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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08F
管理番号 1101106
異議申立番号 異議2002-72442  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-06-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-10-03 
確定日 2004-06-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3275402号「水性分散組成物およびその製法、ならびに撥水撥油剤および離型剤」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3275402号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
特許第3275402号の請求項1〜3に係る発明は、平成4年12月2日に特許出願され、平成14年2月8日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、旭硝子株式会社より、請求項1〜3に係る発明の特許に対し特許異議の申立がなされ、請求項1〜3に係る特許に対し取消の理由が通知され、その指定期間内である平成15年5月9日付けで特許異議意見書とともに訂正請求書が提出され、特許権者に対し審尋がなされ、平成15年8月7日付けで回答書が提出されたものである。
II.訂正請求について
1.訂正の内容
(1)訂正事項a
請求項1に記載の「(a)分子中にパーフルオロアルキル基と炭化水素系アルキル基を含む低分子化合物、」を
「(a)CnF2n+1CmH2m+1 (n=3〜15, m=3〜22)、
CnF2n+1CH2CHICmH2m+1 (n=3〜15, m=1〜20)、
CnF2n+1CH2OCOCmH2m+1(n=3〜15, m=3〜22)または
CnF2n+1COOCmH2m+1 (n=3〜15, m=3〜22)である、
分子中にパーフルオロアルキル基と炭化水素系アルキル基を含む低分子化合物、」と訂正する。
(2)訂正事項b
請求項1に記載の「(c)パーフルオロアルキル基含有重合性化合物と炭化水素系重合性化合物を共重合した高分子化合物、」を「(c)パーフルオロアルキル基を含有するグラフトポリマーである、パーフルオロアルキル基含有重合性化合物と炭化水素系重合性化合物を共重合した高分子化合物、」と訂正する。
(3)訂正事項c
明細書段落【0005】の記載である「(a)分子中にパーフルオロアルキル基と炭化水素系アルキル基を含む低分子化合物、」を
「(a)CnF2n+1CmH2m+1 (n=3〜15, m=3〜22)、
CnF2n+1CH2CHICmH2m+1 (n=3〜15, m=1〜20)、
CnF2n+1CH2OCOCmH2m+1(n=3〜15, m=3〜22)または
CnF2n+1COOCmH2m+1 (n=3〜15, m=3〜22)である、
分子中にパーフルオロアルキル基と炭化水素系アルキル基を含む低分子化合物、」と訂正し、「(c)パーフルオロアルキル基含有重合性化合物と炭化水素系重合性化合物を共重合した高分子化合物、」を「(c)パーフルオロアルキル基を含有するグラフトポリマーである、パーフルオロアルキル基含有重合性化合物と炭化水素系重合性化合物を共重合した高分子化合物、」と訂正する。
(4)訂正事項d
明細書段落【0031】に記載の「以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。」を「以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。なお、実施例3および実施例8は、本発明に含まれない参考例である。」と訂正する。
2.訂正の目的の適否、訂正の範囲の適否及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項aは、分子中にパーフルオロアルキル基と炭化水素系アルキル基を含む低分子化合物をより具体的に限定するものであり、また、訂正事項bは、パーフルオロアルキル基含有重合性化合物と炭化水素系重合性化合物を共重合した高分子化合物をグラフトポリマーと限定するものであるから、訂正事項a,bは、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
訂正事項c、dは、特許請求の範囲の訂正に伴ない、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためのものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
そして、上記各訂正事項は、いずれも、明細書に記載された事項の範囲内の訂正であり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
3.むすび
以上のとおり、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
III.訂正後の請求項1〜3に係る発明
訂正後の請求項1〜3に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】 ポリフルオロアルキル基含有の重合可能な化合物とこれに相溶しない他の共重合可能な化合物を、相溶化剤を配合した水溶液中で乳化重合することからなる含フッ素共重合体を含む水性分散組成物の製法であって、
相溶化剤が、(a)CnF2n+1CmH2m+1 (n=3〜15, m=3〜22)、
CnF2n+1CH2CHICmH2m+1 (n=3〜15, m=1〜20)、
CnF2n+1CH2OCOCmH2m+1 (n=3〜15, m=3〜22)または
CnF2n+1COOCmH2m+1 (n=3〜15, m=3〜22)である、
分子中にパーフルオロアルキル基と炭化水素系アルキル基を含む低分子化合物、
(b)分子中にパーフルオロポリエーテル基と炭化水素系アルキル基を含む低分子化合物、
(c)パーフルオロアルキル基を含有するグラフトポリマーである、パーフルオロアルキル基含有重合性化合物と炭化水素系重合性化合物を共重合した高分子化合物、および
(d)分子中にパーフルオロポリエーテル基が導入された炭化水素系高分子化合物
からなる群から選択され、アミンオキサイド乳化剤を除くものである製法。
【請求項2】 請求項1記載の製法によって製造された水性分散組成物。
【請求項3】 請求項2記載の組成物を有効成分として含有する撥水撥油剤。」
IV.特許異議申立について
1.特許異議申立の概要
特許異議申立人 旭硝子株式会社は、甲第1号証(特開平2-1795号公報)、甲第2号証(特開昭55-29501号公報)、甲第3号証(特開昭61-209213号公報)、甲第4号証(特開昭64-56711号公報)、甲第5号証(特開平4-227614号公報)を提出して、訂正前の請求項1〜3に係る発明は、前記甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明であるから、訂正前の請求項1〜3に係る発明の特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべき旨主張している。
2.特許異議申立についての判断
(1)甲号証に記載された事項
◆甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
