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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1100767
審判番号 不服2000-17465  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-09-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-11-02 
確定日 2004-07-29 
事件の表示 平成11年特許願第 66412号「小型メモリカード用アダプタ」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月22日出願公開、特開2000-259782〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.出願の経緯
本願は、平成11年3月12日に出願されたものであって、平成12年9月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成12年11月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成12年12月1日付けで手続補正がなされたものである。
2.平成12年12月1日付けの手続補正についての補正却下の決定
請求人は、平成12年12月1日付けで手続補正書(以下、本件手続補正書という。)を提出し、明細書の補正を行っているところ、請求項1については次のとおりに補正している。
「【請求項1】メモリICを実装した回路基板と前記回路基板を収納するフレームと、前記フレームを覆う金属パネルと、小型メモリカードを抜去させるイジェクトボタンとを具備し、前記小型メモリカードを収納接続できる小型メモリカード用アダプタであり、
前記小型メモリカードの側面に当接される弾性片は、弾性を有し、前記イジェクトボタンが押し込まれた際に前記小型メモリカード飛び出し防止のために前記小型メモリカードの排出を抑制する方向に付勢されており、
前記弾性片と、前記弾性片を通じて前記小型メモリカードに帯電している静電荷を放電させる機能を有する接触部材と、前記接触部材に設けられ前記金属パネルと当接する金属パネル接触手段とが一体的に形成されていることを特徴とする小型メモリカード用アダプタ。」
上記補正の適否について検討すると、補正前の請求項1は、
「【請求項1】メモリICを実装した回路基板と前記回路基板を収納するフレームと、前記フレームを覆う金属パネルとを具備し、小型メモリカードを収納接続できる小型メモリカード用アダプタであり、
前記小型メモリカードの側面に当接される弾性片は、弾性を有し、小型メモリカードの排出を抑制する方向に付勢されており、
前記弾性片と、前記弾性片を通じて小型メモリカードに帯電している静電荷を放電させる機能を有する接触部材と、前記接触部材に設けられ前記金属パネルと当接する金属パネル接触手段とが一体的に形成されていることを特徴とする小型メモリカード用アダプタ。」
であるから、上記補正は、「小型メモリカードを抜去させるイジェクトボタン」を新たに付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号に規定する減縮に該当しない。
また、請求項1の上記補正は、特許法第17条の2第4項第3号乃至第4号に該当するものでもない。
よって、本件の手続補正は、その余を検討するまでもなく、適法になされたものではないから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下する。
3.本件発明について
(本件発明の内容)
本件手続補正書による補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至5に係る各発明は、平成12年1月13日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、本件発明という。)は次のとおりのものである。
「メモリICを実装した回路基板と前記回路基板を収納するフレームと、前記フレームを覆う金属パネルとを具備し、小型メモリカードを収納接続できる小型メモリカード用アダプタであり、
前記小型メモリカードの側面に当接される弾性片は、弾性を有し、小型メモリカードの排出を抑制する方向に付勢されており、
前記弾性片と、前記弾性片を通じて小型メモリカードに帯電している静電荷を放電させる機能を有する接触部材と、前記接触部材に設けられ前記金属パネルと当接する金属パネル接触手段とが一体的に形成されていることを特徴とする小型メモリカード用アダプタ。」
(刊行物記載の発明)
原査定の拒絶の理由に引用された特許第2846301号公報(以下、刊行物1という。)には、メモリカード用アダプタカードに関する発明が記載されており、「【0011】【発明の実施の形態】以下、図面に従って本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明に係るメモリカード用アダプタカードへメモリカードを装着した状態の全体斜視図、図2はメモリカード用アダプタカードの分解斜視図、図3は回路基板の斜視図である。」、「【0012】図2において、メモリカード用アダプタカード1を分解した各部品を示しており、2はフレーム、3は接触バネ片、4は回路基板である。回路基板4は後述するメモリカード8を挿入する前側に第1のコネクタ5を、反対方向の後ろ側に第2のコネクタ6を組み付けて1個の組立部品としている。7はカバーであり、上下一対のカバー7、7にてこれらフレーム2、回路基板4を含む組立部品を覆うように組み立てられる。」、「【0014】側杆21と側杆22の対向面の先端部分には、それぞれ上下にガイドレール25が突設されている。