願発明 平成13年6月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜3に係る発明は、平成13年3月27日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 複数の気筒を有し、負荷に応じて一部の気筒への燃料の噴射を休筒させる減筒運転を行う内燃機関において、減筒運転時に稼動する気筒からの排気が導かれる第1排気通路と、この第1排気通路に設けられた低温用酸化触媒と、減筒運転時に休止する気筒からの排気が導かれる第2排気通路と、この第2排気通路と前記第1排気通路が合流した主排気通路と、この主排気通路に設けられた主酸化触媒とを備え、減筒運転時、稼動する気筒の第1排気通路から同稼動する気筒の吸気通路へ直接的に排気を還流させる排気還流通路を設けたことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。」 (2)引用例の記載事項 これに対し、原査定の拒絶の理由で引用した実願昭53-51422号(実開昭54-155015号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、上記【2】(3)で既述したとおりの技術的事項が記載されている。 (3)対比・判断 そこで、本願発明1と引用例1に記載された発明とを対比すると、本願発明1は、【2】(2)の箇所で認定した補正発明1から、【2】(1)の箇所における下線部を付した事項を省いたものである。 そうすると、本願発明1の特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する補正発明1が、前記【2】(5)に記載したとおり、引用例1記載の発明及び上記各周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用例1に記載された発明及び上記各周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 【4】むすび 以上のとおりであって、本願発明1は、引用例1に記載された発明及び上記各周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-05-11 |
結審通知日 | 2004-05-18 |
審決日 | 2004-05-31 |
出願番号 | 特願平7-268336 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F01N)
P 1 8・ 575- Z (F01N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中野 宏和、亀田 貴志 |
特許庁審判長 |
石原 正博 |
特許庁審判官 |
清田 栄章 飯塚 直樹 |
発明の名称 | 内燃機関の排気浄化装置 |
代理人 | 坪井 淳 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 橋本 良郎 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 橋本 良郎 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 福原 淑弘 |