「11.少なくとも1種のビニルモノマーからなる第1のモノマーを乳化重合して得られる第1の重合体の粒子、重合媒体、及び下記第2のモノマーのミセルが生成し難い量の乳化剤の存在するあるいは乳化剤の存在しない重合系内で、少なくとも1種のビニルモノマーからなる第2のモノマーを重合して第2のモノマーの重合体である第2の重合体を上記第1の重合体の粒子の表面ないし内部に形成させること、及び第1のモノマーと第2のモノマーの少なくとも一方がポリフルオロアルキル基含有ビニルモノマーを含むことを特徴とするポリフルオロアルキル基を有する重合体粒子の製造方法。
16.第1のモノマーがポリフルオロアルキル基を有するアクリレートあるいはメタクリレートであるか、又はそれとポリフルオロアルキル基不含ビニルモノマーとの混合物である請求項11記載の方法。
17.第2のモノマーがポリフルオロアルキル基を有しないアクリレートあるいはメタクリレートであるか、又はそれとポリフルオロアルキル基を有するアクリレートあるいはメタクリレートとの混合物である請求項11記載の方法。
19.第1のモノマーを乳化剤、重合開始剤、及び重合媒体の存在下に乳化重合して第1の重合体の粒子を含む乳化重合組成物を製造し、次いで、この乳化重合組成物に新たに乳化剤を実質的に添加することなく、かつ必要により重合媒体を追加した上記乳化重合組成物中で第2のモノマーの重合を行う請求項11記載の方法。
20.重合媒体が水と水溶性有機溶媒の混合物からなる請求項19記載の方法。
23.請求項11記載の方法によって得られた重合粒子を有効成分とする撥水撥油剤。」(特許請求の範囲第11、16、17、19、20、23項、)
「1つの粒子内に少なくとも2種の重合体を含み、かつ少なくとも2種の重合体の少なくとも1種はポリフルオロアルキル基を有する重合体である重合体粒子を有効成分とする撥水撥油剤及びその重合体粒子の製造方法に関するものである。」(4頁左上欄10〜15行)
「本発明の撥水撥油剤は、重合体粒子が分散した水及び/又は溶媒分散系での使用が好ましい。本発明における2種以上の重合体を1つの粒子内に含む重合体粒子は、例えばシード乳化重合法により得られ、乳化重合法により粒子状に形成された第1の重合体と、前記第1の重合体の粒子の表面ないし内部で重合により形成された第2の重合体から形成された粒子であり、層状に相分離したコア-シェル型が性能上好ましいが、相分離形態が海-島構造や、重合体の1種が局在化しているもの、あるいは異種の重合体分子鎖がからみ合ったものでもよい。」(4頁左上欄最下行〜右上欄11行)
「2種以上の重合体を1つの粒子内に含む粒子のうち、例えば、層状に相分離したコア-シェル型の粒子を得るためには、まずコア部を形成する重合体の1種を第1段目の乳化重合により形成せしめた後、前記重合体存在下にシェル部を形成する他の重合体の単量体を2段階以上の多段階に分割して乳化重合する方法を採用することができる。」(5頁右下欄1〜8行)
「製造例5 コア部重合体粒子の製造方法
FA 92.52g(178.6mmol)
n-C18H37SH 3.35g( 11.9mmol)
ポリオキシエチレンオレイルエーテル・・・、アセトン47.9g、蒸留水143.8gの混合物を・・・70℃で5時間重合した。」(9頁左下欄1〜14行)
「実施例8
100mlガラス製重合アンプルに、製造例5で製造したコア部重合体粒子の分散液20g(固形分34%;6.8g;100部)に対して、以下に示す単量体(合計で2.04g;30部)を仕込んだ。
(wt%)
C8F17C2H4OC(=O)CH=CH2(FA) 0.82g(40)
tert-ブチルメタクリレート 0.61g(30)
グリシジルメタクリレート(GMA) 0.61g(30)
計2.04g
これに2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)-2-塩酸塩・・・60℃で12時間重合させた。・・・得られたコアシエル型重合体粒子の分散液を用いて次に示す加工浴を調製した。
・・・
加工浴にナイロン製織物を浸漬後、・・・処理した布は・・・撥水性100、撥油性6であった。洗たく20回後、ドライクリーニング20回後それぞれ3/80、4/80-であった。」(9頁左下欄17行〜10頁左上欄14行)
「実施例9〜10
重合性単量体のtert-ブチルメタクリレートに変えて、ステアリルメタクリレート・・・を用いる以外は実施例8と同様に処理した。結果を表2に示した。」(10頁右下欄13〜18行)
「実施例21
実施例9で製造した粒子の分散液50g(固形分25%;12.5g;100部)に対して以下に示す単量体(合計2.5g:20部)・・・を仕込み、60℃×12時間第3段目の重合を行った。
FA 0.5 g(20wt%)
ステアリアクリレート 1.75g(70wt%)
グリシジルメタクリレート 0.25g(10wt%)
・・・
得られた分散液は、・・・これを実施例8と同様の処方で処理したところ、得られた布は・・・
撥水性100、撥油性6であった。洗濯20回後、ドライクリーニング20回後それぞれ4/80、3/80-であった。」(12頁右下欄1〜20行)
「本発明の撥水撥油剤は、粒子中に撥水撥油性成分としての重合体及び耐久性成分としての重合体が例えばコアシェル型で共存しているため、物品に撥水撥油処理した場合、処理布等の風合を損なうことなく高い撥水撥油性と実用的な耐久性(・・・)を得ることができる。」(13頁左上欄2〜8行)
◆甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
「本発明の目的は、前記の欠点を改良した撥水撥油剤、特に乳化分散体としての安定性に富み、有機溶媒に対し良好な溶解性を有し、被処理物の洗濯およびドライクリーニングに対する抵抗性すなわち耐久性の優れた撥水撥油剤を提供することにある。
本発明によれば、前記目的は、(a)フルオロアルキル基を含む重合しうる化合物および
(b)式:
CH2=CR1COO(CH2CH2O)nCOCR2=CH2〔式中、・・・〕
で示されるポリオキシエチレンジアクリレートまたはジメタクリレートを構成単位として含有する共重合体を撥水撥油剤として使用することにより達成される。」(2頁左下欄3〜18行)
「本発明の共重合体を得るためには、種々の重合反応や条件が任意に選択でき、塊状重合、溶液重合、懸濁液重合、乳化重合、放射線重合、光重合など各種の重合方式のいずれも採用できる。」(3頁左下欄11〜14行)
「参考例1
本発明の共重合体の乳化重合による製造法を、フルオロアルキル基含有の重合しうる化合物、ステアリルアクリレート・・・の場合を例に挙げて説明する。
(CF3)2CF(CF2CF2)nCH2CH2OOCCH=CH2
(n=3,4,5の化合物の重量比5:3:1の混合物)で示される化合物60g、C18H37OOCCH=CH238g、・・・純水250g、アセトン50g・・・をフラスコに仕込み・・・60℃で5時間攪拌して共重合反応を行う。」(5頁左上欄最下行〜右上欄18行)
◆甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
「本発明の目的は、前記の欠点を改良し、撥水撥油性に優れ、洗濯およびドライクリーニングに対する耐久性が向上した撥水撥油剤として有用な含フッ素共重合体を提供することに存する。
本発明によれば、前記目的は、(a)パーフルオロアルキル基が結合しているアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルから誘導される構成単位、(b)式:
CH2=CRCOOCH2CH(OH)CH2Cl
[式中、・・・]
で示される化合物から誘導される構成単位、および(c)ステアリルアクリレートまたはステアリルメタクリレートから誘導される構成単位から成る共重合体により達成される。」(2頁左上欄4〜17行)
「本発明の共重合体を得るためには、種々の重合反応の方式や条件が任意に選択でき、塊状重合、溶液重合、乳化重合、放射線重合など各種の重合方式のいずれも採用できる。」(3頁左上欄20行〜右上欄3行)
「参考例1
