ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G06K 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K |
---|---|
管理番号 | 1100601 |
審判番号 | 不服2003-1101 |
総通号数 | 57 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-03-03 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-01-16 |
確定日 | 2004-07-22 |
事件の表示 | 平成11年特許願第203192号「ICカード」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月 3日出願公開、特開2000- 67197〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.出願の経緯 本願は、平成6年12月22日に出願した特願平6-320966号の一部を平成11年7月16日に新たな特許出願としたものであって、平成14年12月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年1月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成15年2月17日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成15年2月17日付けの手続補正についての補正却下の決定 請求人は、平成15年2月17日付けで手続補正書(以下、本件手続補正書という。)を提出し、特許請求の範囲を次のとおりとしている。 「【請求項1】 基板と、 前記基板の一方の面に前記基板の外周に沿って、巻き数2以上のコイルとして形成されたコイル用導電体と、 前記基板の一方の面の、前記コイル用導電体の内側に設けられ、2個の信号端子を有し、前記コイル用導電体を介して電磁気的作用により外部との間で信号の受信および送信またはこれらのいずれかを行うた電子回路と、 前記基板の一方の面の、前記コイル用導電体の外側に設けられた第1の導電体と、 前記基板の一方の面の、前記第1の導電体と前記コイル用導電体を挟んで対向する前記コイル用導電体の内側に設けられた第2の導電体と、 前記基板の一方の面の、前記コイル用導電体の内側に設けられた第3の導電体と、 前記基板の他方の面の、前記基板を挟んで、前記第1の導電体、前記第2の導電体および前記第3の導電体と対向する位置に設けられた第4の導電体と を有し、 前記第1の導電体および前記第2の導電体と、前記第4の導電体と、前記第1の導電体および前記第2の導電体と前記第4の導電体との間の前記基板とで結合コンデンサを構成し、 前記第3の導電体と、前記第4の導電体と、前記第3の導電体と前記第4の導電体との間の前記基板とで同調コンデンサを構成し、 前記基板の一方の面において、前記第1の導電体は前記コイル用導電体の一端に接続され、 前記基板の一方の面において、前記第2の導電体は前記電子回路の一方の端子に接続され、 前記基板の一方の面において、前記第3の導電体は前記コイル用導電体の他端、および、前記電子回路の他方の端子に接続されており、 前記コイル用導電体と、前記同調コンデンサとが同調回路を構成している、 ICカード。 【請求項2】 前記コイル用導電体の他端部は、前記基板の他方の面に設けられた前記第4の導電体と前記基板に形成されたスルーホールを用いて接続されている、 請求項1記載のICカード。 【請求項3】 前記同調回路の共振周波数は、前記第3の導電体を任意の位置で切断し、切断された前記第3の導電体と前記第4の導電体との間の静電容量を変えることによって調整される、 請求項2記載のICカード。 【請求項4】 前記第3の導電体は、複数の容量調整用導電体とこれら容量調整用導電体との間を接続する接続用導電体とからなり、前記接続用導電体を切断して前記同調回路の静電容量を変えることによって、前記同調回路の共振周波数の調整を行う 請求項2記載のICカード。 【請求項5】 前記第3の導電体は、前記接続用導電体が前記基板を介して対向する位置に絶縁領域を有する 請求項4記載のICカード。 【請求項6】 前記第3の導電体は、接続されていない複数の容量調整用導電体と、これら容量調整用導電体を接続する接続用導電体あるいは導電性塗料からなる 請求項2記載のICカード。 【請求項7】 前記第3の導電体は、前記接続用導電体が前記基板を介して対向する位置には前記第4の導電体を有さない形状を有する 請求項4記載のICカード。 【請求項8】 前記基板の一方の面の、前記コイル用導電体の内側に設けられた第5の導電体と、 前記基板の他方の面の、前記基板を挟んで、前記第5の導電体と対向する位置に設けられた第6の導電体と を有し、 前記第5の導電体と、前記第6の導電体と、前記第5の導電体と前記第6の導電体との間の前記基板とで平滑用コンデンサを構成し、 前記基板の一方の面において、前記第5の導電体が前記電子回路の一方の端子に接続され、 前記基板の他方の面に設けられた前記第6の導電体が前記基板に設けられたスルーホールを介して前記電子回路の他方の端子に接続されている、 請求項1記載のICカード。」 しかるに、本件補正により、請求項の数が補正前の請求項より増加しており、本件補正が特許法第17条の2第4項第1号の規定を満たさないのは明らかである。 また、補正後の請求項1には、第1の導体、第2の導体、第3の導体、第4の導体が記載されているが、補正前の請求項1(平成13年8月6日付けで提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1)には、第1の導体、第2の導体が記載されいるにすぎないから、補正後の請求項1は補正前の請求項1に新たな構成を付加していることは明らかである。 してみれば、補正後の請求項1は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではないから、特許法第17条の2第3項第2号の規定を満たしていないことは明らかである。そして、補正後の請求項1は、特許法第17条の2第4項第3号乃至第4号に該当するものでもない。 したがって、その余の点を検討するまでもなく、本件手続補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下する。 3.本件発明 (本件発明の内容) 本件手続補正書による補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至7に係る各発明は、平成13年8月6日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、本件発明という。)