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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 D03D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D03D |
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管理番号 | 1102094 |
審判番号 | 不服2002-10435 |
総通号数 | 58 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-02-17 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-06-11 |
確定日 | 2004-08-19 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第215075号「流体噴射式織機における緯糸把持緊張装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月17日出願公開、特開平10- 46445〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成8年7月26日の出願であって、平成14年5月14日に拒絶査定がなされ、これに対して平成14年6月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成14年6月18日に手続補正がなされたものである。 II.平成14年6月18日の手続補正についての却下の決定 [補正却下の結論] 平成14年6月18日の手続補正を却下する。 [理由] この手続補正は、請求項の数を2から4に増加する補正を含むものである。 そして、請求項の数を増加するこの補正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものとは認められない。 また、上記補正は、請求項の削除、誤記の訂正、あるいは、明りょうでない記載の釈明の、いずれを目的としたものとも認められない。 したがって、この手続補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反しているので、特許法第159条で準用する同法第53条第1項の規定により、却下する。 III.本願発明 平成14年6月18日の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という。)は、平成14年4月4日の手続補正書により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「緯糸飛走路上に配置されて少なくとも一方が回転駆動される互いに平行に配置された1対の把持ローラと、両把持ローラの周面間の距離を変更させる間隔設定機構とからなり、該間隔設定機構は、遅くとも緯糸が前記両把持ローラ間を通過するタイミングには前記両把持ローラ間を緯糸が通過可能な距離に設定すると共に、緯入れ終了後から少なくとも経糸の閉口による緯糸の拘束開始までの期間は前記両把持ローラ間を緯糸に把持力が作用する距離に設定して緯入れされた緯糸に牽引力を作用させることを特徴とする流体噴射式織機における緯糸把持緊張装置。」 IV.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前の昭和45年8月3日に頒布された実公昭45-19109号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。 記載1(1頁1欄20〜22行)「この考案はジェットルームによって織成される織布における緯糸の張力を左右均一にするための張力調整装置に関するものである。」 記載2(1頁2欄21〜23行)「該ローラ15は適宜の機構によって積極的に廻転するよう装置されている。」 記載3(1頁2欄33行〜2頁3欄6行)「ジェットノズル8によって経糸の開口内に噴射された緯糸Wはその先端が仮撚糸Dの開口内を通ってローラー15に達し、その廻転によって糸端はローラーの摩擦力によって牽引され先端近くが緊張される。ローラー15は積極的に廻転しながら筬4と同時に前後運動するから緯糸はローラーによって織前の方へ運ばれる、フランジ15bはこの際緯糸がローラー15aから外れるのを防止する作用をする。このようにして緯糸が織前に近づけば仮撚糸の開口は経糸の開口と同時に、閉ざされるから緯糸端は仮撚糸内に撚り込まれて更に糸端近くが緊張されこの状態の下に筬打が遂行される。」 記載4(2頁4欄11〜13行)「緯糸を緊張する方向に積極的に回転するローラーを、ジェットノズルと反対側筬下部スレー上に設置してなるジェットルームの緯糸張力調整装置」 記載5(2頁3欄12〜14行)「この考案の装置ではローラー15aが緯糸の挿入終了と同時にその端部を捕らえてこれを緊張するから緯糸に適正な張力を付与することができる。」 V.対比・判断 引用例の記載3には、「ジェットノズル8によって経糸の開口内に噴射された緯糸Wはその先端が・・・ローラー15に達し」とあることから、引用例には、緯糸飛走路上に配置されたローラー15が記載されている。 