本発明で用いる共重合体の製造法を、フルオロアルキル基を含む重合しうる化合物、ステアリルアクリレート・・・の場合を例に挙げて説明する。
式:(CF3)2CF(CF2CF2)nCH2CH2OOCCH=CH2(n=3,4,5の化合物の重量比5:3:1の混合物)で示される化合物60g、C18H37OOCCH=CH238g、・・・純水250g、アセトン50g・・・をフラスコに仕込み・・・60℃で5時間攪拌して共重合反応を行う。」(4頁左上欄15行〜右上欄13行)
◆甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
「本発明の目的は、優れた撥水撥油性及び耐スリップ性を有する撥水撥油剤、並びに優れた撥水撥油性、耐洗濯性、耐ドライクリーニング性、耐スリップ性、併用安定性を有する飛躍的に高性能な撥水撥油剤、並びにそれを構成する含フッ素共重合体を提供することにある。
(課題を解決するための手段)
本発明の目的は、(a)炭素数4〜20のパーフルオロアルキル基を有する少なくとも1種の重合性化合物から誘導された繰返単位40〜90重量%、(b)アクリル酸ステアリル及びメタクリル酸ステアリルから成る群から選択された少なくとも1種の単量体から誘導された繰返単位5〜50重量%、及び(c)アルキル基の炭素数が2〜8であるアクリル酸アルキル及びメタクリル酸アルキルから成る群から選択された少なくとも1種の単量体から誘導された繰返単位5〜50重量%から成る共重合体、並びに
該共重合体を有効成分ととする撥水撥油剤によって達成される。」(3頁左上欄19行〜右上欄18行)
「上記共重合体の製造は公知の方法に従って、これらの単量体を重合することによって行うことができ、例えば塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、放射線重合、光重合など各種の重合方式のいずれも採用できる。」(5頁右上欄5〜9行)
「実施例1〜20及び比較例1〜3
下記第4表に示した6種類又はそれ以下の単量体の所定量(合計100g)を・・・純水160g、アセトン50g・・・をフラスコに仕込み・・・60℃で3時間攪拌して共重合反応を行った。・・・結果を第4表に示す。」(第6頁左下欄5行〜右下欄15行)
◆甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
「本発明は、パーフルオロアルキル基および活性水素原子を含有する化合物およびイオン性および/または非イオン性の親水性基および活性水素原子を含有する化合物およびポリイソシアネートに基づくグラフトベースとして、水性の乳化剤不含のポリウレタン分散液の存在下に、重合することによって調製された、エチレン系不飽和パーフルオロアルキルのモノマーおよびパーフルオロアルキル不含のエチレン系不飽和のモノマーから構成されたコポリマーおよび/またはグラフトコポリマーの水性分散液に関する。」(段落【0001】
「パーフルオロアルキル鎖を組み込むことによって、グラフトベースおよびグラフトの相溶性は改良され、これは2つの分散液のより均質な分布に導き、そしてまた、より高いグラフト収率に導く。同時に、ラテックス粒子中のパーフルオロアルキル鎖の改良された分布がまた達成される。得られる分散液は、それで仕上げられた支持体に改良された撥油作用を与える。」(段落【0008】)
「共重合はグラフトベースとしてポリウレタン分散液の存在下に実施し、ここでポリウレタンはその中に:
A)有機ポリイソシアネート、
B)脂肪酸とポリオールとの部分的エステル、
C)パーフルオロアルキル基および活性水素原子を含有する化合物、
D)活性水素原子および塩の基または塩の基に転化することができる基を含有する化合物、
の構造成分を組み込んで含有する。
【0014】グラフトベースとして使用するポリウレタン分散液の調製の出発物質は、次の通りである:
A)所望の有機ポリイソシアネート、好ましくは一般式
【0015】
【化1】
Q(NCO)2 (I)
式中、Qは脂肪族、脂環族、芳香族または芳香族脂肪族の炭化水素基である、のジイソシアネート。」(段落【0013】〜【0015】)
「【0095】
【実施例】 実施例A:
143.4gのOH価229の商業的等級のグリセロールモノステアレートを、・・・一緒に還流した。100gの無水アセトン中の134.4gのヘキサメチレンジイソシアネートから成る溶液1を、・・・反応させた。・・・N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)パーフルオロオクチルスルホンアミドから成る溶液2を、1.5時間かけて計量して入れた。・・・N-メチルジエタノールアミンから成る溶液3を添加し、そしてこの混合物をさらに5.5時間撹拌した。」(段落【0095】)
「実施例B:
110.8gの商業的等級のヘキサメチレンジイソシアネートトリマー(NCO含量:19.4%)、・・・を加熱還流した。・・・N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミドから成る溶液1を、計量してこの溶液に1.5時間かけて添加した。・・・グリセロールモノオレエート(OH価261)および100gの無水アセトンから成る溶液2を1時間かけて滴々添加した。・・・N-メチルジエタノールアミンから成る溶液3を添加し、そして還流下に撹拌する(5.5時間)と、イソシアネート基は完全に転化された。(段落【0097】)
「II.疎水性ポリ縮合生成物
実施例E:
例えば、・・・記載されているような、グラフトベースとして使用することができる、メラミン縮合生成物は、例えば、アミノトリアジンのメチロール生成物またはそのエーテル化またはエステル化生成物を、例えば、脂肪族カルボン酸およびアミンとポリ縮合反応の過程において反応させることによって得ることができる。この目的で、まずカルボン酸をメラミン誘導体と反応させ、次いでアミノ成分を反応させることができる(参照、ドイツ国特許明細書956,990号。
【0104】 例えば、次のものをグラフトベースとして調製した:
1モルのヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテル、1.5モルのベヘン酸および0.9モルのN-メチルジエタノールアミンから130℃において3時間かけて調製した50重量%の縮合生成物および50重量%の融点52℃のパラフィンの混合物。」(段落【0103】〜【0104】)
「【0105】本発明による共重合分散液の調製
実施例1
次の溶液を50℃において調製した:
溶液1:
119.25重量部の実施例Aにより得られた分散液、 6.1重量部の10エチレンオキシド単位を含有するエトキシル化ノニルフェノール、 6.25重量部のベンジルドデシルジメチルアンモニウムクロライド、540重量部の脱イオン水。
【0106】 溶液2:
450重量部の酢酸エチル、43.4重量部のN-メチル-N-パーフルオロオクタンスルホニルアミドエチルメタクリレート、12.7重量部のステアリルメタクリレート、18.45重量部の酢酸ビニル、14.6重量部の実施例Eにより得られたグラフトベース。
【0107】 次の溶液を30℃において調製した:
溶液3:
0.268重量部のt-ブチルパーピバレート、0.918重量部のジラウリルパーオキシド、6.0パーオキシの酢酸エチル。
【0108】 溶液1および2を混合し、そしてこの混合物を50℃において乳化装置中で乳化した。得られた・・・30℃に冷却した。溶液3を30℃において添加し、・・・1.5時間撹拌した。次いで、・・・さらに3時間撹拌した。
【0109】 固形分:14.9%
固体中のフッ素含量:21.4%
平均粒子サイズ:390nm(光散乱後)
実施例2
次の溶液を50℃において調製した:
溶液1:
116.8重量部の実施例Bにより得られた分散液、6.1重量部の10エチレンオキシド単位を含有するエトキシル化ノニルフェノール、6.25重量部のベンジルドデシルジメチルアンモニウムクロライド、540.0重量部の脱イオン水。
