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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E03B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E03B
管理番号 1100527
審判番号 不服2003-8585  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-02-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-15 
確定日 2004-07-21 
事件の表示 平成 9年特許願第200595号「配管ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 2月16日出願公開、特開平11- 43968〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年7月25日の出願であって、平成15年3月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年5月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月13日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年6月13日付けの手続補正に対する補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年6月13日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】複数の可撓性管が予め設計された寸法及び配置に融着継手で接続されている配管ユニットにおいて、該可撓性管の配管交差部に予め管の表面の傷付や潰れから保護する保護材として樹脂製又は金属製管が被着されていることを特徴とする給排水設備用配管ユニット」と補正された。
上記補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「保護材」の被着箇所を「可撓性管の防水区画貫通部、仕切壁貫通部、配管交差部又は水撃圧による振れで該管がぶつかる部分」から「可撓性管の配管交差部」に限定し、また、「保護材」に「管の表面の傷付や潰れから保護する」との限定を付加し、さらに、「保護材」の材質について「樹脂製又は金属製管」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)刊行物に記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に国内において頒布された刊行物である、特開平5-179678号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「配管ユニット」に関して、次の記載がある。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】主管を有し、前記主管に可撓性部材からなる枝管を、分岐部を介して分岐する形で、該主管に接続して設けて、配管ユニットを構成しておき、前記配管ユニットを、枝管を撓めた状態で構築物内に配置され得る施工箇所に搬送してきて、前記施工箇所において、前記主管の元側を構築物の本管に接続すると共に、前記枝管の先端側を構築物の設備に接続する形で、前記配管ユニットを敷設するようにして構成した、配管敷設方法。
・・・
【請求項3】前記主管は可撓性部材からなる請求項1記載の配管敷設方法。
【請求項4】主管を有し、前記主管に可撓性部材からなる枝管を、分岐部を介して分岐する形で、該主管に接続して設けて構成した、配管ユニット。
・・・
【請求項6】前記主管は可撓性部材からなる請求項4記載の配管ユニット。」、

(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、建築物等に簡単に配管敷設することが出来る、配管敷設方法及び配管ユニットに関する。」、

(ウ)「【0004】本発明は、・・・建築物の給排水設備等に配管施工する際に、現場での作業量を減らして、簡単迅速に信頼性の高い配管構造を敷設することが出来るようにした、配管敷設方法及び配管ユニットを提供するものである。」、

(エ)「【0007】
【実施例】・・・図1は配管ユニットの敷設状態の一例を示す平面図、・・・図3は図1の一部破断拡大図、図4は図1に示す配管ユニットにおける枝管部分の一部破断斜視図、図5は図1に示す配管ユニットの別の例を示す平面図、図6は図5に示す配管ユニットの搬送状態を示す図である。
【0008】集合住宅の占有居室等の施工現場1には、図1に示すように、配管ユニット2が、該施工現場1の図中右側に示す共有部分等に配置されたメーターボックス3等から接続された形で、敷設されており、配管ユニット2は図中左右方向に伸延する形の直状の主管10を有している。主管10の図中右端部分に示す主管元101にはソケット等による継手5が、メーターボックス3に固定接続された形の本管6と該主管10とを接続する形で、設けられており、また、主管10には、分岐部11が、図中左右方向に複数並ぶ形で、設けられている。分岐部21にはそれぞれ、図4に示すような可撓性を有する、例えばリブ付き管状の枝管11が、図3に示すような分岐ヘッダ7を介して接続されており、枝管11の先端部11aにはそれぞれ、施工現場1に施工される設備に給水給湯する為の給水栓12が接続されて設けられている。・・・
【0009】分岐ヘッダ7は、図3に示すように、管体71を有しており、管体71は主管10の図中左右方向を分断する形で配管ユニット2に複数組み込まれている。即ち、管体71の元71a側、即ち図中右端側には雄ねじが形成されており、また、管体71の先71b側には雌ねじが形成されている。従って、主管10には予め設定されて工場加工された形で、雌ねじ又は雄ねじが形成された継手部材が適宜接続されており、該継手部材の雌ねじ部分と雄ねじ部分が、それぞれ管体71の元71aと先71bに水密に螺合し合うことにより一体化される形で、主管10に複数の分岐ヘッダ7が組み込まれている。そして、管体71内には流路15が形成されており、管体71には流路15が分岐する形で、例えば図中左右に示す取り出し口71c、71cが設けられている。それぞれの取り出し口71cには、管体71に雌ねじが形成されており、それぞれの取り出し口71cには該雌ねじに継手部材を介して水密に螺合される形で、枝管11が接続されている。なお、ここで、分岐ヘッダ7は配管ユニット2に設けられる分岐状態に応じて、それぞれ異なる形で、形成されている。」、

