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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  B29C
管理番号 1101237
異議申立番号 異議2002-70455  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-04-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-02-27 
確定日 2004-07-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第3202035号「ポリエチレンテレフタレートフィルムラミネート缶体」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3202035号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
特許第3202035号に係る出願は、平成3年6月25日に出願され、平成13年6月22日に特許権の設定の登録がされたものであって、その請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
一方の面に印刷を施した二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを該印刷面で、ビスフェノール型エポキシ樹脂と、レゾール型フェノール樹脂、アクリル樹脂、アミノプラスト樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂の1種或いは2種以上との混合物からなる熱硬化型エポキシ樹脂系接着剤層を介して缶胴部を形成する金属板の缶外面側に熱圧着してなることを特徴とするポリエチレンテレフタレートフィルムラミネート缶体。
【請求項2】
前記金属板がその缶外面となる側がホワイト塗料で被覆されていることを特徴とする請求項1記載のポリエチレンテレフタレートフィルムラミネート缶体。」

2.申立ての理由の概要
特許異議申立人小柳朋彦は、甲第1号証から甲第6号証を提示して、本件発明1及び2は、その出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された特願平3-81874号(申立人は、その出願公開公報を甲第1号証として提出している。)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本件発明1及び2の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、この出願の時において、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、特許法第29条の2の規定により、本件発明1及び2の特許は取り消すべき旨主張している。
甲第1号証:特開平4-292942号公報
甲第2号証:特開昭61-20736号公報
甲第3号証:特開昭61-149341号公報
甲第4号証:特開平1-124551号公報
甲第5号証:包装技術便覧(昭和58年7月20日初版1刷発行)
甲第6号証:特開昭56-26961号公報

3.甲第1号証から甲第6号証に記載された事項
特許異議申立人が証拠として提示した甲第1号証から甲第6号証には、以下のような内容が記載されている。
○甲第1号証:特開平4-292942号公報
ア:「このフィルムを鋼やアルミニウム等の金属板にラミネートすると、鮮明で高級感を持った美粧ラミネート金属板を得ることができ、更にこのラミネート金属板のラミネート面側を外側にして常法により製缶を行なうと、ボデー部の美粧された金属容器を得ることができる。」(【0007】欄)
イ:「本発明に係るラミネート用フィルムの基本的構成は、たとえば図1(一部拡大断面図)に示す通りであり、熱可塑性樹脂1の片面に印刷インキ層2を設け、該インキ層2に更に硬化性樹脂からなる接着剤層3を形成した3層構造のものであり、破線で示す金属板Meに対して接着剤層3側をドライラミネート法やサーマルラミネート法等によってラミネートし得る様に構成したものである。」(【0011】欄)
ウ:「熱可塑性樹脂1は、印刷インキ層2が形成される基材フィルムとなるものであり、鮮明で美麗な多重印刷を可能とし、且つラミネート後の製缶加工時における湾曲加工等が容易に行なえる様、適度の可撓性を有する熱可塑性樹脂が使用される。」(【0012】欄)
エ:「こうした観点からより好ましい熱可塑性樹脂の融点は 160℃以上のものであり、好ましい具体例としては上記融点に合致するポリエステル樹脂、・・・あるいはこれらの各種変性樹脂が例示される。」(【0013】欄)
オ:「金属板Meとのラミネート面側に形成される接着剤層3は、ドライラミネート法やサーマルラミネート法等によって金属板Meに強固に接合し、且つ製缶時のシーム溶接やその後の煮沸あるいはレトルト処理等によって接合力を失なうことがない様、硬化性樹脂によって構成する。接着剤層3の具体例としてはエポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルポリウレタン、イソシアネート系樹脂等、あるいはそれらの各種変性樹脂を挙げることができ、」(【0015】欄)
カ:「このとき、たとえば図4に示す如く該金属板Meのラミネート面側に、透明もしくは着色されたコート層(あるいはプライマー層)5を予め形成しておいてからラミネートする方法を採用すれば、ラミネート用フィルムとの接着性が更に高められると共に、ラミネート速度を一段と高めることができる。」(【0019】欄)
キ:「特に該コート層5を着色しておけば、それによって金属板の地色が隠蔽されて印刷インキ層2によってもたらされる鮮明度が一段と向上すると共に、ラミネート強度も高められるので好ましい。下地層として形成される該コート層5の色は、印刷インキ層2の彩色に応じて適当に選定すればよいが、白色のものとすれば、どの様な彩色の印刷インキ層2に対しても一様に優れた鮮明度向上効果が発揮されるので好ましい。」(【0020】欄)
ク:「実施例1
極限粘度が0.65であるポリエチレンテレフタレート(ガラス転移温度:65℃)を用いて得た厚さ12μm のフィルム(100℃における収縮応力:0.5kg/mm2)・・・に印刷を施した後、該印刷インキ層の上に接着剤(東洋インク社製のポリウレタン系接着剤「アドュード」および硬化剤の混合物)を固形分換算で4g/m2コーティングし、乾燥し40℃で24時間エージングしてラミネート用フィルムを得た。」(【0030】欄)