【0110】 溶液2および3の調製および重合は実施例1におけるようにして実施した。
【0111】 固形分:16.2%
固体中のフッ素含量:23.3%
平均粒子サイズ:340nm(光散乱後)」(段落【0105】〜【0111】
(2)判断
(i)訂正後の請求項1に係る発明について
訂正後の請求項1に係る発明は、ポリフルオロアルキル基含有の重合可能な化合物とこれに相溶しない他の共重合可能な化合物を、相溶化剤を配合した水溶液中で乳化重合することからなる含フッ素共重合体を含む水性分散組成物の製法であって、相溶化剤が、
(a)CnF2n+1CmH2m+1 (n=3〜15, m=3〜22)、
CnF2n+1CH2CHICmH2m+1 (n=3〜15, m=1〜20)、
CnF2n+1CH2OCOCmH2m+1(n=3〜15, m=3〜22)または
CnF2n+1COOCmH2m+1 (n=3〜15, m=3〜22)である、
分子中にパーフルオロアルキル基と炭化水素系アルキル基を含む低分子化合物、(b)分子中にパーフルオロポリエーテル基と炭化水素系アルキル基を含む低分子化合物、(c)パーフルオロアルキル基を含有するグラフトポリマーである、パーフルオロアルキル基含有重合性化合物と炭化水素系重合性化合物を共重合した高分子化合物、および(d)分子中にパーフルオロポリエーテル基が導入された炭化水素系高分子化合物からなる群から選択され、アミンオキサイド乳化剤を除くものである製法、を構成とするものである。
一方、甲第1号証には、少なくとも1種のビニルモノマーからなる第1のモノマーを乳化重合して得られる第1の重合体の粒子、重合媒体、及び第2のモノマーのミセルが生成し難い量の乳化剤の存在するあるいは乳化剤の存在しない重合系内で、少なくとも1種のビニルモノマーからなる第2のモノマーを重合して第2のモノマーの重合体である第2の重合体を第1の重合体の粒子の表面ないし内部に形成させること、及び第1のモノマーと第2のモノマーの少なくとも一方がポリフルオロアルキル基含有ビニルモノマーを含むことを特徴とするポリフルオロアルキル基を有する重合体粒子の製造方法が記載されている。
また、甲第1号証に記載された方法においては、少なくとも1種のビニルモノマーからなる第2のモノマーを重合して第2のモノマーの重合体である第2の重合体を第1の重合体の粒子の表面ないし内部に形成させること、すなわちコア-シェル構造の重合体粒子を製造することも示されている。
そして、製造例5によれば、ポリフルオロアルキル基含有ビニルモノマーであるFAを重合してコア部重合体粒子を製造し、実施例8によれば、この製造例5の重合体粒子の存在下FAとt-BuMA、GMAとを重合し、コア-シェル構造の重合体粒子を含有する分散液を得、実施例9によれば、製造例5の重合体粒子の存在下FAとStMA、n-BuMA、GMAを実施例8と同様に重合し、コア-シェル構造の重合体粒子を含有する分散液を得ている。
さらに、実施例21によれば、実施例9で得られたコア-シェル構造を有する重合体粒子の存在下で、FAとStA、GMAとを重合してコア-シェル構造の重合体粒子を含有する分散液を得たことも記載されている。
しかしながら、甲第1号証に記載されている実施例21において使用する実施例9で得られたコア-シェル構造を有する重合体粒子は、甲第1号証の「層状に相分離したコア-シェル型が性能上好ましいが、相分離形態が海-島構造や、重合体に1種が局在化しているもの、あるいは異種の重合体分子鎖がからみ合ったものでもよい」との記載(第4頁右上欄8行〜11行)及び実施例8,9の反応形態からみると、製造例5のコア重合体粒子に前記FAとStMA、n-BuMA、GMAからなるモノマーがグラフトしてシェル構造を成すもの、あるいは、シェル構造が前記モノマーからなるグラフト重合体により成っている、ということはできない。
そうであれば、甲第1号証に記載の「コア-シェル構造を有する重合体粒子」が、訂正後の請求項1に記載の、パーフルオロアルキル基を含有するグラフトポリマーからなる「相溶化剤」に相当するということはできないから、甲第1号証には、訂正後の請求項1に係る発明が記載されているということはできない。
甲第2〜4号証に記載された発明は、パーフルオロアルキル基を有する重合性モノマーと炭化水素基含有重合性モノマーを乳化重合して撥水撥油剤として使用できる含フッ素共重合体を含む水性分散物の製造方法について記載されている。
しかしながら、甲第2〜4号証には、本件訂正後の請求項1で採用する「相溶化剤」については何ら記載がされていないし、本件訂正後の請求項1で採用する「相溶化剤」に該当する化合物(パーフルオロアルキル基を含有するグラフトポリマー)の使用についても何ら記載がされていない。
さらに、甲第2号証(参考例1)、甲第3号証(参考例1)、甲第4号証(実施例1〜20及び比較例1〜3)に記載の発明のものが、パーフルオロアルキル基を有する重合性モノマーと炭化水素基含有重合性モノマーを乳化重合する際に、パーフルオロアルキル基を有する重合性モノマーの存在下に重合が行われるとしても、パーフルオロアルキル基を有する重合性モノマーとして記載されているFAは分子中に不飽和基を含むものであて、本件訂正後の請求項1で採用する相溶化剤は(a)で示されるとおりのものであり、分子中にパーフルオロアルキル基と炭化水素系アルキル基を含む低分子化合物は不飽和基を有するものではないから、低分子化合物として両者のものは全く相違するものである。
したがって、甲第2〜4号証には、訂正後の請求項1に係る発明が記載されているということはできない。
甲第5号証には、ポリイソシアネートに基づくグラフトベースとして、水性の乳化剤不含のポリウレタン分散液の存在下に、重合することによって調製された、エチレン系不飽和パーフルオロアルキルのモノマーおよびパーフルオロアルキル不含のエチレン系不飽和のモノマーから構成されたポリマーの水性分散液に関する発明が記載されている。
しかしながら、甲第5号証に記載のポイソシアネートに基づくグラフトベースとは、パーフルオロアルキル基を含有する化合物を採用するものであるが、実施例A〜Eからも明らかなとおり、ポリウレタン化合物である。
そうすると、甲第5号証に記載のポリイソシアネートに基づくグラフトベースとは、ポリウレタン化合物であって、本件請求項1で規定する「(c)パーフルオロアルキル基を含有するグラフトポリマーである、パーフルオロアルキル基含有重合性化合物と炭化水素系重合性化合物を共重合した高分子化合物」とは全く相違するものである。
なお、甲第5号証に記載の実施例2には、「実施例Bにより得られた分散液」を使用することが記載され、実施例Bの分散液は、ヘキサメチレンジイソシアネートトリマーとN-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、グリセロールモノオレートさらにN-メチルジエタノールアミンを使用するものであり、得られるものはウレタン化合物というものであるから、実施例2は、N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミドの単独の存在下で重合を行うというものではない。また、N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミドは、本件訂正後の請求項1で採用する「相溶化剤」(a)に該当する化合物でもない。
したがって、甲第5号証には、訂正後の請求項1に係る発明が記載されているということはできない。
また、甲第1〜5号証には、相溶化剤の存在下で重合反応を行うことについては記載がないのであるから、これらの記載を総合しても、訂正後の請求項1に係る発明は、甲第1〜5号証に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができた、とすることもできない。
