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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A41B
管理番号 1100765
審判番号 不服2001-14356  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-08-13 
確定日 2004-07-29 
事件の表示 平成 8年特許願第183808号「使い捨ておむつ」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 1月27日出願公開、特開平10- 24066〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年7月12日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明は、平成13年9月12日付で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1には以下のとおり記載されている。
「透液性表面シートと、不透液性裏面シートと、これら両シート間に介在する吸液性コアとからなり、前後方向が前胴周り域と、後胴周り域と、これら両胴周り域間に位置する股下域とによって構成され、前記前後胴周り域のうちの一方の左右両側縁からテープファスナが延出し、該テープファスナがもう一方の胴周り域の所要部位に着脱自在な使い捨ておむつであって、
前記使い捨ておむつ内面の少なくとも前記テープファスナの基端部近傍および/または前記テープファスナの内面の少なくとも一部が熱溶融性材料で構成され、前記テープファスナがその内面を内側にして前記基端部近傍におけるおむつ内面に折り重ねられ、かつ、前記基端部近傍におけるおむつ内面とテープファスナ内面とが、前記熱溶融性材料で構成された部位において、互いに離脱可能な程度にこれらの構成材料自体が溶着していることを特徴とする前記おむつ。」(以下、これにより特定される発明を「本願発明」という。)

2.引用文献
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-309606号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(a)「紙おむつ本体の腹部外面と背中がわ両側部との一方(の)にフックを有するシートを、他方にフック受を有するシートを取付け、前記フックとフック受との重ね合わせからみ合いにより紙おむつを被着用者に着脱自在に装着させるようにした紙おむつにおいて;
前記背中がわ両側部に取付けるシートの一部は当該両側縁より外方に延在し、この延在部の内面がわにフックまたはフック受からなる固定部を有し、前記延在部は紙おむつの未使用時紙おむつ本体の内面に折り返し重ね合わせられ固定部が紙おむつ本体の内面に仮掛止され、前記延在部および紙おむつ本体の重ね合わせ面の少なくとも一方に対して、前記重ね合わせ域中の前記固定部を除いた位置に仮止め用接着剤を設けたことを特徴とする紙おむつ。」(特許請求の範囲の(1)。なお、上記「一方の」の「の」は「に」の誤記と認める。)
(b)「一方のファスナー片の一部は、紙おむつ本体の側縁より突出して取付けるので、製造過程において、その取付後、そのままにしておくと、ファスナー片が紙おむつ内面を構成する不織布にからみ変形したり、そうでなくとも、ファスナー片がペラペラ突出していると、商品価値を損なう。そこで、ファスナー片を取付けたならば、通常のテープファスナーのように、紙おむつ本体内面に折り返してファスナー片の延在部を仮止めしておくのが望ましい。」(2頁左上欄17行〜同頁右上欄7行)
(c)「第1図〜第4図は第1実施例に示したもので、紙おむつ本体は、表面(肌に当る面)の不織布等からなる透液性シート1と、裏面のポリエチレンシート等からなる不透液性シート2と、周囲部分をフラップ部として残してそれらの間に介在された綿状パルプ等からなる吸収体3とを基本構成要素としている。」(2頁右下欄13〜19行)
(d)「この種の紙おむつ本体は公知のものであるが、本発明では、腹部Sの外面に多数ループ5aが基材5bに突出するからみ受シート(フック受シート)5が、不透液性シート2に接着剤、もしくは縫合等により固定されている。他方、背中Bがわ両側部には、ベース6Aの基部をシート1,2間に介在させそれらを接着剤7A,7Bにより固着させ、先端がわを紙おむつ本体の縁、すなわちシート1,2の紙より外方に延在させたからみシート6,6が設けられている。」(3頁左上欄1〜10行)
(e)「この固定部6Bのからみシート6長手方向両側には、若干の間隙を置いて仮止め用接着剤6C1,6C2がベース6Aに設けられている。かかる紙おむつにおいては、からみシート6が紙おむつ本体に取付けられた後、第1図の仮想線で示すように、からみシート6の延在部のつけ根においておむつの表面がわに折り返えされ、フック片6bを紙おむつ本体表面の不織布1面にからみ付けるとともに、仮止め用接着剤6C1,6C2を不織布1表面に重ねて接着し」(3頁左上欄18行〜同頁右上欄7行)
(f)「上記例における仮止め用接着剤としては、感圧性接着剤やラバーベースのホットメルト等粘着性を有するもののほか、粘着性を有しないたとえばホットメルト接着剤を用いてもよい。」(3頁右上欄18行〜同頁左下欄1行)
(g)「仮止め用接着剤6C1〜6C6の配置は適宜でよいが、第1図仮想線で示されているように、固定部6Bにはある程度の厚みがあるため、その周縁近くでは、仮止め用接着剤がつき難いなどの理由よって、周縁近くにまで塗布することは経済的でない。」(3頁左下欄18行〜同頁右下欄3行)
(h)「本発明によれば、からみ合わせ結合によるシートの延在部を確実に紙おむつ本体に仮止めできる。」(3頁右下欄18〜20行)