(オ)「【0011】施工現場1は以上のような構成を有するので、該施工現場1に配管ユニット2を敷設する際には、まず図2に示すように、枝管11を適宜撓めて主管10に沿わせた形で、配管ユニット2を箒状に束ねて施工現場1まで搬送してくる。・・・
【0012】いま、施工現場1には水平スラブが打設構築されて未だ間仕切、ドア等が配設ていないとすると、こうして箒状に束ねた状態で施工現場1に搬送してきた配管ユニット2を、図1に示すように、主管元101側を継手5を介して本管6に接続する形で、施工現場1に配置する。そして、予め設計された施工現場1の配管計画に基いてまず、主管10部分を水平スラブ等に支持させる形で、固定する。すると、主管10は図中左右方向に伸延する形で直状に形成されていることから、ユニット管2における主管10部分が正確に配置固定されることが出来る。こうして、主管10部分が施工現場1内に配置固定されたならば、予め分岐ヘッダ7を介して分岐する形で、主管10に接続されている枝管11を適宜撓めつつ、それぞれの先端部11aを拡げて、・・・流し94、洗面台95等に配置させる形で、それぞれの枝管11を位置決めする。・・・
【0013】従って、施工現場1には極僅かの作業量で、即ち、工場等において接続加工された配管ユニット2を搬送してきて、位置決めし、主管元101を本管6側に、先端部11aをそれぞれの給水栓12に接続するだけで、迅速且つ確実に配管敷設することが出来る。・・・」、

(カ)「【0014】・・・本管6から各設備の給水栓12に配管を施すには、図5に示すように、可撓性部材からなる主管17が設けられた配管ユニット2’が用いられる場合もある。・・・図1に示す前記施工現場1と同様に、メーターボックス3等に固定接続された本館6から継手5を介して接続された形で配設されており、配管ユニット2’には主管17が、・・・図5紙面上の何箇所かにおいて屈曲する形で設けられている。主管17は、弾性プラスチック、ゴム等による材料から・・・加工成型した、公知の所謂フレキシブル管、或いは前記枝管11と同様のリブ付き管等の、可撓性部材から構成されており、主管17には前記直状に形成された主管10と同様に、その分岐部21に分岐ヘッダ7を介して枝管11が接続されている。・・・各枝管11は前述したように可撓性部材により構成されて、その先端部11aは、・・・流し94、洗面台9等の給水栓12にそれぞれ接続されている。
【0015】・・・配管ユニット2’を施工現場1’まで搬送するには、図6に示すように各枝管11を主管17に沿って撓めると共に、該主管17自体も撓めた形で、極小さく纏めてこれを束ねることにより、・・・トラックの荷台等より長尺の配管ユニット2’であっても、これを一度に大量に搬送して、円滑な資材搬送を行うことが出来る。また、こうして主管17を枝管11と共に撓めて配管ユニット2’を小さく纏めておくことにより、施工現場1’が配置している集合住宅等の構築現場において該配管ユニット2’に場所を塞がれることなく、配管敷設作業以外の他の構築作業が円滑に行われ得る。・・・配管ユニット2’は、極僅かの作業量で迅速且つ正確に配管敷設することが出来ると共に、施工現場の状況に木目細かく対応して、これに十分追従することが可能である。・・・」
上記(ア)〜(カ)の記載を含む明細書全体の記載及び図面からみて、刊行物1には次の発明が記載されているものと認められる。

