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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A41B
管理番号 1100622
審判番号 不服2001-13341  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-11-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-07-30 
確定日 2004-07-22 
事件の表示 平成 6年特許願第 82922号「使い捨ておむつ」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年11月 7日出願公開、特開平 7-289583〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年4月21日の出願(特願平6-82922号)であって、その請求項1に係る発明は、平成16年3月12日付で補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された下記のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)
「透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に介在する吸液性コアとから前身頃と後身頃とそれら両身頃間に介在する股下域とが形成され、前記コアの両側縁からそれぞれ外側へサイドフラップが延在し、前記サイドフラップの外側縁の近傍におけるその長手方向へ弾性部材が延在し、前記股下域における前記サイドフラップの内面の左右両側に前後身頃および股下域の長手方向に延在し前記股下域内面からの起立性向を有する伸縮性カフを備えた使い捨ておむつにおいて、
前記カフが、前記サイドフラップの内面に接合された固定側縁部および前後固定端縁部と、前記固定側縁部に対向し前記サイドフラップに接合されない自由側縁部と、前記固定側縁部と自由側縁部との間に介在する中間部とを有し、少なくとも前記股下域において前記固定側縁部から外方へ延出する前記中間部でおむつ内面側へ折り返されて前記自由側縁部が前記コアの側縁の外側にあり、前記サイドフラップに延在している前記弾性部材が前記カフの前記固定側縁部と前記折り返しによって生じた折曲線との間に位置し、前記おむつの着用時に、前記股下域の前記固定側縁部から前記折曲線に至る部分と前記折曲線から前記自由縁部に至る部分が前記自由側縁部と共に前記固定側縁部を基端として起立することができることを特徴とする前記おむつ。」

2.引用文献
これに対して、当審が平成16年1月9日付で通知した拒絶の理由に引用された特開平1-183501号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(a)「液透過性トップシートと、液不透過性バックシートと、該両シート間に介在された液吸収性コアと、該コアの外側縁から延出し、少なくとも外側縁近傍が収縮性である液不透過性サイドフラップと、該サイドフラップ上に接合され、少なくともその接合部の反対側縁が収縮性であるカフとを備えた使い捨てガーメント」[第1頁左下欄第5〜11行、特許請求の範囲(1)]
(b)「前記カフの長さ方向両端部は、内側および外側のいずれかに倒されてガーメントの前側および後側区域にそれぞれ固定されている」[第1頁左下欄第18〜20行、特許請求の範囲(2)]
(c)「本発明は、使い捨てガーメント、さらに詳しくは、排泄物の漏れ防止構造を有する使い捨てオムツなどのガーメントに関する。」[第2頁左上欄第1〜3行]
(d)「サイドフラップ4は、その外側縁近傍にその長さ方向へ延びるエラスチックバンド5を備え、」[第3頁右下欄第4〜6行]
(e)「カフ6は、コア3の外側縁とエラスチックバンド5との間のトップシート1の表面に側縁7において接合され、その反対側縁でその長さ方向へ延び、側縁8で被覆されたエラスチック9を備え、これによって収縮性を付与されるとともに、該バンドの長さ方向への収縮性ギャザーが作られ、かつ、その収縮状態では、接合側縁7を基端線として、上方向へ起き上がる性向を有する。」[第3頁右下欄第9〜16行]
(f)第1〜4図には、前側区域、後側区域及び股下区域を有する使い捨てオムツに、上記カフを設けた態様が示されている。
上記の記載から、上記刊行物1には、「液透過性トップシートと、液不透過性バックシートと、それらの間に介在する液吸収性コアとから、前側区域、後側区域及びそれらの間に介在する股下区域とが形成され、前記コアの両側縁からそれぞれ外側へサイドフラップが延在し、前記サイドフラップの外側縁の近傍におけるその長手方向へエラスチックバンドが延在し、前記股下区域における前記サイドフラップの内面の左右両側に前後側区域および股下区域の長手方向に延在し前記股下区域内面からの起立向を有するカフを備えた使い捨てオムツであって、前記カフは、コア3の外側縁とエラスチックバンド5との間のトップシート1の表面に接合される接合側縁7とその反対側のエラスチック9を備えた側縁8とを有し、上記エラスチック9により収縮性が付与され、その収縮状態で接合側縁7を基端として起立することができる使い捨てオムツ」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
