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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60J
管理番号 1102358
審判番号 不服2003-6000  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-07-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-10 
確定日 2004-09-21 
事件の表示 平成6年特許願第323295号「ドアモールの取付け構造」拒絶査定不服審判事件〔平成8年7月9日出願公開、特開平8-175177、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年12月26日の出願であって、その請求項1〜3に係る発明は、平成14年1月10日付け、平成15年4月25日付けの手続補正書により補正された明細書と出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 ウインドガラスとドアアウタパネルとの間の隙間を塞ぐために設けられるドアモールの取付け構造において、前記ドアモールは、ドアを含む車体の塗装工程における焼付処理をする際の炉内温度により硬化する熱硬化性構造用粘着材を用いて前記ドアアウタパネルの上部に取付けるクリップと、このクリップに前記塗装工程の後に取付けるモールとからなり、このモールは、芯金部材とこの芯金部材を囲うモール部材とからなることを特徴とするドアモールの取付け構造。
【請求項2】 前記ドアアウタパネルの上部は、室内側へ向う水平部と、この水平部の室内側端部から下がった立下り部とを有し、前記水平部及び立下り部に前記熱硬化性構造用粘着材を取付けたことを特徴とする請求項1記載のドアモールの取付け構造。
【請求項3】 前記熱硬化性構造用粘着材は、常温で仮止め程度の接着作用を発揮する粘着材であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のドアモールの取付け構造。」

2.原査定の理由
これに対して、原査定の拒絶の理由の概要は、実願昭58-61738号(実開昭59-167022号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)、特開平6-166852号公報(以下、「引用文献2」という。)、特開平5-269818号公報(以下、「周知文献1」という。)、実願平2-122842号(実開平4-80709号)のマイクロフィルム(以下、「周知文献2」という。)を引用して、本願の請求項1〜3に係る発明は、引用文献1,2及び周知文献1,2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.当審の判断
(1)請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)
引用文献1において、「ウインドガラスとドアアウタパネルとの間の隙間を塞ぐために設けられるドアモールの取付け構造において、前記ドアモールは、前記ドアアウタパネルの上部に取付けるクリップcと、このクリップcに取付けるモールとからなり、このモールは、芯部材とこの芯部材を囲うモール部材とからなるドアモールの取付け構造」が記載されていることが認められると共に、
周知文献1に、“物を対象箇所に固着する際、熱硬化性構造用粘着材を用いること”、及び、
周知文献2に、“モールの芯部材として、芯金部材を用いること”が記載され、
更に、引用文献2において、「常温で適度な接着作用を発揮し、加熱硬化後は優れた接着強度を発現する熱硬化性構造用粘着材」が記載されていると認められるものの、
これらの何れにおいても、本願発明の特徴である「ドアモールは、ドアを含む車体の塗装工程における焼付処理をする際の炉内温度により硬化する熱硬化性構造用粘着材を用いてドアアウタパネルの上部に取付けるクリップと、このクリップに前記塗装工程の後に取付けるモールとからなり」という構成、即ち、ドアモールを構成するクリップに関し、当該クリップを、上記した“熱硬化性構造用粘着材”を用いてドアアウタパネルの上部に取付けることについてまでは、記載されているということができない。

また、この点については、前置報告書において、熱硬化性構造用粘着材を車体の塗装工程における熱処理する際の炉内温度により硬化させることが周知であるとして引用した文献(特開平4-366010号公報、実願昭63-68597号(実開平1-171914号)のマイクロフィルム)にも、記載されているということができない。

そして、本願発明は、上記の構成によって、
(1)ドアを含む車体の塗装工程における焼付処理をする際の炉内温度によって熱硬化性構造用粘着材を加熱して硬化させるだけで、ドアアウタパネルの上部にクリップだけを簡単に取付けることができると共に、取付後には、熱硬化性構造用粘着材によって堅固な取付状態を維持することができるし、
(2)クリップの取付けに際して、ドアアウタパネルの上部が多少複雑な形状であっても柔軟に対応することができると共に、ドアアウタパネルに対するクリップの取付強度を高めることができ、そして、クリップに水平方向の外力と垂直方向の外力のどちらが作用しても、クリップがぐらつくことがなく、さらには、ドアアウタパネルの上部に堅固に取付けられたクリップにモールを取付けることで、ドアアウタパネルの上部にモールを確実に且つ簡単に取付けることができるし、
(3)ドアアウタパネル上部のコーナ部には、従来のようにクリップを取付けるための挿入孔を明ける必要がないので、孔加工に伴うショックライン(成形時の歪が残って線状の段や突起などが発生する現象)がコーナ部付近に発生する心配がなく、このため、コーナ部付近の美観を確保することができる、
という本願発明に特有な効果を奏するものと認められる。

したがって、本願発明は、上記の各引用文献及び各周知文献に記載された技術事項から、当業者が容易に想到することができたとはいうことができない。

(2)請求項2及び請求項3に係る発明
本願の請求項2,3に係る発明は、本願発明の特徴である前述の構成をさらに限定したものであるから、これらの発明の構成についても、当業者が容易に想到することができないことは明らかである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1〜3に係る発明は、上記した各引用文献及び各周知文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認めることができないから、本願については、原査定の拒絶理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2004-09-07 
出願番号 特願平6-323295
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 関 裕治朗小菅 一弘山内 康明  
特許庁審判長 八日市谷 正朗
特許庁審判官 鈴木 久雄
田々井 正吾
発明の名称 ドアモールの取付け構造  
代理人 下田 容一郎  

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