○甲第2号証:特開昭61-20736号公報
ケ:「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、・・・エポキシ樹脂を主成分とし、その硬化剤であるフェノール系、・・・エステル系、アクリル系、ウレタン系の1種以上を含有してなる組成物を塗布した該フィルムを、・・・電解クロム酸処理鋼板・・・に積層してなる樹脂被覆鋼板。」(特許請求の範囲第1項)

○甲第3号証:特開昭61-149341号公報
コ:「二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、水酸基、アミド基、エステル基、カルボキシル基、ウレタン基、アミノ基の1種以上を分子内に有する重合体組成物・・・を塗布した該フィルムを金属板にラミネート・・・してなるポリエステル樹脂フィルム被覆金属板の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)
サ:「これらの重合体組成物としては、一例として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂、変性ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ユリヤ樹脂、ポリエステル樹脂などがあげられる。」(第2ページ左下欄第17行〜右下欄第1行)
シ:「実施例1
・・・次に示す条件で連続的にラミネートした。
PET-BOフィルム 25μm
・・・
塗布重合体組成物の乾燥塗布量 1.0g/m2
エポキシ樹脂(エポキシ当量3000)80部
パラクレゾール系レゾール 20部」(第4ページ右上欄第8行〜左下欄第3行)

○甲第4号証:特開平1-124551号公報
ス:「本発明の好適態様によれば、接着層としてエポキシ-フェノール樹脂接着プライマーを選択し」(第5ページ右下欄第16〜18行)
セ:「PETフィルムとアルミ材との間の接着性に特に優れたプライマーは、エポキシ樹脂(a)と多環多価フェノールを含有するフェノールアルデヒド樹脂(b)とから成るプライマーである。・・・
エポキシ樹脂成分としては、この種の塗料中のエポキシ樹脂成分として従来使用されているものは全て制限なしに使用し得るが、・・・エピハロヒドリンとビスフェノールA・・・との縮合によって製造した・・・エポキシ樹脂が挙げられ、このものは本発明の目的に好適に使用される。」(第6ページ左上欄第3行〜右上欄第2行)
ソ:「エポキシ樹脂に対する硬化剤樹脂成分としては、・・・例えば、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、・・・メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、・・・極性基含有アクリル樹脂等の1種又は2種以上の組合せが使用される。」(第6ページ右上欄第17行〜左下欄第6行)

○甲第5号証:包装技術便覧(昭和58年7月20日初版1刷発行)
タ:「ポリエステルフィルムと呼ばれるフィルムは、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールを縮重合させたポリエチレンテレフタレートを原料とする二軸延伸フィルムである。」(第431ページ第14〜16行)
チ:「ポリエステルフィルムは、原料ポリマーを溶融押出してシート状にし、これを縦横に二軸延伸したのち、熱固定処理してつくる。」(第431ページ第31〜32行)
ツ:「多くの場合、ポリエステルフィルム用の印刷インキを用いて多色グラビア印刷される。」(第434ページ第2行)

○甲第6号証:特開昭56-26961号公報
テ:「本発明の目的は、塗膜密着性の経時劣化傾向が顕著に改善された新規金属缶用塗料を提供するにある。」(第3ページ左上欄第12〜14行)
ト:「本発明に使用する好適なエポキシ樹脂成分は、
・・・ジヒドロキシ化合物としては、・・・この中でもビスフェノールA・・・が好適である。」(第4ページ右上欄第18行〜第5ページ左上欄第10行)
ナ:「硬化剤の適当な例は次の通りである。
(1)合成樹脂初期縮合物
レゾール型フェノール・アルデヒド樹脂、尿素・アルデヒド樹脂、・・・メラミン・ホルムアルデヒド樹脂
・・・
(5)その他
・・・熱硬化性アクリル樹脂」(第5ページ右下欄第12行〜第6ページ左上欄第16行)

