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審決分類 |
審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N |
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管理番号 | 1102628 |
審判番号 | 不服2002-23798 |
総通号数 | 58 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-09-14 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-12-11 |
確定日 | 2004-06-30 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第503728号「異なった孔隙率を持つ材料から形成される検定装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年11月25日国際公開、WO93/23755、平成 7年 9月14日国内公表、特表平 7-508350]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯及び請求の範囲 本願は、平成5年5月6日(パリ条約に基づく優先権主張 1992年5月11日、米国)の国際出願であって、本願明細書は、平成14年9月24日付けの手続補正書により補正され、その請求の範囲の記載は、以下のとおりである。 「1.サンプル受入れ表面よりなる一つの検定装置であって、 前記サンプル受入れ表面は第1表面部および第2表面部を含み、 前記第1表面部は一つの被検体のための少なくとも一つの結合剤を持ち、前記第1表面部は第1吸収材から形成され、前記第1吸収材は約0.001cc/gから約0.400cc/gまでの孔容積を持ち、また前記第2表面部は検定される液状サンプルの流れを被検体のための前記少なくとも一つの結合剤に導き、前記第2表面部は前記第1表面部に隣接し、前記第2表面部は第2吸収材から形成され、前記第2吸収材は約1.8g/ccから約5.0g/ccまでの密度を持ち、また前記第2吸収材は前記第1吸収材のそれよりも少ない孔隙率を持つことを特徴とする検定装置。 ・・・ ( 省略 )・・・ 6.サンプル受入れ表面よりなる一つの検定装置であって、 前記サンプル受入れ表面は第1表面部および第2表面部を含み、 前記第1表面部は一つの被検体のための少なくとも一つの結合剤を持ち、前記第1表面部は第1吸収材から形成され、前記第1吸収材は約1.8g/ccから約5.0g/ccまでの密度を持ち, 前記第2表面部は前記第1表面部に隣接し、前記第2表面部は第2吸収材から形成され、前記第2吸収材は約0.001cc/gから約0.400cc/gまでの孔容積を持ち、ここで前記第1吸収材は前記第2吸収材のそれよりも少ない孔隙率を有し、またここで前記第1表面部はその装置に適用される液の流れを前記第2表面部に向けることの出来ることを特徴とする検定装置。 7.前記第1吸収材が約2.2g/ccから約4.4g/ccまでの密度を持つことを特徴とする請求の範囲第6項記載の装置。 8.前記第2吸収材が約0.010cc/gから約0.280cc/gまでの孔容積を持つことを特徴とする請求の範囲第6項記載の装置。 9.前記第1吸収材が非孔性セラミック材であることを特徴とする請求の範囲第6項記載の装置。 10.前記第2吸収材が多孔性セラミック材であることを特徴とする請求の範囲第6項記載の装置。」 これに対して、当審において平成15年6月6日付けで拒絶理由が通知されたところ、請求人は平成15年12月10日付けの意見書を提出した。 2.当審拒絶理由 平成15年6月6日付けの拒絶理由は、概略、次の通りである。 「理由(1) 請求項1〜請求項5に対して [引用刊行物] 刊行物1: 特開昭61-502214号公報 刊行物2: 特開昭57-063454号公報 刊行物3: 特開昭55-90859号公報 刊行物4: 特開昭60-230064号公報 刊行物5: 特開平3-205563号公報 刊行物6: 特開昭64-072066号公報 刊行物7: 米国特許第4774192号明細書 刊行物8: 特開平01-158350号公報 本願の請求項1ないし5に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物1〜刊行物2に記載された発明と同一であるか、或いは、刊行物1〜刊行物2に記載された発明及び刊行物3〜刊行物8に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願の請求項1ないし5に係る発明は、特許法第29条第1項、第2項の規定により特許を受けることができない。 理由(2) 本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 記 請求項6〜請求項10に記載の検定装置では、「第1表面部」はその装置に適用される液の流れを第2表面部に向けるものである。そして、「第1表面部」は一つの被検体のための少なくとも一つの結合剤を持つ。 そうするとこの検定装置では、サンプルを適用したとき、第1表面部はその装置に適用されるサンプル液を第2表面部に向けることになってしまい、被検体のための結合剤を有する「第1表面部」に被検体が向けられないという、検定装置として重大な問題がある。 そして、本願明細書には、この問題点を解決するための装置の構成要素が開示されていないし、そのような「検定装置」によって、具体的にどのようなサンプル中のどのような被検体がどのような検出感度や精度で検定することができるのか、具体的な記載はまったくない。 したがって、本願明細書には、このような「検定装置」を用いてどのような検定を行い得るのか、当業者が容易にその装置を製造し、使用できる程度に、発明の目的、構成、効果が記載されていない。 」 3.