(ii)訂正後の請求項2〜3に係る発明について
訂正後の請求項2に係る発明は、訂正後の請求項1に記載の発明を引用するものであり、訂正後の請求項3に係る発明は、訂正後の請求項2に係る発明を更に引用するものであるから、訂正後の請求項1に係る発明が甲第1〜5号証に記載された発明でない以上、請求項2〜3に係る発明も同様、甲第1〜5号証に記載された発明であるということはできない。
また、訂正後の請求項2〜3に係る発明も、請求項1に係る発明で示したと同様な理由で、甲第1〜5号証に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができた、とすることもできない。
V.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、訂正後の請求項1〜3に係る各発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の請求項1〜3に係る各発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
水性分散組成物およびその製法、ならびに撥水撥油剤および離型剤
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリフルオロアルキル基含有の重合可能な化合物とこれに相溶しない他の共重合可能な化合物を、相溶化剤を配合した水溶液中で乳化重合することからなる含フッ素共重合体を含む水性分散組成物の製法であって、
相溶化剤が、
(a) CnF2n+1CmH2m+1 (n=3〜15,m=3〜22)、
CnF2n+1CH2CHICmH2m+1 (n=3〜15,m=1〜20)、
CnF2n+1CH2OCOCmH2m+1 (n=3〜15,m=3〜22)または
CnF2n+1COOCmH2m+1 (n=3〜15,m=3〜22)である、
分子中にパーフルオロアルキル基と炭化水素系アルキル基を含む低分子化合物、
(b)分子中にパーフルオロポリエーテル基と炭化水素系アルキル基を含む低分子化合物、
(c)パーフルオロアルキル基を含有するグラフトポリマーである、パーフルオロアルキル基含有重合性化合物と炭化水素系重合性化合物を共重合した高分子化合物、および
(d)分子中にパーフルオロポリエーテル基が導入された炭化水素系高分子化合物
からなる群から選択され、アミンオキサイド乳化剤を除くものである製法。
【請求項2】 請求項1記載の製法によって製造された水性分散組成物。
【請求項3】 請求項2記載の組成物を有効成分として含有する撥水撥油剤。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、水性分散組成物およびその製法、ならびに該組成物を有効成分として含有する撥水撥油剤および離型剤に関する。
【0002】
【従来技術および発明が解決しようとする課題】
従来、撥水撥油剤として、ポリフルオロアルキル基含有の重合可能な化合物(以下、フッ素系モノマーという)とこれに相溶しない他の共重合可能な化合物(以下、炭化水素系モノマーという)、例えばステアリル(メタ)アクリレートのような長鎖アルキル基含有(メタ)アクリレートとの共重合体が公知である(特開昭55-9619号公報、特開昭55-29501号公報、特公昭60-8068号公報、特公昭63-56912号公報)。このような炭化水素系モノマーを使用すると、撥水性を損なうことなしに撥油性を向上することが可能である。乳化重合する場合、これらのモノマーはお互いに相溶しないために、アセトンに代表されるような水溶性有機溶剤を添加して両モノマーの相溶性を向上させることにより、共重合性を良くする技術は公知である。
【0003】
しかし、通常量(水溶液の約10〜30重量%)の水溶性有機溶剤の添加のみでは、両モノマーの相溶性は、はなはだ不十分であるため、組成分布が著しく大きくなる結果、重合後はフッ素系成分に富む相と炭化水素成分に富む相がエマルション粒子内で分離した状態となっており、共重合体の撥水撥油性、離型性が低い。また、両モノマーの相溶性を向上させるために、さらに多量の水溶性有機溶剤を添加すると、相溶性は向上するものの、モノマーを乳化している界面活性剤の界面活性が低下し、モノマーエマルションの乳化状態が非常に悪くなり、重合後に凝固物が多量に発生するという問題が生じる。
従来技術によると、相溶性の向上と凝固物の発生は相反する現象であり、これら両者を満足させることは極めて困難であった。
【0004】
本発明の主要な目的は、凝固物が発生することなく、モノマーの相溶性が向上した水性分散組成物の製法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
1つの要旨によれば、本発明は、ポリフルオロアルキル基含有の重合可能な化合物とこれに相溶しない他の共重合可能な化合物を、相溶化剤を配合した水溶液中で乳化重合することからなる含フッ素共重合体を含む水性分散組成物の製法であって、
相溶化剤が、
(a) CnF2n+1CmH2m+1 (n=3〜15,m=3〜22)、
CnF2n+1CH2CHICmH2m+1 (n=3〜15,m=1〜20)、
CnF2n+1CH2OCOCmH2m+1 (n=3〜15,m=3〜22)または
CnF2n+1COOCmH2m+1 (n=3〜15,m=3〜22)である、
分子中にパーフルオロアルキル基と炭化水素系アルキル基を含む低分子化合物、
(b)分子中にパーフルオロポリエーテル基と炭化水素系アルキル基を含む低分子化合物、
(c)パーフルオロアルキル基を含有するグラフトポリマーである、パーフルオロアルキル基含有重合性化合物と炭化水素系重合性化合物を共重合した高分子化合物、および
(d)分子中にパーフルオロポリエーテル基が導入された炭化水素系高分子化合物
からなる群から選択され、アミンオキサイド乳化剤を除くものである製法を提供する。
別の要旨によれば、本発明は、前記製法によって製造された水性分散組成物を提供する。
【0006】
本発明において含フッ素共重合体は、モノマー構成単位としてポリフルオロアルキル基含有の重合可能な化合物(以下、フッ素系モノマーという)を少なくとも30重量%含む。30%未満では、良好な撥水撥油性、離型性が得られない。また、他の共重合可能な化合物(以下、炭化水素系モノマーという)の量は10〜70重量%である。10重量%未満では撥水撥油性、離型性の向上効果が認められないか、あるいは商業的に価格面で不利であり、70重量%を越えると、撥油性、離型性が低下する。炭化水素系モノマーの量が20〜50重量%である場合に、特に良好な撥水撥油性、離型性が得られる。
【0007】
本発明において、フッ素系モノマーとしては、例えば、以下のものを例示できる:
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

[式中、Rfは炭素数3〜21のポリフルオロアルキル基またはポリフルオロアルケニル基、R1は水素または炭素数1〜10のアルキル基、R2は炭素数1〜10のアルキレン基、R3は水素またはメチル基、Arは置換基を有することもあるアリーレン基、nは1〜10の整数である。]
などのポリフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートで代表されるビニル性モノマー。
【0008】
さらに具体的には、
CF3(CF2)7(CH2)OCOCH=CH2、
CF3(CF2)6(CH2)OCOC(CH3)=CH2、
(CF3)2CF(CF2)6(CH2)2OCOCH=CH2、
CF3(CF2)7(CH2)2OCOC(CH3)=CH2、
CF3(CF2)7(CH2)2OCOCH=CH2、
CF3(CF2)7SO2N(CH3)(CH2)2OCOCH=CH2、
CF3(CF2)7SO2N(C2H5)(CH2)2OCOC(CH3)=CH2、