は、次のとおりのものである。 「基板と、 前記基板の一方の面に前記基板の外周に沿って導電体として設けられたコイルと、 前記基板の一方の面に設けられ、前記コイルの両端にそれぞれ対応する2個の信号端子を有し、前記コイルを介して電磁気的作用により外部との間で信号の受信および送信またはこれらのいずれかを行う電子回路と、 前記コイルの一端部であって前記基板の一方の面と同じ側に第1の導電体と、 前記コイルの他端部に結合されるとともに前記基板の他方の面に第2の導電体を設け、前記第1および第2の導電体および前記基板により構成され所定の静電容量を有するコンデンサと を有し、 前記コンデンサと前記コイルとを並列に接続して同調回路を構成した ICカード。」 (刊行物記載の発明) これに対し、原審において拒絶の理由に引用された特開平5-201186号公報(以下、刊行物1という。)には、非接触ICカードに関する発明が記載されており、図7,図8と共に、「【0003】図7はこの種の非接触ICカードの機能的構成を概略的に示すブロック図である。非接触ICカード内におけるデータの処理および制御を行うCPU1にはバス8を介して記憶部分であるROM2およびRAM3、並びに入出力制御回路4が接続されている。この入出力制御回路4はカードに入出力されるデータの制御を行うものであり、変復調回路5を介してアンテナ回路6が接続されている。電池7は、上記各部分に電源を供給するためのものである。そしてアンテナ回路6により電磁波6aによる外部装置(図示せず)との信号交換が行われる。」、「【0004】図8には、従来の非接触ICカードの実際の内部構造を説明するための透視平面図を示した。また従来図9には図8のIX-IX線に沿った断面図を示した。図8では回路基板11上のモールド樹脂13を取り除いた状態が示されている。非接触ICカード10の回路基板11の中央部分には機能回路部分を構成するIC9、他の回路素子9aおよび電池7等が、それぞれ回路基板11上に形成された回路パターン11aにより相互に接続されるように実装されている。回路素子9aは例えばコンデンサ、インダクタンス或は抵抗等からなる。図7の符号1〜5および8で示される部分はIC9内で構成されている。」、「【0005】アンテナ回路6は回路基板11の外周部に形成されたスパイラルコイル61、およびコンデンサ63により構成される。スパイラルコイル61とコンデンサ63は互いに並列に接続されLC並列共振回路を構成しており、共振周波数付近の電磁波で回路に誘導される電圧を検出することで受信を行うことができる。スパイラルコイル61は回路基板11のおもて面および裏面に形成されたスパイラル状のそれぞれ導体パターン61a、61bからなる。導体パターン61aは回路基板11のおもて面の図8の点Aからスパイラル状に延びスルーホール12aを介しに裏面の導体パターン61bに連結している。裏面の導体パターン61bはスルーホール12aから内側にスパイラル状に巻かれるように延び、その内側端がスルーホール12bを介しておもて面の電池7の例えばグランド側に接続されている。」、「【0006】そしてインダクタンスLを構成するスパイラルコイル61にキャパシタンスCを構成するコンデンサ63が並列接続されている。このように形成された回路基板11は電磁界の伝達に与える影響を極力無くすように、カード本体部である例えば非導電性樹脂からなるモールド樹脂13により封止される。なおカード本体部はその他、例えば枠体およびパネルからなる樹脂性の中空のケースの場合もある。」と説明されている。 (対比、検討) そこで、本件発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、 (i)上記刊行物1記載の発明においては、回路基板11と、回路基板11の外周部にスパイラルコイルが設けられており、本件発明が、基板と、基板の外周に沿って導電体として設けられたコイルを有するとする点と実質的な差異はない。 (ii)上記刊行物1記載の発明においては、回路基板の中央部にIC回路9が設けられており、IC回路9には、スパイラルコイルや他の回路素子、電池等に接続するための複数の端子を有しており、本件発明が、基板の一方の面に設けられ、コイルの両端にそれぞれ対応する2個の信号端子を有し、コイルを介して電磁気的作用により外部との間で信号の受信および送信またはこれらのいずれかを行う電子回路を有するとする点と実質的な差異はない。 (iii)上記刊行物1記載の発明においては、スパイラルコイルにコンデンサ63が並列に接続されてLC共振回路が構成されており、本件発明がコンデンサとコイルとを並列に接続して同調回路を構成したとする点と実質的な差異はない。 したがって、本件発明と上記刊行物1記載の発明とは、次の点で相違し、その余では一致する。 (a)本件発明のコイルが基板の一方のに設けるとしているのに対し、上記刊行物1記載の発明のスパイラルコイルは基板の表面と裏面に形成されている点 (b)コンデンサに関し、本件発明は、コイルの一端部であって前記基板の一方の面と同じ側に第1の導電体と、コイルの他端部に結合されるとともに基板の他方の面に第2の導電体を設け、第1および第2の導電体および基板により構成され所定の静電容量を有するとしているのに対し、上記刊行物1記載の発明はそのようになっていない点 (相違点についての判断) 上記相違点について判断すると以下のとおりである。 上記相違点(a)について スパイラルコイルを基板の表面のみに設けるとすることは、当業者が適宜なし得る程度のことにすぎない。 上記相違点(b)について 基板の両側に電極を設けてコンデンサを構成することは、本件出願前普通に知られたこと(必要ならば、例えば、特開昭62-126620号公報を参照されたい。)であるから、上記刊行物1記載の発明に適用し、所定の静電容量となるように構成することは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。 (まとめ) したがって、本件発明は、上記上記刊行物1記載の発明に基づき、周知技術を参酌して、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-05-21 |
結審通知日 | 2004-05-25 |
審決日 | 2004-06-09 |
出願番号 | 特願平11-203192 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06K)
P 1 8・ 572- Z (G06K) P 1 8・ 571- Z (G06K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 桜井 茂行、前田 仁 |
特許庁審判長 |
川名 幹夫 |
特許庁審判官 |
橋本 正弘 山中 実 |
発明の名称 | ICカード |
代理人 | 佐藤 隆久 |