また、同じく引用された国際公開第93/9739号パンフレット(以下、「刊行物2」という。)には、その翻訳文に相当する特表平7-504094号公報を参照すれば、「改良された側方バリヤー効果を有するおむつの如き使い捨て可能な吸収性衛生物品」[上記公報第2頁右下欄第2〜3行]として、「液体不浸透性の外方支持シート、液体浸透性内方カバーシート、これら2枚のシート間に配置した吸収性パッド、吸収性パッドの二つの長手方向縁の外側で伸張状態で前記支持シートへ取り付けた長手方向弾性部材、衛生物品の長手方向縁に沿ってカバーシートへ取り付けた2枚の弾性化された側部フラップ、及び衛生物品を使用者の腰の回りで閉じる取り付け手段から成る型のもの」[同第2頁右下欄第5〜12行]に関する発明が記載されており、上記側部フラップについて、「フラップの基端縁が狭い股部の吸収性パッドの上方に配置されるとき、両対向フラップの末端縁相互に接近し過ぎる限り、問題を生じ、このことは吸収性パッドがこの股部でも狭い衛生物品の場合耐漏洩性及び尿と便を包み込む作用を制限する」[同第3頁左上欄第26行〜同右上欄第4行]こと、そのような問題点を解決するために、「このフラップはその全長にわたり折り返され、その弾性化された末端縁がフラップの全長にわたり実質的にその基端縁の上方にある」[同第3頁左下欄第17〜19行]こと、「各フラップの弾性化された末端縁は実質的に基端縁の上方に位置するから、両フラップの末端縁は互いに十分離れており、使用者の運動に最良の態様で追随でき、故にフラップはそのバリヤー効果を維持できる。」[同第3頁左下欄第23〜26行]ことなどが記載され、第3図には、おむつの股部において基端縁18を、内方シート5すなわちおむつの内面に固定されたフラップ16が外方へ延出する中間部で折り畳み線20に沿っておむつ内面側に折り返され、自由縁部である末端縁21が固定された基端縁18の実質的上方に位置する態様が示されている。

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「使い捨てオムツ」、「液透過性トップシート」、「液不透過性バックシート」、「液吸収性コア」、「エラスチックバンド」、「前側区域」、「後側区域」、及び「股下区域」は、それぞれ、本願発明の「使い捨ておむつ」、「透液性表面シート」、「不透液性裏面シート」、「吸液性コア」、「弾性部材」、「前身頃」、「後身頃」、及び「股下域」に相当し、引用発明の「カフ」は、そのサイドフラップに接合される「接合側縁7」及び反対側縁部8が、それぞれ本願発明の「固定側縁部」及び「自由側縁部」に相当し、両者の間には当然「中間部」が存在し、エラスチック9により伸縮性を付与されているので、本願発明の「伸縮性カフ」に相当する。また、引用発明に係る使い捨てオムツにおいても、カフは着用時に起立するものであることは明らかである。
したがって、両者は、「透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に介在する吸液性コアとから前身頃と後身頃とそれら両身頃間に介在する股下域とが形成され、前記コアの両側縁からそれぞれ外側へサイドフラップが延在し、前記サイドフラップの外側縁の近傍におけるその長手方向へ弾性部材が延在し、前記股下域における前記サイドフラップの内面の左右両側に前後身頃および股下域の長手方向に延在し前記股下域内面からの起立性向を有する伸縮性カフを備えた使い捨ておむつにおいて、前記カフが、前記サイドフラップの内面に接合された固定側縁部および前後固定端縁部と、前記固定側縁部に対向し前記サイドフラップに接合されない自由側縁部と、前記固定側縁部と自由側縁部との間に介在する中間部とを有し、前記おむつの着用時に、前記固定側縁部を基端として起立することができる前記おむつ。」である点で一致しており、本願発明のカフが、「少なくとも前記股下域において前記固定側縁部から外方へ延出する前記中間部でおむつ内面側へ折り返されて前記自由側縁部が前記コアの側縁の外側にあり、前記サイドフラップに延在している前記弾性部材が前記カフの前記固定側縁部と前記折り返しによって生じた折曲線との間に位置し、前記おむつの着用時に、前記股下域の前記固定側縁部から前記折曲線に至る部分と前記折曲線から前記自由縁部に至る部分が前記自由側縁部と共に前記固定側縁部を基端として起立することができる」としているのに対し、引用発明のカフは、そのような構成を具備していない、具体的には、「股下域において前記固定側縁部から外方へ延出する前記中間部でおむつ内面側へ折り返されて」いる構成、「前記自由側縁部が前記コアの側縁の外側にあり」という構成、「前記サイドフラップに延在している前記弾性部材が前記カフの前記固定側縁部と前記折り返しによって生じた折曲線との間に位置」する構成を備えておらず、また、刊行物1には、股下域の前記固定側縁部から前記折曲線に至る部分と前記折曲線から前記自由縁部に至る部分が前記自由側縁部と共に起立する点も明記されていない点で相違している。