理由(1)について 免疫アッセイ方法とそれに使用される器具に関する刊行物1には、その第1図〜第2図に、ガラス、プラスチック又は他の適当な物質よりなり得る円筒状コンテナー10の中に、円筒状吸収材22とともに多孔質部材20が配置され、コンテナー10はすぼめられており、第1図中の番号24で示される濾斗を形成し、試料を直接部材20上に提供する装置が記載され、部材20にはアッセイされるリガンドに対する結合受容体、例えばモノクローナル抗体が結合されて、免疫測定アッセイが行われるものであり、第2図にみられるように部材20には、リガンドが結合する領域28が壁24によって取り囲まれている(第1図、第2図、第5頁左下欄12行〜第6頁右下欄1行)。また、「多孔質部材20」として、ガラスファイバーフィルター及び多種の合成又は天然物質から成るフィルターを含む様々な種類のフィルター部材が使用できることが記載されている(第4頁右下欄18行〜第5頁左上欄7行、第5頁左上欄末行〜右上欄8行等)。 そこで、本願の請求項1に係る発明(以下、「請求項1発明」という。)と刊行物1に記載された検定装置の発明とを対比すると、この刊行物1に記載された検定装置の「コンテナー10」における「部材20」の「領域28」は、本願発明検定装置の「第1表面部」に対応し、また、同「コンテナー10」の「上部開口部12」における「漏斗」の「壁24」は、本願発明検定装置の「前記第2表面部」に対応する。 そして、刊行物1には、ガラス等で作成される「漏斗」について密度は記載されていないが、本願発明における第2吸収材の密度(約1.8g/ccから約5.0g/ccまで)は、ガラス等のセラミックス、金属など漏斗に使用する材料の密度としては普通のもので、格別のものということはできない。しかも、検定装置を構成する材料の孔隙率は、試料液や試薬、反応混合物などの流れに関連する物理特性であるから、検定装置の性能に関係するとしても、検定装置を構成する材料の密度は、検定装置の性能にそもそも影響するものではない。なるほど、刊行物1の「漏斗」は、吸収性の材料からなるものではないが、本願明細書にも「第2吸収材」として吸収性の材料ではない「非孔性セラミック材」が例示されているので、請求項1発明における「第2吸収材」には吸収性の材料ではない材料も包含されている。 そうすると、刊行物1には、”サンプル受入れ表面よりなる一つの検定装置であって、前記サンプル受入れ表面は第1表面部および第2表面部を含み、前記第1表面部は一つの被検体のための少なくとも一つの結合剤を持ち、前記第1表面部は第1吸収材から形成され、前記第2表面部は検定される液状サンプルの流れを被検体のための前記少なくとも一つの結合剤に導き、前記第2表面部は前記第1表面部に隣接し、前記第2表面部は第2吸収材から形成され、前記第2吸収材は約1.8g/ccから約5.0g/ccまでの密度を持ち、また前記第2吸収材は前記第1吸収材のそれよりも少ない孔隙率を持つ検定装置」が記載されているから、請求項1発明と刊行物1に記載された発明とは、第1吸収材の孔容積について、請求項1発明は、約0.001cc/gから約0.400cc/gまでの孔容積を持つものであるのに対し、刊行物1記載の発明では、「cc/g」という単位で示された具体的な値が記載されていない点で、相違するだけである。 しかしながら、第1吸収材は、液状サンプルをその中に毛管現象を利用し導き入れ、被検体のための結合剤と結合させ、サンプル中の被検体を被検体以外の成分から分離するためのものであるから、適当な毛管現象による吸収性が必要である。そのような毛管現象に材料の多孔性度すなわち孔容積が関係することは技術常識にすぎないから、当業者であれば、使用する材料について反復実験等により適当な孔容積のものを使用するように工夫することは、通常のことである。そして、種々の孔容積を持つ検定装置に用いられる多孔性吸収材があることも刊行物3〜8に記載されている。 しかも、請求項1発明における「約0.001cc/gから約0.400cc/gまでの孔容積」を持つ材料であるからといって、その範囲外の孔容積を持つ材料に比較して、格別予想外の効果が認められるものでもなく、第1吸収材の孔容積についての上記相違点は、当業者が必要に応じて適宜設定できる範囲内の事項である。 そうすると、請求項1発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物1に記載された発明及び刊行物3〜刊行物8に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4.理由(2)について 上記理由(2)について、請求人は、上記意見書において、「(3)審判官殿ご指摘の理由(2)につきましては、ごもっともであると考えます。」と述べ、補正を検討している旨の記載しているにとどまるもので、指摘された記載不備を解消するために、明細書等の補正も行っているものではない。 そうすると、依然として上記の拒絶理由で指摘した明細書及び図面の記載の不備の点は解消していないので、本願は、平成6年法律改正前の特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 5.むすび 以上のとおり、上記の拒絶理由は妥当なものと認められるので、本願は、この拒絶理由によって拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-01-30 |
結審通知日 | 2004-02-03 |
審決日 | 2004-02-16 |
出願番号 | 特願平6-503728 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G01N)
P 1 8・ 531- WZ (G01N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高橋 麻紀、亀田 宏之 |
特許庁審判長 |
後藤 千恵子 |
特許庁審判官 |
河原 正 菊井 広行 |
発明の名称 | 異なった孔隙率を持つ材料から形成される検定装置 |
代理人 | 丹羽 宏之 |