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH(OCOCH3)CH2OCO(CCH3)=CH2、
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2、
【化5】

を例示することができる。
【0009】
炭化水素系モノマーは上記フッ素系モノマーと非相溶のモノマーであり、例えば、
CH2=CHCOOR
CH2=C(CH3)COOR
CH2=CHOCOR
[式中、Rは炭素数12〜40の直鎖または分枝状のアルキル基である。]
などの(メタ)アクリレート、ビニルエステルに代表されるビニル性モノマーである。
【0010】
本発明では上記モノマー以外にも必要に応じてポリフルオロアルキル基を含有しないビニル性モノマーを使用することができ、例えば、エチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アクリロニトリル、スチレン、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ビニルアルキルエーテル、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、グリシジル(メタ)アクリレートなどが例示される。これらのモノマーを共重合させることにより、撥水撥油性や防汚性以外に、耐ドライクリーニング性、耐洗濯性、溶解性、硬さ、感触などの種々の性質を改善することができる。
【0011】
本発明において用いられる相溶化剤は、分子中にパーフルオロアルキル基(またはパーフルオロポリエーテル基)と炭化水素系アルキル基を含む低分子化合物、パーフルオロアルキル基含有重合性化合物と炭化水素系重合性化合物を共重合した高分子化合物、あるいは分子中にパーフルオロポリエーテル基が導入された炭化水素系高分子化合物である。
【0012】
低分子化合物は、例えば、
CnF2n+1CmH2m+1 (n=3〜15,m=3〜22) (B1)
CnF2n+1CH2CHICmH2m+1 (n=3〜15,m=1〜20) (B2)
CnF2n+1CH2OCOCmH2m+1 (n=3〜15,m=3〜22) (B3)
CnF2n+1COOCmH2m+1 (n=3〜15,m=3〜22) (B4)
PFPE-COOCmH2m+1 (n=3〜15,m=3〜22) (B5)
である。
【0013】
化合物(B5)においてPFPEはパーフルオロポリエーテル基であり、例えば、
F(CF(CF3)CF2O)nCF2CF2- (n=3〜30)
CF3O(CF(CF3)CF2O)n(CF2O)mCF2- (n=2〜30,m=3〜70)
CF3O(CF2CF2O)n(CF2O)mCF2- (n=2〜40,m=4〜70)
F(CF2CF2CF2O)nCF2CF2- (n=3〜30)
である。パーフルオロポリエーテル基の重量平均分子量(GPCにより測定)は500〜5,000であることが好ましい。
【0014】
化合物(B1)および(B2)は、CnF2n+1Iと1-アルケンを付加反応することで得られ[N.O.Brace,J.Org.Chem.,27,3033(1962)]、化合物(B5)はパーフルオロポリエーテルの酸フロライドと炭化水素系アルコールをエステル化することで得られる。
【0015】
パーフルオロアルキル基含有重合性化合物と炭化水素系重合性化合物を共重合した高分子化合物において、パーフルオロアルキル基含有重合性化合物は、例えば、
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

[式中、Rf’は炭素数3〜21のパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基、R1は水素または炭素数1〜10のアルキル基、R2は炭素数1〜10のアルキレン基、R3は水素またはメチル基、Arは置換基を有することもあるアリーレン基、nは1〜10の整数である。]
などのパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートに代表される。
【0016】
また、炭化水素系重合性化合物は、例えば、
(1)アクリル酸およびメタクリル酸ならびにこれらのメチル、エチル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、プロピル、2-エチルヘキシル、ヘキシル、デシル、ラウリル、ステアリル、イソボルニル、β-ヒドロキシエチル、グリシジルエステル、フェニル、ベンジル、4-シアノフェニルエステル類、(2)酢酸、プロピオン酸、カプリル酸、ラウリル酸、ステアリン酸等の脂肪酸のビニルエステル類、(3)スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン等のスチレン系化合物、(4)フッ化ビニル、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニルまたはビニリデン化合物類、(5)ヘプタン酸アリル、カプリル酸アリル、カプロン酸アリル等の脂肪族のアリルエステル類、(6)ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン等のビニルアルキルケトン類、(7)N-メチルアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド等のアクリルアミド類および(8)2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、イソプレン等のジエン類などである。
【0017】
高分子化合物の種類は交互、ランダム、ブロック、グラフトを問わない。ブロック化またはグラフト化された相溶化剤はフッ素系セグメントと炭化水素系セグメントから成るものである。
交互化またはランダム化された高分子化合物相溶化剤の合成は通常の溶液、乳化重合で行うことができる。
【0018】
ブロック化された高分子化合物相溶化剤の合成方法は、重合開始剤(例えば、アルミニウムポルフィリン錯体)の存在下で炭化水素系(メタ)アクリレートのリビングポリマーを重合し、これにパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法(特開平4-120114号公報)、グループ移動重合法[J.Am.Chem.Soc.,105,5706(1983)]などが例示される、また、ブロック化された高分子化合物は、モディパーF600(日本油脂(株)製)、サーフロンS-381、S-382(以上、旭硝子(株)製)などの市販品であってもよい。
【0019】
グラフト化された高分子化合物相溶化剤の合成方法としては、通常の溶液重合、乳化重合などによって合成したフッ素系幹セグメントに対し、連鎖移動法、ポリマーラジカル開始法、Ce(IV)による開始法、高分子反応法によって炭化水素系枝セグメントをグラフト化する方法や同様の方法で炭化水素系幹セグメントに対し、フッ素系セグメントをグラフト化する方法、または炭化水素系マクロモノマーをフッ素系モノマーと、あるいはフッ素系マクロモノマーを炭化水素系モノマーとを通常の溶液重合、乳化重合法などによって重合する方法などが例示される。グラフト化された高分子化合物は、アロンGF-150、GF-300(以上、東亜合成化学工業(株)製)などの市販品であってもよい。
【0020】
分子中にパーフルオロポリエーテル基が導入された炭化水素系高分子化合物において、パーフルオロポリエーテル基は、例えば、
F(CF(CF3)CF2O)nCF2CF2- (n=3〜30)
CF3O(CF(CF3)CF2O)n(CF2O)mCF2- (n=2〜30,m=3〜70)
CF3O(CF2CF2O)n(CF2O)mCF2- (n=2〜40,m=4〜70)
F(CF2CF2CF2O)nCF2CF2- (n=3〜30)