そこで、上記の相違点について検討すると、上記刊行物2に記載された、おむつのような使い捨て吸収性物品の内方カバーシートへ取り付けた2枚の弾性化された側部フラップは本願発明の伸縮性カフ及び引用発明のカフに相当するものであり、該刊行物2には、上記側部フラップを、外方へ延出する中間部で折り畳み線20に沿っておむつ内面側に折り返し、自由縁部である末端縁21が固定された基端縁18の実質的上方に位置するようにして、両フラップの末端縁を互いに離すことで、吸収性パッドの作用を制限することなくバリヤー効果も維持できるものとする、ことが記載されている。
してみれば、上記刊行物2に記載された側部フラップと同様に、バリヤー効果とともに、吸収性能の維持が要求されることの明らかな引用発明のカフに、刊行物2に記載された、外方へ延出する中間部で折り畳み線20に沿っておむつ内面側に折り返すという技術を適用して、該カフを中間部で折り返すようにして、そのエラスチックを有する側縁部を接合側縁の実質的上方に位置させて、カフの幅が広くても表面シートを広く覆うことがなく、カフが表面シートの吸液面積を狭めてその吸液性能を損なうことがないという本願明細書に記載された[本願明細書【0005】、【0009】、及び【0017】等参照]ような作用効果を奏するようにすることは当業者が容易に想到しうる事項である。
そして、その場合、引用発明におけるカフの、コアの外側縁とエラスチックバンドとの間のトップシートの表面に接合された側縁の実質的上方に位置する反対側縁すなわち自由側縁部も、コアの外側に位置するようになることは明らかであり、また、折り畳み線、すなわち本願発明でいう折曲線は、カフの幅に応じて、サイドフラップに延在する弾性部材の内側及び外側のいずれにも位置しうるものであり、そのいずれに位置するようにするかは、当業者が任意に決定しうる事項と認められるので、刊行物2の第3図に示された例にも見られるように、折曲線がサイドフラップに延在する弾性部材の外側に位置する、すなわち、弾性部材が前記カフの前記固定側縁部と前記折り返しによって生じた折曲線との間に位置するようにすることも、当業者が適宜なし得る設計的事項である。
さらに、本願発明でいう伸縮性カフの股下域の「前記固定側縁部から前記折曲線に至る部分と前記折曲線から前記自由縁部に至る部分」は、折曲線を有するカフの中間部の全幅と同じ意味であり、引用発明におけるカフも、刊行物2に記載された側部フラップも、その自由側縁部の弾性部材の作用により、股下域において、固定側縁部を基端にその全幅において自由側縁部とともに起立するものであるから、上記のように、引用発明におけるカフに、刊行物2に記載された中間部で折り返すという技術的思想を適用した場合に、固定側縁部から折曲線に至る部分と折曲線から自由縁部に至る部分が自由側縁部とともに起立することも、当業者が容易に予測しうる事項である。
請求人は、平成16年3月12日付の意見書において、刊行物2に記載された側部フラップは基端縁が吸収パッドの上方に位置していることを必須の要件としているから刊行物1に記載された接合縁がサイドフラップ上にあることを必須の要件とするカフを刊行物2に記載された側部フラップのようにすることはあり得ない旨、また仮にそのようにしてみても刊行物1に記載されたカフは、その接合側縁の反対側縁部が、コアの上方に位置しているので、「自由側縁部がコアの側縁の外側にあり」という構成をとりえない旨を主張している(上記意見書第2頁第18〜28行の記載)が、刊行物2に記載された、側部フラップを外方へ延出する中間部でおむつ内面側に折り返し、自由縁部である末端縁が固定された基端縁の実質的上方に位置するようにして、両フラップの末端縁を互いに離すことは、側部フラップの基端縁(接合縁)がコア上に位置するか、その外側のサイドフラップ上に位置するかに拘わらず容易に実施しうる事項であるので、刊行物2に記載された発明において、側部フラップが吸収パッド上方に位置することを要件としていたとしても、該刊行物2に開示された、側部フラップを幅方向で折り返すことにより吸収パッドの作用を制限することなくバリヤー効果も維持できるものとするという技術的的事項を、刊行物1に記載されたカフに適用することを阻害する理由は何もなく、また該技術的事項の適用により、刊行物1に記載されたカフの自由側縁部がコアの外側に位置することになることも上述の通りであるので、当該請求人の主張は採用しない。

4.まとめ
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-05-25 
結審通知日 2004-05-25 
審決日 2004-06-07 
出願番号 特願平6-82922
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A41B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 水野 治彦植前 津子  
特許庁審判長 鈴木 美知子
特許庁審判官 溝渕 良一
粟津 憲一
発明の名称 使い捨ておむつ  
代理人 白浜 吉治  

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