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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1102438
審判番号 不服2004-4866  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-10-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-10 
確定日 2004-09-02 
事件の表示 平成10年特許願第79218号「プリント配線板」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月8日出願公開、特開平11-274699〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯、本願発明
本願は、平成10年3月26日の出願であって、その請求項1〜4に係る発明は、平成16年4月9日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 絶縁基材の表面部に導体パターンを設けると共に、その導体パターンのうちランドを除いた部分をソルダレジストにより覆うようにしたプリント配線板において、最外面に位置する前記ランドの表面を、表面粗度の大きい粗面状に構成すると共に、前記ソルダレジストを、該ランドの端縁部を覆う形態に設けたことを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】 前記ランドの表面の表面粗度は、その凹凸の深さ寸法が3μm以上とされることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板。
【請求項3】 前記ランドの表面の粗面状部分は、メッキにより形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のプリント配線板。
【請求項4】 前記ランドの表面の粗面状部分は、エッチングにより形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のプリント配線板。」

【2】引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に頒布された特開平8-204316号公報(以下、「引用例」という。)には、「プリント配線板、及びその製造方法」に関し、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア.「【請求項1】 表面に導体回路(2)が形成された絶縁基板(1)の非半田接合面をソルダーレジスト層(5)で被覆したプリント配線板であって、上記ソルダーレジスト層(5)の層構成は、上記導体回路(2)の非半田接合面となる端部と接する内層が、UV硬化型ソルダーレジストが硬化したUV硬化レジスト層(3)と、その外層が熱硬化型ソルダーレジストが硬化した熱硬化レジスト層(4)とからなり、且つ、上記UV硬化レジスト層(3)の境界縁(3a)が露出していることを特徴とするプリント配線板。」
イ.「【産業上の利用分野】本発明は絶縁基板の表面に、導体回路、及び、非半田接合面にソルダーレジスト層を形成したプリント配線板、及び、その製造方法に関する。」(第1欄22〜24行)
ウ.「上記絶縁基板1は、基材に樹脂を含浸して得られるプリプレグの樹脂を硬化させた有機系の絶縁基板、又はアルミナ等のセラミック系の絶縁基板が挙げられる。この有機系の絶縁基板の樹脂としてはエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、PPO樹脂等の単独、変性物、混合物等が挙げられる。」(第2欄22〜27行)
エ.「上記導体回路2は、例えば、上記絶縁基板1の表面に配設された銅等の金属箔にエッチング等を施し形成される。」(第2欄33〜35行)
オ.「【0008】上記プリント配線板は、半田を付着させる導体回路2の半田接合面6を露出し、絶縁基板1の非半田接合面をソルダーレジスト層5で被覆している。上記ソルダーレジスト層5の層構成は、内層がUV硬化型ソルダーレジストが硬化したUV硬化レジスト層3、及び、外層が熱硬化型ソルダーレジストが硬化した熱硬化レジスト層4からなる。」(第2欄36〜42行)
カ.「上記UV硬化レジスト層3の境界縁3aを露出するように、上記熱硬化レジスト層4が形成されているので、上記熱硬化型ソルダーレジストは印刷の際に発生するにじみが、半田接合面6にまで到達することがない。上記プリント配線板は雰囲気に曝されるソルダーレジスト層5の外層が主に熱硬化レジスト層3で形成されているので、半田処理後や高温高湿保管後の密着性が良好である。」(第3欄5〜12行)

図1から、UV硬化レジスト層3と熱硬化レジスト層4からなるソルダーレジスト層5は、導体回路2の半田接合面6の端縁部を覆うように設けられていることは明らかである。

したがって、上記の記載事項と図1から、引用例には、以下の発明が記載されていると認められる。
「絶縁基板1の表面部に導体回路2を設けると共に、その導体回路2のうち非半田接合面、すなわち半田接合面6を除いた部分、をソルダーレジスト層5(UV硬化レジスト層3,熱硬化レジスト層4)により覆うようにしたプリント配線板において、
前記ソルダーレジスト層5を、該半田接合面6の端縁部を覆う形態に設けたプリント配線板。」