などである。本発明に用いるのに好適なパーフルオロポリエーテル基の重量平均分子量(GPCにより測定)は、500〜5,000である。
【0021】
炭化水素系高分子化合物における主鎖の炭化水素系高分子は、例えば、
(1)アクリル酸およびメタクリル酸ならびにこれらのメチル、エチル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、プロピル、2-エチルヘキシル、ヘキシル、デシル、ラウリル、ステアリル、イソボルニル、β-ヒドロキシエチル、グリシジルエステル、フェニル、ベンジル、4-シアノフェニルエステル類、(2)酢酸、プロピオン酸、カプリル酸、ラウリル酸、ステアリン酸等の脂肪酸のビニルエステル類、(3)スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン等のスチレン系化合物、(4)フッ化ビニル、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニルまたはビニリデン化合物類、(5)ヘプタン酸アリル、カプリル酸アリル、カプロン酸アリル等の脂肪族のアリルエステル類、(6)ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン等のビニルアルキルケトン類、(7)N-メチルアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド等のアクリルアミド類および(8)2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、イソプレン等のジエン類などからなる群から選択された少なくとも1種のモノマーを重合して得られる高分子である。
【0022】
この高分子化合物相溶化剤の合成方法としては、パーフルオロポリエーテルの片末端がヨウ素のものに炭化水素系(メタ)アクリレートを重合させるヨウ素移動重合法[高分子論文集,49(10),765(1992)]、開始剤(例えば、パーフルオロ-オキサ-アルカノイルパーオキサイド)の存在下でメチルメタクリレートを重合させポリメチルメタクリレート鎖の両末端にパーフルオロポリエーテル基を導入する方法、PFPE-COFとHOCH2CH2OCOCH=CH2をエステル化反応させる方法、PFPE-CH2OHとClCOCH=CH2をエステル化反応させる方法(以上、PFPEはパーフルオロポリエーテル基を表す)などが挙げられる。
【0023】
高分子化合物相溶化剤において、炭化水素系重合性化合物とパーフルオロアルキル基含有重合性化合物の重量比および炭化水素系高分子鎖とパーフルオロポリエーテル基の重量比は、通常、95/5〜5/95であり、好ましくは80/20〜20/80である。
【0024】
高分子化合物相溶化剤の重量平均分子量(GPCにより測定)は、通常、1,000〜400,000、好ましくは10,000〜200,000である。
相溶化剤は必要に応じて1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。相溶化剤の使用量は、全重合性化合物に対して0.1〜20重量%、特に1〜10重量%であることが好ましい。
【0025】
本発明の水性分散組成物を得るには、重合性化合物および相溶化剤を分散媒に乳化させ、攪拌下に共重合させる方法が採用される。分散媒は、水のみであってもよく、水と溶剤との混合物であってもよい。溶剤は、例えば、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エステル(例えば、酢酸エチル)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール)などである。分散媒の量は、特に限定されないが、水性分散組成物100重量部に対して通常、50〜90重量部である。溶剤の量は、水100重量部に対して50重量部以下、好ましくは10〜40重量部である。
【0026】
共重合に際しては、重合開始剤および乳化剤を添加してもよい。重合開始剤の例は、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、第3級ブチルパーベンゾエート、1-ヒドロキシシクロヘキシルヒドロ過酸化物、3-カルボキシプロピオニル過酸化物、過酸化アセチル、アゾビスイソブチルアミジン-2塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどである。重合開始剤の量は、重合性化合物100重量部に対して0.1〜5重量部であることが好ましい。乳化剤は、陰イオン性、陽イオン性あるいは非イオン性のいずれであってもよい。乳化剤の量は、重合性化合物に対して1〜10重量部であることが好ましい。
【0027】
得られた水性分散組成物は、撥水撥油剤または離型剤の有効成分として使用できる。得られた水性分散組成物は、水で適当な濃度に希釈して撥水撥油剤または離型剤として使用できる。
【0028】
本発明の撥水撥油剤を適用するには、既知の方法を用いてよい。例えば、浸漬塗布などのような被覆加工により、被処理物の表面に撥水撥油剤を付着させ、乾燥する方法が採られる。必要ならば、適当な架橋剤と共に適用し、キュアリングを行っても良い。本発明の撥水撥油剤に加えて、他の撥水剤や撥油剤あるいは防虫剤、難燃剤、帯電防止剤、塗料定着剤、防シワ剤などを添加して併用することも可能である。
【0029】
本発明の繊維処理用撥水撥油剤で処理される物品は繊維製品であれば、特に限定なく、種々の例を挙げることができる。例えば、綿、麻、羊毛、絹などの動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、或いはこれらの混合繊維が挙げられる。繊維製品は、繊維そのもの、ならびに繊維から形成された糸および布などであってよい
【0030】
本発明の離型剤は、外部離型剤または内部離型剤として用いることができる。本発明の離型剤は、種々の高分子、例えば、合成樹脂、天然樹脂、合成ゴム、フッ素ゴムなどを離型する場合に使用することができる。高分子の具体例は、ポリウレタン、クロロプレンゴム、ポリカーボネート、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂などである。
【0031】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。なお、実施例3および実施例8は、本発明に含まれない参考例である。
【0032】
なお、撥水性、撥油性については、次のような尺度で示してある。撥水性はJIS-L-1005のスプレー法による撥水性No.(表1)をもって表し、撥油性は、AATCC-TM-118-1966に示された試験溶液(表2)を試料塗布の上、二ケ所に数滴(径約4mm)置き、30秒後の浸漬状態により判別した。なお、撥水性No.、撥油性No.に、+、-印をつけたものは、それぞれの性態がわずかに良好なもの、不良なものを示す。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
製造例1(パーフルオロアルキル基を含有する低分子型相溶化剤の合成)
還流冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた200ml四つ口フラスコ中に1-オクタデセン25.3g(100mmol)、C8F17I 54.6g(100mmol)を入れ、60℃に加熱後、30分間窒素置換した。これにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.5g(3mmol)を添加し、6時間反応することにより、パーフルオロアルキル基を含有する低分子型相溶化剤を合成した。
【0036】
製造例2(パーフルオロポリエーテル基を含有する低分子型相溶化剤の合成)