4.対比・判断
a.本件発明1について
(1)先願明細書には、熱可塑性樹脂の片面に印刷インキ層を設け、該インキ層に更に硬化性樹脂からなる接着剤層を形成した3層構造のフィルムを、金属板に対して接着剤層側をサーマルラミネート法によってラミネートし、このラミネート金属板のラミネート面側を外側にして常法により製缶して得られる金属容器が記載され、さらに基材フィルムとなる熱可塑性樹脂として、ポリエステル樹脂が例示され、実施例1においてはポリエチレンテレフタレートが使用されていること、また、接着剤層としてはエポキシ樹脂が例示されていることから、先願明細書には、一方の面に印刷を施したポリエチレンテレフタレートフィルムを該印刷面で、エポキシ樹脂系接着剤層を介して缶胴部を形成する金属板の缶外面側に熱圧着してなるポリエチレンテレフタレートフィルムラミネート缶体の発明が記載されているといえる。
(2)本件発明1と先願明細書記載の発明とを対比すると、先願明細書には、i)ポリエチレンテレフタレートフィルムとして二軸延伸されたものを使用する点、及びii)エポキシ樹脂系接着剤として、ビスフェノール型エポキシ樹脂と、レゾール型フェノール樹脂、アクリル樹脂、アミノプラスト樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂の1種或いは2種以上との混合物からなる熱硬化型エポキシ樹脂系接着剤を使用する点について何ら記載されていない点で、両発明は相違する。
(3)特許異議申立人は、上記相違点i)について、上記甲第5号証の記載及び先願明細書にはポリエチレンテレフタレートフィルムを加熱処理して配向結晶を消失させた等の断り書きがないことをもって、先願明細書の実施例で使用されているポリエチレンテレフタレートフィルムが二軸延伸されたものであることは明らかである旨主張する。
(4)しかしながら、フィルムを製造するに際しては、必ずしも延伸することは必要ではなく、また、延伸するとしても二軸に限らず一軸延伸もあることから、甲第5号証の一般的記載及び先願明細書に断り書きがないことをもって、先願明細書に記載されるポリエチレンテレフタレートフィルムが二軸延伸されたものであると断定することはできない。
(5)また、特許異議申立人は、上記相違点ii)については、甲第2号証、甲第3号証その他の公知文献の記載によれば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを缶用金属板にラミネートする際の接着剤として、エポキシ樹脂と、レゾール型フェノール樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂との1種以上を混合して用いることは周知であり、さらに、甲第4号証には、エポキシ系樹脂(ビスフェノール型エポキシ樹脂)とレゾール型フェノール樹脂組成物が二軸延伸ポリエチレンテレフタレートと金属板との接着剤として使用可能である旨記載され、さらに、甲第6号証には、缶用塗料として、ビスフェノール型エポキシ樹脂とその硬化剤としてのレゾール型フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂等とを組み合わせた組成物が使用されることが記載されていることから、先願明細書において接着剤層の具体例として例示されるエポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂と、レゾール型フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂又はウレタン系樹脂との混合物を含む熱硬化型エポキシ樹脂系接着剤であることは、当業者が理解できるはずである旨主張している。
(6)しかしながら、熱硬化型エポキシ樹脂系接着剤におけるエポキシ樹脂以外の構成成分としては、特に硬化剤として本件発明1におけるレゾール型フェノール樹脂等が知られているものの、脂肪族アミン、酸無水物といった低分子化合物も硬化剤として使用しうることが技術常識であることを鑑みると、申立人の上記(5)の主張を参酌しても、先願明細書において、接着剤層の単なる一例として列挙されるにすぎない「エポキシ樹脂」の記載をもって、上記相違点ii)の内容が先願明細書に記載されているに等しい事項ということはできず、特許異議申立人の主張は採用することができない。
(7)したがって、本件発明1は先願明細書に記載された発明と同一であるとはいえず、申立人の主張は採用することができない。

b.本件発明2について
上記a.で述べたように、本件発明1のポリエチレンテレフタレートフィルムラミネート缶体は、先願明細書に記載された発明と同一であるとは認められないから、本件発明1において、金属板がその缶外面となる側がホワイト塗料で被覆されていることを特定している本件発明2についても、先願明細書に記載された発明と同一であるとはいえない。
したがって、申立人の主張は採用することができない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1及び2についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-07-06 
出願番号 特願平3-153136
審決分類 P 1 651・ 161- Y (B29C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 細井 龍史  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 滝口 尚良
中田 とし子
登録日 2001-06-22 
登録番号 特許第3202035号(P3202035)
権利者 北海製罐株式会社
発明の名称 ポリエチレンテレフタレートフィルムラミネート缶体  
代理人 佐藤 辰彦  
代理人 千葉 剛宏  

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