「可撓性部材からなる主管10と、該主管10に複数の可撓性部材からなる枝管11が予め設計された寸法及び配置に継手部を有する分岐ヘッダ7で接続されている給排水設備用配管ユニット。」

同じく、特開平7-42900号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「給水配管用複合部材」に関して、次の記載がある。

(キ)「【0017】給水配管は、図1に1例を示すように、一端1が上水道供給管に連結され、他端が各種の給水端末21 ,22 ,23 ,24 ,25 に接続され、該上水道供給管から供給される水を各給水端末21 ,22 ,23 ,24 ,25 から供給するものである。この給水配管3は、上水道供給管に連結される受水用継手部4と、給水端末21 ,22 ,23 ,24 ,25 の配置箇所に応じて給水経路を分岐させる分岐継手部5と、給水端末に連結する末端継手部6と、前記受水用継手部4、分岐継手部5および末端継手部6の間を連絡する給水導管7とを有するものである。この給水配管3においては、給水配管用複合部材・・・の設置箇所に応じて、前記受水用継手部4、分岐継手部5、末端継手部6および給水導管7が有機的に連結され、その長さ、連結方向が調整される。」、

(ク)「【0020】給水配管の分岐継手部5は、受水用継手部4と給水端末21 ,22 ,23 ,24 ,25 を連結する給水導管7の途中に、給水端末21 ,22 ,23 ,24 ,25 の配置箇所に応じて給水経路を分岐させるために、配設される。この分岐継手部5は、図6に示すように、3方にエレクトロフュージョン接合部211 ,212 ,213 を有するチーズ形継手22によって形成することができる。この継手22においては、各エレクトロフュージョン接合部211 、212 および213 のそれぞれに給水導管を嵌め込み、内部に埋設された電熱線に電流を通じて融着接合部を融解・架橋させて接合を行うことができる。また、分岐継手として、前記チーズ形継手以外にも、Y字型継手、ト字型継手等の任意の継手を、分岐箇所等に応じて適宜選択することができる。」、

(ケ)「【0022】給水配管の末端継手部6は、図8に示すように、継手部材24として前記図3(A)に示す継手部材を用い、そのエレクトロフュージョン接合部12を給水導管7に接合して形成することができる。継手部材24の雄ねじ部11は、逆止弁25を介して、給水端末である水栓26の導入管27に連結されるように構成される。また、継手部材24は、図3(A)に示すものに限定されず、図3(B)〜(D)に示すものを、給水端末の端部の形態、接合方法、接合する周囲の部材配置状況、設置スペース等に応じて、適宜、選択することができる。
【0023】また、給水配管の給水導管は、図8に示すように、導管であるパイプ28が鞘管29によって被包された構造のものであると、給水配管の更新工事に際して、はつり工事を行うことがなく鞘管29内のパイプのみを取り替えるだけで更新を行うことができ、更新工事に要する工期および工費の短縮に有効である。」

(3)対比・判断
そこで、本願補正発明と刊行物1に記載の発明とを対比すると、刊行物1に記載の発明の「可撓性部材からなる主管10」と「複数の可撓性部材からなる枝管11」は本願補正発明の「複数の可撓性管」に相当する。また、刊行物1に記載の発明の「継手部を有する分岐ヘッダ7」も本願補正発明の「融着継手」も共に、「継手」という点で共通している。
したがって、両者は、
「複数の可撓性管が予め設計された寸法及び配置に継手で接続されている給排水設備用配管ユニット。」の点で一致し、次の点で相違している。