還流冷却管、滴下ろうと、温度計、撹拌装置を備えた200ml四つ口フラスコ中に末端をカルボン酸に変性したパーフルオロポリエーテル
【化10】

71.6g(100mmol)を入れ、撹拌しながらラウリルアルコール18.6g(100mmol)を滴下した。滴下終了後、濃硫酸0.5mlを加えて、75℃で6時間反応することにより、パーフルオロポリエーテル基を含有する低分子型相溶化剤を合成した。
【0037】
製造例3(パーフルオロアルキル基を含有するランダムポリマー型相溶化剤の合成)
200ml四つ口フラスコ中にステアリルメタクリレート(StA)8g、CH2=CHCOO(CH2)2C8F17(FA)12g、1,1,1-トリクロロエタン180gを入れ、60℃に加熱後、30分間窒素置換した。これにt-ブチルパーオキシピバレート(商品名パーブチルPV、日本油脂(株)製)1gを添加し、6時間重合後、溶剤を留去することにより、パーフルオロアルキル基を含有するランダム化された高分子型相溶化剤を合成した。重量平均分子量(GPCにより測定):15,000。
【0038】
製造例4(パーフルオロアルキル基を含有するグラフトポリマー型相溶化剤の合成)
200ml四つ口フラスコ中にステアリルメタクリレートマクロモノマー(MM8-SMA、東亜合成化学工業(株)製、分子量9000)8g、CH2=CHCOO(CH2)2C8F17(FA)12g、1,1,1-トリクロロエタン180gを入れ、60℃に加熱後、30分間窒素置換した。これにパーブチルPV1gを添加し、6時間重合後、溶剤を留去することにより、パーフルオロアルキル基を含有するグラフト化された高分子型相溶化剤を合成した。重量平均分子量(GPCにより測定):25,000。
【0039】
製造例5(パーフルオロポリエーテル基を含有するブロックポリマー型相溶化剤の合成)
還流冷却管、滴下ろうと、窒素導入管、撹拌装置を備えた200ml四つ口フラスコ中にパーフルオロポリエーテルの過酸化物
【化11】

(但し、PFPEはF(CF2CF2CF2)17CF2CF2-である)
16gとフロン113 80gを入れ、撹拌しながらフロン113 80gに溶解したメチルメタクリレート16gを滴下した。滴下終了後、35℃に加熱し、窒素置換しながら6時間重合し、溶剤を留去することにより、パーフルオロポリエーテル基を含有するブロック化された高分子型相溶化剤を合成した。重量平均分子量(GPCにより測定):20,000。
【0040】
実施例1〜5
FA60g、ステアリルアクリレート30g、製造例1〜3で得られた相溶化剤(実施例1:製造例1の相溶化剤を使用、実施例2:製造例2の相溶化剤を使用、実施例3:製造例3の相溶化剤を使用、実施例4:製造例4の相溶化剤を使用、実施例5:製造例5の相溶化剤を使用)1.5g、イオン交換水175g、n-ラウリルメルカプタン0.1g、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム1g、ポリオキシエチレン(20)オクチルフェニルエーテル2gの混合物を60℃に加熱後、高圧ホモジナイザーを用いて乳化した。得られた乳化液を300ml四つ口フラスコに入れ、窒素気流下に約1時間60℃に保ち、充分に撹拌した後、アゾビスイソブチルアミジン二酢酸塩0.5gと水5gの水溶液を添加して重合を開始した。60℃で3時間加熱撹拌してポリマーエマルションを得た。ガスクロマトグラフィーの分析で99%以上重合したことが確認された。
【0041】
実施例6〜10
イオン交換水175gに代えて、イオン交換水130gとアセトン45gの混合物を使用する以外は、実施例1〜5と同様の手順を繰り返した。実施例6では製造例1の相溶化剤を使用し、実施例7では製造例2の相溶化剤を使用し、実施例8では製造例3の相溶化剤を使用し、実施例9では製造例4の相溶化剤を使用し、実施例10では製造例5の相溶化剤を使用した。
【0042】
比較例1
相溶化剤に代えてイオン交換水1.5gを用いる以外は実施例1と同様の手順を繰り返した。
【0043】
比較例2
相溶化剤に代えてイオン交換水1.5gを用いる以外は実施例6の手順を繰り返した。
【0044】
応用例1(撥水撥油剤として使用)
実施例1〜10ならびに比較例1および2で得られたポリマーエマルションを水で希釈し、固形分0.5重量%の樹脂液を調製した。この樹脂液にポリエステル、綿布を浸漬し、マングルで絞り、80℃で3分間予備乾燥を行った後、さらに150℃で3分間熱処理を行い、撥水撥油試験に供した。撥水撥油試験の結果を表3に示す。
【0045】
【表3】

注)PFA基:パーフルオロアルキル基
PFPE基:パーフルオロポリエーテル基
【0046】
応用例2(離型剤として使用)
実施例1〜10ならびに比較例1および2で得られたポリマーエマルションをエポキシ樹脂の成型における外部離型剤として使用した。離型試験方法は次の通りである。
1.試験用エポキシ樹脂の組成
エピコート#828(シエル化学製) 100重量部
トリエチレンテトラミン 10重量部
【0047】
2.金型および成型条件
鋼金型へ、(水で固形分1重量%に希釈した)離型剤を刷毛塗りし風乾する。金型は寸法が直径40mm、厚さ2mmの窪みを有する円板成型用で、中央部に硬化後成型品を取り出しやすくするためのピンを立てておく。上記エポキシ樹脂の成分をよく混合して金型に注入し、常温で2時間放置後、100℃で1時間加熱して硬化させた後、ピンを引っ張って成型物(円板)を金型から取出し、そのときの手感で離型性能を下記規準で判定する。
【0048】
離型性能判定規準
5:ほとんど力を加えなくても成型物が型から取れる。
4:軽い力を加えれば取れる。
3:少し力を加えれば取れる。
2:力を加えても取れにくい。
1:成型物が金型に接着してしまって、力を加えても全く取れない。
【0049】
離型寿命は離型剤を1回塗布後、更に塗布を行わずに離型性が悪化するまで行う。即ち、上記判定規準で3以上の場合は離型剤を塗布せずに成型を繰り返し、2以下になった1つ前の成型回数を離型寿命とする。離型性は離型寿命に近いところで急激に低下し、その点まではほとんど同じ離型性を示す。表の離型性の値はこうして測定したとき最も多数回表われた離型性の判定値である。
離型試験の結果を表4に示す。
【0050】
【表4】

注)PFA基:パーフルオロアルキル基
PFPE基:パーフルオロポリエーテル基
【0051】
【発明の効果】
本発明の相溶化剤を用いた場合に、水溶性有機溶剤が少量であってもフッ素系モノマーと炭化水素系モノマーの相溶性が良くなる。従って、両モノマーの共重合性が向上し、良好な撥水撥油性または離型性が得られる。しかも、水溶性有機溶剤量が少なくても良いために、モノマーエマルションの乳化状態は良好であり、凝固物の少ない乳化重合を行うことが可能である。この相溶化剤を配合すれば、水溶液中に水溶性有機溶剤を全く含まなくても、高度な撥水撥油性または離型性を有する含フッ素共重合体を含むエマルションの調製が可能である。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-05-21 
出願番号 特願平4-323138
審決分類 P 1 651・ 113- YA (C08F)
P 1 651・ 121- YA (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 ▲吉▼澤 英一  
特許庁審判長 宮坂 初男
特許庁審判官 舩岡 嘉彦
大熊 幸治
登録日 2002-02-08 
登録番号 特許第3275402号(P3275402)
権利者 ダイキン工業株式会社
発明の名称 水性分散組成物およびその製法、ならびに撥水撥油剤および離型剤  
代理人 河宮 治  
代理人 玄番 佐奈恵  
代理人 玄番 佐奈恵  
代理人 鮫島 睦  
代理人 河宮 治  
代理人 鮫島 睦  

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