3.対比・判断
本願発明(以下、「前者」という。)と引用文献に記載された発明(以下、「後者」という。)とを対比する。
後者の「紙おむつ」、「表面の透液性シート」、「裏面の不透液性シート」、「吸収体」、「腹部」、「背中がわ」、『腹部と背中がわの間の部分』、「からみシート」及び「からみシートのベースの基部」はそれぞれ、前者の「使い捨ておむつ」、「透液性表面シート」、「不透液性裏面シート」、「吸液性コア」、「前胴周り域」、「後胴周り域」、「股下域」、「テープファスナ」及び「テープファスナの基端部」に相当する。後者のからみシートの延在部は、ベースの基部近傍の紙おむつ本体の内面に折り返し重ね合わせられ、紙おむつ本体の内面に仮止めされるもの(記載a、d及びe、図1参照)(構成1)であり、また、後者の前記仮止めは、からみシートの内面の一部に配置された接着剤により、それが配置された部位においておこなわれるもの(記載e及びg、図1参照)(構成2)である。そして、前者の「溶着」と後者の「接着」とは、「固着」として共通するものであるので、前記後者の(構成1)及び(構成2)は、それぞれ、前者の「テープファスナがその内面を内側にして基端部近傍におけるおむつ内面に折り重ねられ、かつ、前記基端部近傍におけるおむつ内面とテープファスナ内面とが、互いに離脱可能な程度に固着している」及び「テープファスナの内面の少なくとも一部が固着材料で構成され、(おむつ内面とテープファスナ内面とが)前記固着材料で構成された部位において、固着している」構成に相当する。
したがって、両者は「透液性表面シートと、不透液性裏面シートと、これら両シート間に介在する吸液性コアとからなり、前後方向が前胴周り域と、後胴周り域と、これら両胴周り域間に位置する股下域とによって構成され、前後胴周り域のうちの一方の左右両側縁からテープファスナが延出し、該テープファスナがもう一方の胴周り域の所要部位に着脱自在な使い捨ておむつであって、
使い捨ておむつ内面のテープファスナの内面の一部が固着材料で構成され、テープファスナがその内面を内側にして基端部近傍におけるおむつ内面に折り重ねられ、かつ、基端部近傍におけるおむつ内面とテープファスナ内面とが、固着材料で構成された部位において、互いに離脱可能な程度に固着している前記おむつ。」である点で一致し、固着が、前者は熱溶融性材料で構成された構成材料自体が溶着することによるものであるのに対し、後者は接着剤の接着によるものである点で一応の相違がある。
相違点について検討すると、引用文献には「仮止め用接着剤としては、感圧性接着剤やラバーベースのホットメルト等粘着性を有するもののほか、粘着性を有しないたとえばホットメルト接着剤を用いてもよい。」(記載f)との記載があり、前記粘着性を有しないホットメルト接着剤は熱溶融性材料で構成されるものであり、固着はホットメルト接着剤で構成された部位において、構成材料自体が溶着することによるものであるので、引用発明において、相違点の構成を採用して本願発明の構成を得ることは当業者にとって容易なことである。
請求人は、おむつ内面とテープファスナ内面との固着が、本願発明は構成材料自体の溶着による構成である点で、引用発明とは異なる旨主張するが(審判請求書4頁)、引用発明も構成材料自体が溶着することにより固着するものとすることを示唆するものであることは前述のとおりであり、本願発明は「テープファスナの内面の少なくとも一部が熱溶融性材料で構成され」ることを要件としているのであって、テープファスナの内面(全体)が熱溶融性材料で構成されることを要件としていないので、引用発明とは前記のように対比・判断するのが相当であり、本願発明に伴う有利な効果を含めてこの主張は採用できない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、引用文献に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-05-25 
結審通知日 2004-06-01 
審決日 2004-06-15 
出願番号 特願平8-183808
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A41B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 水野 治彦植前 津子  
特許庁審判長 鈴木 美知子
特許庁審判官 溝渕 良一
山崎 豊
発明の名称 使い捨ておむつ  
代理人 白浜 吉治  

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