側杆22の上側ガイドレール25には、窓251と係止部252が設けられている。側杆21の下側のガイドレール25にも、図示しない窓251と係止部252が設けられている。フレーム2は、射出成形にて形成した合成樹脂品である。」、「【0018】・・・。7は導電性金属プレートから成る上下一対のカバーである。前側中央を大きく方状に欠いた左右の腕状部分と略長方形状部分から成る。メモリカード用アダプタカードの組立時に上下より上述した回路基板4を含む組立部品とフレーム2をサンドイッチ状に挟んで組み付けられる。」、「【0022】下カバー82は両側面に折り曲げ片を設けてフレーム81の側面に巻付けて接地用接触部83、83としている。接地用接触部83、83は、同時に上カバー84との電気接続も提供する。86はメモリカードの前端部分、87は両側面の前端側に設けた段部である。次に、図5に従って接触バネ片3の構成を詳細に説明する。・・・。接触バネ片3はプレス成形された金属部品であり、バネ性を考慮すればリン青銅などの材料が好適であろう。」、「【0023】接触バネ片3の各部は、二個の折曲片31、32と、連結部34、加えて折曲片31、32の弾性を担保する支持片33を一体に形成したものである。「く」字状の折曲片31は、メモリカードの接地用接触部83と摺接し、上方へと折り曲げられ延設された折曲片32はメモリカード用アダプタカード1のカバー7と組立時に弾接して電気接続されている。」、「【0024】図6は接触バネ片を側杆へ組み込んだ状態を示す要部拡大図である。側杆22に穿設された接触バネ片3の装着部には、上面に窓251が設けられ上方より容易に接触バネ片3を挿入係止できる。窓251中には突出した変形「コ」字状の係止部252が設けられている。上方より挿入した接触バネ片3は、支持片33を上記変形「コ」字状の間に係止され、以て折曲片31、32の弾接状態を保持できるのである。」と説明されている。
(対比・検討)
本件発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、
(a)上記刊行物1記載の発明のアダプタカードは、メモリカードを実装した回路基板とその回路基板を収納するフレームと、そのフレームを覆う金属プレートとを備え、メモリカードを収納接続できるようにしており、本件発明が、メモリICを実装した回路基板と前記回路基板を収納するフレームと、前記フレームを覆う金属パネルとを具備し、小型メモリカードを収納接続できる小型メモリカード用アダプタであるとする点と軌を一にする。
(b)上記刊行物1記載の発明は、接触バネ片3を備え、接触バネ片3の「く」字状の折曲片31はメモリメモリカードの接地用接触部83に摺接するようにしており、本件発明において、小型メモリカードの側面に当接される弾性片は、弾性を有し、小型メモリカードの排出を抑制する方向に付勢されているとする点と実質的な差異はない。
(c)上記刊行物1記載の発明において、「く」字状の折曲片31、連結部34、上方へと折り曲げられ延設された折曲片32及び支持片33は一体に形成されており、また、折曲片31,折曲片32は、それぞれメモリカードの接地用接触部83及びアダプタカード1のカバー7と電気的に接続するとしており、本件発明が、弾性片と、弾性片を通じて小型メモリカードに帯電している静電荷を放電させる機能を有する接触部材と、前記接触部材に設けられ前記金属パネルと当接する金属パネル接触手段とが一体的に形成されているとする点と実質的な差異はない。
したがって、本件発明と上記刊行物1記載の発明とには実質的な差異はないから、少なくとも、本件発明は上記刊行物1記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(まとめ)
よって、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
4.その他
上記2.に示したように、本件手続補正書による補正は認められないが、仮に、本件手続補正書により補正が特許法第17条の2第4項の規定を満たすものであるとしても、イジェクトボタンといったものは、本件出願前普通に知られた手段にすぎない(必要ならば、例えば、特開平7-239923号公報、特開平9-185689号公報を参照されたい。)から、上記刊行物1記載の発明にイジェクトボタンを採用するとすることは当業者が適宜なし得ることにすぎない。
また、イジェクトに際し、カードが飛び出すことがあるといった課題も本件出願前普通に知られた課題にすぎない(必要ならば、例えば、特開平6-162281号公報、実願平5-58173号(実開平7-22482号)のCD-ROMを参照されたい。)から、上記刊行物1記載の発明において、前記課題に対応したバネ片の強さを採用するとすることは当業者が適宜なし得ることにすぎない。
したがって、上記3.の理由と合わせて考えれば、補正後の請求項1に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、本件手続補正書による補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-05-25 
結審通知日 2004-06-01 
審決日 2004-06-15 
出願番号 特願平11-66412
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06K)
P 1 8・ 572- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前田 仁  
特許庁審判長 川名 幹夫
特許庁審判官 吉見 信明
橋本 正弘
発明の名称 小型メモリカード用アダプタ  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 坂口 智康  

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