そして、ローラー15は、「適宜の機構によって積極的に廻転するよう装置され」(記載2)、「ジェットノズル8によって経糸の開口内に噴射された緯糸W」(記載3)を「挿入終了と同時にその端部を捕らえてこれを緊張」(記載5)し、「積極的に廻転しながら筬4と同時に前後運動する」(記載3)ものであり、「緯糸はローラーによって織前の方へ運ばれ」(記載3)、「緯糸が織前に近づけば仮撚糸の開口は経糸の開口と同時に、閉ざされるから緯糸端は仮撚糸内に撚り込まれて更に糸端近くが緊張されこの状態の下に筬打が遂行される」(記載3)ものである。 したがって、ローラー15は、緯入れ終了から、少なくとも経糸の閉口による緯糸の拘束開始までの期間、緯入れされた緯糸に牽引力を作用させるものであると認められる。 そこで、本願発明と、上記引用例に記載されたものとを対比する。 引用例に記載されたものの「ローラー15」は、緯入れから、少なくとも経糸の閉口による緯糸の拘束開始までの期間、緯入れされた緯糸に牽引力を作用させるものであるので、本願発明の「把持ローラ」に対応する。 また、引用例に記載された「ジェットルーム」は本願発明の「流体噴射式織機」に相当し、引用例に記載された「張力調整装置」は、緯入れされた緯糸を「捕らえてこれを緊張する」(記載5)ものであるので、本願発明の「緯糸把持緊張装置」に相当する。 そこで、本願発明の用語を用いて対比すると、両者は次の一致点で一致する。 (一致点) 「緯糸飛走路上に配置されて回転駆動される把持ローラからなり、緯入れ終了後から少なくとも経糸の閉口による緯糸の拘束開始までの期間は前記把持ローラにより緯入れされた緯糸に牽引力を作用させる流体噴射式織機における緯糸把持緊張装置。」 そして、両者は次の相違点1及び2で相違する(対応する引用例記載の用語を( )内に示す)。 (相違点1) 本願発明の把持ローラは、「少なくとも一方が回転駆動される互いに平行に配置された1対の把持ローラ」であるのに対し、引用例に記載されたものの把持ローラ(ローラー15)は、回転駆動される一つの把持ローラである点。 (相違点2) 本願発明は、「両把持ローラの周面間の距離を変更させる間隔設定機構」を備え、「該間隔設定機構は、遅くとも緯糸が前記両把持ローラ間を通過するタイミングには前記両把持ローラ間を緯糸が通過可能な距離に設定すると共に、緯入れ終了後から少なくとも経糸の閉口による緯糸の拘束開始までの期間は前記両把持ローラ間を緯糸に把持力が作用する距離に設定して緯入れされた緯糸に牽引力を作用させる」のに対し、引用例に記載されたものは、把持ローラーが1つであるため、緯糸が到達すれば常時緯糸を把持牽引可能であり、間隔設定機構に相当する機構を備えない点。 4.相違点の判断 上記相違点について検討する。 (相違点1について) 織機の緯糸操作機構において、緯糸に牽引力や張力(緊張状態)を付与するための手段として、少なくとも一方が回転駆動される互いに平行に配置された1対の把持ローラを採用することは、例えば、特公昭48-36712号公報や、特開昭62-215047号公報にも示されるように、周知の技術手段である。 そこで、引用例に記載の「張力調整装置」において、1つの把持ローラ(ローラ15)に代えて、かかる1対の把持ローラを適用し、相違点1に係る本願発明の事項のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (相違点2について) 少なくとも一方が回転駆動される互いに平行に配置された1対の把持ローラにより、緯糸を挟んで牽引する形式の緯糸操作機構にあっては、牽引にあたって、まず、両ローラ間での緯糸の自由な通過を許容するため、一対の把持ローラの周面の間隔を空ける必要があるとともに、次いで、緯糸を挟んで、緯糸に牽引力を作用させるために、一対の把持ローラの周面同士を接触させる必要があることは当然のことであり、上記周知例として例示した、特公昭48-36712号公報や、特開昭62-215047号公報に示されるものも、一対の把持ローラの周面間の距離を変更する手段を備えているものである。 そこで、引用例に記載の張力調整装置において、1つの把持ローラ(ローラ15)に代えて、1対の把持ローラを適用するにあたり、かかる周知の、一対の把持ローラの周面間の距離を変更する手段を備えるようにして、相違点2に係る本願発明の事項のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 VI.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1記載のもの及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-06-21 |
結審通知日 | 2004-06-22 |
審決日 | 2004-07-06 |
出願番号 | 特願平8-215075 |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(D03D)
P 1 8・ 121- Z (D03D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西山 真二 |
特許庁審判長 |
鈴木 公子 |
特許庁審判官 |
奥 直也 山崎 豊 |
発明の名称 | 流体噴射式織機における緯糸把持緊張装置 |
代理人 | 菅原 一郎 |