【3】対比・判断
そこで、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」)と引用例に記載された発明(以下、「引用発明」という。)とを対比すると、引用発明の「絶縁基板1」「導体回路2」「ソルダーレジスト層5」は、それぞれ本願発明の「絶縁基材」「導体パターン」「ソルダレジスト」に相当し、また、一般に導体回路(導体パターン)のうち、半田接合部又は半田接合面を「ランド」と称することから、引用発明の「半田接合面6」は本願発明の「ランド」に相当するので、両者には、下記の一致点、相違点が存するものと認められる。
<一致点>
「絶縁基材の表面部に導体パターンを設けると共に、その導体パターンのうちランドを除いた部分をソルダレジストにより覆うようにしたプリント配線板において、
前記ソルダレジストを、該ランドの端縁部を覆う形態に設けたプリント配線板。」

<相違点>
最外面に位置するランドの表面を、表面粗度の大きい粗面状に構成した点。

上記の相違点について検討すると、当該分野において、導体パターン(ランド)とソルダレジストとの密着性を良くするために、導体パターン(ランド)の表面を表面粗度の大きい粗面状に構成することは、従来周知の技術であって[例えば、特開平8-242064号公報(「【請求項1】プリント配線板の表層に電子回路搭載用の金属パッドが設けられ、その金属パッド上にはその金属パッドが部分的に露出するように開口部を設けてソルダーレジストが形成されてなるプリント配線板において、前記金属パッド表面には粗化面が形成されてなり、…」「【0007】【作用】本願発明では、金属パッドの表面に粗化面は形成されていることが必要である。この理由は、ソルダーレジストとの密着性を改善するためである。粗化面の凹凸部分がソルダーレジストの中にアンカーのように食い込み、金属パッドとソルダーレジストとの密着性を向上させることができるからである。」) ;特開平1-101697号公報(「第1図において、1はベースフイルム、2は接着剤層、3は電解メッキ銅箔の片面を電解エッチングして表面となした回路を示し、4はソルダーレジストカバーレイを示し、8,8’は回路部品との接続端子部を示す。ソルダーレジストカバーレイ4は接続端子部8,8’や部品の位置で切欠部9を作り、接続端子部8,8’は露出する。第2図において、1はベースフイルム、2は接着剤層、5は圧延銅箔の両面を電解エッチングした回路を示し、8はカバーレイ接着剤を示し、7はフイルムカバーレイを示す。カバーレイ7は回路部品接続端子部8や部品を除き、切欠部9を作り、接続端子部8は露出する。」(第2頁左下欄15〜右下欄7行)、「銅箔表面の荒さは、レジスト材の密着性と剥離性とカバーレイ後の半田しみ込み性の関係で非常に重要である。」(第3頁右上欄5〜7行)、「電解メッキ銅箔又は圧延銅箔を電解エッチングした粗化銅箔は0.5〜5.0μmの適度の粗化面を有しているため、フイルムカバーレイとの接着強度に優れ、」(第5頁左下欄8〜11行))参照]、引用発明において、最外面に位置する半田接合面6(ランド)の表面を、表面粗度の大きい粗面状に構成したすることは、当業者が容易に想到できたものと認められる。

なお、請求人は、上記の周知例の特開平8-242064号公報について、このプリント配線板は多層構造であって、本願発明のようにシンプルな3層構造と異なる旨の主張をしているが、引用発明も本願発明と同様なシンプルな3層構造であり、プリント配線板において層構造の階層を何層にするかは設計的事項であるから、上記周知例の最上層の金属パッド(ランド)の表面を表面粗度の大きい粗面状に構成した技術を、引用発明の半田接合面6(ランド)に適用することに何らの困難性も認められない。

【4】むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-06-29 
結審通知日 2004-07-07 
審決日 2004-07-21 
出願番号 特願平10-79218
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鏡 宣宏  
特許庁審判長 八日市谷 正朗
特許庁審判官 増岡 亘
田々井 正吾
発明の名称 プリント配線板  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 加藤 大登  
代理人 伊藤 高順  

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