相違点1:本願補正発明では、継手が融着継手であるのに対して、刊行物1に記載の発明では、継手がそのようなタイプの継手でない点。

相違点2:本願補正発明では、可撓性管の配管交差部に予め管の表面の傷付や潰れから保護する保護材として樹脂製又は金属製管が被着されているのに対して、刊行物1に記載の発明では、可撓性管のそのような部位に予めそのような保護材が被着されていない点。

そこで、上記相違点1について検討すると、刊行物2には「給水配管の分岐継手部5は、受水用継手部4と給水端末21 ,22 ,23 ,24 ,25 を連結する給水導管7の途中に、給水端末21 ,22 ,23 ,24 ,25 の配置箇所に応じて給水経路を分岐させるために、配設される。この分岐継手部5は、図6に示すように、3方にエレクトロフュージョン接合部211 ,212 ,213 を有するチーズ形継手22によって形成することができる。この継手22においては、各エレクトロフュージョン接合部211 、212 および213 のそれぞれに給水導管を嵌め込み、内部に埋設された電熱線に電流を通じて融着接合部を融解・架橋させて接合を行うことができる。」(段落【0020】)との記載があり、分岐継手部5として融着継手を用いることが記載されているから、刊行物1に記載の発明における継手として、刊行物2に記載の発明の上記構成の継手を採用して、本願補正発明の上記相違点1に係る構成とすることは当業者が容易に想到しうることである。
次に、上記相違点2について検討すると、刊行物2には「給水配管の給水導管は、図8に示すように、導管であるパイプ28が鞘管29によって被包された構造のものであると、給水配管の更新工事に際して、はつり工事を行うことがなく鞘管29内のパイプのみを取り替えるだけで更新を行うことができ、更新工事に要する工期および工費の短縮に有効である。」(段落【0023】)との記載があり、給水導管7(パイプ28)の表面に必要により予め鞘管29が被着されていることが記載されているもの認められる。そして、鞘管29が給水導管7(パイプ28)の傷付や潰れから保護する保護材としての作用を有していることは、当業者にとって明らかことであり、樹脂製又は金属製の鞘管自体は本願発明出願前周知であり、更に、保護材を管のどの箇所に設けるかは、保護しようとする箇所に応じて当業者が適宜決めることであるから、刊行物1に記載の発明に刊行物2に記載の発明の上記構成を適用して、本願補正発明の上記相違点2に係る構成とすることは当業者が容易に想到しうることである。
そして、全体として本願補正発明によりもたらされる効果も、刊行物1、2に記載の発明から当業者であれば当然に予測できる程度のものであって顕著なものではない。
したがって、本願補正発明は、刊行物1、2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
平成15年6月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年1月17日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】複数の可撓性管が予め設計された寸法及び配置に融着継手で接続されている配管ユニットにおいて、該可撓性管の防火区画貫通部、仕切壁貫通部、配管交差部又は水撃圧による振れで該管がぶつかる部分に予め保護材が被着されていることを特徴とする給排水設備用配管ユニット」

(1)刊行物に記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明の「保護材」の被着箇所について「可撓性管の配管交差部」を含む、補正前の「可撓性管の防水区画貫通部、仕切壁貫通部、配管交差部又は水撃圧による振れで該管がぶつかる部分」に戻すものであり、また、「保護材」についての限定事項である「管の表面の傷付や潰れから保護する」との構成を省き、さらに、「保護材」についての限定事項である「樹脂製又は金属製管」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、刊行物1、2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1、2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1、2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-04-08 
結審通知日 2004-04-27 
審決日 2004-05-12 
出願番号 特願平9-200595
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E03B)
P 1 8・ 121- Z (E03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 真理子  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 新井 夕起子
藤原 伸二
発明の名称 配管ユニット  
代理人 田中 政浩  
代理人 田中 政浩  

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