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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N |
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管理番号 | 1102093 |
審判番号 | 不服2002-9352 |
総通号数 | 58 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-05-23 |
確定日 | 2004-08-19 |
事件の表示 | 平成10年特許願第303285号「デジタル放送選択受信装置及びその方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月22日出願公開、特開2002- 57996〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯、本願発明 本願は、平成10年10月9日(優先権主張平成10年3月25日、平成10年7月21日、平成10年9月11日、日本)の出願であって、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る各発明は、平成13年11月28日付け、平成14年6月17日付け、平成14年10月4日付け手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、請求項1ないし5にそれぞれ記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「【請求項3】送信されるテレビジョン信号に重畳されたあらかじめ設定されたデジタルコードを検出する検出回路と、 受信機に登録された視聴者のデータから決定され、かつ、前記視聴者の地域情報を含む固有のコードをあらかじめ記憶している記憶部と、 前記地域情報をその地域で放送されるテレビ番組から判別して再登録する再度コード登録部と、 前記検出されたデジタルコードが前記視聴者それぞれに固有のコードと一致しているか否か判別する比較回路と、 前記コードが一致した場合に、該コードが重畳されるテレビジョン信号を選択するための選択信号発生回路と、 を備えるデジタル放送選択受信装置。」 2.引用例 これに対して、前置審査における拒絶の理由に引用された特開平9-55673号公報(平成9年2月25日公開、以下「引用例」という。)には、名称を「ISDB用送信装置およびその受信装置」とする発明について、次のとおりの記載がなされている。 (a)映像、音声、データなどの各種メイン情報を、制御情報などの付加情報と共にディジタル化したのちパケット化および多重化したISDB用放送信号を送信するようにしたISDB用送信装置において、上記メイン情報として地域別情報が使用され、これに地域コードを付加して他のメイン情報と共に多重化されて送信されるようにすること、および、ISDB用放送信号を受信するISDB用受信装置において、この受信装置にはISDB用チューナと、上記メイン情報に対する複数の復号手段と、地域別情報を復号した復号出力をメモリするメモリ手段と、メイン情報のモニタ手段とがそれぞれ設けられ、上記地域別情報を復号する復号手段には手動若しくは自動的に生成された地域コードが与えられており、入力地域コードに一致した地域別情報が選択されて上記メモリ手段にメモリされるようにすること(第3頁左欄第10行ないし第32行)。 (b)GPS装置60によって受信装置40が置かれている位置が検出されると地域情報コードがRAMなどのメモリ手段68に蓄積され、その地域情報コードを利用して復号部56ではその地域に関する情報だけが自動的にメモリされること(第4頁右欄第45行ないし第5頁左欄第10行)。 (c)受信装置40の置かれている位置を検出する手段としてはGPS装置60に限らず、例えば複数地域から送信されるテレビ放送波の電界強度を計測して、大間かな位置を検出することもできること、また、受信装置40が自動車などに搭載されているときは、自動車に搭載されたGPS装置そのものを位置判別手段として利用できるので便利であると共に、自動車が移動している地域に合致した情報のみを選択的に自動取得できること(第5頁左欄第36行ないし右欄第6行)。 3.対比 本願発明と引用例に記載された発明(以下「引用発明」という)とを対比すると次のことが認められる。 (イ)引用発明は、引用例の前掲記載(a)によれば、映像、音声、データなどの各種メイン情報を、制御情報などの付加情報と共にディジタル化したのちパケット化および多重化したISDB用放送信号を受信するISDB用受信装置において、入力地域コードに一致した地域別情報が選択されてメモリ手段にメモリされるようにしたものであることから、本願発明と同様「デジタル放送選択受信装置」を対象としたものといえる。 (ロ)また、引用例の前掲記載(a)、(b)によれば、引用発明のISDB用受信装置は、地域コード(本願発明でいう「デジタルコード」)が付加されたメイン情報としての地域別情報を含むISDB用放送信号を受信し、受信装置に記憶される地域情報コード(本願発明でいう「地域情報」)と受信した地域コードが一致した地域別情報が選択されてメモリ手段に記憶されることから、引用発明も、本願発明でいうのと同様「送信されるテレビジョン信号に重畳されたあらかじめ設定されたデジタルコードを検出する検出回路と、視聴者の地域情報を含む固有のコードをあらかじめ記憶している記憶部と、前記検出されたデジタルコードが前記視聴者それぞれに固有のコードと一致しているか否か判別する比較回路と、前記コードが一致した場合に、該コードが重畳されるテレビジョン信号を選択するための選択信号発生回路」とを備えていることは明らかである。 (ハ)さらに、引用例の前掲記載(b)、(c)によれば、引用発明のISDB受信装置は、現在位置を検出するGPS装置、あるいはテレビ放送波の電界強度を計測する手段を備え、自動車などに搭載されているときは、自動車が移動している地域に合致した情報のみを選択的に自動取得できるものであることから、その地域で放送されるテレビ番組から判別するか否かを別にすれば、引用発明も、本願発明と同様に、「地域情報を判別して再登録する再度コード登録部」を備えているといえる。 以上の対比結果によれば、本願発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりであると認めることができる。 [一致点] 「送信されるテレビジョン信号に重畳されたあらかじめ設定されたデジタルコードを検出する検出回路と、 視聴者の地域情報を含む固有のコードをあらかじめ記憶している記憶部と、 前記地域情報を判別して再登録する再度コード登録部と、 前記検出されたデジタルコードが前記視聴者それぞれに固有のコードと一致しているか否か判別する比較回路と、 前記コードが一致した場合に、該コードが重畳されるテレビジョン信号を選択するための選択信号発生回路と、 を備えるデジタル放送選択受信装置。」 [相違点1] 上記視聴者の地域情報を含む固有のコードが、本願発明では、「受信機に登録された視聴者のデータから決定され」るのに対し、引用発明では、そのようなものではない点。 [相違点2] 上記再度コード登録部が、本願発明では、地域情報を「その地域で放送されるテレビ番組から判別」しているのに対し、引用発明では、GPS装置により、あるいは、テレビ放送波の電界強度により判別している点。 4.判断 そこで上記相違点について検討する。 相違点1について 相違点1に係る本願発明の構成は、明細書での説明に照らすと、例えば、住所、家族構成、年齢、趣味等の登録された視聴者のデータから視聴者の固有のコードが決定されるようにしたものといえるところ、放送を選択受信する放送選択受信装置において、視聴者のデータ(視聴者の年齢、家族構成、趣味等)から決定された固有のコードを用いて放送信号を選択受信することや、登録された視聴者のデータ(地域、年齢、性別等)に基づいて放送信号を選択受信することは、前置審査における拒絶の理由に引用された特開平9-214908号公報、特開平9-327002号公報に開示されている事項であるから、引用発明において、視聴者の地域情報を含む固有コードを受信機に登録された視聴者のデータから決定するようにすることは、当業者が格別の困難性なくなし得ることである。 相違点2について テレビ放送受信機において、その地域で放送されるテレビ番組から地域を判別することは、例えば、特開平7-209010号公報、特開平5-328237号公報、特開平8-23489号公報等に記載されているように周知事項であるから、引用発明において、上記周知事項を適用し、地域情報をその地域で放送されるテレビ番組から判別して再登録するようにすることは当業者が適宜なし得ることであるといえる。したがって、上記相違点2に係る本願発明の構成は、当業者に想到困難な格別のものであるとすることはできない。 そして、これらを総合的に判断しても当業者が容易に想到し得たものといえ、また、本願発明の効果についてみても、当業者が当然に予測し得る程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとはいえない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項3に係る発明は、引用例に記載された発明、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、したがって特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 それ故、本願は他の請求項に係る発明について特に検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-06-15 |
結審通知日 | 2004-06-22 |
審決日 | 2004-07-06 |
出願番号 | 特願平10-303285 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 清水 祐樹、伊東 和重、國分 直樹、梅本 達雄 |
特許庁審判長 |
藤内 光武 |
特許庁審判官 |
小松 正 原 光明 |
発明の名称 | デジタル放送選択受信装置及びその方法 |
復代理人 | 遠山 勉 |
復代理人 | 松倉 秀実 |